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オウンドサービスはローンチ後のバージョンアップが不可欠! システム投資の最適な考え方とは
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オウンドサービスはローンチ後のバージョンアップが不可欠! システム投資の最適な考え方とは

顧客ID取得の窓口としての「オウンド」の重要性が高まり、企業やブランドと生活者を繋ぐ「オウンドサービス」も増加中。しかしその多くが、グロースを行うためのKPIが設定されていなかったり、UIUXのアップデート体制が確立されていなかったり、といった課題に直面しています。hakuhodo DXDが提供する「DXD Growth Program」は、戦略立案からシステム・デザイン・コンテンツ開発まで、オウンドサービス運用を一気通貫で実施できる画期的なプログラムです。本連載では、「DXD Growth Program」の意義や支援内容など、計6回にわたって詳しくご紹介します。今回はVol.2として、システム構築のポイントについて同メンバーの田中順也、上田周平、阿久津健の3名に聞きました。
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第三者的な視点で顧客に寄り添い
最適なシステムを提案していく

――まずは、皆様の簡単な自己紹介をお願い致します。

田中
私はhakuhodo DXDの所属で、テクニカルディレクターという立場で技術部門においてのリーダー的な役割を担っています。開発ベンダーやエンジニアさんと一緒にWebやアプリのソフトウェアサービスを作る際に、プロジェクトをディレクションする役目ですね。 「DXD Growth Program」では私のいるhakuhodo DXDが主幹となり、博報堂グループの様々なチームを横断的に集め組成しています。
上田
私はSI企業を経て2018年に博報堂に入社しました。現在はマーケティングシステムの構想~実装~利活用支援を行う博報堂のマーケティングシステムコンサルティング局に所属しながら、「DXD Growth Program」でプロジェクトのプロジェクトマネージャーやコンサルタント的な役割を担っています。
阿久津
私は博報堂プロダクツのデータビジネス事業本部データ基盤チームに籍を置き、「DXD Growth Program」ではサービスインフラ環境の構築と運用保守等の業務に携わっています。コンサルティングの出身である上田さんに対して、田中さんと私はもともとプログラマーなので、コーディングなどIT制作の現場についてのケイパビリティを有していることもポイントですね。

――ITのフロントから裏側の仕組みまでを知り尽くした方々なのですね。それでは質問に入ります。様々なシステムや仕組みが導入されると、顧客への一元的な対応ができないなど、データ分析が中途半端になってしまう懸念があると言われます。実際にどのような問題が起こりがちなのか、皆さんの体験を踏まえて教えてください。

上田
事業部などのビジネスサイドの方々も関わるので、それぞれの立場で優先度が変わります。システムのデザインをどう落とし込むのか、数年前と比較すると方法論もかなり変化しました。システムを作る側である我々も、様々な人たちと会話を重ねて着地点に導くことが重要だと感じます。事業部門は売上に貢献するシステムであることを望むし、IT部門では確実性や安全性を優先させなくてはいけなかったりするので、この時点でも結構距離がありますよね。

阿久津
サービスやツールというより、明確な目的があってシステムを作っているはず。ただ、ステークホルダーが多くなるほど、システム構築は難しくなる。交通整理しながら皆さんの意見を汲みつつ、良い議論を経て折り合いをつけて構築する必要があると感じます。
田中
チームごとに必要なデータも異なりますが、今はクラウド技術の発達によりマルっと大量にデータを保管できる。そうなると「とりあえず溜めておこう」となり、「せっかく溜めたデータなのだから活かしたほうがいいのでは」という議論になる。可能性が広がり過ぎると、本当にやりたかったことが進められなくなる弊害もあるのです。本来は、ビジネスの目的に対する優先度の高い課題に立ち向かうべきなのに、見切り発車でコストを掛けてデータを貯めてしまったがゆえに、その後の施策が中途半端になってしまうことも多々あるのが現状ですね。

