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CES2020 速報レポート前編 「Intelligence of Things:AI実用化と各社が示す次の未来のコンセプト」
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CES2020 速報レポート前編 「Intelligence of Things:AI実用化と各社が示す次の未来のコンセプト」

年初恒例のCESに来ています。もはや説明不要ですが、CESはその年のテクノロジートレンドを示す世界最大規模のテックカンファレンス。今年で53回目となり、1/7-10の会期で4,500社の出展、17万人の来場者、スタートアップ1,200社が参加予定と発表されています。

今年も昨年に続き、AIと5GがCESのキーワードのようです。CTA(Consumer Technology Association)のGary Shapiro氏も「5G時代、データ時代をAIがリードする」と初日から宣言し、始まりました。

米国の背景を少し触れておくと、米中貿易摩擦の影響が大きいのか、Alibaba、Tencentなどの中国IT企業が不参加。他にも、CES出展を取りやめている中国企業も多いようです。決して中国が世界のテクノロジートレンドから外れたわけではなく、中国のテクノロジーやAIの進化が脅威として注目されていると解釈すべきでしょう。
もう1つは2020年1月から施行されたCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)です。GDPRやFacebook問題など、以前からプライバシー重視の流れはありましたが、一層重視されるようになり、CESではAppleやFacebookのプライバシー担当者によるセミナーも開催されました。多くのセッションでも、前提としてテクノロジーとデータのプライバシーがセットで議論されています。

他にも、デジタルヘルスやIoTといったテクノロジーセクター以外に、今年から未来の働き方(Future of Work)、ダイバーシティやインクルージョンといった社会テーマもCESが重視するようになってきているのが特徴です。テクノロジーのもたらす価値を社会貢献にもと、CTAは世界銀行とパートナーシップを提携し、Global Tech ChallengeというプログラムをCES2020にてローンチしました。

日系企業の出展も今年は多いです。トヨタ自動車が2年ぶりに、NTT、アシックス、SOMPOひまわり生命、ブリヂストンなどが、CES初出展しています。

まだ初日が終わった段階なので、CTAが冒頭に開催するセッション(CES2020 Trends to Watch)とキーノートを中心に紹介します。

※昨年のCESについては、こちらをご参照ください。
CES2019速報レポート前編 
CES2019速報レポート後編 

IoTは、モノの接続から、AIによるIntelligence of Thingsへ。

CTAのSteve Koening氏によると、「CESはIoTにいち早く注目してきたが、これからはデータ、AI、5Gのテクノロジー進化によって、モノがつながるIoTから、AIによって生活者にとって意味、価値のある確実に新しいステージのIoTに突入する」と説明していました。

5Gは、単体のIoTの接続ではなく、企業のビジネス全体やインダストリーを超えたエコシステムによって、AIはAIスピーカーや様々なデバイス、サービスに搭載され、それらを通じて生活者にとって本当に価値のあるサービスとして普及、推進されると解説。

もう1つは、NETFLIXに代表されるSVOD(Subscription Video on Demand)の急成長です。CESは3年前からC Spaceというコンテンツビジネスゾーンも設置しました。メイン会場のLVCCやVenetianと比べると小規模ですがこれだけ前面に取り上げるのは初めてではないでしょうか。昨年末からDisney+、Apple tv+も始まり、2020年にサービスイン予定のQuibiとNBC Universalが開始するPeacockの2社がキーノートに登場しました。Quibiは元ドリームワークスCEOのJeffrey Katzenberg氏と元HP CEOのMeg Whitmanがリードするミレニアル向けのモバイル特化型10分未満の短尺動画サービスを月額$5~開始予定。TikTokもそうですが、多様な動画フォーマットやビジネスモデルのメディアサービス競争がますます激しくなるでしょう。

各社が示す次の未来のコンセプト

プレスカンファレンス、キーノートでは、どのグローバル企業も、以前に発表したコンセプトからプロダクトのリアル化、また次の未来のコンセプトを示す形で、次の方向に向けた動きを始めているように感じました。

オープニングキーノートにはSamsung CEOのHyun-Suk Kim氏が登壇し、”Age of Experience”と題して生活者中心のエクスペリエンス、モーメントを提供していくと説明し、今まで以上にライフスタイル寄りのコンセプトに大きくシフト。ライフコンパニオン型ロボットのBallie、ARフィットネスができるグラスとボディ装着型のGEMS(Gait Enhancing & Motivating System)、これらをTechnology for Goodとして活用していくエコシステム、若者向けのAI・IoT・Cloudテクノロジーの教育プログラムとしてSamsung Innovation Campusを提供し、よりよい社会の構築を発表しました。

Daimlerは、James Cameron監督の映画アバターのチームと提携し、VISION AVTRという未来型コンセプトカーを発表。ヒューマン・マシーンの関係性を考える上で、コネクテッド領域の進化は、インターフェースが鍵になり、人間の呼吸や行動、感情を理解するBiometric Connectionを今後搭載していくようになるだろうと説明。歴史上、自動車は個人の移動の自由を生み出したが、これをイノベーションする時代に来ている。テクノロジーによってつくられる未来ではなく、我々自身が求める本質的な未来がどうあるべきかという考えに基づき、人間や自然と融合するサステイナビリティが重要だと指摘。モダンラグジュアリーから、サステイナビリティ・ラグジュアリーをDaimlerは目指すと次の方向性を指し示していました。

