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「バナー」という枠の中で広告の価値を最大化する──デジタル広告のクリエイティブに特化した新しいソリューション「Rich Creative Promotion Service」
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「バナー」という枠の中で広告の価値を最大化する──デジタル広告のクリエイティブに特化した新しいソリューション「Rich Creative Promotion Service」

個人情報保護のルールが厳格化し、Cookieの活用が制限されるようになり、従来のようなターゲティング配信は今後、難しくなっていきます。また、コンテンツの中に表示されるデジタル広告をネガティブに捉える生活者も少なからずいます。そのような中でデジタル広告の価値を上げていくにはどうすればいいか──。このような課題意識から生まれたのが、デジタル広告のクリエイティブに特化したソリューション「Rich Creative Promotion Service」です。
このソリューションの企画・開発に携わった3人に話を聞きました。

今栄 牧人
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)

滝沢 涼介
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)

長浜 達也
博報堂アイ・スタジオ

デジタル広告の課題をクリエイティブとデータで解決する

──Rich Creative Promotion Service(以下、RCPS)とはどのようなソリューションなのか、まずはその概要をご説明ください。

今栄
RCPSは、Googleが提供する「ディスプレイ&ビデオ 360」や「Google Web Designer」といったクリエイティブツールを活用してデジタル広告の効果を向上させるソリューションです。何よりも、クリエイティブを軸にしている点にこのソリューションの大きな特徴があります。

近年、デジタルチャネルが多様化し、生活者と広告のタッチポイントが非常に増えています。広告情報が膨大になっている分、広告の1インプレッション当たりの価値が相対的に低下しているのが実情です。また、個人情報保護のルールが厳格化し、Cookieや3rd Party Dataの活用が制限されるようになっており、これまでのようなターゲティング配信が難しくなりつつあります。

その中で、広告効果を向上させるにはどうすればいいか──。解決策の一つとして私たちが着目したのがクリエイティブです。クリエイティブに特化した配信手法を新たに生み出し、デジタル広告の価値をこれまで以上に上げていくことを目指して開発したのがRCPSです。

長浜
デジタル広告にはいろいろな要素がありますが、その中でもクリエイティブは広告効果へ非常に大きな影響を与えると言われています。広告効果の50%以上はクリエイティブによってもたらされるという調査結果もあるほどで、生活者の多くはクリエイティブによって購買などの判断をしているということです。そういった点が、RCPSの開発にあたってクリエイティブに着目した理由です。
滝沢
RCPSの特徴は、バナー広告というこれまでもあった枠の中で、これまでになかった表現を実現できる点にあります。その表現方法や手法が生活者の興味を引くだけでなく、アクションを誘発したり、企業のブランドの好感度を向上させたりすることも可能であると考えています。

──RCPSのソリューション開発に着手したのはいつ頃だったのですか。

今栄
2021年4月頃ですね。私と滝沢は、DACでGoogleのプロダクトを担当しています。クライアントの課題を解決するにあたってGoogleのツールを活用することは非常に有効なのですが、そのことがあまり知られていないという実情に直面していました。

「クライアント課題の解決のためにはGoogleのツール活用が有効である」ということの認知促進と、先ほどお話しした広告の課題を合わせて解決する方法が、Googleのツールによって新しいクリエイティブ手法を生み出すということだったわけです。私たちは、広告配信に関する専門的なノウハウがありますが、クリエイターではありません。そこで、同じ博報堂DYグループの企業であり、デジタルクリエイティブの専門知識をもった博報堂アイ・スタジオと一緒に新しいソリューションをつくろうと考えました。それが2021年4月のことでした。

長浜
博報堂アイ・スタジオの専門領域はクリエイティブを強みにしたデジタル中心の企画制作ですが、プロジェクトをマネジメントするノウハウもあります。DACと博報堂アイ・スタジオの強みを持ち寄り、様々な企画や制作のプロジェクトマネジメントのノウハウを活かし、比較的短期間でソリューションの企画からリリースまで行いました。対外的に発表したのは、2021年9月です。

生活者に新たな体験をもたらすバナー広告

──一連のRCPSのプロダクトはこれまで3回リリースされています。それぞれについて説明していただけますか。

滝沢
第一弾は「RICH CREATIVE」です。これは名前の通り、バナー広告でこれまでにないリッチな表現を実現するツールです。例えば、生活者がバナー内の画像をスライドさせることで複数のクリエイティブを表示させる機能、スクロールするごとに表現が変わる機能、ビールの泡のような質感を表現する機能、自動的に画像が遷移していく機能などがあります。

