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日本のEC化がもたらすマーケティングの変化と、博報堂のECコンサルティング
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日本のEC化がもたらすマーケティングの変化と、博報堂のECコンサルティング

日本のEC市場が急激に拡大しています。それに伴ってECモールを“販路”としてだけでなく、マーケティングのための“プラットフォーム”として捉えることの重要性が高まっています。
博報堂はこうした変化に対応するため、2019年4月にECコンサルティング部を設立するなど、クライアントのEC化をサポートする体制を強化しています。クライアントはEC化を進める上でどんなことに悩んでおり、博報堂はそれをどのようにサポート出来るのでしょうか。博報堂ECコンサルティング部の桑嶋剛史がご説明します。

博報堂ECコンサルティング部の桑嶋です。2015年に新卒で入社し、3年半製薬会社の通販事業を担当したあと、ECコンサルティングチームに移りました。ECコンサルティングチームでは、コンサルタントとして各クライアントのモール型を中心としたEC課題の解決を担当しております。

最近は、多くの企業が“EC化”という目標を掲げています。博報堂としても中期経営計画でECコンサルティングを重視する方針を打ち出しており、非常に注力しています。

経済産業省が発表した日本の現状のEC化率は6.22%で、10年弱で倍以上に増えました(図1)。ただ、アメリカのEC化率は10%を超えており、中国のEC化率は20%を超えています(出典:経済産業省「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備」2019年5月)。日本のEC市場が大きく成長しているとはいえ、まだまだ成長の余地があると言えます。

※経産省資料より編集部作成

ECにはいくつかパターンがありまして、代表的なのは自社でECサイトを作るケースと、プラットフォーマーのECモールに出店するケースです。日本では後者がここ数年伸びており、中でも物流まで含めたフルフィルメントのサービスを手がけているプラットフォーマーが高いシェアを獲得しています。

北米では大手ECプラットフォーマーによるスーパーマーケットチェーンの買収がありました。これは商品の売り場が変化しているというだけではなくて、人が商品を買う場所がシフトしていることを示しており、それに伴ってマーケティングの考え方も変わってきています。これまでは実店舗で販売をしてからEC上で商品を展開するのが主な流れでしたが、近年はそれが逆になりつつあります。北米以上にEC化が進んでいる中国では、ECで受注した商品を、スーパーの棚からピックして配送する、という新しい仕掛けも生まれています。店舗での売り方もEC上のランキングと連動しているなど、店舗とECが一体になった一つの購買チャネルのようになっているんです。

一方、日本の場合は、まだまだECを“販売チャネルの一つ”と捉えているケースが多いです。組織構成を例にとると、多くの企業では、営業部の中に、他流通と横並びでECプラットフォーマーの担当者が存在しています。今後、ECプラットフォームは多くの可能性を秘めているので、単なる営業の卸先・商談先というだけではなく、自発的に利用していくことが必要になると考えています。

ECでは従来とは異なる独自の施策が必要

ECを考える際に大切なのは、「川上から川下までの全体戦略」です。そのなかで特に重要なのは「決済」と「配送」といったフルフィルメントの設計です。
自社ECを持たれている企業さんはもちろんですが、各ECモールを使用する際も、それぞれのフルフィルメントの設計を理解したうえで使用することが事業利益の確保のために必要です。
こうしたフルフィルメントについても、海外と日本では異なる様相を呈しています。
中国では大手ECモールの運営会社が、支払い・配送・広告を全て内包しているため、出品する企業にとってもサービスが非常に便利です。
そしてなにより、単なる利便性にとどまらず、全ての顧客データを統合することで高度なデータマーケティングが可能になっている点が特徴的です。
日本のECはこれまで“販路”“広告”などそれぞれの役割に閉じる傾向が強かったですが、先日の大手プラットフォーマーによるファッションECモールの買収・SNS企業との経営統合などを契機に、中国に近い形に変わっていくのではないかと考えています。

こうしたECを“販路以上のもの”にしようとする場合、必要なことがいくつかあります。一つは顧客体験の場所としてECを考えることです。これはデジタルシフトの潮流のなか、既に取り組んでいる企業が多いと思います。次に必要になるのが、オンラインに閉じず、オフライン流通も含め、「トータルで商品を売る」ためにECを設計することです。従来の店舗販売の場合、営業力で棚を確保する必要があるため、流通や卸との関係の構築が必要でした。しかしECではそれが必要ない代わりに、広告や価格、出品形式など、EC独自の様々な施策によって、他と差別化することが必要になります。これからのECには“ECで検索をして、実際の店舗で商品を買う”といったカタログのような役割も期待されるので、そうした点もおさえながら、「EC基軸で全ての流通を考えていく」視点も重要です。

このようにECをマーケティングに使う一番のメリットは“スピード感”です。例えばECモールに商品を出した場合、それがどれくらい売れているか、どのコミュニケーションが響いているかなどは毎時見ることが出来ます。それに合わせて様々な打ち手をスピード感を持って打つことが出来る。これは、従来のオフライン施策のスピード感とは大きく違うんです。

クライアントの事業売上を伸ばすことが一番の使命

そもそも従来から博報堂が手がけてきた広告やメディアは、クライアントの事業を伸ばすことを目的としたものです。
「何故、博報堂がECコンサルティングをやっているんですか」とクライアントの方に聞かれることがありますし、当社内にもそういった声はあります。
それに対する答えは非常にシンプルで、「クライアントの事業を伸ばすために必要だから」です。マーケティングモデルが変化してECでの重要性が高まる中で、我々もその変化に対応して10~20年後もクライアントの事業のパートナーであり続ける、そのために「ECコンサルティング」という手段を用いて事業課題を解決する必要があります。

従来の「マスで大きくローンチする」といった手法が合わないケースも増えてきています。まずはECで小ロットで販売し、生活者のニーズとのギャップを無くした上でマスに行く、といったフレームが今後どんどん重要になってきます。ただし、ECであっても商品に対する知見の重要さは全く変わりません。クライアントの持つ商品に対する知見と、我々の持つEC上で商品を売ることについての知見を組み合わせることで、効果を最大化出来ると考えています。

実際に最近は我々へのお問い合わせが急激に増えています。ECの全体戦略であったり、モール内の広告運用であったり、新商品の開発であったりと内容はまちまちなのですが、「なんとかしなくてはいけない」という課題感は皆さんに共通しています。

「自社ECを作るか、ECモールを利用するか悩んでいる。両方に商品を出すと食い合いが起きるのではないか」というご相談も多いです。その答えはケースバイケースなのですが、基本は出店する場所が増えるほど、そこしか利用しない人に見ていただける場合が多いです。自社ECのいいところは、ブランドの色が出せるところとCRMが徹底的に出来るところで、ハードルはIDを作ってもらうのに手間がかかるところです。ECモールの場合、大手であれば既にIDを持っている人が多く、「そこにしか存在しないお客さんを捕まえられる」というのが大きなメリットになります。

我々はこういったECに関するお悩みにお答え出来ますし、EC向けの新商品を一緒に開発するなど、新たなやり方に挑んだ案件がいくつもあります。何かお悩みがあれば、是非ご相談下さい。

  • 博報堂 ECコンサルティング部 コンサルタント
    2015年博報堂入社。製薬会社の通販事業担当を経て、2018年より現職。
    従来のマス手法にダイレクトマーケティングを掛け合わせた、ECの戦術立案を得意とする。
    通販エキスパート検定1級保持。