――では、次はそのような問題を解決するための方法論について、皆様のお考えを聞かせてください。

上田
ChatGPTなど、テクノロジーの進化が目覚ましいなかで、「やらないことを決める」ことも必要ですが、それは難しくて勇気も要る。そんな時に第三者の意見があればうまくいくことも多い。我々はシステム領域も理解しながら、マーケティング観点でほんとうに必要なシステムを見定めて、やらないことをご提案することができます。無駄なコストも減らせます。システムを作るニュアンスも変わってきて、要件を決めて手堅いシステムを作るという世界観から、SaaSサービスを活用しながらクイックに実装していく潮流にあります。一方で、生活者も優れたUIUXに慣れているので企業が発信するサービスへの満足度へのハードルは高くなっています。システム開発を短縮し、その分CX(カスタマーエクスペリエンス=顧客体験)の構想や継続的改善に注力したい企業も増えており、クリエイティブに強い博報堂にとっては腕の見せどころかなと思います。
阿久津
システム構築には、顧客に寄り添い伴走することが重要です。上田さんの言う通り、顧客からの要求は多々ありますが、それを取捨選択し、責任をもって決定することが我々の役目になってくるのでしょう。
田中
IT領域に投資すると期間もコストもかかります。関係する人が増え、動きが鈍くなることは否めない。まずは小さく始めてお試しできるソリューションもあるので、そんな方法をご提案したいですね。すべてを解決する必殺技的なスーパーアイデアではなく、複数のシナリオや構成を考えて、それぞれ小さく試したほうがベターかと考えます。ビジネスに最も寄与するものを見定めてからシステム実装することで、クライアントに寄り添えるプロセスにできると考えています。「大きなシステムをドカンと導入」ではなく、複数の選択肢をフラットに見て一番フィットするものをご提案できることが、我々のプログラムの強みです。

サービスを世に出してからが勝負
ローンチ後に博報堂の強みが生きる

――博報堂なら第三者的な立場で、顧客に寄り添って最適なシステムを提案し、問題解決に強みを発揮できるということですね。では、次に継続的なサービス開発(UIUX)とマーケティングオペレーションを並走することの意義について、詳しく教えてください。

上田
生活者の反応を受け取り、サービスをバージョンアップすることが重要です。日本では「100%仕上げてから市場に出す」傾向があり、ローンチ後はあまりアップデートしない。アメリカなどでは、少々のバグがあっても市場に出してクイックに改善するやり方です。特にマーケティングシステムの場合、生活者の反応に合わせて変化していくべきなので、今の時代にはアメリカ流のほうが合うと思うんですよ。前者のやり方だと、要件をすべて決めて数千万、場合によって数億円かけて作りあげることになるけど、後者なら数百万円単位でもベータ版として市場に出して生活者の反応を見て改善ができます。数年もすれば、流行りのUIも激変しますからね。
阿久津
上田さんの今の提言は極めて重要だと思います。サービスをリリースして終わりではなく、そこがスタートだと考えるべき。生活者の方々によるサービスの使い方や意識も常に変わっていくので、日々改善することはサービス提供者の務めです。そこで我々がデータを基に分析してマーケティングに生かしていくことで事業に貢献できると考えます。オウンドサービス開発に関わる方には、サービスをリリースした後に、ユーザーの行動を分析し、サービスを改善していくという意識が浸透するといいなと思っています。

田中
「DXD Growth Program」は、サービスローンチ後の改善、今後に生かせるデータを活用しながら継続的にUXの向上を考えてクライアントを支援するもの。博報堂はアプリやWebによるサービスを開発し、データ利活用のための裏側も作れる。さらにプロモーションまで包含して支援できます。システムはあくまで手段で、集めたデータをブランド体験や広告、サービスに還元するところまで寄与すべきで、そこまで包含できるのが当プログラムです。システム導入がゴールではなく、ブランド体験を改善するための実現可能なオペレーションまでサポートさせていただくことが、我々の考えなのです。上田さんの言うようにUIのトレンドも変わるし、広告キャンペーンのあり方も時代と共に変わる。その両面の変化を感じつつ、プロダクトをより魅力的なものにできるのが、我々の強みです。

――では、サービスに対するシステム投資の最適な考え方や導入プロセスなどについて、皆様のご意見をお聞かせください。

田中
大きなビジョンは持ちつつも、スモールステップを刻んで着実に進めるやり方をオプションとしてご提案したいですね。シンプルに考慮すべき懸念を狭めることでシステム実装時間も短縮、予算的なリスクも少ない。ステップアップの過程でマーケティング、システム、ブランディング、営業と社内の様々なチームが関わり、我々が一緒に入って支援できる場面も増えますから。
阿久津
0か100ではなく、「まず1を生む」ことが大切で、試行錯誤をしながら1から10,50へと段階を踏んでシステム投資をすることが望ましいと思います。世の中の情勢もスピーディーに変化しますし、システムの世界は特に変化が激しい。いきなり100を投資するのは合理的ではありません。
上田
企業側の意識も変わってきて、PoC(概念実証)に基づいて検証してからローンチするケースも多い。ただ、PoCのサイクルをより速める必要はあるでしょう。人的リソースや予算もそこに投じるような提案は我々もしています。また、大きなプロジェクトは長い時間をかけるので、その間にスモールサクセスを早めにつくって積み上げることがカギになると思います。事業を進める上で、何らかの手ごたえがないとモチベーションを保つのが難しい。達成感を積み上げていくことでうまく回るし、問題があっても改善に向かいますよね。上から「これをやれ」と言われて頑張り続けるのでは息切れします。ある目標をクリアして、「次はもっとこうすればいいかも」という新しい発想も生まれるかもしれません。小さな成功から次の大きな成功に導くという発想も大切だと思います。

