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マーケターとテクノロジストが融合したら? 生活者の“今”と“未来”をつかむマーケティング最前線
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マーケターとテクノロジストが融合したら? 生活者の“今”と“未来”をつかむマーケティング最前線

博報堂DYグループとして“生活者データ・ドリブン”マーケティングに一層注力していくことを掲げてから5年。博報堂DYグループのマーケティングは着実に進化し、グループならではの膨大な生活者データを活かしたサービスの形が次々と生まれています。その大きな要因が、今回ご紹介する「マーケターとテクノロジストがワンチームになる働き方」。これによって、本当にマーケターが使いやすいターゲティングツールの開発や、クライアントへのブランド単位ではなくカテゴリ横断の包括的な提案が実現しつつあります。マーケティングプラナーの佐藤 正徳、滝澤 暢之、テクノロジストの稲井 祐介に、“生活者データ・ドリブン”マーケティングの最前線を聞きました。

マーケターとテクノロジストがワンチームに

――今回は、博報堂内でもデータ活用が進んでいるチームに来てもらいました。まずは自己紹介をお願いします。

稲井
博報堂DYホールディングスマーケティング・テクノロジー・センター(以下、MTC)の稲井です。私は新卒で自動車メーカーに入社し、昨年11月に中途採用で博報堂に入社しました。現在は購買データを中心としたデータ活用推進や、外部とのアライアンスを通してデータ基盤の強化を担当しています。目下、社内用のターゲティングツールの開発に取り組んでいます。
滝澤
博報堂第一プラニング局の滝澤です。2017年に入社してから数社のブランド業務を担当してきて、今は某消費財メーカーのマーケティングに携わっています。僕は情報系の出身ではないんですが、稲井さんがチームに加わる前は、SQLとよばれる言語を独学でかじってマーケターがほしいデータを引き出す仕組みを暫定的に作ったりしていました。
佐藤
同じく博報堂第一プラニング局の佐藤です。2013年に博報堂に入社してからずっとプラナーをしてきましたが、昨年は1年間データドリブンマーケティング局に所属していて、入社してすぐの稲井くんと一緒にデータ活用に試行錯誤してきました。今は滝澤くんと同じ消費財メーカーを担当して、そこで新しいデータ活用の形を模索しつつ、クライアントに対しても、ブランド単体からカテゴリ全体のマーケティングを支援できる仕組みを探っています。

――若いチーム構成ですね。稲井さんはテクノロジーに明るく、滝澤さんと佐藤さんはデータにも強いプラナーという、守備範囲が広い布陣なんですね。

佐藤
そうですね。プランニングのメンバーとテクノロジーのメンバーとのハイブリッド体制を重視しました。市場や技術の変化の中で博報堂のマーケティング業務も進化し続けることが重要になってきています。データの高度活用についても外部パートナー企業と協業したり、外部のソリューションを導入したりすることもありますが、やはり社内でワンチームになれると本来の目的に向かってゼロベースで議論ができますし、精度もスピードも段違いですね。

マーケター目線のターゲティングツールの開発

――前提として、博報堂DYグループのデータ基盤として「生活者DMP」がありますが、その活用が今どこまで進んでいるかうかがえますか?

稲井
「生活者DMP」は、企業のマーケティング支援において重要な購買データはもちろん、メディア接触のログデータや多種多様な意識調査、タレントへの好意度まで、現時点でも本当に膨大な種類のデータを格納しています。第三者データホルダーとのアライアンスも日々進んでいますし、常に増えている状態です。
他のDMPと大きく差別化している点は、一面的な「消費者」として見るのではなく、他商品や他ジャンルを含めた購買の全体像はもちろん、暮らしのさまざまな場面における顕在・潜在の欲求、価値観に基づく行動も含めて、さまざまに感じ・考え・日常生活を営む「生活者」として360°まるごと捉えようとしていることです。これを適切に分析することで、生活者の“今”がわかる基盤です。ただ、この「適切に分析」という点が少し複雑で、例えば特定商品やブランドのマーケティングに活用したいときは、マーケターが仮説を元に条件設定をして、毎回プログラムを組んでデータを呼び出す必要がまずありました。

――毎回プログラムを組んで、というのは大変そうですね。

佐藤
そうなんです。せっかく、これだけ良質なデータが膨大な量あるのに、そのポテンシャルを活かしきれていないのでは、と感じていました。滝澤くんのように自分でプログラミング言語を駆使してデータを呼び出したりできればいいのですが、なかなか全員ができるわけではありません。それに、自分でプログラムを書くのはかなり大変だったと思います。
滝澤
大変でした(笑)。もちろん、汎用性のあるデータハンドリングツールは前からありましたが、少しずつ何かが足りず、本当にマーケターが使いたい形でゼロから開発したものではなかったので、「このデータをこう切れれば!」ともどかしく感じることも多くて。もっと業務にフィットした、かつデータの専門知識がなくても直感的に集計して活用できるツールがあったら、と考えていました。

――それが、まさに稲井さんが開発中のツールだと。

稲井
はい。具体的には、さまざまな属性や条件でパネルを切って、ターゲットをプロファイリングできるツールです。

実際の業務で活用しながらブラッシュアップ

――マーケティング戦略における複数の要素のうち、ターゲティングに特に注目しているのはなぜですか?

