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オウンドサービスにおけるトータルブランディングとは?
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オウンドサービスにおけるトータルブランディングとは?

顧客ID取得の窓口としての「オウンド」の重要性が高まり、企業やブランドと生活者を繋ぐ「オウンドサービス」も増加中。しかしその多くが、グロースを行うためのKPIが設定されていなかったり、UIUXのアップデート体制が確立されていなかったり、といった課題に直面しています。hakuhodo DXDが提供する「DXD Growth Program」は、戦略立案からシステム・デザイン・コンテンツ開発まで、オウンドサービス運用を一気通貫で実施できる画期的なプログラムです。

デジタル化が進むことで最適化を意識した運用が多くなるため、その分サービスごとの個性が薄れてしまうというジレンマも生じる中、 今回は「DXD Growth Program」連載のVol.3として、タッチポイントを横断したブランディングをテーマに、hakuhodo DXDの小山秀一郎、児嶋啓多に聞きました。アートディレクターである二人の視点で、オウンドサービスにおけるブランディングについて大いに語ってもらいます。
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トータルブランディングの時代には
「企業の特性」を意識すべき

――まずは、お二人の簡単な自己紹介をお願い致します。

小山
僕は制作・インタラクティブ関連の企業を経て、博報堂に入社して7年目です。アートディレクションが主軸ですが、今の業務はアートディレクションに留まらない領域まで広がっているので、仕事の仕方も変わっていますね。従来はマス広告を中心に2~3カ月単位で完了するプロジェクトが多かったのですが、最近は年単位でじっくり企業・サービスのブランディングに取り組むことが多くなりました。プロダクトの開発をはじめ、IPコンテンツを活用したビジネスの立ち上げに参加することも増えています。
児嶋
僕は2010年に新卒で入社し、5年ほど広告のアートディレクター(AD)を経験した後に今のチームに入ってデジタル領域に携わるようになりました。最近ですとクライアントのPB商品のブランディングをパッケージから広告、デジタルまで統括して担当しています。ほかにもメーカーの新サービスの立ち上げを、シンボルをどう考えるかというサービス規定の部分から関わったりしています。

――ありがとうございます。ではまず、企業のサービスのタッチポイントがオンラインからオフラインまで増え続ける中で、トータルブランディングの在り方についてお二人の立場からご意見を聞かせてください。

小山
オンラインかオフラインかなんて、現代の若者はもう意識していませんよね。みんなSNSを存分に使いこなしているわけで、その上でトータルブランディングをどうするかという視点で考えています。ブランディングの基本は単純に「差別化」なのですが、社会的にはブランディングってすごく難しいものだと思われているんです。「ウチの会社はほかと何が違うのか」、ということを本当はもっとわかりやすくしなければいけないはず。たとえば地方の小さな蔵元が「自分たちの酒をもっと飲んでほしい」と。それを解決するのもブランディングであり、我々がお手伝いできるはずなのです。

児嶋
若い人はオンもオフも関係ないと思っているのに、企業になるとオン・オフを意識するようになるんですよね。今の人はインスタを投稿するのに「どうすれば見てもらえるか」
を意識しています。つまり、個人単位でブランディングをやっているのに、企業で捉えた途端に難しく考えてしまうんですよね。
小山
ブランディングは企業の特性に応じて方法論が変わります。例えば東京の大企業で有効だった方法が地方の中小企業では通用しません。僕は地方都市のある家電メーカーのブランディングを担当していますが、東京の企業とは異なる面がやはり多い。最先端のコンテンツが地方に埋もれていることもありますね。そういうエッセンスをうまく編集して見せればいいわけで…。ただ、ブランディングはオートクチュールのようなものだから、適材適所が求められますね。
児嶋
適材適所は確かにある。DXにしても、やはりその土地なりのやり方がありますよね。東京だから東京に合ったDXをやっているわけで、それを地方でそのままやってもうまくいかないのは当然です。まさにオートクチュールでその企業に最適にカスタマイズしてやらないと…。これが海外の企業だと、ひとつの最適解がどこでも通用したりするんですけど、日本はもっと土着的なのでブランディングもしっかりカスタマイズしないとうまくいかない気がします。