――では、最後にオウンドサービスを運用するためのご意見やご提言などあればお聞かせください。

田中
アプリを作る過程で、「これって、アプリじゃなくてもいいかも」という発想になる場合もあります。雑談ベースでも「こんな課題を解決したい」というご相談を気軽にしていただくと、思わぬアイデアが生まれやすいので、クライアントとの気軽な会話を大事にしたいですね。アプリやWebサービスは生活者が直接使うので、一度世に出してしまうとなかなか撤退しにくい。だから、システムを出す前のリスクや運用を含めて、覚悟を持ちつつ、クライアントとの対話を含め、あらゆるものを紐解きながら実行していきたいと思っています。

阿久津
オウンドサービスの提供からマーケティングの様々な領域に至るまで、一気通貫でご支援できることが「DXD Growth Program」の強みだと思います。我々にご相談いただければ、どんな領域でも意思疎通ができる形でご提案ができます。それぞれの専門業者に依頼するより効率的だし、誤解や行き違いも生じにくいはずですし、皆様の頼れる存在でありたいと思います。
上田
オウンドサービスは、瞬間的な「これ、いいね!」だけでなく、長いお付き合いをさせていただくインターフェースのはず。長い時間をかけて好きになってもらうような生活者との関係作りが今の時代は重要です。だからこそ、我々が提供するクリエイティビティに意味がある。「これ、いいね」という瞬間のヤマを作ることもできるし、じわじわと好きになってもらう仕掛けも得意です。両方とも提供することでクライアントの成長に貢献できると信じていますので、もともと広告会社が得意としてきたキャンペーン型事業とは少し違う観点でサービスを提供するという点を強調したいですね。
田中
瞬間的なヤマを作るには、UIやアートディレクションのスタッフが力を発揮しますが、そんな人材も「DXD Growth Program」には大勢いるし、彼らのクリエイティブセンスを実装に落とし込める我々のようなシステムのチームもそろっています。そこで得たデータを基に時流やテクノロジーの変化に応じたサービスを構築するメンバーもいる。IT領域のプロダクトマネジャーに寄り添えるスタッフを一気通貫で有していることは、かなりの強みなのです。瞬間的なヤマを作ることはできても、そのヤマをさらに高台として定着させることは決して簡単ではないのですが、我々はそれを可能にするチャレンジができるチームだと信じています。

――ありがとうございました。次回はタッチポイント横断でのブランド・デザインシステムの構築について担当者に聞いていきます。ご期待ください。

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  • 博報堂
    hakuhodo DXD テクニカルディレクター
    IT事業者にてカーナビ等のtoCサービスの開発を経て、テレマティクス・物流業界向けソリューションを担当。その後、訪日外国人向け観光事業、地方創生、MaaSなど官公庁事業に従事。2021年に博報堂入社。
    現在はテクノロジーを使った体験設計・技術選定などを中心に、クライアントのサービス開発を支援中。
  • 博報堂
    マーケティングシステムコンサルティング局
    カスタマーサクセス部長
    SI企業を経て、2005年よりマーケティングシステムのプロデュース、プロジェクトマネジメントに従事。2018年博報堂入社。企業のマーケティングDX/デジタルマーケティング実行へのコンサルティング~システム導入~運用までシームレスに支援。
  • 博報堂プロダクツ
    データビジネス事業本部 データ基盤チーム
    スマートフォンを軸としたベンチャー企業の立ち上げに携わる。ベンチャー企業では、大企業から中小企業の様々なアプリの開発・ それに関わるインフラの構築等を手掛ける。
    2020年に博報堂プロダクツに入社。現在は、サービス構築に関わる広い知見を活かし、クラウドを活用したインフラ基盤の整備・ビッグデータを活用した運用・保守、アプリ開発に関わるディレクションなどに従事。