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DIGITAL “SPOGLISH”(デジタル・スポグリッシュ)」でつくる 楽しく学びを続けるコミュニケーションのカタチ(後編)
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DIGITAL “SPOGLISH”(デジタル・スポグリッシュ)」でつくる 楽しく学びを続けるコミュニケーションのカタチ(後編)

リトプラ(旧社名:株式会社プレースホルダ)、セカンドプレイス、博報堂(現在は博報堂DYホールディングスに移管)の3社による、体験型の英語学習アトラクション「DIGITAL “SPOGLISH”(デジタル・スポグリッシュ)」。
前編に引き続き、実証実験に基づいて「子供が楽しんで遊んでいたらいつの間にか英語を覚えていた」を目指した大幅アップデートの内容や今後の可能性について、株式会社リトプラの森山哲也氏、株式会社セカンドプレイスの藤野素宏氏、博報堂DYホールディングスの木下陽介、名雲王治郎、黒羽健人の5人に解説してもらいました。

■子供がものごとに集中するための7ステップの独自フレームワークを作成

木下
前回は実証実験とそれを参考に実施した大幅アップデートについてお話しました。今回はアップデートの内容を検討する際の大きな軸となったフレームワークについて詳しく説明できればと思います。

黒羽
はい。今回のアップデートを行う際に、今までの研究成果やリトルプラネットでの子どもたちの観察に加えさまざまな先行研究の文献なども参考にした上で統合的に判断し、M.チクセントミハイというアメリカの心理学者が提唱する「フロー理論(*1)」を参考にし、「Edutainment Framework」という独自のフレームワークを作成しました。

<「フロー理論」を参考にした独自フレームワークと各実装済み機能・要素の対応>

*1 フロー理論:フローとは、いまその瞬間に取り組んでいることに完全に浸り精神的に集中している状態で、その状態に至るために必要な要素を理論化したものがフロー理論。「能力に対して適切な難易度もチャレンジが容易されているか」「即座にフィードバックが返ってくるか」など。
参照:『Finding Flow: The Psychology Of Engagement With Everyday Life』(Mihaly Csikszentmihalhi,1998)

「Edutainment Framework」に含まれる7つのステップについて、今回導入した機能に紐付けながら説明しますね。

最初の「①Fun」は、
今回のアトラクション全体のコンセプトである「ゲーム感覚でDIGITAL “SPOGLISH”」をプレイできるように、全体のゲームバランスを設計することを指しています。実は50ステージあるのでコンプリートは大変なのですが、そう思わせない設計を心がけています。
続く「②Cheer up」は、
親御さんはじめ周囲が子どもを応援、鼓舞することで、今回はアトラクションプレイ前に子どものステータスに応じて応援メッセージを出し分ける機能を実装しています。
「③Mirror」は、
スコアなど子どものプレイに対する結果をわかりやすく表示し、どのような結果だったかを正確に伝えるフェーズ。
さらに「④Feedback」では、
「③Mirror」で提示した結果を踏まえて、子どもに対して画面上でフィードバックメッセージを掲出しています。ポイントは、他人との比較ではなく、過去のその子どもと比べて伸びた部分や、好奇心を持ってアトラクションに挑戦したこと自体を称賛する設計にしたこと。それにより、子どもが「挑戦すること・続けること自体が良いこと」というマインドセットを獲得することを目指しています。

