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AIカメラの活用で、オフラインの購買・非購買行動を見える化する
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AIカメラの活用で、オフラインの購買・非購買行動を見える化する

博報堂DYグループの読売広告社は、2019年4月から「“インストア購買・行動”解析サービス」の提供を始めました。同サービスでは、店舗に設置したカメラの映像をAIで分析し、その結果と顧客ID付きPOS(ID-POS)データを組み合わせるなどして、ドラッグストア店舗内における顧客の購買・非購買の行動プロセスを見える化します。サービスを開発した経緯や、従来手法との違いなどについて、読売広告社 データドリブンプランニング局 インストアブランドコンサルティングルーム(ISBC)の塩見淳二に聞きました。

様々なドラッグストアとの関係性が強み

現在、私が所属しているインストアブランドコンサルティングルーム(ISBC)は、店頭起点でのプロモーションをご提案する部署です。ISBCは、私を含め日用雑貨メーカー出身者など、ドラッグストアに従事してきたメンバーで構成されており、店頭起点の強みを持つソリューションを提案するには、適した人材だと考えています。

ISBCではまず、売り場を実際に見に行ったり、ID-POSを分析したり、ドラッグストアのバイヤーの声を聞いたりしながら、そのブランド(商品)の課題を見つけます。次に、その課題に対して立てたプランの仮説検証を実際の売り場を使って実行します。ここまでは従来のソリューションで行ってきたことですが、今回はAIカメラを融合させたことにより、リアル店舗でのショッパー行動の把握・検証ができるようになりました。

広告会社は担当ブランドを軸に、いかに効率よくプロモーションを行うか?を考えますが、小売り側はその商品を含むカテゴリー・店舗全体の売上を伸ばしたいと考えています。ですので、我々は担当しているブランドの価値もアップさせつつ、カテゴリー全体を最適化できるような、また小売り側にメリットが創出されるようなプランであることを意識しています。こうすれば、我々にとっても“成功事例を横展開できる”というメリットがあります。

カテゴリーの全体最適を考えるため、我々は日頃からドラッグストアのバイヤーを通じたり、一店舗ずつ店舗をまわるなどして様々なドラッグストアと関係を築いています。
いただいたID-POSなどのデータを分析し、どのようにカテゴリーの棚を作ればいいかをご提案します。実証実験を行う際は、ドラッグストアの激戦区であったり、生活者が他店舗で買い回りをしないような場所で行わないと効果が見えづらいので、ストアロイヤリティの高い、地場のリージョナルチェーンを中心にご協力いただいています。こうした店舗と関係があることは我々の大きな強みであると自負しています。

店舗での売り場作りは、本来はメーカーが担当すべき部分ではありますが、少数気鋭のメーカーの場合、なかなか人手が足りていないという現状があります。そうしたメーカーを、ISBCのこれまでの実績・ノウハウで少しでもサポートできたら、という思いでサービスを開発・展開しています。

買わなかった人の行動まで把握可能に

これまでの現場で起きていた課題をお話しすると、例えば皮膚治療薬といわれるカテゴリーで現在約80の商品があるなか、どの商品もパッケージで訴求している内容はほとんど一緒です。でも実際は効き目に“ストロング”、“ミディアム”、“ウィーク”という違いがあるんです。しかしその点については、生活者が店頭では判断しづらい状況にあります。

これをきっちりと商品分類すると、生活者が選びやすくなるので売り上げが伸びる傾向にあります。ただ実際は、店舗の改廃などもあり、しっかり棚割をメンテナンスできている店舗は少なかったりします。そのため、ISBCの取り組みによって生活者が選びやすい売り場が1店舗でも多く増えるよう、お手伝いをさせていただいております。
 

ここまでやってID-POSを見ると、「施策によって、担当ブランドのみならず、カテゴリー全体の売上がいずれも2桁以上伸びました」といった結果が分かります。ID-POSの分析まで手が回っていないメーカーも多いので、これだけでも大きな成果だと言えるのですが、まだ課題があります。「商品を手に取って購入を検討したものの、買うには至らなかった」という人の記録が残らないことです。

購買してくれた人を大事にするのはもちろんですが、購買と非購買のプロセスを見える化できれば、「商品を手に取ったけれども買わなかった人」を購買まで導けるようになるかもしれません。
具体的には、「50代の女性がよく商品を手に取っているけれども棚に戻している」ということが分かれば、その世代に訴求するようにパッケージを作り変えたり、POPを作ったり、といった施策を打つことができます。こうした課題を解決するための手段として、この“インストア購買・行動”解析サービスを考えました。

もう一つ背景としてあるのは、オンライン上のECサイトでは、商品の購入を検討して買わなかった人がどこのページで離脱し、ではどう手を打つのか、と考えることが可能です。リアル店舗でも非購買者の行動を把握することで、離脱プロセスが浮き彫りになり、打ち手のヒントになるのでは?と考えています。

