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ヒット習慣予報 vol.295『レトロ超えて伝統@韓国』
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ヒット習慣予報 vol.295『レトロ超えて伝統@韓国』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの上利です。

今年は暖かい時期が長く続きましたが、近頃めっきり寒くなりましたね。
私は暖房の乾燥が気になる日々を過ごしています。
寒いときは甘酒やこたつなど、伝統的な温めグッズを重宝する方も多いでしょう。
今回は、お隣の韓国で若者に人気を集めているモノをヒントに、『レトロ超えて伝統』をテーマに取り上げます。

1つ目にご紹介するのは、「薬菓(ヤックァ)」です。

薬菓とは、小麦粉に蜂蜜やシナモンを混ぜ合わせた生地を油で揚げた、韓国の伝統的なお菓子です。お花のような形が特徴的で、韓国では古くからおやつとして、また先祖のお供え物やお正月などの祝い事のお菓子として食べられてきました。
その伝統菓子の薬菓が、最近はなんと若者に人気なのです。有名店の薬菓は行列必至の争奪戦、コンビニ各社も次々と薬菓商品を開発し、売上を伸ばしています。
また、若者向けのカフェでは薬菓をアレンジした薬菓アイスクリームや薬菓ケーキ、薬菓ドーナツに薬菓マカロンが提供され、薬菓は現代のスイーツと融合しながら目覚ましい進化を遂げているのです。
薬菓の話題はSNSを通じて日本にも届いており、韓国旅行のお土産や現地カフェで楽しむスイーツとして、日本の若者の間でも注目が集まっています。

2つ目は、「伝統酒」です。

韓国の伝統酒とは、お米で作ったマッコリや、清酒・焼酎のことを指します。
韓国では元来マッコリは中高年男性に好まれるお酒とされ、生産量も減少傾向に落ちていたのですが、近年は20-30代の若者からの人気が高まっているそうです。
また、単に消費者として楽しむだけでなく、醸造を学んで伝統酒市場で起業する若者も増えています。洗練されたデザインを冠した新興ブランドが続々誕生しており、こうした新興ブランドは比較的高価格であるにも関わらず人気を博しているのです。
韓国政府も伝統酒の普及を後押ししており、2015年ソウルに「伝統酒ギャラリー」をオープンして展示や試飲イベントを行っているほか、酒類のインターネット販売も当初伝統酒に限って解禁されました。

最後に、「お守り」です。
お守りは韓国語で「부적(ブジョク)」といい、黄色地に赤文字が書かれたものが伝統的ですが、最近韓国で若者に人気なのは、イラストレーターが可愛らしいイラストと共に描いた「イラストお守り」です。
アイドルのフォトカードのような大きさのカード型のものが多く、メッセージも「全部うまくいくお守り」「勇気が出るお守り」といったゆるいメッセージが記されています。
人気イラストレーターがイラストお守りを販売したポップアップショップは3時間待ちの大行列と、凄まじい盛り上がりを見せました。

では、なぜこうした伝統品が若者の間で次々と話題になっているのでしょうか?
理由は大きく2つあると考えられます。
1つ目は、レトロブームです。日本でも純喫茶やフィルムカメラに象徴される「昭和レトロ」、Y2Kファッションに象徴される「平成レトロ」が流行となっていますが、韓国でも同様にファッションや音楽などのカルチャーでレトロブームが巻き起こっています。


▼「레트로(レトロ)」の検索数推移(検索対象:韓国)

出典:Googleトレンド

こうしたレトロブームの延長線上で、さらに時代を遡った伝統品への着目が発生したのではないでしょうか。

2つ目は、グローバル化が進んだ社会に生きる中で、自らの民族的なルーツへ目を向ける意識が働いていることです。この傾向は世界各国の若者の間で見られており、中国では「古雅品(グファジン)」と呼ばれる伝統的なアクセサリーがZ世代の間で売れているほか、ニュージーランドでは先住民族の言語であるマオリ語の名前を子どもにつける親が増えているそうです。韓国の若者にとっても、自国の伝統文化に目を向ける行為が自身のアイデンティティを支えている側面があるのかもしれません。

最後に、「レトロ超えて伝統」のビジネスチャンスとしては下記のようなことが考えられるのではないでしょうか?

「レトロ超えて伝統」のビジネスチャンスの例
■日本の伝統菓子と韓国の伝統菓子を組み合わせたスイーツ
■韓国伝統衣装「韓服」のデザインを生かしたファッション
■まるで宮廷ドラマのような、中世貴族の食事や暮らしを再現したホテル

みなさんの周りを見渡してみると、どんな「伝統」が目に入るでしょうか?
今回は韓国の事例を紹介しましたが、来るお正月は、日本の伝統文化を日本の若者がどうように楽しんでいるのか、注目しながら過ごしてみようと思いました。
令和の新商品やトレンドも、いつかは「令和レトロ」になり、数世紀後には「伝統」になっているかもしれないと思うと、なんだか不思議な気分ですね。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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  • 博報堂 第一ブランドトランスフォーメーションマーケティング局
    ヒット習慣メーカーズ メンバー
    2022年 博報堂に入社。
    ミュージカルとKPOPのオタク。週末はサークル時代の仲間と演劇やダンスの練習に励んでいます。