ここからはプレイが終わった後の話です。
「⑤Look Back」は、
子どもに振り返りを促すフェーズです。今回導入した英単語の復習機能、スマホでのプレイ回数・スコア表示機能などwebコンテンツの大半はここに該当します。この「⑤Look Back」は大切な部分で、特にリトルプラネットで間違えた英単語をweb上で復習できる「英単語復習機能」は、間違えた単語が発音され、3択で表示されている画像から正解を選ぶ仕組みです。これまでのDIGITAL SPOGLISHはその設計上どうしても「その場で遊んで終わり」だったのですが、折角抱いてくれた英語と運動への興味をその場で終わらせてしまうのは勿体無いですよね?そのため、英単語を楽しく復習できる、などリトルプラネットで抱いた興味を家などに持ち帰るような仕組みにしたんです。
そして「⑥Dialog」では、
子どもと親、子どもと別の他の子どもの対話を促すことを目指していて、5ステージをクリアするごとにマイページに挑戦した回数や獲得したスコアなどが表示される「プレイレポート」が該当します。
最後に「⑦Aim」
子どもが振り返りや対話を通して次への展望を持ったり目標を立てたりするフェーズで、次のステージで出題される英単語の発音などを事前に学習することができる「英単語予習機能」を導入しています。
「⑥Dialog」では他者との対話を通して、自分では気づくことができなかった視点を獲得し、子どもが人から学ぶ面白さを感じること、「⑦Aim」では「次はこうしてみようかな」という企みを持てるようになることを理想形として考えています。

このような、「①Fun」からはじまり「⑦Aim」で終わるサイクルの繰り返しが子どもの英語と運動の習慣化につながるということが、我々が作成した「Edutainment Framework」の主張です。

森山
また、振り返り(「⑤Look Back」~「⑦Aim」の部分)の要素として大きいのが、アップデートで導入した会員IDシステムです。リトルプラネットではこれまでゲストひとりひとりのデータ管理は行っていませんでしたが、今回のアップデートをきっかけに、NFC(近距離無線通信)タグを内蔵したリストバンド「シャリング」を開発し DIGITAL “SPOGLISH”が稼働する6パークで一斉導入しました。リストバンドをウェブと連携することで、ゲストごとにパーソナライズしたコンテンツを提供したり、ユーザーログからデータ活用をしたりと、リトルプラネット自体が今回のプロジェクトを機に一気に進化しています。ほかのアトラクションでもウェブ連携するコンテンツが増えつつあり、今後のさまざまな可能性にもつながっているのは大きいですね。

藤野
僕が普段spoglish GYMで実践している、子どもたちが心から学習や運動を楽しみ、自分の親ともその体験を共有したいと思い、親も子どもの様子を見て満足する…という循環を、デジタルコンテンツとしてもうまく導き出せるようにしていただけました。さらにその効果が実際にデータとして可視化されたことも非常に嬉しく思います。

木下
リトルプラネットのようなリアルなエンターテイメントパークで、継続的に学びの成果に関してID管理を行って学習成果を振り返り、またリアルの場に来てもらって学びもあるという取り組みは、他にないのではないでしょうか。いまはプレイデータが少しずつ貯まってきている状態なので、楽しみながら英語の学びを続けるのに重要な要素を更に分析しようとしている状況です。その分析結果から、また新たなコンテンツの改善や開発にフィードバックしていけたらと考えています。

■広告コミュニケーションにも活用できるコミュニケーションフレームワークをDIGITAL “SPOGLISH”で解明していく

木下
最後にそれぞれ、課題と思っていることや今後強化していきたい点などを教えてください。
藤野
今後は別の運動に幅を広げたり、英単語の文字をもっと見せていくなど、複数のバリエーションに展開していけたらいいなと思います。また、子どもたちが、本当に僕らが考えているような理屈に則って動いたり感じたりしてくれるのか、まだまだ大いに仮説の検証が必要だと思います。
僕がspoglish GYMを設立した大きな理由は、世界に出ていける、世界で戦える日本人をもっと増やしたいと思ったから。留学支援なども行っていますが、そうした方向性にもつなげていけるような展開を、今後リトプラ、博報堂DYホールディングスと連携しながら考えていけたらいいですね。
森山
我々としては、ここで取得したデータをどう活用していくかという点と、いまのコンテンツでは取得できていないデータをどう集めていくかという点に軸を置いて、これから検討していけたらと。リトルプラネット内でも、DIGITAL “SPOGLISH”はすでに非常に魅力的なコンテンツとして支持されています。さらにアトラクションをもっと増やして、ウェブ側のコンテンツも拡充していけるといいですね。

