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IP×NFT活用で、コンテンツのファンとのエンゲージメントを強化 アニメや漫画のNFT活用に学ぶ、企業プロモーションの可能性
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IP×NFT活用で、コンテンツのファンとのエンゲージメントを強化 アニメや漫画のNFT活用に学ぶ、企業プロモーションの可能性

興隆しつつあるNFTは、ファンとのコミュニケーションツールにもなり得るのでしょうか? コンテンツや作家とファンとの間をつなぐ、ツールとしてのNFT活用を盛り上げるべく、博報堂DYメディアパートナーズグループの博報堂DYミュージック&ピクチャーズは2022年6月、NFTのマーケットプレイス「animap(アニマップ)」をローンチ。その際には、かのタツノコプロのNFTを数量限定で発売しました。

関連リリース:パブリックチェーンを活用したNFTマーケットプレイス 「animap」が2022年6月17日(金)よりローンチ アニメ制作会社「タツノコプロ」等様々なNFTを順次販売!

今年3月の開催に引き続き、7月13~14日に早くも第2弾が開催された「NFT summit TOKYO 2022」。本稿では、その中で展開されたセッション「アニメを中心としたコンテンツプロデュース会社が、なぜNFT事業にチャレンジするのか?」をお届けします。ファンとのエンゲージメント構築にNFTがどのように生かせるのか、現在進行形の取り組みが語られました。

勝俣 友之介
ボアソルチマネジメント株式会社 代表取締役

喜夛 國友
博報堂DYメディアパートナーズ コンテンツビジネスセンター 戦略企画室ビジネス計画部

矢部 征嗣
博報堂DYミュージック&ピクチャーズ 執行役員マーケティング本部長

中川 富由基
博報堂DYメディアパートナーズ コンテンツビジネスセンター戦略企画室ビジネス計画部
兼 クリエイティブ&テクノロジー局 ソリューション開発グループ

ファンとのエンゲージメント構築を主眼としたNFT活用

NFT技術を活用し、ファンとの新しい形でのエンゲージメント構築が可能ではないかと考え、博報堂DYミュージック&ピクチャーズはNFTマーケットプレイス「animap」を立ち上げました。animapでは、クライアント案件を含めてすでに複数のNFTを販売しています。

喜夛
モデレーターを務めます、博報堂DYメディアパートナーズの喜夛です。このセッションには、博報堂DYミュージック&ピクチャーズが運営するNFTマーケットプレイス「animap」にかかわる矢部、中川に加え、スペシャルゲストとして数多くの漫画家先生のマネジメントをされているボアソルチマネジネントの勝俣さんにお越しいただきました。すでに漫画コンテンツのNFTを販売されているので、ファンから見たNFTといった観点でも今日はお話をうかがえればと思います。
はじめにanimapについて、少し紹介いただけますか?
中川
animapは、アニメコンテンツを中心としたNFTのマーケットプレイスです。
プラットフォームとしての側面と同時に、博報堂DYグループのアセットを生かし、NFT事業に取り組みたいコンテンツホルダーや各種事業会社を支援するパートナーとして、統合プロデュースも手掛けていきます。クリエイターやメディアの方々ともコラボしながら、デジタルコンテンツを開発することも視野に入れています。
ミッションとしては、ジャパンコンテンツのNFT事業推進を通して、新たなエンターテインメントのあり方を模索、提供していくことを掲げています。そしてビジョンとして、前述の統合プロデュースを通して、国内外のファンの方々に価値あるデジタルコンテンツをお届けすることを志向しています。
喜夛
現在、どういったNFTを販売しているのですか?
中川
今年6月のローンチ時には、2022年に創立60周年を迎えたアニメーション制作会社タツノコプロの60周年記念ビジュアルや、代表作のひとつ「マッハGoGoGo」の55周年記念ロゴなどを販売しました。またまた、競艇クライアントのキャンペーンとして、NFTクリエイターとコラボしたNFTも展開しました。
基盤には、パブリックチェーンであるイーサリアムを採用し、ポリゴンチェーンをはじめ他のチェーンも採用予定です。またNFTマーケットプレイスであるOpenseaやRaribleと連携しており、二次売買が可能です。今後は、animap内でも二次売買ができるセカンダリーマーケットのローンチなどを予定しており、企業のプロモーションにも柔軟に活用できる環境を整えていくことを考えています。

