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ヒット習慣予報vol.52『手ぶらで帰るお買い物』
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ヒット習慣予報vol.52『手ぶらで帰るお買い物』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの栗田です。
12月に入り、ぐっと寒くなってきたので、先日、冬用のコートを買いに行ってきました。普段は、オンラインショッピングで洋服を買うことが多いのですが、コートはちゃんと試着してから決めたいなと思って、街へ繰り出しました。そして、原宿のお店を巡っていると、ショールーミング(リアル店舗で好みの商品を見つけてもその場では買わず、オンラインショップで購入すること)に特化した新しいタイプのお店に出会い、そのお店に習慣化の兆しを感じました。

ということで、今回は、そんな次世代型店舗をテーマにした「手ぶらで帰るお買い物」です。手ぶらで帰るお買い物とは、「試着をリアル店舗で、決済はオンラインで、商品の受け取りは自分の希望に沿った時間や場所で」というように、オフラインとオンラインを融合した、購買体験のことです。色々調べてみると、私が訪れたお店以外にも、主に「アパレル業界」で、同様のサービスを提供するお店が増えていることが分かりました。手ぶらで帰るお買い物の事例や、手ぶらで帰るお買い物が増えている理由を少し考えてみました。

はじめに、手ぶらで帰れるお買い物の事例をいくつかご紹介させていただきます。

一つ目は、ファストファッションブランドのポップアップストアの事例です。
こちらの店舗では、お買い物アプリをダウンロードすることで、手ぶらで帰るお買い物体験が得られます。例えば、フィッティングルームに入る前に、試着したい商品のタグをアプリで読み込んでおくと、スタッフがフィッティングルームにその商品を用意しておいてくれて、その準備が整い次第、アプリに通知が来る段取りになっています。また、フィッティングルームが混んでいる時には、その待ち時間が表示され、フィッティングルームが空き次第、アプリに通知が来るという段取りになっています。試着のみを行う店舗ということで、試着に関して、至れり尽くせりのサービスを提供してもらえます。その後の決済や、宅配指定なども、アプリを通じて行うことができ、日時を指定して、店舗で受け取ることも可能になっています。

二つ目の事例は、最近新しくオープンしたファストファッションブランドの事例です。
こちらの店舗でもお買い物アプリを通じて、手ぶらで帰るお買い物体験が得られるようになっています。こちらの店舗では、試着はもちろんですが、鏡の前で、自分にそっくりの3Dアバターを作成し、そのアバターを使ってバーチャルコーディネートを楽しむことができるようになっています。また、アバター情報がアプリに残るため、店舗を出た後でもアプリを使ってコーディネートを楽しむことができるようになっています。その後の決済や受け取り方法はアプリで指定することができ、受け取りについては、最寄りの店舗やコンビニ等で行うことができます。

どちらの事例も、お買い物アプリを使って、手ぶらで帰るお買い物体験を提供していることから、Googleトレンドで「お買い物アプリ」というキーワードの検索傾向を分析してみました。すると、ここ直近1年間で特に検索数が伸びており、アプリを使ったお買い物ということへの関心が高まっていることが伺えます。

※出典:Googleトレンド

ではなぜ今、「手ぶらで帰るお買い物」が増えているのでしょうか?

一つ目の理由として、オンラインショッピングが関係しているように思います。オンラインショッピングで洋服を購入した時に、「サイズが合わない」「色や素材がイメージと違う」「思っていたシルエットと違う」などの失敗をしたという人も少なくないかと思います。このような経験から、「洋服は実際に商品を見て、試着をしてから買いたい」というニーズが生まれ、それでいて、「荷物を持ち帰るのがちょっと面倒」というニーズにもうまく応えたのが、上記の事例で紹介したような、試着に特化した店舗なのだと考えます。

また、二つ目の理由として、店舗のフィッティングルームが関係しているように思います。ソーシャルリスニングをしてみると、「フィッティングルームが混んでいる」「フィッティングルームが狭い」などのコメントが多く見つかりました。これらのニーズから、上記の事例で紹介した店舗では、フィッティングルームが通常よりも広々と設計されており、商品スペースや在庫を削ってでも、試着の時間をいかに快適に過ごしてもらうのか?ということに注力しているのではないでしょうか。

最後に三つ目の理由として、昨今小売業で話題になっている人手不足が関係しているように思います。お会計をオンラインで決済、商品の配送を済ませることで、店舗には、レジを担当するスタッフや、商品の在庫管理や補充を担当するスタッフが少人数で済むようになるということなのだと思います。

オンラインショッピングが進む一方で、いまの生活者には、「ちゃんと商品を見たい、体験したい」という気持ちもあり、「リアルとネットのどちらかに偏るのではなく、巧みに融合されていく」のかもしれません。

ということで、「手ぶらで帰るお買い物」はこれからヒット習慣になる可能性があると思い、いろいろなカテゴリーでのビジネスチャンスを考えてみました。

「手ぶらで帰るお買い物」のビジネスチャンスの例
■ 家電量販店が家電の試し利用に特化したポップアップストアをつくる。
■ スポーツ用品店が、ゴルフの試打や自転車の試乗に特化したお店をつくる。
■ 本屋が、小説やマンガの試し読みに特化した図書館のようなお店をつくる。
など

私は、混んでいるお店や試着が面倒で、オンラインショッピングをしてしまうことが多いですが、手ぶらで帰るお買い物体験ができるお店だったら、重い腰を上げ、足を運んでみてもいいかなと思っています。みなさんもぜひ、手ぶらで帰るお買い物を試してみてください。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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  • 博報堂 アクティベーション企画局 ヒット習慣メーカーズ メンバー
    インタラクティブプラナーとして、データやテクノロジーを活用したデジタルアクティベーション企画を考える仕事をしています。髪は長め。おなか弱め。谷中生姜とジャニーズが好き。ほぼ毎日キングダムを読んでいます。