(デモ画面はこちら

──広告枠には動画広告を掲出することも可能ですが、「RICH CREATIVE」と動画広告との違いはどこにあるのでしょうか。

長浜
大きな違いは、ユーザー体験(UX)とインタラクティブ性だと考えています。これまでのバナー広告は、静止画にせよ動画にせよ、生活者が行うアクションはクリックだけでした。それに対し、RCPSには生活者自身がスライドやスクロールというアクションによってクリエイティブを変化させられる機能があります。それが生活者にとって新しい体験となるだけでなく、そのアクションデータを分析して、クリエイティブのブラッシュアップを図ることやより的確なPDCAの運用も可能です。
今栄
もう一つはコスト面ですね。動画広告を制作するにはどうしてもコストがかかりますが、RCPSのクリエイティブは静止画の組み合わせなので制作費を抑えることができます。コストを抑えつつ効果を最大化するソリューションと言えます。

──第2弾のプロダクトが「Q&A CREATIVE」ですね。

滝沢
「Q&A CREATIVE」は、生活者とのインタラクティブなコミュニケーションによって最適な情報の訴求を実現するツールです。フォーマットは3つあります。
1つ目は、2択の設問を用意し、生活者がそのどちらかを選択することで、選択結果に応じたランディングページに誘導するものです。
2つ目は、クイズ形式で問題に答えてもらうもので、より生活者の興味を引きやすいフォーマットです。
そして3つ目は、チャット形式で対話をするフォーマットです。すべてのコミュニケーションは、1つのバナーの枠内で完結する設計になっています。

今栄
このツールは、複数の商材、もしくは1つの商材の複数の用途を訴求したい場合に使えるほか、生活者のアクションによって潜在的ニーズを掘り起こしていくといった使い方もできます。
滝沢
例えば、「旅行に行きたいけれど行き先が決まっていない」という生活者に、興味がある土地や食べ物、同行者などの質問を投げかけて、その回答に合った旅行先を提案する方法です。この機能は、モニタリング調査に活用することも可能です。

長浜
回答後に遷移するランディングページも、回答内容に合わせています。これまでは多くの場合、バナー広告をクリックした後で広告用ランディングページに移り、そこでさらに商品やサービスの情報を閲覧したり、商品を選択したりする必要がありました。そのプロセスを省き、生活者の主体的選択に合ったページへダイレクトにアクセスするつくりになっています。
今栄
生活者へのメリットが、目的、ニーズ、好みに合った情報へ直接到達できるということになります。これにより、ランディングページでのコンバージョン率の向上が期待できます。バナー広告によって生活者の遷移先を仕分けることで、コンバージョン率を上げる手法になります。

「モーメント」に合わせたターゲティングを実現

──最新のプロダクトが第3弾の「MOMENT CREATIVE」ですね。

滝沢
広告を見ている生活者の状況に合わせてターゲティング配信を行うことができるのが「MOMENT CREATIVE」です。例えば、天気、気温、位置などの情報をリアルタイムで取得し、それに合わせたクリエイティブを配信することができます。
今栄
Cookieや3rd Party Dataを使ったセグメンテーションが難しくなりつつある中、外部データを使って個々の生活者に合った情報を届けるというのが、「MOMENT CREATIVE」の考え方です。活用できるデータはAPIに代表されるような、天気、気温、位置のほかに、湿度、花粉の量などです。外部から連携できるデータはすべて使えると考えていただいて問題ありません。

滝沢
ほかに、商品の在庫データとリアルタイムに連動し、在庫がある商品の情報だけを配信するといった方法も可能です。
長浜
配信するクリエイティブは、要素を部分的に組み替えていく設計になっているので、大量のクリエイティブを用意する必要がないというのも、このツールの特徴です。