喜夛
animapを運営する博報堂DYミュージック&ピクチャーズはもともと、アニメや漫画、音楽、ゲームなど多様なコンテンツ制作と配信に携わってきましたが、なぜNFT事業にチャレンジするのでしょうか?
矢部
これまでどのジャンルでも、良質なコンテンツを届けることに注力してきました。その中で、「いいモノをつくる」だけではなく、「価値を最大化して届ける」という事も、とても大事だと実感するようになりました。さらにファンにずっと愛されるためには、高めた価値を維持することも欠かせません。長く喜ばれてこそ、我々のビジネスも継続し、次なる制作にも投資できます。
そこで、NFT技術を使うことで、より良いファンコミュニティの形成に役立つのではないかと考え、NFT事業に着手しました。

ただ、現状の市場を見ると、NFT向けに新規IPを立ち上げ、プロジェクト化しているモノが盛り上がっている様子で、既存IPを活用したNFTで、ファンとのコミュニケーションを図っていく方法に関して、まだ良い実例も無く正解を導き出せていない状況ですが、これからも模索していく考えです。

喜夛
ボアソルチマネジメントの勝俣さんには、ライツホルダーの立場からお話をいただければと思います。自社でマネジメントするコンテンツのNFTを扱う中で、NFTをどうご覧になっているか、うかがえますか?
勝俣
当社では今、3名の漫画家先生と契約していますが、お三方とも昨年ごろからNFTの話をさせていただくようになりました。周囲に成功事例が増えるにつれて、次第に興味が高まっていった感触がありました。今では権利保護を含めて、新たなビジネスチャンスになり得るという可能性を感じています。

既存IP×NFT活用の模索

「IP×NFT」なら、世界に誇るジャパンコンテンツの力を生かしていくことがまず浮かびますが、既存IPの活用には課題も多いです。既存のファンにどのように受け止められるのか、といった心理的な懸念の一方で、IPホルダーの立場ではどうしても権利問題をクリアにする難しさが生じます。

喜夛
先ほど矢部さんから、既存IPを活用したNFTより、NFT展開を前提とした新規IPのほうが今の市場を見ると盛り上がっている、という話がありました。ここまでの取り組みでつかめた課題感を教えてください。
矢部
既存IPのNFT展開には、ファンサイド、IPホルダーサイドの両面で課題があると考えています。

まずファンの立場では、NFTの購入にはやはり一定の手続きが必要なので、スムーズな体験設計がまだ十分にできていないこと。また、作品に愛があればあるほど、NFTで儲けようとしているのではないかというネガティブなイメージを持たれかねないという懸念もあります。
IPホルダーとしては、作品のファンとNFTの愛好家のそれぞれにどう向き合うか、また作品のブランド毀損につながるリスクなどが課題です。

喜夛
なるほど。今はまだ日本のNFTマーケットが限定的ですが、NFT切り口でアニメや漫画のNFTに興味を持つ人と、もともと作品のファンだというところから入ってくる人がいるわけですよね。勝俣さんは、すでにファンがついている既存IPのNFT展開について、どのような手ごたえや難しさをお感じですか?
勝俣
作品のエージェントとして著作権の管理運用をする中で、ファンとのコミュニティ形成は、実はいちばん大きな課題でした。今は漫画家の先生でも自身でSNSを運用される方も多く、そこにフォロワーがついてファンにつながったりしていますが、たとえば当社でマネジメントしている大島司先生は「表舞台に出るのはキャラクターだ」という思いを持たれているのでSNSをされていないんですね。先生の作品『シュート!』のNFTを今LINE NFTと楽天NFTで展開しているので、そこで接点を持ったファンの方々とどうコミュニティを築けるか、模索している最中です。
また『シュート!』は7月から新しくアニメが放送されているのですが、漫画とアニメで権利が異なり、アニメは当社の範疇ではありません。すると動画のNFTを出したくても事務所さんや製作委員会への説明や交渉が簡単ではないんです。ただ、それだけ未知数の分、私としては大きなチャンスが広がっていると感じています。今できることを推進しながら、権利処理などを着実に押さえていければと考えています。
喜夛
ありがとうございます。海外のNFTコミュニティがどんどん活性化する中、日本にはこれだけIPがあるのになぜNFT展開が進まないのかという声を聴くこともあると思いますが、やはり権利問題は大きいですね。

