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~生活者へデータ取得・利用に関する情報の透明性を高め、 健全なデータドリブンマーケティングを実現する~ CMPツール 国内展開への挑戦
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~生活者へデータ取得・利用に関する情報の透明性を高め、 健全なデータドリブンマーケティングを実現する~ CMPツール 国内展開への挑戦

デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)は2019年4月、ヨーロッパで事業を展開するSourcePoint社と提携し、同社のCMP(Consent Management Platform)ツールを日本国内で展開すると発表しました。CMPは、サイトやアプリ上にユーザーデータの取得・利用に関する情報を表示し、利用者の同意を得るためのものです。今回、SourcePoint社と提携した理由や、CMPを国内で提供する目的について、DACイノベーション統括本部 研究開発局 広告技術研究室長の原田俊と、グローバルビジネス本部 グローバルアライアンス戦略部長の田畑光介に聞きました。

原田
当社の研究開発局は、DACや博報堂DYグループのプロダクトやナレッジ、プロセスなどのイノベーションを扱う部署です。私が所属する広告技術研究室では、主に海外の事業者や業界団体の動向を情報収集し、経営戦略やプロダクトイノベーションを起こすための戦略立案を支援しています。実際に開発をするのはプロダクト開発本部で行っていますが、R&Dからビジネス開発の手前までを担っています。
田畑
グローバルビジネス本部はグローバル関連のR&Dや営業、メディア、トレーディングデスクなど様々な機能があります。私が所属しているグローバルアライアンス戦略部は、海外のメディアやテクノロジーのR&Dなどに関して、原田さんが所属する広告技術研究室と連携しながら取り組んでいます。新たに見つけてきたサービスについて、海外企業と折衝してパートナー契約を結んだり、それをどうビジネスに落とし込むか、国内でどう展開するかといったことを検討したりしています。
原田
私の部署は領域、範囲にコミットしていて、田畑さんの部署は企業にコミットしているといった具合ですね。二部署合同で“Lab+(ラボプラス)”というバーチャルラボの取り組みを行っており、週一回ほど情報を共有しています。CMPとの提携も、このLab+での調査活動がベースとなっています。

―それでは、はじめに、 「CMP」とはどのようなツールなのでしょうか。

原田
このようにサイトを開くと、ページ下部(場所はサイト上部や中央等も指定可能)に「ダイアログ」が出てきて、「弊社は、皆さまのデータを広告等の目的で使用させていただきます。詳細を確認されたい場合は以下を参照してください」といったメッセージが表示されます。包括的に同意するボタンもありますが、詳細を確認したい場合はボタンを押して、「プライバシーマネージャー」といわれる詳細画面に遷移し、情報保存やターゲティング広告といったデータ利用目的ごと、GoogleやFacebookなどのプラットフォームごとにデータ利用・提供の可否を選択することができます。ここで選択した内容は、そのサイトでデータ収集を行っているプラットフォーム各社に伝達され、プラットフォームは、そのユーザーの、同サイトにおける、その目的でのデータ収集を停止させます。こういった一連の仕組みを実現させるツールがCMPです。

データの利用目的、ベンダーリストの正規化、プラットフォームへのデータの受け渡し方法については、米国のIAB Tech LabがGDPR (EU一般データ保護規則)対応フレームワークとして標準化しています。今回提携したSourcePoint社のCMPは、IABのフレームワークに完全準拠しています。

―CMPを日本で展開しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

原田
GDPR施行によりCMPが欧米で広がっていたことは知っていたので、日本でも将来的に必要となるかもしれないと考え、以前から導入に向けて動いていました。当初はもう少し先の予定でしたが、2019年2月に「日本ではサイトアクセスで取得したデータの情報共有先を、5割のサイトが明示していない」との調査結果が報道されたことで、GDPR対応に限らずとも、企業からのニーズが高まると考え、発表を急ぎました。
日本の大半のサイトは、まだまだ米国やヨーロッパなどグローバルからのアクセスは少ないですが、将来グローバル化が進み、アクセスが増えれば、それらの地域の法令(GDPRやeプライバシー指令/規則、CCPAなど)を遵守する必要が生じますし、仮に法令上は関係ないとしても生活者への透明性を重視する広告主、媒体社は確実に増えています。そのような企業は生活者に対してしっかり向き合っていることを示し、信頼感を醸成したいとお考えです。そのことに鑑み、必要なツールをできるだけ早くご提供できたらとの思いで今回の発表に至りました。