黒羽
子どもが本当に楽しんでいるのか、「GRIT(グリット)*2」のような、継続する力・習慣化する力が本当についているかなどを、親御さんはきっと確認したいと思います。ですから親子双方に向けて、正しく成果をフィードバックできるような方法を考えていきたいですね。もう一つは、ウェブサイトへのアクセスの改善。VRなどを活用してウェブサイトの方でも、先ほど申し上げた独自フレームワークでいう「①Fun」の要素をより感じてもらえるような仕掛けを増やしていきたいと思います。
*2 GRIT:「粘り強く最後までやり抜く力」などを意味する概念。ペンシルベニア大学のアンジェラ・リー・ダックワース氏がその重要性を指摘したことで知られる。
名雲
自宅でも楽しめるようなコンテンツにすることで、結果的にリトルプラネットに来る動機付けになるような仕掛けにできたらいいなと思います。またここに来たいと思ってもらえるような、モチベーション形成の機能をオンラインで強化できるようにできればと。それから、リトルプラネットの現地でもさらにUXを向上させたいです。何度も遊び続けられる子もいればすぐに離脱してしまう子もいるので、その原因や背景などがデータから分析できれば、初回の体験の改善などにも役立てることができるかもしれません。

木下
僕としても、今回のプロジェクトにはいくつもの発見がありました。コンテンツアトラクションのUI、UXをどう組み合わせれば子どもが能力を身につけたり継続したりすることにつなげられるのか、先ほど提唱させていただいた「楽しみながら継続的に学習をやり抜くフレームワーク」を精緻化して行きたいと思ってます。
広告においても、新しい製品やサービスについて伝えようとするとき、一方的なコミュニケーションに陥ってしまいそうになることがあります。その点、子どもが楽しみながら動いたり、使ったり、学んだりして、それが身につくまで続けていくという仕掛けは、広告コミュニケーション全般に大いに活用できる、汎用性の高いコミュニケーションフレームワークになると思うのです。その体系化と、コンテンツ体験の新しいフレームづくりを実現し、当社のほかの領域にも展開していけたらと思います。それから、オンラインとオフライン、送り手と受け手のインタラクションをいかに円滑にするかも大きなテーマです。たとえば子どもが言葉だけでは理解できなかったりすることを、非言語の表現も含めてどのようにやり取りすれば、しっかりと伝えていくことができるのか。このプロジェクトで手ごたえを感じた部分ではあるので、今後何かしらの形で世に出していけるといいなと思っています。

個人的に思うのは、このチームは思ったことを素直に言い合えるメンバーが揃っているということ(笑)。役割を超えて互いに忌憚なく意見を交わし合うことで、チームワークもますます強化されていっている印象です。各自の強みを結集させ、全員でエデュテイメントの実現という一つのテーマに向かって進めています。今後どういったことを生み出していけるか、期待していただきたいです。