AIカメラを使うことで、POPなど販促物の効果も分かる

店舗では、基本として陳列されている通常の棚を“定番”、その棚の端にある向きが90度変わっている“エンド”棚、島陳列などプロモーション棚を“アウト”と規定した場合、本サービスでは、定番の売り場を映すカメラを設置し、映像によって定番から売れた数が把握できますし、アウトの数も全体の売れ行きから定番を引くことで分かります。

アウトの棚で大きな展開をしている場合に、定番の棚での売上がほとんどだとしたら、アウト展開の効率が悪いということになってしまいますよね。こうしたデータが把握できれば、定番とアウトの割合をどう設定すべきかを高い精度で検討できます

例えば水虫薬など、買う際に“恥ずかしい”と感じる人がいるような商品は、定番の方が売れやすいことが知られています。一方でドリンクなどの日常的に使う商品はアウトの方がよく売れます。
また、POP等の販促物の設置による、購買プロセスごとの立ち寄り~商品接触~購入といった各々の歩留まりも分かるようになり、販促物の効果も見える化できます。
AIカメラを使うことで、より精緻にこうした傾向を掴んだり、別の商品についても傾向を見出すことが可能になります。

今回採用しているコニカミノルタ社の「Go Insight」は、同社のカメラとAI技術を組み合わせたソリューションです。天井に付けたカメラ映像から顧客の頭部を自動で認識し、年齢を“ティーン”“ミドル”など5つのクラスタに分けます。そしてどれくらい売り場に滞在したのか、棚の前でどんな行動をしたのかといったことを解析します。映像の顔の部分には、ぼかしが入るため個人情報についてもケアされており、セキュリティ関連の技術が豊富に備わっているのも採用した理由のひとつです。

このGo Insight で得られるデータをベースに、ID-POSのデータと組み合わせたり、当社独自の知見を生かしたデータ分析法などを取り入れたのが、今回発表したサービスです。
コニカミノルタ社は印刷機を製造してきた流れから、店舗の販促物作成も請け負っています。販促物を提供する際、メーカーから「これは本当に効果があるんですか」「効果検証はできますか」と聞かれることが良くあったそうです。そうした要望に応えるために開発したのがGo Insight だということでした。

AIカメラは他社も開発していますが、多くは流通側の視点に立ったもので、カメラを複数台使います。一方でコニカミノルタ社は販促物を扱ってきたことから、ブランドの買われ方に焦点を当てており、使うカメラも1台です。その精度が非常に高く、我々が利用したいデータを得るのにとても適しています。視点が我々と共通していたこと、非常に活用しやすいと感じています。
コニカミノルタ社からも、「今回の協業によって広告会社の視点が入り、適用領域が広がることを期待しています」と言っていただいています。

今回のサービスは経済産業省や総務省が出しているカメラ画像利活用についてのガイドラインに則っています。またカメラを使う店舗は、エクスキューズとしてレジのところに「マーケティングに映像を使っています」という張り紙をします。店舗には映像データが残らず、コニカミノルタ社が管理するクラウドに溜まります。映像から特定のデータだけをCSVとして抽出した後は、元の映像データを消去します。我々はセキュリティに配慮し、生のCSVデータはできるだけ受けとらず、サマリーデータをいただく形にしています。

リアル店舗での反応を、マーケティングやクリエイティブに反映したい

将来的にはAIカメラの映像データに、博報堂DYグループの持つテレビ視聴データや生活者データを掛け合わせていきたいと考えています。
店頭で生活者が行うスマホ検索についても、何らか連携する機能を開発したいです。例えば医薬品の場合は、店頭だけでは情報が不十分なので、商品棚の前でスマホ検索する人が多いんです。こういった生活者に対して、デジタルから接触する施策も考えられるはずです。お店の人に質問をしたくないという人も居ますし、ニーズのある機能だと思います。

また、マーケティングやクリエイティブについて、店頭の反応を逆上がりで返すような作り方があるんじゃないかなと考えています。現在はマーケティングがまずあって、それが店頭プロモーションまで落ちてきます。しかし、マーケティングで設定したターゲットは20代なのに、店頭での購入者は30代が多かった、ということであれば、ターゲット設定を見直す必要が出てきます。店頭での反応を、マーケティングやクリエイティブに反映していくような流れを作っていけたら、と思っています。

  • 株式会社 読売広告社
    データドリブンプランニング局
    インストアブランドコンサルティングルーム(ISBC)
    1997年日用雑貨メーカー入社、薬系卸店・ドラッグストアへの営業活動に従事した後、企画部でブランドマネージャーとして商品開発・マーケティング戦略全般を担当。
    2002年に読売広告社入社。以来、プロモーション領域全般での業務に携わり、現在は、店頭マーケティングの領域に特化、実売り場を活用した店頭実験・ID-POSデータ分析等、他代理店にはない独自のソリューションを実践している。担当クライアントは、DGS攻略に課題を持つ、製薬・食品・飲料メーカーなど多岐にわたる。