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デジタルマーケティングの最前線 【博報堂デジタルイニシアティブの挑戦 Vol.5】 コネクテッドTVとOTTが開く新しい動画広告の世界
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デジタルマーケティングの最前線 【博報堂デジタルイニシアティブの挑戦 Vol.5】 コネクテッドTVとOTTが開く新しい動画広告の世界

インターネットに接続したテレビ端末である「コネクテッドTV」や、インターネット回線を通じて提供されるすべてのコンテンツサービス「OTT」における新しい動画広告展開に注目が集まっています。従来のテレビ広告とインターネット広告の両方の長所をいかすことができると考えられているコネクテッドTV/OTTの活用法とはどのようなものなのか。博報堂DYグループのデジタル専門家集団、博報堂デジタルイニシアティブ(HDI)のメンバーに、コネクテッドTVとOTTの広告メディアとしての可能性について語ってもらいました。

山口 拓郎
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)/
博報堂デジタルイニシアティブ(HDI) ビジネスデザイン本部 部長

浅井 綾乃
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)/
博報堂デジタルイニシアティブ(HDI) ビジネスデザイン本部

拡大の過程にあるCTV/OTT市場

──「コネクテッドTV」や「OTT」という言葉を耳にする機会が増えています。それぞれについて解説していただけますか。

山口
コネクテッドTVは、インターネットに接続されているテレビ端末のことで、「CTV」という略称で呼ばれることもあります。テレビ自体にインターネット接続機能があるスマートTVのほかに、Googleの「 Chromecast 」やAmazonの「Fire TV」など、USB型のストリーミングデバイスをつなぐことで、テレビにインターネット接続機能をもたせることができます。

一方のOTTは「Over The Top(オーバー・ザ・トップ)」の略語で、インターネット経由で提供される動画・音声などのコンテンツ配信サービスをOTTと呼んでいます。具体的には、TVer、ABEMA、Netflix、YouTube、Spotifyなどが含まれます。

YouTubeなどは以前から多くのユーザーがいましたが、その他のOTTサービスのユーザー数が増え始めたのが2020年頃からです。とくに生活者が自宅で過ごすことが多くなったコロナ禍の過程で、日本でも市場が一気に拡大しました。今後さらに拡大していく市場であるとみられています。

──OTTは動画広告メディアとしても活用されるようになっていますね。

山口
インターネットの動画広告に新しい可能性を開くのがCTVやOTTであると考えられています。インターネット動画広告の歴史を振り返ると、まずバナー広告枠に動画を配信できるインバナー広告がはじまり、次にSNSやウェブコンテンツのフィードに動画広告が配信できるようになりました。そして近年、CTV/OTTサービスの台頭で、テレビCMのように動画広告を見てもらうことが可能になりました。特にCTVでの動画視聴は、テレビと同じ大画面且つ、生活者が見たいコンテンツを選択する能動視聴のメディア特性という点で高い広告効果が期待できます。若年層を中心にテレビCMだけではリーチがしづらくなっていることもOTTが動画広告メディアとして活用されている背景 としてあると考えています。
浅井
OTTは若年層の利用者が多いので、彼らにメッセージを届けやすいとも考えられます。それもあり、これまでの広告展開は、「マス」と「デジタル」に大きく分けられていましたが、最近では「CTV/OTT 」を新しい軸として、そこに広告予算を配分するケースも徐々に増えてきています。

統合プランニングの一要素としてのCTV/OTT

──CTV/OTTにおける動画広告は、従来のテレビCMと同じようにブランディングを目的としたものが多いのでしょうか。

浅井
ブランディングが主流ですが、スマホに動画広告を配信する際は、ユーザー獲得やコンバージョンなどを目指す場合もありますね。

──ブランディングを目的とした広告展開の場合、効果測定はどのように行うのですか。

浅井
最もよく行われているのはブランドリフト調査です。
広告を視聴した生活者を対象にブランドの認知が上がっているかどうかを調べる手法です。それ以外に現在注目されているのが「アテンションベースでのリーチ最大化」です。「注視率」とも呼ばれていて、生活者が広告をしっかり見ている時間を測定するというものです。測定方法としては、同意許諾がとれているデバイスのカメラで目の動きを捉えるアイトラッキングの技術の活用などが想定されています。
山口
ほかに、動画広告に接触したあとの検索行動をトラッキングするといった方法もあります。ブランディングの効果をアクションで計るという考え方ですね。

──CTVやOTTを活用した動画広告のプラニングの考え方についてもご説明ください。

山口
従来の考え方では、CTV/OTTも「デジタル」という枠に入れられることになりますが、浅井から話があったように、CTV/OTTをデジタルとは別の独立した枠と考えることが必要だと思います。そのうえで、マス、デジタル、OTTというメディアとPC、スマホ、タブレット、CTVというデバイスの全体を統合的にプラニングすることで広告効果を最大化することが可能であると僕たちは考えています。