NFT作品のファンの中から、既存IPのファンを育てる

では、日本が誇る有数のIPをNFTとして展開するにあたり、どのような方法が考えられるでしょうか? animapでは2つの仮説を立てています。そのひとつは、既存ファンにアプローチするという発想を転換し、NFT作品の愛好家に受け入れられるものを模索し、既存IPへの関心を高めてファン化を促す考え方です。

喜夛
では、既存IPの活用と、新規IPの立ち上げの両面で、どのようにファンとの関係を構築していけるでしょうか。animapでは、どうお考えですか?
中川
それでいうと、IPの価値の持続や良質なコミュニティ形成において、2つの仮説を立てています。ひとつは、コンテンツの既存のファンではなく、NFTを集めているNFTファンの中からIPのファンを増やしていくこと。もうひとつは、ファンの“推し”を知ることです。
ひとつ目は、既存ファンとNFT自体のファンは相反するものではないので、NFTファンも「このコンテンツの新規ファン予備軍なのだ」と捉えるという発想ですね。NFTファンに寄せた企画や施策を展開し、すでにNFTに親和性の高い人から新規ファンを獲得しつつ、既存ファンも巻き込んだ新しいコミュニケーションに可能性があると考えています。
中川
もうひとつの「ファンの“推し”を知る」とは、以前と違ってアニメの作品数が増えていることが背景にあります。そのため、アニメ好きの人が分散化し、自然にコミュニティができにくい。そこでNFTを活用し、ファンを明確化し、施策を展開することで、密度の高いコミュニティ形成を図っていけるのではないかと思います。
喜夛
勝俣さん、ライツホルダーの立場から、これからのNFT展開への期待をうかがえますか?
勝俣
今、漫画家の先生方も、NFTに対してどんどん関心が高まっている状況です。この期待感は、ちょうど10年ほど前に電子書籍が出始めたころとよく似ているんですね。その際も、権利に関して出版社と先生方の間でいろいろな議論が交わされ、それを機に作家側のエージェントと契約する先生も一気に増えたんです。漫画などのコンテンツのNFT展開は、改めて作家の側に権利や窓口を取り戻すような機会になるかもしれません。ひいては、ファンの方々に新たな価値を提供することにつながると思うので、楽しみですね。
喜夛
ありがとうございます。では、animapの今後の展開を教えてください。
中川
既存IP×NFTの展開には、まだ成功のモデルがあるわけではないので、しばらく実験的にいろいろな切り口で模索していくつもりです。我々博報堂DYグループのアセットを生かし、デジタルコンテンツの開発から支援できる体制を早急に確立していきます。先行してNFTビジネスに関するサービスやプロダクトを創出するプロジェクト「Hakuhodo DY Play Asset」や、スポーツを切り口としたプラットフォーム「PLAY THE PLAY」も始動しているので、知見の共有や連携も強めていければと思います。
矢部
既存IPのNFT化には、製作委員会に入るなどの座組の設定も含めて、我々グループの強みを生かしていきます。また、クリエイターに対しても、NFTビジネスで直接還元できるような仕組みを推奨していくつもりです。しばらく模索が続きますが、NFT領域に興味がある企業の方々とも協力して、新しいムーブメントを起こしていきたいので、ぜひご注目ください。
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  • 勝俣 友之介
    勝俣 友之介
    ボアソルチマネジメント株式会社 代表取締役

  • 博報堂DYメディアパートナーズ コンテンツビジネスセンター 戦略企画室ビジネス計画部

  • 博報堂DYミュージック&ピクチャーズ 執行役員戦略企画室長兼編成本部長

  • 博報堂DYメディアパートナーズ コンテンツビジネスセンター戦略企画室ビジネス計画部
    兼 クリエイティブ&テクノロジー局 ソリューション開発グループ