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CES2020速報レポート後編 「イノベーションの本質は、テクノロジーにとどまらない生活者と社会への価値創出」
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CES2020速報レポート後編 「イノベーションの本質は、テクノロジーにとどまらない生活者と社会への価値創出」

今年のCESも4日間の日程が終了しました。レポート前編に続き、後編ではCES全体を通じて印象に残ったトピックスをご紹介します。

【トピックス】

・ビジネスモデルの転換を見据えた各社の動き
・ヘルスケア×テック領域の出展が増加
・パーソナライズ化が進むビューティー×テック領域
・フードテックの未来:植物性代替肉は定着するのか?
・まとめ:イノベーションの本質は、テクノロジーにとどまらない生活者と社会への価値創出

【ビジネスモデルの転換を見据えた各社の動き】

自動車メーカー各社のMaaS(Mobility as a Service)を見据えたコンセプトモデルの発表や、トヨタ自動車のスマートシティ建設の発表などビジネスモデルの転換を前提とした動きが見られるようになってきています。
消費財においてもそれは例外ではなく、前編でもご紹介したP&GのLife Labでは「ハードウェア+付属品モデル」の商品が登場していました。
「コネクテッドケアシステム」と銘打たれたLumi by Pampersは、おむつに装着するセンサー、モニタリングカメラ、専用おむつのセットを349ドルで販売。センサーとカメラの組み合わせで赤ちゃんのおむつ交換のタイミング、睡眠のタイミングをトラッキングし、アプリに記録されるようになっています。専用おむつは60ドル弱で6パック分が届くようになっているそうです。

(コネクテッドケアシステムのLumi by Pampers。緑色のセンサーとカメラが赤ちゃんの睡眠やおむつ交換のタイミングをモニタリングする)

IoTルームフレグランスのAiriaは、香りの強さや作動する時間を制御できる商品ですが、こちらも249ドルの本体+49ドルのカートリッジを販売するビジネスモデルとなっています。

(IoTルームフレグランスのAiria)

また、前編でご紹介したOpteや、同社の電動歯ブラシOral-Bも本体+付属品交換型の商品です。P&Gがこれからの消費財ビジネスモデルとして取り入れようとしていることが伺えるラインナップでした。

【ヘルスケア×テック領域の出展が増加】

今回はヘルスケア×テックが展示会場の一画を占め、強い存在感を放っていました。中でも特に、「スリープテック」に関する商品が多いと感じました。Philips社からは深睡眠の質を高めることで、短時間の睡眠でも日中の眠気を軽減することができる「ディープスリープヘッドバンド」という商品が発売されていた他、仰向けに寝ることにより発生するいびきをへらすための「スノアリングリリーフバンド」という商品も注目を集めていました。(お腹まわりにまいたバンドが振動を送ることにより、寝返りを打たせていびきを軽減するという商品のようです。)

(Philipsの「Smartsleepディープスリープヘッドバンド」。深睡眠の質を高め、日中の眠気を軽減する)

その他スリープテックまわりでは、一人ひとりの好みや睡眠サイクルに合わせてベッドの温度をコントロールするスマートベッド、Sleep Number Climate360という商品も注目を集めていました。眠りにつくまでは足元を温め眠りにつきやすくし、深い睡眠の時は温度を下げる、といった細かい温度調節が可能なベッドです。
ヘルスケア区画では、妊娠中・産後の女性向けのIoTデバイスもいくつか気になるものがありました。フェムテック、ベビーテックと呼ばれることもあるようです。
CES2017で初登場したウェアラブル搾乳機のWillowは下着の中に機器を入れた状態で搾乳できる商品で、すでに第3世代の製品が登場しているそうです。ひと目を気にせず搾乳できて、アプリで搾乳した量も管理できるとのこと。妊娠出産に伴う様々な身体的制限から開放するためのテクノロジー活用は現代の女性にとっては喜ばしいことではないでしょうか。

(Willowのウェアラブル搾乳機。実際に着用しながらマラソンを完走した女性の写真も)

ベビーケア・ベビーモニタリングシステムを提供するOwletは、赤ちゃんの足に装着するバンドを通じて赤ちゃんの心拍数や酸素濃度できる「スマートソック」、妊娠中に胎児の心拍を測定できる「スマートバンド」などの商品を提供しています。CES2020では、新たにDream LabというオンラインサービスでInnovation Award Honoreeを受賞したそうです。こちらのサービスでは、睡眠のエキスパートが、ユーザーの赤ちゃんが夜の間中眠ることができるように分析、解決策を提供してくれるとのことです。
ヘルスケアの中でも、スリープテック、フェムテック、ベビーテックはこれまで一人ひとりの悩みに対して詳細に分析して科学的に解決するというアプローチがされてこなかった部分であり、テクノロジーの発達によってそれが可能になった今、更に伸びていく領域ではないかと感じました。

