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Z世代のコマース行動「バイヤー型消費」とは?──「Z世代×ニューコマース調査」から見えてきたもの
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Z世代のコマース行動「バイヤー型消費」とは?──「Z世代×ニューコマース調査」から見えてきたもの

オンラインでものを買うことが当たり前になっているZ世代。彼・彼女らは、ライブコマースやソーシャルコマースといった新しいコマースにどのように接し、どのような基準でオンラインでの購買行動をしているのでしょうか。絶えず変化していて実態をつかみにくいZ世代のオンライン購買行動を明らかにする調査(※)に、博報堂買物研究所とHAKUHODO EC+が合同で取り組みました。そこから見えてきたZ世代の「バイヤー型消費」の〈4つの特徴〉について、調査を担当した3人に聞きました。
(※)本調査に関して発表したリリースはこちら

垂水 友紀
博報堂 ショッパーマーケティング事業局
博報堂買物研究所 所長

武野 晴彦
博報堂 ショッパーマーケティング事業局
博報堂買物研究所 マーケティングプラナー

永見 拓哉
博報堂 ショッパーマーケティング事業局
HAKUHODO EC+ コンサルタント

Z世代のコマース行動の〈4つの特徴〉

──「Z世代×ニューコマース調査」は、博報堂買物研究所とHAKUHODO EC+が合同で行った初の調査ですね。まず調査の概要をご説明いただけますか。

武野
今年の1月に Z世代(15-25歳)の男女1854人を対象にインターネットで調査を実施しました。モニターになっていただいたのは、直近1年以内EC利用ユーザーや、動画を活用して商品などをPRする「ライブコマース」と、SNSにECを組み合わせた「ソーシャルコマース」のユーザーです。先に定量調査を実施し、興味深いコメントを寄せてくれたモニター男女5名にあらためてインタビューを行いました。Z世代の購買行動の傾向を比較によって明らかにするために、Y(ミレニアル)世代(26-41歳)とX世代(42-59歳)にもアンケート調査を実施しています。

──Z世代を対象にした調査を行おうと考えたきっかけは何だったのですか。

永見
マーケティングを行う側がイメージする“Z世代像”と現在のリアルなZ世代の姿の間にずれが生じている可能性があると感じたためです。

Z世代は興味関心や購買行動において非常に流動性が高い層です。
現在までに、数多くのマーケティング企業などがZ世代のことを研究し、その生態や行動傾向を明らかにしていますが、その分析の元になっている調査データはかなり前のものが多かったり、僕自身がZ世代として、現状のZ世代の傾向をとらえきれていない印象を持っていました。
そのため、最新のZ世代の実態をこの調査を通じてアップデートし、現状の行動傾向を正しく市場に伝えていく。それが、この調査に至ったきっかけです。

仕入れ担当のようにものを買う「バイヤー型消費」

──調査の結果、Z世代のコマース行動に“ある特徴”が見えてきたとのことですが、それぞれについて解説していただけますか。

永見
今回の調査を通じてわかったことは、Z世代は自分の足で積極的に情報を獲得し、さらに情報の真偽を見極めながらコマース行動を行っているということです。今回我々は、バイヤーをマーケットのトレンドを読みながら売れそうな商品を様々なブランドやメーカーから仕入れ・買い付けを行う職種と定義して、このようなZ世代の購買行動傾向を「バイヤー型消費」と名付けました。またその4つの特徴を「開拓志向」「越境志向」「見極志向」「即決志向」と整理しました。

「開拓志向」「越境志向」の2つは比較的すぐに整理できましたが、「見極志向」「即決志向」はディスカッションを何度も繰り返す中で見えてきた傾向です。特徴を整理するにあたっては、Z世代である自分の感性もガイドにしました。

武野
1つ目の「開拓志向」は、大量の情報がどんどん与えられる中で、本当に好きなもの、本当に興味関心があるものに関しては、自ら積極的に情報収集したり、購買行動を起こしたりする傾向があることを示すワードです。
永見
調査から、Z世代は「自分の軸」を大切にして物事を判断したり、購買の意思決定をしたりする傾向があることが明らかになりました。与えられる情報だけに満足せず、判断や意思決定のために必要な情報を自分から積極的に開拓していくのがこの世代の1つの特徴です。