小山
そういう意味でも、我々は企業としっかり併走する必要があるから、毎週定例会議を行って細かく課題を話し合っているんです。そうしないと見えない問題点が必ず生じるので。
児嶋
それだけ密にコミュニケーションをとっていけば、おのずとトータルブランディングに近づいていきますよね。
小山
対クライアントという形で、発注者と受注者という関係になってしまうとうまくいかないんです。そんな意識ではなく、あくまでワンチームという感覚で我々は仕事をしていますね。

――なるほど。タッチポイントが増えていくと、トンマナやユーザビリティがバラバラになり、問題が起こることもあると言われますが、実際にはどうなのでしょうか?

児嶋
僕は必ずしもトーンが揃わなくてもいいと思うんです。たとえば統一された強いロゴさえ入っていればOKという考え方もあるのではないでしょうか。大企業になるほどコントロールが困難になるし、制御なんてできない。僕の担当案件では、逆の発想でコントロールできなくても成立するアイコンを作りました。最近は、トンマナがなくてもうまくいくシンボルを開発するデザインシステムのほうが大事だと思っています。ただし、この方法論も相手が違えばダメなのです。ウェブと店舗でトーンを統一しないといけない企業も当然ありますから。
小山
先ほど例に出した家電メーカーの場合は、店頭やウェブでのコミュニケーションに加えて、流通とのコミュニケーションもある。世間での認知度が高くない企業ほど、トンマナの統一が重要になります。金太郎飴のようにどこのタッチポイントでもイメージできるようなクオリティを目指してブランディングしないといけません。当然時間はかかりますよね。ただ、たとえなかなか結果が出なくても、「博報堂と一緒にやっていこう」と思ってもらいたい。そのためにも日頃の関係性が重要になります。関係構築も意識して、かなり積極的に動きますよ。また、プレゼンする時は「対企業」ではなく、先方の誰に向けて語りかけるのかを明確にしています。結果的に質が上がりますしね。

児嶋
これからは、そういうスタンスも大事なんでしょうね。僕の場合は、どうしてもデザインが主軸で「このロゴがすべてを解決します」という提案を常に追求していますが、もし繊細なトンマナが必要なブランディングを要求されても、ひとり歩きできるようなロゴを考えることから始めると思います。企業の思いとスタンスをきちんと表現できていれば、必ずブランディングは成立するという信念がありますから。

シームレスなチームの利点を生かして
異なる視点でブラッシュアップ

――なるほど。ブランディングはやはり奥深いですね。では次は、理想的なオウンドサービスの在り方について、例えばタッチポイント横断での快適なブランド世界観の構築など、DXD Growth Programの強みという点を含めてご意見をお聞かせください。

児嶋
世の中のタッチポイントはさらに増えていくでしょうね。10年後はとんでもないことになっているかも…。そうなった時にすべてを制御するのはもう不可能な気がするんですよ。だから、誰もが使えるわかりやすいアイコンが機能してくのだと思う。それがあれば、タッチポイントがいくら増えても困らないはずだから。例えば我々の場合、最初からCMを作ることを見越してロゴもデザインしているんですよ。
小山
タッチポイントが増えること自体は、さほど重要ではないと思います。ただ、社内で共通言語を持つ、インナーブランディングの部分は大切でしょう。共通言語があれば、そこに向けて商品開発をするのだという指針になります。だからこそ、児嶋君がやっている強いアイコンも意味を持つので。でも、僕がやっているようなブランディングは、土台からじっくり作り上げていくので、典型的な日本企業向けのブランディングですよね。
児嶋
方法論は様々ですが、DXD Growth Programの場合、僕たちのようなアートディレクションチームだけでなく、テクニカルディレクションチーム、サービスデザインチームがシームレスに連携して、コンセプトの立ち上げからサービス開発まで一気通貫で見れるのが強みですね。データ分析をクリエイティブに生かすなど、そこの分断がほとんどありません。

