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今が熱いマーケティングテクノロジー・プロデューサーという仕事
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今が熱いマーケティングテクノロジー・プロデューサーという仕事

博報堂マーケティングシステムコンサルティング局(MSC局)は、「広告の外側」にある生活者接点を構想、開発、運用することを目的に博報堂内に立ち上がった新しい組織です。同局には大きく2つの機能があり、そのうちの1つがマーケティングシステムプロデュース機能で、マーケティングシステム構築においてCX(顧客体験)をデザインしていきます。そこで重要な役割を果たしているのが「マーケティングテクノロジー(MarTech)プロデューサー」です。MSC局でMarTechプロデューサーとして活躍している上田周平に、MarTechプロデューサーの業務内容とその面白さ、そして博報堂でその仕事をする魅力について語ってもらいました。

プロダクトありきの限界を感じて

──上田さんの経歴について教えてください。

上田
1999年に新卒でグロバールなSI企業に入社し、6年間ソリューション営業を務めました。営業といっても技術色が強く、システム開発の要件定義まではプロジェクトに参画するのが常でした。

しかし営業ではなく自分でサービス開発をしたいと思ったこと、またSI企業ではプロダクトありきのソリューションになることが多いことなどから、博報堂DYグループのD.A.C(デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社)に転職しました。D.A.Cではアドテク関連の仕事を8年務めました。

その後、5年間フリーランスでインターネットビジネスの支援をしたのち、現在MSC局でMarTechプロデューサーとして働いています。

──プロダクトありきのソリューションの何が足りなかったのでしょうか。

上田
これはあくまで私見ですし、そうしたソリューションに関わっている人たちを貶める意図はありません。ただ私は、ビジネスの広がりという意味でも、個人的成長という意味でも限界があると感じたのです。プロダクトごとにプロジェクトの進め方も決まっていますし、職種としては営業と開発が関わるだけで、それ以上の多様な人材が必要になるわけではありません。お客様も一旦そのプロダクトを導入したら、しばらくは使い続けるわけで大きな変化もありません。

──MSC局での仕事はいかがでしょう。

上田
D.A.Cにいたので、博報堂グループのカルチャーは理解していました。さらに中途採用が多いということもあり、MSC局にはすぐになじめました。マーケターはもちろん、デザイナー、エンジニア、コンサルタントなど幅広い職能の人材が揃っていて刺激を受けっぱなしです。飽きることがありません。

ビジネスサイドとエンジニアサイドをつなぐのがMarTechプロデューサー

──以前、同じMSC局でMarTechプロデューサーの稲毛さんにも話を聞いたのですが、上田さんが考える「MarTechプロデューサー」という仕事はどのようなものでしょうか。

上田
まだ確立した職種ではないと思っています。そもそもマーケティングテクノロジー自体、変化が激しく、固定されたものではありません。毎年技術革新があり、それに伴ってトレンドも変化します。

博報堂のプロパー社員には意外だと言われるのですが、SI(System Integration)業界は営業と開発に大きく分かれており、プロデューサーという概念がありません。ビジネスと制作の両面で旗振りをする人がいないのです。しいて言えば、管理職であればどちらも意識するという感じでしょうか。いずれにしてもプロデューサーという職種はありません。

しかし私は、マーケティングシステム領域にこそプロデューサーが必要だと考えています。マーケティングの最終的な目的は売ることにありますから、システムを作る人であるITエンジニアとそのシステム上でマーケティングを実行するビジネスサイド、つまり売る人をつなぐ人材が重要になります。

変化の激しい世界ですから、今年の正解が来年も正解だとは限りません。技術的な変化を見極めつつ、ビジネスとして成功するのかも判断し、作る人と売る人の両方と適切にコミュニケーションしながらマネジメントできる人材が、マーケティングシステム構築には必要なのです。

──「作る人と売る人」をつなぐとは?

上田
作る人は技術的リスクを指摘しますし、売る人はビジネスのスケールを求めます。この2つは矛盾することが多く、間に入ってバランスを取る必要があります。これが私の言う「つなぐ」です。

MarTechプロデューサーになれる人とは

──「つなぐ」ために必要な能力あるいは素養は何でしょう。

上田
ビジネスサイドとエンジニアサイドの両方がある程度わかって着地点を見いだせることですね。ビジネスにおいてはチャレンジする必要もあります。しかしエンジニアリングとして可能だという裏付けがないまま、ビジネスサイドにコミットしてしまうと、結局ウソをつくことになります。ビジネスとテクノロジーの両方が見えていなければできません。