デルタ航空のCEOのEd Bastian氏が登壇。一見CESと関係が薄いように思われる航空会社も、デジタルへの投資を強化し、ユーザーの旅体験をさらに進化させることを表明していました。生活者にフォーカスして、テクノロジーを用いた未来の旅行のあり方(Future of Travel)を実現するビジョンをキーノートで紹介。
デルタ航空のアプリを旅の総合コンシェルジュとして全体UXを進化させる構想。将来的には空港までの移動手段の提案や、預け入れ荷物の宿泊ホテル輸送サービスを提供できるようになるそうです。他にも、Lyft社と提携してマルチモーダルの実現や、マイレージを通貨として支払い可能にするPay with Milesのプログラム。特に印象に残ったのは「パーソナライズされた空港内での体験」への投資。Misapplied Sciences社と提携し、PARALLEL REALITY TECHNOLOGYによる一人ひとりに合わせたパーソナライズサイネージを2020年夏からデトロイトの空港にて展開する予定。ユーザーが裸眼で同じサイネージを見たときに、自分だけの情報が見えるようになる、というもの。単なるカスタマージャーニーの改善に止まらない将来ビジョンを会場に示していました。

トヨタは豊田社長自らが2年ぶりに登壇し、当時発表したe-Paletteのコンセプトを進化させ、人、車、センサー、テクノロジー、データを全てコネクテッドにして実現する「Woven City」をリアルに富士山麓の都市で二千人規模の人を住まわせて実現していくと宣言。*Woven(編み込む)=トヨタ自動車の前身である豊田自動織機の歴史にかけている模様。トヨタもDaimlerも、自動運転がいつ実現するか、自動運転の技術についての説明は一切ありませんでした。自動運転は、ビジネスとして実現される時間軸がまだ先であり、それよりも重要なことが社会やサステイナビリティの領域だと各社が認識し、具体的なアクションに取り組み始めているのだと思います。

P&Gは、昨年に続いて今年もP&G Life Labを中心にした形で参加していました。昨年発表した様々なテクノロジーデバイス、サブスクリプションモデルを更に進化させていました。新しいものでは、パンパースブランドによるIoTデバイスLumiは、おむつについたセンサーと小型カメラを連動させて、赤ちゃんの睡眠時間・おむつの交換のタイミングなどをアプリを通じて通知。さらに、一定期間データを貯めることで、赤ちゃん個人の傾向を分析することもできる。昨年発表したHeated Razor, Opte(インクジェットプリンター的なファンデーション塗布の最適化型デバイス)も実売レベルに完成度を上げ、今年はオンライン受注開始まで持って来ています。単なる実証実験に終わらせず、着実な継続進化をCESの場で示していました。

どの企業も、コンセプトからリアル化へ、また次の未来のコンセプトを提示することを、単なる概念にとどまらず、生活者レベルの実装レベルで具体的に取り組み始めている動きや、テクノロジーの生活レベルへの浸透によって、要求水準の高いユーザーにとっても納得のクオリティのものがぐっと増えてきているなというのが今年のトレンドとして感じています。

他にも、ソニーもプレスカンファレンスで、注目されていたプレステ5の情報発表だけでなく、VISION-Sというソニーの最新技術やイメージセンサー、エンターテインメント技術を搭載したコンセプトカー(実走可能とのこと)を公開しました。
SamsungのSTAR Labというプロジェクト傘下にNEONというのがあり、 CES開催前から話題だったのですが、高精度なAIによるバーチャルヒューマン、デジタルアバタープロジェクトのようなものもありました。
また、昨年CESに登場した、代替肉を提供するImpossible Foodsも、今年は人工の豚肉を発表したり、これらのフードテックやヘルスケア、ビューティテック、リテールテック、ロボティクスでも新しい動きがでてきているようなので、企業各社が指し示す未来の方向性と、実際のテクノロジーがどうなっているか、実際に現地で確かめて、後編の記事でまたご紹介できればと思います。

後編はこちら

  • 博報堂 CMP推進局 局長代理
    博報堂のフィロソフィーである生活者発想を軸に、デジタルやデータを活用したマーケティング領域の戦略プランニング、マネジメント、事業開発、イノベーション、グローバル展開を担当。自動車、IT、精密機器、エレクトロニクス、EC、化粧品業界を中心に、デジタルシフト、データ分析、DMP活用、データ基盤構築、組織開発など、マーケティングの高度化を支援。中国駐在経験もあり、アジア、中国、インドの海外業務やテクノロジー動向にも精通。海外広告賞審査員も行う。
  • 博報堂 CMP推進局 第一グローバルグループ
    2013年入社後、トイレタリー・化粧品・食品・OTCなど消費財領域を中心にマーケティング戦略立案を担当。現在はグローバル領域における企業のデータマーケティング支援、およびコマース領域の事業・ソリューションの研究開発に取り組む。