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ヒット習慣予報 vol.296『遠未来スタイル』
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ヒット習慣予報 vol.296『遠未来スタイル』

こんにちは、ヒット習慣メーカーズの中久保です。

2023年も終わりが近づいてきましたね。今年一年を振り返りながら、すでに来年のことを色々と考えている方も多いのではないでしょうか。
私自身はというと、今年は若い世代を中心に流行しているレトロブームに乗っかり人気スポット巡りを楽しんだ一年で、来年はどんなことにハマるか妄想する日々を過ごしています。
vol.184『平成レトロ』  でもご紹介したように、ここ数年は、ギャルカルチャーやY2Kファッション、フィルムカメラなど過去に流行したファッションやアイテムがリバイバルし、現代の若者に親しまれてきました。
しかし実はいま、それとは真逆のベクトルである未来的なモノやコトが注目されているのをご存知でしょうか。昭和や平成に流行したものに改めて価値を見出す懐古主義的な習慣とは違い、遠い未来を羨望し、非日常的な世界観をファッションや食のスタイルに取り入れる若者が増えてきています。今回、これを「遠未来スタイル」と題して、生活者の新たな兆し習慣をご紹介します。ちなみに、「近未来」が100年ほど先の未来を表すのに対し、「遠未来」とは1000年以上先の遠い未来のことを指します。

最も「遠未来スタイル」を象徴する新たなトレンドが「Y3Kファッション」です。2000年代を意味するY2Kのスタイルが注目される一方で、3000年代を意味するY3Kという未来を彷彿とさせるようなスタイルが、ファッションを中心に若い世代に広がりを見せています。
実際に、Googleトレンドの服飾カテゴリで「未来」というキーワードが約10年で2倍近くの検索ボリュームになっており、新たなファッションスタイルのカテゴリを築きつつあります。

服飾カテゴリにおける「未来」の検索数推移

出典:Googleトレンド

Y3Kファッションでは、デジタルなイメージを表現するためのメタリックカラーを随所に効かせたり、メタバース上のアバターやSFコンテンツの登場人物であるかのようなプラスチックや金属など硬い素材をアパレル用品に多く取り入れたりしています。また、鮮やかなカラーのワイヤレスヘッドフォンや決済機能付きのスマートリングなど最新ガジェットをファッションアイテムとしてコーディネートに組み込むのも、Y3Kファッションの特徴の一つとなっているようです。

さらに、その延長で注目されているのが「AIモデリングメイク」です。
先ほどのY3Kファッションの流れを踏んだ新たなメイク分野のトレンドですが、ただ3000年風のメイクを仕上げるだけではありません。1000年後の自分をテーマにしたアバターをAIが創り出してそれを模倣する、AIを活用したメイクアップが、中国・韓国発で主流となってきているようです。具体的には、CGっぽさを感じさせる微光沢の均一な肌質に仕上げたり、ラメやストーン、偏光パールを大胆に重ねてSFチックに演出したりするのが特徴です。

また、未来の食事をテーマにした「異空間のエンタメ食」もにわかに注目されています。
3000年代をイメージしたサイバーパンク的な世界観の飲食店がここ数年で増えてきて、まさに自分が未来に来たかのように食をエンタメとして楽しむ若者が増えています。
3Dフードプリンターで作成したデザートや、生成系AIが考案したアルコールドリンクなどを提供されるコンセプチュアルな空間で、Y3K風にAIフィルターなどの加工を施してSNSにアップして楽しめるのが人気のようです。実際に訪れた人のコメントを見ると、1000年後のメニューを想像するのが非日常的で楽しいといった投稿が散見されました。

このほか、食の分野では、3000年代をコンセプトにした「未来の味」をAIで開発した飲食料が飛ぶように売れたという最近の事例があるなど、企業マーケティングにも注目されているようです。

では、なぜいま日常に遠未来感を取り入れることが、若者の習慣となりつつあるのでしょうか。

ひとつは、クオリティの高いコンテンツを、誰もが簡単に生み出せるようになったことがあるかと思います。特に生成系AIなどの誕生により、生活者とテクノロジーとの距離がグッと縮まることで、SF映画や漫画の世界だけの話だった「未来」が、スマートフォンを通してよりリアルに体験できるようになりました。その結果、今の若者は、遠い未来の世界であっても、お互いに共感しやすいある種のコンテンツになってきた気がします。
そしてもう一つは、ジェンダー観やルッキズムなどの社会通念がなかなかアップデートされない社会から逸脱したいという、若者の心情のあらわれもあるのではないかと考えます。Y3Kなどの流行は韓国アイドルから始まっていますが、若者に絶大な支持を集めるとされるK-POPアイドルは、これまでのジェンダーロールにとらわれないアイドルというコンセプトを、遠未来的な世界観で表現しています。それまでのアイドルらしさから一線を画し、他人ウケを下手に狙わない独創的な世界観が、若者の心をグッと掴んでいます。過去や現在にとらわれることなく、自由に想像や表現ができる遠未来の世界感は、凝り固まった現代の既成観念に縛られないという、自己表現のひとつになっているのではないでしょうか。

最後に、「遠未来スタイル」のビジネスチャンスをいくつか考えてみました。

「遠未来スタイル」のビジネスチャンスの例
■AIが生活者それぞれに合わせたY3Kコーディネートをレコメンドしてくれるスマートミラー
■未来の世界を舞台とし、自分もその主人公になりきれる没頭型のVR映画
■企業や業界の動向をもとに、遠未来をコンセプトにした商品・サービスアイディアを提案してくれるAIプラナー

最近なにかと話題になるAI技術によって、私たちの日常生活での楽しみも増えるのではないかと思うとワクワクしてきます。現在の日常に疲れたら、皆さんもぜひ遠未来に想いを馳せてみましょう。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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  • 北海道博報堂 / ヒット習慣メーカーズ メンバー
    2023年に北海道博報堂に入社。統合プラナーとして成長すべく修行中。
    古都への憧れから大学4年間は関西に住み、札幌にUターン就職。
    休日は運動のために1日に4万歩歩くこともあるが、その目的は美味しい食べ物なので結局はカロリーオーバーしている。