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・クリエイティブ・テクノロジーを用いた広告制作のこれから ~Creative Technology Lab beatの活動紹介~(アドバタイジングウィーク・アジア2022 博報堂DYグループセミナーレポート)
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  • 森山 哲也
    森山 哲也
    株式会社リトプラ(旧社名:株式会社プレースホルダ) リトルプラネット法人事業統括
    設計事務所勤務を経て2010年に一級建築士事務所として独立。
    期間限定パークである「リトルプラネット ららぽーと立川立飛」の設計を手がけたことをきっかけに2018年株式会社プレースホルダ(現:リトプラ)に入社。空間デザイン責任者として全パークの設計を担当。
    2019年から法人向けの空間演出プロジェクトなどを手掛け、2020年に空間演出事業を立ち上げ。
    キッズスペースやファミリー空間のプロデュースをはじめプロジェクトマネージャーとして多数のプロジェクトを担当。2022年より法人部門を統合し現職に。
  • 藤野 素宏
    藤野 素宏
    株式会社セカンドプレイス 代表取締役
    幼少期の7年間を米国で過ごし、様々なスポーツに熱中しながら自然と英語を身に付け、帰国後は一貫してバスケットボールに取り組む。早稲田大学卒業後、NBAでプレーすることを目指し単身渡米し、米国独立プロリーグABAにてプレー。怪我を機に現役引退し、2007年、株式会社博報堂に入社。グローバル企業の各種広告制作・イベントプロデュース業務等に従事する。2013年、同社退職後、株式会社second placeを設立、代表取締役社長に就任。“世界で戦える人を、日本から”を理念に、”運動型”英語学習プログラム「spoglish(スポグリッシュ)」を独自開発。2014 年より東京都杉並区にて英語で教える運動塾「spoglish GYM」を運営。その他イベント事業、教材開発、海外スポーツ留学支援事業などを手がける。
  • 博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター 室長代理/研究開発1グループ グループマネージャー/チーフテクノロジスト
    2002年博報堂入社。以来、マーケティング職・コンサルタント職として、自動車、金融、医薬、スポーツ、ゲームなど業種のコミュニケーション戦略、ブランド戦略、保険、通信でのダイレクトビジネス戦略の立案や新規事業開発に携わる。
    2010年より現職で、現在データ・デジタルマーケティングに関わるソリューション開発に携わり、生活者データをベースにしたマーケティングソリューション開発、得意先導入PDCA業務を担当。2016年よりAI領域、XR領域の技術を活用したサービスプロダクト開発、ユースケースプロトタイププロジェクトを複数推進、テクノロジーベンチャープレイヤーとのアライアンスを担当。また、コンテンツ起点のビジネス設計支援チーム「コンテンツビジネスラボ」のリーダーとして、特にスポーツ・音楽を中心としたコンテンツビジネスの専門家として活動中。
    2022年1月にAI技術などのテクノロジー活用により「審美」の量的・質的効果を追求する基礎研究や応用研究を産学連携で推進。加えて研究成果に基づくプロトタイプの開発や、それを活用したクリエイティブ制作における新しいワークスタイルの研究・開発を進めていく研究開発組織 「Creative technology lab beat」のリーダー、グループ横断のプロジェクトhakuhodo-XRのサブリーダーを務める。
  • 博報堂DYホールディングス
    マーケティング・テクノロジー・センター 研究開発3グループ
    テクノロジスト
    2015年博報堂入社。営業職およびストラテジックプランニング職として、データサイエンスを活用した統合メディアプラニングの推進やマス・デジタルメディアのプラニング・運用、およびブランド戦略立案やクリエイティブ制作推進などに幅広く従事。
    2018年より博報堂DYホールディングスに出向し、現職。マーケティングプラニングフレームワーク研究やAI活用領域のプロダクト開発業務の経験を経て、メディアプラニング領域のロジック開発やそれを活用したソリューション開発およびプロダクトマネジメント、コミュニケーション効果測定領域研究やメディア評価研究などを担当。
  • 博報堂DYホールディングス
    マーケティング・テクノロジー・センター 研究開発1グループ
    テクノロジスト
    2018年博報堂DYメディアパートナーズ入社。博報堂DYメディアパートナーズおよび博報堂にてマーケティング職として自動車、Jリーグ、教育、toC向けアプリなどのデータマーケティング戦略・施策立案を担当。並行してメディア、教育、コミュニティ分野の新規事業開発にも携わる。
    2021年より博報堂DYホールディングスに出向し、現職。
    テクノロジストとして、web3.0、edtech、コミュニティテック領域のサービスプロダクト開発、スタートアップとの共同プロトタイプ開発やリサーチを行っている。