──それぞれのツールは、どのような商材、どのようなクライアントニーズに合致すると考えられますか。

今栄
「RICH CREATIVE」は静止画バナーよりも視認性が高く、興味関心を引きやすいので、ブランディング向きであると考えています。また、スワイプなどのアクションを誘発するつくりになっているので、より高いコンバージョン率を目指したい案件に合致します。
長浜
「Q&A CREATIVE」は、多様な商材を展開しているクライアント向きですね。例えば自動車のように価格帯や性能、デザインにバリエーションがあるラインアップから、Q&Aを通じてより生活者のニーズに合ったものを選択してもらうといった活用法が考えられます。
滝沢
「MOMENT CREATIVE」は、飲料のように天気や気温によってニーズが変わる商品や、リアル店舗と連動したキャンペーンなどで特に力を発揮すると考えています。

──今後も新しいプロダクトをリリースしていく予定ですか。

今栄
現在構想しているのは、クライアントの1st Party DataをAIで学習し、セグメンテーションを行うツールです。例えば、「LTV(生涯顧客価値)の高い生活者」というセグメントを設定し、それに対する最適なクリエイティブを配信していく機能を実現させたいと考えています。
長浜
ほかにも、「MOMENT CREATIVE」の機能を拡張させて、オフラインで開催されているイベントやリアル店舗の情報を、広告にリアルタイムで反映させるといった方法も構想中です。パッケージプロダクトの数を増やすだけでなく、それぞれのプロダクトの機能をより深化、拡張させていきたいですね。

制作、配信、分析までのサービスをワンストップで提供する

──このソリューションがクライアント、生活者双方にもたらす価値をあらためて整理していただけますか。

今栄
クライアントメリットは、何よりもバナーという限られた枠の中でいろいろな訴求ができるということですね。多様な手法を選ぶことができるので、テストマーケティングのような使い方も可能で、かつコストをある程度抑えることができます。
長浜
制作から配信、分析までのサービスをワンストップでご提供できるのも、このソリューションの価値と言っていいと思います。分析の結果を受けてクリエイティブをブラッシュアップし、広告効果をより向上させていくといった取り組みも支援させていただきます。

滝沢
生活者の視点で見ると、必要とする情報へ短時間で到達できるというメリットがあります。これまでバナーなどのデジタル広告は、「邪魔なもの」と受け止められることも少なくありませんでした。それに対し、RCPSは「役に立つ広告」の配信を可能にするソリューションと言っていいでしょう。

──最後に、今後のビジョンをお聞かせください。

長浜
これまでデジタル領域でのクリエイティブを起点としたクリエイティブデイレクションやマーケティングソリューション開発に携わってきた一人として、クリエイティブ起点でデジタルマーケティングを推進していきたいという思いがあります。その一つに、RCPSをほかのデジタル広告の領域やオフラインと連携させて、クリエイティブを軸とした一気通貫のプランニングを実行していきたいですね。それらの取り組みを通して、DACと博報堂アイ・スタジオの両社のビジネス価値を向上させることで、クライアント企業の「ブランド創造」や「顧客創造」に貢献をしていきたいと考えております。
今栄
RCPSはGoogleのツールを活用したソリューションです。Googleのツールには、クライアント課題を解決し、生活者のニーズを満たしていくことができるさまざまな機能があります。その機能を最大限にいかしながら、クライアントと生活者に提供できるメリットをより大きくしていきたいと考えています。
滝沢
RCPSには、通常のバナー広告よりも取得できるデータが多いという大きな特徴があります。そのデータを分析し、価値に変えていくことに注力したいと思っています。その取り組みによって、経験や勘に頼らないクリエイティブや広告配信を実現すること。それがこれからの目標です。

<クリエイティブの動きはこちらをご確認ください>

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  • デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)
    メディアソリューション本部 メディア戦略局 メディアDX推進部
    博報堂DYデジタルに2018年中途入社。Googleプロダクト(GMP,GCP,ADH)を中心としたプロダクトサポートやCDPを活用した分析までデジタルマーケティングに従事。
  • デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)
    メディアソリューション本部 メディア戦略局 メディアDX推進部
    2021年DAC新卒入社。Googleのソリューション領域を担当。Googleの広告配信データ等を活用したデータ分析などデジタルマーケティング支援に取り組んでいる。
  • 株式会社博報堂アイ・スタジオ
    クリエイティブプロダクションセンター デイレクションユニット
    2020年に博報堂アイ・スタジオ入社。ディレクターとしてデジタルクリエイティブの制作を経験。
    現在は制作領域に留まらず、RCPSをはじめとしたクリエイティブ起点のマーケティングソリューション開発も行う。