小山
3部門がそれぞれ連携できますからね。何か作った時も3方向から検証してブラッシュアップができるし。また、そういう人たちと連携してきたからこそ、僕たちADの領域も拡張してアートディレクターという肩書から離れた仕事の仕方になってきた。チームとしての強みもあるし、個人のスキルを高めてくれた要因にもつながっていて、それもDXD Growth Programの強みだと感じています。

――確かに、大きな強みがありますね。では、ほかにオウンドサービスを運用するためのご意見やご提言などあればお聞かせください。

小山
サービスを運用するには、「しつこさ」が必要です。何度も何度も細かく丹念にやっていかないと。商品写真ひとつにしても、自社サイトだけじゃなく、ECプラットフォームに転用した時もコンセプトがしっかり伝わる素材を用意しないといけない。とにかく、しつこくやるしかないんです。
児嶋
「しつこさ」は重要ですよね。CMだって忘却されないように何回も流すわけだし。
小山
人間は忘れちゃいますからね。我々も忘れることがあるし、クライアントも同様です。だから、チームの誰かが気づけばいいんだと思っている。自分が絶対気づかないとダメだとは思わないで、誰かが気づけるチームであることが大事だと。
児嶋
だからこそ、クライアントとワンチームでブランディングするのがあるべき姿なんでしょうね。パートナーであり、「仲間」であるという。
小山
クライアントとの関係性もそうだし、社内においても、チームで検品できる点が最大の力だと思います。デザイナーだけがチェックするのではなく、DXD Growth Programではテクニカルディレクターとサービスデザインチームが加わって3視点になるわけです。異なる3つの視点でチェックして磨いていくので、このチームのメンバーなら、テクニカルディレクターでもデザインがかなりわかるし、貴重な意見もしてくれます。我々も信頼していますしね。逆にこちらからテクニカル領域に意見することもあります。そうやって揉んでいくと偏らず、バランスもよくなる。このメリットこそが、一番大きいのかもしれませんね。

――オウンドサービスを開発からグロースさせていくためには、中長期にわたってより多くの生活者から愛されるものとなる必要があります。それは、サービスモデルだけではなく、デジタル化が進む時代であるからこそ個性(ブランド)をすべてのタッチポイントで感じてもらうことがカギとなるはずです。DXD Growth Programのアートディレクターチームが、トータルブランディングの視点でオウンドサービスにおけるブランドを設計しているのもそのため。企業やサービスによって、個々にあるべき姿があるからこそ、フロントに立ち続ける次世代型のアートディレクターが支援していきます。

次回は、データ分析とクリエイティブ開発の融合について掘り下げていきます。ご期待ください。

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  • 博報堂
    hakuhodo DXD アートディレクター
    紙のマス広告制作を経て、インタラクティブエージェンシーに所属。デジタル領域のアートディレクションに従事したのち、博報堂に入社。グラフィック、インタラクティブやスペースなど、サービスや体験全体を統合してデザインし、数多くの広告賞を受賞。近年では企業CEOと共にリブランディングや、商品開発などの業務にも従事。カンヌライオンズ ヘルス部門銅賞、電通広告賞 優秀賞、コードアワード ベストイノベーション、ACCインタラクティブ部門クラフト賞、CLIO銅賞、M3アワード ゴールド、Webby Awardsグランプリ、TDC入選、Penクリエイター・アワード掲載、ワールドビジネスサテライト(テレビ東京系列)出演など
  • 博報堂
    hakuhodo DXD アートディレクター
    1985年兵庫生まれ。2010年博報堂入社。
    広告グラフィック、ブランディング、UIデザイン。領域をまたいだアートディレクションを行う。
    グッドデザイン賞2021、東京TDC2020 Prize Nominee、The One Show 2015 Silver、2016東京ADC賞ノミネートなど。