定量調査では、他世代と比較して、「トレンド商品は取り入れたいが、被り回避のため、SNSで人と被らない商品を探す」でZ世代が高かったのですが、流行の最先端を取り入れていくという意識は今も昔も変わらない若者の特徴かと思います。ただ、SNSに自分を常に晒してきたZ世代は、「他者の評価に敏感」ですが「個性を表現しなければ、埋もれてしまう」という意識も持ち合わせています。こういったZ世代ならではの葛藤が、この購買行動には強く表れているのではないかと考えています。

武野
「趣味や好きなことを深く極めていく中での多少の買物の失敗は厭わない”研究消費”」という傾向もみられ、定量調査では「趣味や好きなことを深く極めたい」という意識が多世代よりも高く、定性調査でも本当に好きなこと、興味関心がある領域の買物に関しては、失敗したとしてもそれが自分の知識や、人に語る材料になるので多少の失敗は気にしないというコメントもありました。
永見
人から与えられる情報だけでなく、自らの足で情報を積極的に掴みに行くという行動を通して、自分の趣味、好きなことの領域の知見をさらに拡げ、自分の個性を際立たせていきたいという思いがあると思っています。
武野
自らの足で積極的に情報を掴みに行くなかで、Z世代は“次世代コマース”も駆使しています。調査からは、Z世代は新しい商品に出会うために、ライブコマースやソーシャルコマースを視聴していることが明らかになりました。
“次世代コマース”というと、使うハードルが高いと思われるかもしれませんが、Z世代は自分が欲しい情報が得られるのであれば、馴染みのない手法でも積極的に試していることがみて取れました。
垂水
2016年の買物研究所の調査では、大量の情報を浴びすぎて欲しいものがわからなくなってしまっている生活者が多いことがわかりました。それを私たちは「欲求流去」と名付けました。それに対してZ世代は、膨大な情報の中から自分に必要な情報を選ぶリテラシーがあると考えられます。

──2つ目の「越境志向」はどのような傾向ですか。

武野
自分が欲しい物、質の良い物を選ぶためには、国内外問わず様々な情報源やサービスを駆使している傾向が調査の中でみられたため、それを「越境志向」というワードで表現しています。従来よく使っていた“行きつけ”のサイトやサービスを飛び出し、自分が欲しい物を貪欲に手に入れにいく姿勢がみて取れます。
永見
同世代の友人と会話をしていても、“これは海外から個人で輸入している”、といった発言を聞くことは稀ではありません。それほどまでにZ世代は世界を広くとらえ、フラットに自分が欲しいと思うモノや質の高いモノに、どうしたらアクセスできるのかを考えているのだと思います。

──続いて、3つ目の「見極志向」についてご説明ください。

永見
情報の取捨選択をする際に、メディア、インフルエンサー、友人などへの「信頼」を基準とする傾向があることをあらわしたのが「見極志向」です。逆に見ると、そのメディアやインフルエンサーが言っていることが信頼できるかどうかをシビアに判断しているということです。

武野
インフルエンサーの情報を見る場合は、その人だけでなく、フォロワーのコメントなども細かくチェックして、そのすべてが本当に信頼できるのかどうかを確認するという行動が見られます。そのうえで本当に信頼できると判断できれば、その人のリコメンドを受け入れて商品を買う。Z世代にはそんな人が多いようです。
永見
情報感度が高いので、ステルスマーケティングやそれに近いPR手法はすぐに見抜かれてしまいます。PRの方法も生活者に寄り添ったものにしていく必要があります。
垂水
若い世代では、「ものへの信頼」から「人への信頼」にマインドが変わってきていると感じますね。ブランドの信頼を醸成するには、信頼できる「人」がそのブランドの魅力を語るという手法が今後ますます重要になっていくのだと思います。
永見
その場合の「人」は、企業の担当者や生産者だけではなく、第三者からの視点も重要です。客観的な意見でなければ信用しないというのも、Z世代の顕著な傾向です。