──ビジネスサイドまたはエンジニアサイドしか経験のない人でもMarTechプロデューサーになれるのでしょうか。なれるとしたら、どちらが向いているのでしょうか。

上田
どちらでもなれると思います。

広告業界のマーケターやIT業界で営業をやっていたビジネスサイドの人がエンジニア領域に入っていくにはハードルがあると考えるでしょうが、今のシステム実装は一から開発というよりはプラットフォームやツールを活用する領域のほうがはるかに大きい。だから、ITを理解し活用するハードルは昔に比べてぐっと下がっていると思います。

むしろエンジニアから営業・広告などビジネス領域に入っていくほうが難しいかもしれません。ただ、エンジニアを経てプロジェクトマネージャー(PM)を経験している人がプロデューサーに転身するのは比較的容易だと思います。

──PMといっても様々ですよね。

上田
システムには大きく、提案、構築、運用の3つのフェーズがあると考えています。このうち提案しか経験のない人は、次は構築フェーズを視野に考えられるようになればいいと思います。逆に運用しか経験のない人は構築に、構築しか経験のない人は提案にさかのぼって考えられるようになればいい。

MarTechプロデューサーを育成する上で、このような考え方でステップアップしていくことは可能です。したがってどこかのフェーズで一定の経験をしていれば、MarTechプロデューサーになることは十分に可能です。もっと言えば、1つでも経験があって次の領域へチャレンジしたい気持ちのある人を私たちは常に求めています。

──MarTechプロデューサーに一番大切なことは何なのでしょう。

上田
ビジネスサイド、エンジニアサイド両方とコミュニケーションしながら考えつづけることでしょう。エンジニアとしっかりコミュニケーションしながらシステムを通して生活者とどのようなコミュニケーションを取るか、その結果最終的なアウトプットはどうなるかをしっかり考える。こうしたことを日々考えながら、ナレッジとして積み上げていく。

もう1つは自分なりの判断基準を持つことです。今ホットなソリューション領域が来年もホットなのかどうか。そのテクノロジーの価値自体に目を向けて判断する必要があります。その意味では変化を楽しめる人でないと務まりません。価値の判断基準はクライアントにとって有用かどうかです。

またクライアントによっては成功事例を調べ上げて、一気にそれを目指したいと要望することもありますが、クライアントのマーケティング成熟度を見極めて、体制が用意できるか、運用ができるかを検討した上で、最適な進め方を提案できることも大切です。スモールスタートを提案することもあります。そしてクライアントと共にプロジェクトのゴールを明確に定め、それが推進できるチームをクライアントと共に構築できることも必要です。

博報堂でMarTechプロデューサーをやるということ

──MarTechプロデューサーを務めるにあたって博報堂で良かったということはありますか。

上田
博報堂のクライアントには、何世代にもわたって営業が付き合い続けている企業が多い。これは大きなアドバンテージですね。クライアントとの人間関係が根付いていて、営業と開発が一体になってクライアントに様々な働きかけができます。

また組織として大きいので、探せば必要な人材が必ず見つかります。博報堂のカルチャーとして、自分の領域はここまでと切ってしまわない人が多く、可能な限り相談に乗ってくれます。これは企業フィロソフィーとして「生活者発想」と「パートナー主義」の2つが挙げられていることと関係があると思います。パートナーとはクライアントのことですが、生活者とクライアントの両方を良くすることは、世の中を良くすることであり、それが気持ちいいという発想が根底にあるわけです。そのような発想の人たちが、周囲の人に親切にすることは至極当然なわけですね。そもそも社名が、「博(ひろ)く報いる」ですから。

マーケティングシステムの構築は一人で完結する仕事ではありません。そのような仕事を推進するMarTechプロデューサーにとって、このようなカルチャーの会社で働けることはとてもありがたいことだと思います。

マーケティングコミュニケーション~システム構築・運用まで、推進する範囲は広いがやりがいがある

──上田さんが関わった仕事を例に、MarTechプロデューサーの仕事を説明してもらえますか。

上田
大手消費材メーカーで新しい生活者接点を構築したいという案件をプロデュースしました。デジタルを活用して生活者とコミュニケーションしたい、そしてブランドと生活者個人を紐付けたいという要望です。そのために10以上のブランドを統合し、カテゴリも横断した新しいWebサービスを構築することになりました。Webサイト構築だけでなく、デジタルのタッチポイント上でブランドを横断したコミュニケーションシナリオを描くことが私たちのプロジェクトのゴールでした。