佐藤
そもそも、クライアントの商品・サービスのターゲットのデータを集めるのにすごく労力を費やしていた、という背景があります。確定したターゲットについて調査するならともかく、ターゲット自体を模索したり、新しいターゲット層を浮き彫りにするには、それこそ大規模な調査や分析が必要だったりします。調査をかけたら、実は隣のチームも同じような調査にお金をかけていたりすることもある。そうしたコストや時間を効率化するために、ターゲティングに注目しました。

――実際に、どのように開発しているのですか?

佐藤
プロファイルというと探偵っぽいですが(笑)、これはまさに稲井くんが僕らマーケターサイドに潜入して、僕らプラナーの思考回路やニーズを体感してくれたことが大きいです。技術系出身で、僕らがやっている「この人は何を考え、どういうニーズがあるのか」などターゲットを探るような生々しい部分にも興味を持つ人は貴重だと思いますね。
稲井
打ち合わせに同席したりすると、データから僕では考えもつかない方向へ話が広がって驚くことも多かったです。例えば、カレーパンをよく買う人がいたら僕は「辛いもの好きなんだな」くらいしか思いつきませんが、皆の議論ではほかによく買うものや意識調査とも突き合わせて、その人の行動や生活のスタイルの仮説があぶり出されていきます。それは生活者発想という博報堂のフィロソフィーに紐づいているんだろうな、と。
まだβ版の前段階なので、使ってもらいながらブラッシュアップしている最中ですが、実際のクライアントワークで活用しながら改善しているので、完全に業務に沿っていると思います。

――現在、佐藤さんと滝澤さんが担当している消費財メーカーの業務で活用しているのですか?

滝澤
同社を含め、現在は消費財メーカーを中心に数社の業務で活用しています。最初にセグメンテーションの試案を数パターン作成して、それぞれの購買データや意識データを抽出して見比べて、どれが最も適しているデータかを議論したりしています。事前に想定していたより手応えがなくても、アンケート調査やグループインタビューと違ってすぐに条件を変えて何度でもトライ&エラーができる。おかげでより精度の高いプランニングができますし、僕が以前もがいていたデータ集計の作業を全部ツールに任せて、プラナーとしての発想力を使うほうにより集中できるような感覚がありますね。まさに「遊びがあって無駄がない」、みたいな。

「カテゴリ・マネジメント構想」とは?

――遊びがあって無駄がない! いい表現ですね。クライアントには、どのように受け止められているのでしょうか。

滝澤
導き出したターゲットプロファイルや市場性について共有すると、その精度の高さや粒度の細かさに驚かれることは多いですね。実際にはいない人物を推定しているのではなく、アクチュアルデータに基づいていることが説得力として大きいと感じています。
ただ、多少は戸惑われる場合もあります。僕らは生活者を360°で俯瞰して捉えることには長けていますが、そのブランドや特定のカテゴリのユーザーについてはクライアントのほうに経験や知見の蓄積があるだけに、それに対して短時間で出てきたプロファイルの数字やデータはどの程度当てにできるものなのだろうか、と最初は半信半疑で捉えられることも多かったように思います。

――生活者DMPというフラットなデータソースから、本当に自社ブランドのマーケティングに示唆を得られるのか、という?

佐藤
そうですね。でもそれも、生活者DMPを元に抽出したターゲットの行動と、クライアントが実施したあるグループインタビューでユーザーが実際に話した生活行動がぴたりと一致していたことがあって、それを機に一気に信頼を得られるようになりました。こういうテレビ番組を見ているとか、こんなものを買っているとか。今ではこれまでの僕らの生活者理解を喜んでいてだいている、と手応えを感じます。
また、データ分析の精度や信頼度が高まっていることに加えて、生活者の“今”を市場性まで含めて俯瞰できることで、クライアントとの組み方も拡大しています。

――組み方の拡大、とは?