──そのようなプラニングを実現するためには、クライアント側と広告会社側の体制を変える必要もありそうですね。

山口
たしかに、クライアントの側も広告会社の側も、テレビ担当とデジタル担当が分かれている場合が多く、CTVやOTTを独自に担当する部署が設けられているケースも現状ではほとんどないと思います。一方で、統合プラニングに対する取り組みは着実に進んでいて、博報堂DYグループでも組織横断的なプラニングができる仕組みが整ってきています。例えば、以前はクライアントのマス含めたメディア全体の予算配分についてデジタル担当者がタッチすることはほとんどなかったのですが、最近ではプラニングシミュレーションのツールを活用しながら、デジタルの視点でメディア全体の予算配分に対して意見を言うことが増えてきています。もちろん、メディアバイイングにはそれぞれのメディアの専門家の知見が求められますが、プラニングはそれぞれの立場から多様な意見を出し合って最適解を見出していこうという風潮が強まっているわけです。その最適解を見出す作業の中に、「CTV/OTT」という軸を加えていくことで、クライアントが広告のご予算をより有効に活用する支援ができると思います。
浅井
従来のメディアや担当の枠をみんなで越境していこうという意識が高まっているのを感じますね。
最初に「マス」「デジタル」と分けるのではなく、クライアントの課題やKPI、広告予算などをベースに、CTVやOTTを含めた適切なデバイス・メディア配分をトータルに考えていくというのが、これからのプラニングの考え方になるのではないでしょうか。

フレキシブルな広告展開が可能なメディア

──CTV/OTTにおけるターゲティングの方法をお聞かせください。

山口
プラットフォームに登録されているユーザー情報をもとにターゲティングしていくのが基本です。サブスク型の動画配信サービスの場合は好みのコンテンツの傾向もわかるので、それも一つのターゲティングの軸となります。
浅井
視聴しているコンテンツに合わせて広告を出し分けることも可能です。ユーザー属性とコンテンツの掛け合わせで広告効果を高められるのがCTV/OTTの大きな特徴です。ほかに、テレビを見ていない人をターゲットにして、テレビ広告のリーチ補完をするという方法もありますね。

──クリエイティブのつくり方の点で、従来の動画広告との違いはありますか。

山口
現在のところ、CTVで配信する広告はテレビCMをそのまま使うケースが多いですね。一方、スマートフォン向けにはデバイスの特性に応じたアレンジをすることがあります。例えば、スマホに配信する場合は動画を縦型にするといったアレンジです。また、YouTubeは広告のスキップが可能なので、数秒以内にロゴや商品を見せるといった工夫が必要になります。広告効果を高めるには、デバイスごとにクリエイティブを変えていくのが理想だと思います。
浅井
複数のクリエイティブを用意して、ストーリー的に動画を見せていくという方法もあります。Aという広告を見た人には、次にBを配信し、それを見てもらえたらさらにCを配信するといったやり方です。デジタルならではの手法ですね。
山口
複数のクリエイティブという視点で言うと、広告のABテストをスピーディに行うことも可能です。AとBの2種類のクリエイティブを流してみて、より効果が高いものを残していくという方法です。これもフレキシブルな広告配信方法の一つです。

デジタル技術を活用して動画広告をアップデートしていきたい

──CTV/OTTの広告展開を支援するにあたって、HDIの力はどのように発揮されると考えていますか。

浅井
テレビを含めた統合プラニングができて、マス、デジタル、CTV/OTTの広告効果を共通の指標で捉えられるのは、総合広告会社に属するチームならではだと思います。
山口
クライアントの課題を何よりも重視して、それに応じたプラニングや効果検証をすることを僕たちはいつも心掛けています。そのようなグループポリシーとデジタル技術を掛け合わせて、クライアントに提供できる価値を最大化できるのが僕たちの強みだと考えています。

もう一点、データ活用力も強みとして挙げられます。プラットフォームが保有しているデータや、博報堂DYグループがもつ独自のデータなど、さまざまなデータを掛け合わせて、最適な予算配分や広告投下量を見極めることが可能です。

──グループポリシーである「生活者発想」はどのように発揮されていますか。

浅井
私たちメンバーの一人ひとりも一生活者です。一人の生活者である自分の肌感覚を重視して、生活者の心を捉えるにはどうすればいいかを常に考えるようにしています。デジタルの世界では、ツールを使えばある程度の解を出すことが可能です。しかし、その解がどうしても腹に落ちないということもよくあります。そういうときは、「自分だったらどうだろう」と考えて解を調整することが大事だと思っています。

──CTV/OTTという成長市場において、クライアントにどう寄与していきたいか。最後にそれぞれの思いをお聞かせください。

浅井
広告効果の指標をしっかりつくれるのがデジタルの強みです。私自身はブランディングをご支援することが多いので、ブランディングの効果指標を明確にすることに取り組んでいきたいですね。
山口
デジタル技術を活用して、「科学的」なプラニングや効果検証を実践することで、動画広告をアップデートしていきたいと考えています。CTV/OTT広告の可能性は今後さらに広がっていくはずです。CTV/OTTをプランニングに組み込んで、動画広告の価値を上げ、クライアントの事業に寄与していくこと。それがこれからの目標です。
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