【パーソナライズ化が進むビューティー×テック領域】

ビューティー×テック領域では、画像認識による肌診断やARメイクトライオンを提供するPerfect社がセミナーを開催しました。Youcamメイクというメイクアップアプリから始まった同社ですが、その画像認識技術を応用し現在はEstee LauderやNeutrogenaなど各社との協業を進めています。Estee Lauder社では各種メイク品のARトライオンサービスを提供している他、Neutrogena社とはNeutrogena360という肌診断+最適なスキンケアルーティーンのレコメンデーションを行うアプリをつい先日リリースしたばかりとのことです。
将来的には、Perfect社の技術を使ってオンライン、店頭、ソーシャルとあらゆるタッチポイントで一貫したレコメンデーションを提供できるようにすることが目標であると話していました。
他、Hi Mirror社やLululab社といった企業がスマートミラーを開発していて、画像による肌診断からスキンケア品をレコメンドするという流れがスタンダード化してきていると感じます。
日本国内でも、パーソナライズスキンケアサービスが登場し話題になっていますが、CES会期中にもL’Oreal社が新製品Persoを発表し大きな話題となりました。こちらも、以前話題になった製品と同じく「スマートフォンで顔を撮影すると、その日の肌状態に合わせて最適なスキンケアを調合する」、というものですが、スキンケア品だけでなくファンデーションやリップメイクにも対応しているというのが新しいポイントです。
また、各国のスタートアップ展示エリアにもパーソナライズスキンケアのハードウェアがありました。ロクシタングループのスタートアップDuolab社の製品は、自分の肌の状態に最適化されたスキンケア品を調合し、最も効果を発揮しやすい温度にまで温めることができるそうです。また、都度新しいカプセルを使用するため保存料不使用で提供できることに加えて、カプセルにより排出されるごみはリサイクル事業者とパートナーシップを組み、封筒に入れるだけでリサイクルできるようにするとのことで、ユーザーが継続利用しやすい仕組みまで設計されていると感じました。

左上:(Duolabのデバイス本体。) 左下:(Duolab専用のカプセル。一度に二種類を組み合わせて使用する。) 右:(リサイクル事業者のTerracycleと提携し、使用済カプセルをリサイクルできる封筒。)

【フードテックの未来:植物性代替肉は定着するのか?】

環境問題が世界で注目される中、植物性代替肉を開発するスタートアップが次々と現れています。
今回もImpossible Foodsが出展し、代替肉を使ったサンドイッチを提供していました。Impossible 2.0として、新商品のImpossible PorkとImpossible Burger(Beef)を試食しました。肉の再現度が高いと聞いてはいたものの、大豆ミートのような風味の違和感が全くなく、ほとんど本物の肉に近い味でいい意味で予想を裏切られました。

左:(Impossible Foods:会場ブースで試食したポーク・豚肉。) 右:(Impossible Foods:会場ブースで試食したビーフ・牛肉。)

Impossible Foodsのパティを使用した商品をBurger Kingが販売しているとのことで、滞在中にこちらも食べてみることができました。看板商品のWhopperの代替肉版、Impossible Whopperです。こちらも何も言われずに渡されたら、代替肉と気づくことなく食べきってしまいそうな仕上がりです。強いて言うならば、食べ終わったあとの満腹感が本当の肉と比較して少ないように感じましたが、ほぼ違いがわからないレベルにまで到達しています。ちなみに、通常のWhopper660キロカロリーに対して、Impossible Whopperは630キロカロリー。味の再現度を追求している分、特に低カロリーではないようです。

(Burger King, Impossible Whooper)

食肉による環境問題の解決を目指しながら、ヴィーガンの人だけでなく、宗教上の制約で特定の種類の肉が食べられない人に対しても選択肢を与えてくれる代替肉。ある人の話によると、制限を必要とするマーケットよりも、よりエシカルな意識が高い人が増えてきており、通常の食肉も食べながらハンバーガーの時は代替肉を選ぶなど、普通のスーパーにも競合のビヨンドミート社の製品も販売されており、アメリカではかなり市場が伸びているようです。今後どれだけ広がっていくのか引き続き注目していきたいと思います。

  • 博報堂 CMP推進局 第一グローバルグループ
    2013年入社後、トイレタリー・化粧品・食品・OTCなど消費財領域を中心にマーケティング戦略立案を担当。現在はグローバル領域における企業のデータマーケティング支援、およびコマース領域の事業・ソリューションの研究開発に取り組む。
  • 博報堂 CMP推進局 局長代理
    博報堂のフィロソフィーである生活者発想を軸に、デジタルやデータを活用したマーケティング領域の戦略プランニング、マネジメント、事業開発、イノベーション、グローバル展開を担当。自動車、IT、精密機器、エレクトロニクス、EC、化粧品業界を中心に、デジタルシフト、データ分析、DMP活用、データ基盤構築、組織開発など、マーケティングの高度化を支援。中国駐在経験もあり、アジア、中国、インドの海外業務やテクノロジー動向にも精通。海外広告賞審査員も行う。