──そのプロジェクトでの上田さんの役割を教えてください。

上田
プロデューサー兼PMとしてプロジェクトの全てのPhaseを推進することでした。マーケターと一緒にコミュニケーションシナリオを考え、エンジニアと一緒にシステム実装し、デジタルマーケティング運用設計まで行いました。推進する領域がとても広く工程も長いので大変でしたが、それぞれ専門性のあるメンバーとひとつずつ形づくっていくことはやりがいのある仕事でした。

──どのような進め方を心がけたのでしょうか。

上田
やらないことを決めることを心がけました。ネガティブな意味ではなく、実行範囲の広いプロジェクトにおいて、何かしら不測の事態も起きます。それでも全てを予定通り運ぼうとすればプロジェクト全体が失敗に終わるケースもあります。ですので、クライアント、プロジェクトメンバーと常にコミュニケーションを取りながら、優先順位を決め、できることを確実に成功させるようしました。

また、やらないというのは、切り捨てるわけではなく、あくまで計画を修正するということです。実行可能な代替案を提示したり、実施タイミングを見直したりという意味です。最近ではアジャイル発想なんて言いますが、そうした判断もプロデューサーの重要な役割です。

これからますます熱くなっていくMarTechプロデューサーという仕事

──MarTechプロデューサーという仕事の最大の魅力は何でしょうか。

上田
事例でもおわかりのとおり、クライアントのマーケティング改革、もっと言えばデジタルトランスフォーメーション(DX)という大きなテーマに中心となって関わり、プロジェクトチームを回していく醍醐味ですね。

クライアントもDXに手を着けたばかりで、正解が見えていない状況です。その分、ニーズも高く、自分の価値を発揮しやすい仕事だと言えます。これから数年間はますます熱くなっていく仕事だと確信しています。

──MSC局ではMarTechプロデューサーの採用を増やしていきたいと聞いています。人数の目標とその理由は?

上田
現在私も含めて5名のMarTechプロデューサーがいます。これを1~2年以内に倍の10名にしたいと考えています。

外注ではなくMSC局内に欲しい理由は、やはり博報堂がクライアントとの長年のお付き合いで築いてきた関係性をMarTechプロデューサーにも受け継いでいきたいからです。クライアントには長年築き上げてきたマーケティングの文脈があるわけで、それを無視してあるべき姿を描くことはできません。その文脈を引き継いだ上でプラットフォームを考えないと机上の空論になってしまいます。博報堂は長年、そのクライアントのマーケティングを考えてきた蓄積があり、文脈についての深い理解があります。それは博報堂の営業的な強みですから、外注先に引き継ぐわけにはいきません。

──しかしITエンジニアには、広告会社は自分には縁がないと思っている人も多いと感じます。

上田
私もそうでした。マーケティングという奥深そうなことを一から学ぶのは大変だと思っていました。しかし実際には日常での生活者感覚があれば、それで十分だとわかってきました。普段から「この商品は何で売れてるんだろう」「SNSである商品を紹介されても自分はなぜ惹かれないのだろう」などと自問することが大切なのです。そういう意味では、マーケティングは誰でも素養がある世界ではないでしょうか。

──とはいえ、ITエンジニアだけでなくビジネスサイドの人も、今まで持っていなかった専門性が必要だとためらうかもしれません。

上田
MarTechプロデューサーには、研ぎ澄まされた専門性は必要ありません。そのような専門領域はそれぞれの専門家に任せることが、MarTechプロデューサーの仕事です。私たちに必要なことは学問としてのマーケティングではありません。生活に密着したマーケティングです。なので気になる記事を、自分なりに考えながら読むという勉強の仕方で十分だし、むしろそのほうがいいのです。

少し背伸びをしながら成長していこうという感覚で、この世界に飛び込んで来てほしいなと思います。

博報堂マーケティングシステムコンサルティング局
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博報堂マーケティングシステムコンサルティング局では、クライアントの事業成長に資する戦略や新しいサービス開発を、構想から実装まで主体的にリードするプロデューサー、また高い専門性やクリエイティビティを武器にプロジェクトを推進するスペシャリスト人材を募集しています。プロデューサー、コンサルタント、デザイナーなど様々な職種・多様な価値観を持ったスタッフが協働する環境において、自分の専門性を積極的に拡張・越境し、新しい価値を創出できるクリエイティブマインドのある方を求めています。
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  • 株式会社博報堂マーケティングシステムコンサルティング局
    マーケティングシステム部ストラテジックプラニングディレクター
    SI企業を経て、2005年よりマーケティングシステムのサービス企画、
    プロジェクトマネジメントに従事。企業のデジタルマーケティング実行へのコンサルティング~システム導入~運用までシームレスに支援。