佐藤
「カテゴリ・マネジメント構想」と呼んでいるのですが、端的にはブランド単位ではなく、カテゴリ全体のマーケティングを支援する形です。いずれも、ここまでお話しているターゲティングツールを通して「これだけ俯瞰できるならブランドを横断的に担当してほしい」とご要望いただいている状況です。

データを中心に変わるワークスタイル

――なるほど、生活者を全方位的に把握できるからこそ、カテゴリ全体における最適なブランド戦略を考えられるわけですね。

佐藤
そうです。仮に某社のブランドAしか担当していなかったとしても、生活者DMPを基盤とするターゲット分析や市場分析をおこなうと、同じカテゴリのブランドBもCのことも見えてくる。むしろ本来、単一ブランドを考えるにしても市場全体を把握する必要があるので、今回のツール開発の背景にはそんな課題意識もありました。
クライアントとしても、本来はカテゴリ全体における最適化を望んでいるのに、これまでは前述のようにブランドごとの調査や戦略企画にかなりの労力が必要だったので、担当するエージェンシーを分散せざるを得なかったという事情もあったかと思います。これらが解消されているので、僕らは“ブランドチーム”から“カテゴリチーム”に移行しつつあるといえます。

――まさに、カテゴリのマネジメントを担うようになっているのですね。そういったクライアントとの向き合い方の変化や、データ活用の充実化を含めて、メンバーのワークスタイルも変わったのでは?

滝澤
そのとおりですね。特にがらっと変わったのは、データを中心に議論ができるようになったことです。
今回のようなツールがなかったときは、プラナーの経験則によるところが大きく、若手だと発想を広げたり鋭い仮説を立てたりするにも限界がありました。でもターゲットプロファイリングのデータをみんなで見ながらディスカッションすれば、若手ベテラン関係なくメンバーの数だけ新しい視点が出てくるのでどんどん議論が広がります。実際、生活者データを起点としたプランニングを浸透させるべく、僕が講師を務めた博報堂社内の新人研修でこのツールを活用したグループワークを先日実施したんですが、そうしたら想像以上にいい視点が次々と出てきて、データドリブン化の効果を実感しました。
稲井
僕もその研修に同席したんですが、データ分析が初めてでもここまで読み解けるんだと、ちょっと焦りました(笑)。データが中心にあれば、もうそれが証拠なので、若手もベテランもフラットに議論ができると思います。そんな部分でも、ツールの意義があったと感じます。

――データ活用の民主化といった感じですね。逆に、データの限界を感じるところはあるのでしょうか?

佐藤
ありますね。それは、データがいくら厚くてもそれだけでは未来洞察はできない、という点です。その点を補完するために、英Black Swan社と提携して、未来洞察のためのBIツールである「Trendscope」(参考記事)を活用し、世界中のオンラインデータから今後の流行の兆しを見出すことなどもしています。
滝澤
その情報をまた生活者DMPに入れ込んで、では実際にどういう人たちがそのトレンドに目を向けているのか、共通点や今買っているものをウォッチしたりしています。“今”を見る動的なデータに“未来”の観点を加えて、一歩深いプランニングを模索しています。

――今の分析と未来洞察を行き来しているわけですね。最後に、今後の展望を聞かせてください。

佐藤
冒頭でも、博報堂のマーケティング支援業務が激変しているとお話しましたが、今後は僕らのチームを皮切りに、もっと変化が加速していくと思います。そうなるように成功例や知見を他部門にも開いていきますし、ターゲティングプロファイリングツールも汎用化を進めます。ひいてはより多くのクライアントと、ブランドからカテゴリ全体のパートナーシップを築けるように尽力したいと思います。
  • 博報堂 第一プラニング局 兼 CMP推進局
    ストラテジックプラナー
    2013年博報堂入社。トイレタリーを中心に、食品、家電、ファイナンスなどの領域で事業戦略やブランド戦略、商品開発、コミュニケーション戦略など、マーケティング領域全般の戦略立案を担当。自社ソリューションの研究開発にも取り組む。
  • 博報堂 第一プラニング局
    ストラテジックプラナー
    2017年博報堂入社。生活者DMPや未来洞察BIツールをはじめとした先端ソリューションと在学時代の都市研究やまちづくりで培った経験をかけ合わせた生活者洞察を得意とし、化粧品やスキンケア・ヘアケアといったパーソナルケア領域を中心に、個別ブランドからカテゴリポートフォリオ視点まで幅広いレイヤーでのマーケティングおよびコミュニケーション戦略、ブランド開発などに携わる。
  • 博報堂DYホールディングス
    マーケティング・テクノロジー・センター 研究員
    2018年博報堂入社。大手自動車メーカーにてサプライチェーン・マネジメントを経験した後、マーケティング・テクノロジー・センターにジョイン。購買データを中心とした生活者DMPの基盤構築、マーケティング活用業務に携わる。