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オウンドサービスをグロースし、自走させるための仕組みとは
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オウンドサービスをグロースし、自走させるための仕組みとは

顧客ID取得の窓口としての「オウンド」の重要性が高まり、企業やブランドと生活者を繋ぐ「オウンドサービス」も増加中。しかしその多くが様々な課題に直面しています。hakuhodo DXDが提供する「DXD Growth Program」は、戦略立案からシステム・デザイン・コンテンツ開発まで、オウンドサービス運用を一気通貫で実施できる画期的なプログラムです。

本連載では、「DXD Growth Program」の意義や支援内容など、計6回にわたって詳しくご紹介します。今回はVol.5として、オウンドサービスをグロースさせ、自社で自走化する際に必要な仕組みをテーマに、メンバーの千葉悠人、柳沼優樹、高井新平の3名に聞きました。
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千葉悠人
博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局

柳沼優樹
博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局

高井新平
博報堂プロダクツ デジタルプロモーション事業本部 
WEBマーケティング部 オウンド戦略プロデュースチーム

企業が「やりたいこと」のレベルと
自社の社員のできることが一致していない

――オウンドサービスをスタートさせても、なかなかクライアント企業内で自走化できないという事例も多いと思います。その原因はどのようなことでしょうか? ご自身の体験を踏まえて教えて下さい。

千葉
まず業務や制度設計が整っていなくて、単純に仕組みがないとか業務が定義されていないというケースですね。「やるつもりがない」か、「やるつもりはあってもできない」という例が多いように感じます。「やるつもりがない」のは根本的な原因ですが結構ありがちで、後者の場合はスキル不足が主因で、サービス開発が非常に高度になっていて、変化も著しい。求められるレベルも高いし、技術も急激に進化しています。要求される水準に応えられるスキルを持つ人材がなかなかいないという現実が大きいでしょう。

柳沼
確かに、企業が「やりたいこと」と、ITについて自社の社員のできることの間に差があることが多いと感じます。ツールなどが進化し、自社である程度のことができるようになりましたが、使いこなせる人材が社内にあまりいないという。一方でパーソナライズなど「やりたいこと」のレベルはどんどん高くなっている。さて、どこから始めようと思ってもスキルも経験も不足しているので非常に困難なはずです。
高井
例えば我々が構築したWebサイト運営をクライアントにお願いする場合、我々が人員を派遣してチームを作ったりしていました。ただ、人員不足の問題だけでなく、「事業部門間連携ができずにやらない」というケースも多い。我々が中に入ると、そういう状況もよく見えるんです。例えばワークショップを実施するなど具体的な解決策を我々がお手伝いすると、自走化につながりますが、そこまでやろうというクライアントはあまりなかったですね。以前よりツールが進化しているので、エンジニアがいなくても自社でやれるようにはなりましたが、クライアント側が自走化のモチベーションを高い意識で持つ必要があると思います。

ローンチ後のアップデートが
グロースには不可欠である

――上記の課題点を解決し、自走化させるためには何がポイントだと考えますか? まずは「仕組み作り」についてのポイントを教えてください。

千葉
提供しようとする顧客体験が世の中にまだない場合、新しい体験を提供するので、仕組み自体の前例がない。通常、業務設計の領域ではある型にはめて作るほうがうまくいきますが、前例がないと成功に導く型もないので難しくなります。それにオウンドサービスでは自社でやるので、新しい仕掛けや価値を続々と付け加える必要が生じる。アップデートしていかないと本当の意味での自走化はできません。従来のパターンを踏襲した組織設計でやろうとすると新しいものを生み出すことは不可能でしょう。変化の著しい現代に必要なオウンドサービスとは、創造的な発見や新体験を生み出すことを形にできるものだと思います。そのためには矛盾していることを形式化する必要があるので、それがすごく難しい。我々の場合は、博報堂に研修的なプログラムがあり、過去に相当な数をこなしてきたから作れているわけですからね。
柳沼
ユーザー視点では同じようなサイトに見えても、裏側の作りはまったく異なっているはず。飽きられないようになるべく短期間でバージョンアップできるようにコーディング等から作っていく必要があります。私がかつて上司から言われたのは、「人生で複数回使うものは形式化せよ」という生涯効率化の教えでした。データ分析とサイト構築を短期間で繰り返す工夫は必要かと思います。もう一点重要なポイントは、「失敗を許容できる文化」です。オウンドサービスには実験が必要でミスがつきものなので、ミスをいちいち叱責すると創造が阻害されるので。失敗から学べる業務の仕組みを予め作っておくべきだと感じますね。

高井
本当はあるべき姿に向けて全員が同じ志を持っているはずなのに、セクショナリズムや目の前の業務に忙殺される現状から、うまくいかないケースが多いと感じます。Webサイトであれば公開することにとらわれる傾向がありますが、本当はその先の運用のほうが重要なのです。構築と運用が同一のチームになっていれば、自然と運用にも責任をもって向き合うことになるのですが、なかなか難しいケースも多いと感じます。

――では、自走化させる「人づくり」という面でのポイントはいかがでしょうか?