 
ここまでCMPのお話をしていましたが、こういったデータの透明性を高める取り組みはCMPに限ったことではありません。ソーシャルメディア側は既に、自分たちがユーザーから集めたデータや推測したデータを可視化しています。例えばFacebookのプライバシーダッシュボードでは、ユーザーは、自分が何に興味・関心があるか、何にいいねをしたか(広告含む)、といったことを一覧で見ることができます。興味・関心があると推測されたトピックをユーザー側でオフに(マーケティング利用できなく)することも可能です。DACで提供しているDMP「AudienceOne®」でも同様のことを始めています。

田畑
2018年の1年間でGoogleのプライバシーダッシュボードである“マイアクティビティ”には、25億回の訪問があったそうです。プライバシーダッシュボードを設定するということがピンとこない方も多いかもしれませんが、欧米では既に一般の人にとって、自分のデータの使われ方について当たり前に関心がある事柄になってきています。
原田
自身のデータ利用に関する設定をする、ということについて、日本国内ではまだ関心は高くないので、DACの取り組みから広がっていくといいですね。

―SourcePoint社との提携の決め手は何だったのでしょうか?

田畑
SourcePoint社と同様にIABの認定を受けているツールは数10程度あり、それらを比較しました。SourcePoint社はIAB Europeと距離が非常に近く、それが決め手の一つになりました。ヨーロッパからのアクセスに関するデータを取り扱う場合、GDPRというヨーロッパの法律に準拠する必要があります。当社は米国のIAB Tech Labに入っているので米国の情報については比較的に入手しやすいのですが、ヨーロッパの細かなレギュレーションをキャッチアップできるかどうかには不安がありました。SourcePoint社であれば、その心配がありませんでした。
原田
もう一つ大きかったのがSourcePoint社のツールが、広告主への対応も可能なことでした。媒体社向けのツールはあったのですが、我々としては広告主にもツール提供できることが重要でした。広告主サイトでのデータ収集・活用はかなり進んでいて、リターゲティング広告のためのデータ収集や、CDP(Customer Data Platform)によるデータの統合など、データ収集・活用をするために同意を取得・管理できる機能というのは求められていると思っております。実際に、グローバルに視野を広げられている企業、ユーザーデータをセンシティブに取り扱われている企業からのお問い合わせは多くあります。
田畑
SourcePoint社が日本市場への進出に強く興味を持っていたこともポイントになりました。他のベンダーには規模の問題があったり、日本市場がスコープに入っていなかったりしました。広告主への対応という点も、当初SourcePoint社が対象としていた媒体社のみでなく、「日本の広告主はオウンドサイトの設計やそこに集まるデータの取り扱いなどについても非常に真剣に考えている」ということを伝えたところ、市場のニーズや違いを踏まえ、フレキシブルにビジネスモデルを対応してくれた点で、パートナーとして非常に心強いと思いました。

―今後の展望について教えてください。

原田
CMPを普及させるには、まず使っていただく広告主、媒体社を増やしていくことが重要です。クライアントの皆様が導入しやすいような価格面の設定などは、今回特に苦労した部分です。実際に取り組んで行く中で、媒体社や広告主にも納得いただける形を実現できたらと思っています。既存の「プライバシーポリシー」の文面だけではわかりづらいことでも、CMPならわかりやすい形で示すことが可能です。オプトイン同意に不安を覚える方も多くいると思いますが、実際ヨーロッパでは、CMPによる離脱率は低いようです。自社のデータマネジメントの信頼性をアピールするための根拠としても本ツールを使っていただけたら、我々も嬉しいです。

導入の前段階として、認知や啓発活動も大切だと思っています。DSPやSSP、DMP事業者の業界団体DDAI(Data Driven Advertising Initiative)などとも連携して、活動していきたいと考えています。ユーザーのデータは、CMPで同意取得できたベンダーにしか提供されません。DSPやSSP事業者にデータ連携するDMP事業者にもそういったことをお伝えしていかなくてはなりません。

田畑
データはそれを取得した企業だけにメリットがあると考えられがちですが、生活者側も利益を享受できる部分があります。生活者と企業がお互い納得できる形を見つけたいと考えています。
  • デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)
    イノベーション統括本部 研究開発局 広告技術研究室長
    2008年デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム入社。社内システムや広告配信ソリューションのインフラシステム開発・運用業務に携わった後、2012年より広告技術研究室にて国内外のアドテクノロジーおよび先端技術のマーケティングリサーチ、ビジネス企画業務に従事。また日本インタラクティブ広告協会(JIAA)やData Driven Advertising Initiative(DDAI)、情報法制研究所(JILIS)にて生活者のプライバシー保護を推進。
  • デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)
    グローバルビジネス本部 グローバルアライアンス戦略部長
    2012年、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム入社。
    現在はグローバルアライアンス戦略部にて海外の市場調査、
    メディアやアドテクベンダーとのビジネス企画、提携業務に従事。