──4つ目の「即決志向」。これはどのような傾向ですか。

永見
「即決志向」は表現するのに苦労したワードです。SNSを見ていて気になった商品の情報はスクリーンショットをして保存しておくというのは、Z世代を含めいろいろな世代に普通に見られる行動なのですが、保存したまま忘れてしまうというケースも少なくありません。自分が欲しいと思ったものを忘れてしまうのはもったいないので、出合ったらその場ですぐに買ってしまう。そんなZ世代の行動をあらわしたのが「即決志向」です。
武野
買い物に失敗したくないという思いはもちろんあるのですが、欲しいと思った瞬間を大切にしたいという気持ちもある。そんなことが調査から見えてきました。その気持ちが即決につながっているということだと考えられます。
垂水
Z世代の「即決」は、自分の軸があったうえでの決定なので間違えることがあまりない、逆に言えば、確信があるから即決できるということなのだと思います。
自分が欲しいというだけでなく、それが世の中でどれだけ流行っているか、あるいは、その商品を使ったり身につけたりすることでセンスがいいと思われるか。そんな視点をとても大事にしているということですよね。
永見
自分の軸を備えながら、一方でそれを客観的に判断したうえで買う。「バイヤー型消費」という言葉は、そんな二面性を言い表した言葉です。
垂水
Z世代に顕著な〈コマース行動〉を見ると、テクノロジーやアルゴリズムを理解して、自分にとって最適な購買行動をとっている人が多いと感じます。いろいろなものを自分でコントロールして、自分の軸を決めていくという点にZ世代の1つの特徴があると言えそうです。購買の主導権を自分の側で握っている層。そう表現してもいいかもしれませんね。

Z世代のコマース行動を踏まえて情報伝達と購買体験の新しいデザインを

──博報堂買物研究所/HAKUHODO EC+として、この調査結果をクライアント企業のEC支援にどういかしていきたいと考えていますか。

永見
ポイントは大きく2つあります。
1つ目は、「情報伝達デザインの見直し」です。
例えば、インフルエンサーを起用して商品情報を発信する際にも、Z世代の“見極志向”の特徴を理解していないと、伝え方次第では彼らからの信頼を大きく損なってしまう可能性があります。そのため、商品をインフルエンサーに提供し、実際に使ってもらったうえで、真の意味でのエバンジェリストとして商品の魅力を伝えてもらう。あるいは、インフルエンサーよりもより生活者に近しい存在であるマイクロインフルエンサーを、生活者の“身近な相談役”となるように育成し、その関係値を活かして商品を訴求するなど、この調査をもとに、Z世代の特徴に寄り添った情報設計のプラニングをご支援できたらと考えています。

2つ目は「購買体験デザインの見直し」です。
Z世代はライブコマースや、メタバース上での購買など、従来のようなシンプルな買物体験だけではなく、彼らの志向性に沿った体験を強く求めているように感じます。HAKUHODO EC+はそういった先端的なコマースの体験設計の実績を豊富に持つため、そのノウハウやアセットをこの調査結果と掛け合わせ、クライアント企業の事業成長につながる購買体験の設計をご支援できればと思います。

垂水
私は、調査結果から「熱量」と「フリクションレス」という2つのキーワードが導けると考えています。購買行動を促すには企業やブランドの「熱量」を伝えることが必要なのですが、企業側が一方的に熱量を伝えようとしても、Z世代には伝わらないことが調査から見えてきたと思います。インフルエンサーなどの第三者から上手に熱量を伝えてもらう仕組みづくりが今後は重要になると思います。

また、フリクション、つまり生活者が「わずらわしい」と感じる要素をできるだけ省いていくことが、Z世代とのコミュニケーションではとりわけ重要になりそうです。フリクションが少なくなればなるほど、購買行動が促進される。そんな傾向も調査から見えてきたことの1つです。

武野
「透明性」も重要なキーワードだと思います。その場その場だけでのPR的なメッセージの発信だけでなく、企業やブランドのポジティブな面もネガティブな面も含めて普段から発信をしていく、インフルエンサーであれば普段から自分の好きな領域についての発信をこまめに行っていくような「一本筋の通った」コミュニケーションを心掛けることがZ世代の心をつかむポイントになると考えられます。
永見
これまでもコミュニケーションにおける透明性は大切だと言われていましたが、それはどちらかというとブランディングや企業の社会価値向上といった文脈でした。Z世代の場合は、透明性が実購買に直結するようになっているということなのだと思います。
垂水
また我々の次のステップとして、この調査から得られた知見をクライアント企業にご活用いただけるソリューションに昇華していくことと、Z世代の購買行動の傾向をいろいろな商品のカテゴリーと掛け合わせて深堀し整理していきたいです。
武野
今後はZ世代が社会の中心を担っていくようになります。そうなると、Z世代の購買スタイルがスタンダードになっていく可能性もあります。これからもZ世代の動向に引き続き着目していきたいと思います。

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