千葉
意識の問題が大事で、企業の担当者がいかに「自分事」にできるかが重要ですね。サービスをグロースさせるには、それが「自分事」であるから部署を超えた横の連携も必要になるし、我々としてもフォローしやすいですね。誰かが「そこはウチの仕事じゃないよね」という発想になると自走化はできないのです。スキルを向上させても「自分事」という意識がないと厳しいです。理想論ですが、やはり開発チームも運用チームも一丸となり、KPI達成に向かっていくべきです。我々もクライアントに対して、そういう意識が持てるようなアプローチができればいいと思います。博報堂の得意分野でもあり、顧客の要望に応える「提供価値」を言語化したり、いわゆる「カスタマージャーニー」を作るツールも使えますからね。カスタマージャーニーをしっかり言語化すると、社内の誰も逆らえない「法律」が作れます。上司の都合次第の運用ではなく、「法治国家」にすることができるのです。一定の「基準」をつくることが意識統一の上では重要。あとは、シンプルに自分たちで楽しく、ワクワクできるもの。「やりたい」気持ちを純粋に作れるサービスであることも大事だと思います。
柳沼
「好きになれる」サービスであれというのは同感ですね。私もクライアントの方々に、最先端の業務であることをお伝えしてモチベーションアップのお手伝いをさせて頂いています。なぜ、博報堂にそれができるのかと言うと、100年超の間「人の力」でやってきた会社だからです。オウンドサイトに関する研修やセミナーも充実していて、一連のナレッジをカスタマイズしてクライアントに提供することが可能ですから。人を育てられる会社としての強みがあると思います。

「人づくり」のカギは「風土づくり」
博報堂の強みがそこに生かされる

――なるほど。では、それ以外にオウンドサービスにおける、博報堂やDXD Growth Programの強みとは?

千葉
継続的な変化を仕組み化できることが強みでしょうか。ローンチ後に柔軟に運用するとか、どれだけ新しいことを生み出せるかということがグロースには大事なので。世の中に何が求められているのかを、常に追求してきた会社ですからね。変化を察知し、新しいものを作り出すことは得意だし、それができる人材が育つ土壌が博報堂にはあります。
柳沼
生活者の変化だけでなく、サイトを作り替える仕組みのところまで業務側を含めて対応することが重要なのですが、変化を見抜いて最速でできることが博報堂の強みですね。やはりブランディングで培ってきた姿勢が生きていると思います。
高井
私はキャリア入社なので、今話に出た変化とブランディングについては、カルチャーショックを受けました。ここまで徹底して向き合うのかと。前職では、サイトのリニューアルを提案する場合、ブランディングについてはクライアントが考えるものだと、線を引いてしまっていました。博報堂グループでは、「クライアントがこうあるべきだ」という提案を当たり前にするので、その姿勢に驚きました。クリエイティビティに加えて、我々のような「粒ちがい」の人材が博報堂の文化に溶け込むことにより、ケミストリーも生まれます。「作って終わり」ではなく、そこからどうグロースさせていくのか、「クライアントらしさ」を追求して提案ができる。ブランディングの視点でも成長を促すような体制が博報堂グループにはあります。エンジニアやコンサルタントなど、バックボーンが全く異なる人材が融合するので、グループの強みがより発揮されてDXD Growth Programに生かされているという実感がありますね。
千葉
「人づくり」は、単純な研修というより「風土づくり」に近いものだと思うんです。サービスグロースは、何かを作り替えたり、クライアントのニーズを察知しないといけない。そのためにはアンテナを常に張って、楽しみながら仕事ができる人が必要です。そこで、複数の部署を横断することを厭わない人が望ましく、そういう組織の風土があるかが問われる。その企業風土がないと、グロースの思想化は難しいと思うんですよ。博報堂はクライアントのインナーブランディングも長年やってきたので、風土づくりの施策なども豊富に持っています。サービスの自走化やグロースには仕組みやスキルに目がいきがちなのですが、じつはインナーブランディングが非常に大事なのです。そこがダメで頓挫するケースも多いので、インナーブランディングができることも博報堂の強みとして大きいと思いますね。
柳沼
あとは運用の実務化がしっかりできる点も付け加えておきたいですね。先端ツールのクセを探る作業なども社内で常にやっていますが、ツールは直に触らないとわからないことも多いので、自分たちで検証することが非常に大事ですからね。

――ありがとうございました。
計6回に渡る「DXD Growth Program」の連載は本記事で完結となります。オウンドサービスを顧客に愛され続けるものをするために不可欠な「グロース」を実現させる、博報堂の支援体制について、ぜひバックナンバーもご覧ください。
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  • 博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局
    2012年に株式会社博報堂に入社。広告戦略立案を担当した後、2015年よりグループ会社の博報堂コンサルティングに出向。マーケティング戦略立案・新規事業開発・企業ブランディング・組織改革など、幅広い領域を経験。
    その後2020年から現組織に着任。デジタルサービス開発、デジタルプロダクトマネジメント、CXを起点とした接点横断でのアクション・組織改革
  • 博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局
    2012年に株式会社博報堂に入社。2018年に自動車メーカーの全社DX改革組織に出向後、2019年から現組織に着任。マーケティング・CRMの統合的なマネジメントやシステム調達時のRFP策定支援等に注力。
  • 博報堂プロダクツ デジタルプロモーション事業本部 
    WEBマーケティング部 オウンド戦略プロデュースチーム
    2017年博報堂プロダクツ入社。Web制作におけるプロデュース業務がメイン。Webインテグレーション、Webマーケティングにおける戦略設計~制作、運用まで、全体のプロジェクト推進 を担当。