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ヒット習慣予報 vol.284 『趣味のアート化』
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ヒット習慣予報 vol.284 『趣味のアート化』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの村山です。

夏もそろそろ終わりかな、と思っていたら、まだまだ暑い、秋という季節がなくなったかのように感じる今日このごろですが、いかがお過ごしでしょうか。自分としては、(暑すぎるのはカラダこたえますが)暑い夏の夜に飲むビールが最高に好きなので、夏が長いのはうれしいのですが、夏が好きな理由はもう一つあります。それは“植物を育てるのが楽しい”季節だから。何をかくそうここ数年おうち時間が伸びたことをキッカケに植物にドハマリしているのです。それも「塊根植物」という珍しい植物にとてもハマり、絵画のように飾っています。ということでこの「塊根植物」にハマったことに端を発する「趣味のアート化」を今回のヒット習慣のテーマにしたいと思います。

1つ目の事例がその、「塊根植物」です。事実、コロナ禍を契機にGoogleトレンドでも驚くほどの検索数の上昇がみてとれます。

「塊根植物」の検索数推移

出典:Googleトレンド

この検索数の推移をみても、2020年あたりから徐々に上昇トレンドになり、2021年から倍以上の検索数を記録していることが見て取れます。なぜ、これだけの人気がでたのか?その背景を「趣味のアート化」を切り口に考察していきます。

まず、やはり最も大きかったのはコロナ禍によるおうち時間の増加による「癒やし」や「自分なりのお家時間を充足させることができる趣味」への渇望が大きいと思います。わたしもずっと家の中にこもっている生活が続く中で、何か没頭し熱中できる新しい趣味を求めました。緑や自然に癒やされたり、毎日手をかけて育てることでちょっとでも成長している変化を実感し幸せを感じることができる植物に興味がわいたのです。つぎに「ストリート・ファッションカルチャーと植物カルチャーの重なり」があげられます。友人に植物を趣味にしようと話してみたところ「グラキリスって知ってる?」と尋ねられ、その聞き馴染みのないカタカナに最初は「???」となったのですが、「高価で成長も遅いんだけど、形がかっこよくてさながらアートのように十年スパンで育てて楽しめるから今ストリートとかファッション好きの間の中で密かな話題になっているらしい」と。調べてみるとまずはその値段の高さに目玉が飛び出たのですが、たしかにそれはさながら「生きているアート」のようでした。さらに調べていくと一つとして同じ個体がないそのバリエーションがコレクション欲をそそるだけでなく、「グラキリス」には「パキポディウム・グラキリス」という名前があり、同じ「パキポディウム属」には「パキポディウム・マカイエンセ」「パキポディウム・デンシフロラム」のように似ているけどよく見るとたしかに違うといった兄弟分のような植物が存在すること。また塊根植物というカテゴリーにおいては「オペルクリカリア・パキプス」(とんでもなく高額!)や「アデニア・グロボーサ」のような全く違う呪文のような名前をつけられた多種多様な植物が存在することも知りました。この多様性(種類の多さ)と周囲のコミュニティの中で自分しかたぶん知らないであろう呪文のような名前が癖になり、一気に自分の中で「単なる癒やしのための植物」が「所有することで高揚感を覚えるアート」へとパーセプションがガラリと変わったことを記憶しています。

※写真はイメージです

2つ目の事例は、このデジタル時代に、高額な文房具が売れているという現象です。たとえば、使い捨てだったサインペンを「使う所作が美しくなること」をコンセプトに高級化(アート化)したことで大ヒットを記録していることが挙げられます。他にも、シャープペンシルの替芯をエコにも配慮した上で、素材を金属製にして高級感と耐久性をあげた上で、もっていたくなるデザインにしたことでヒットした事例もありました。この文房具にも前々から文具マニアのような熱狂が存在し、アートともとれるようなデザイン性やここまでやるの?といったマニア心をくすぐる機能性が付加された時に、「生活における必要性」を超えて趣味欲を刺激する新しいマーケットの兆しを感じられるように思います。

3つ目の事例としては、「編み物」があげられます。コロナ禍でのおうち時間需要を背景に世界的に人気がでてきているようです。これまで編み物といえばおばあちゃんやお母さんが編んでくれるニットやセーターのような限定的な趣味のイメージしかありませんでしたが、今ではその繊細な模様やかわいいデザインによって「アート化」され、SNSで話題になったことをキッカケに若者や男性まで楽しむ市場にまで拡大しています。編み物にも日々コツコツと手間をかけて美しいアートが出来上がった時の達成感や喜びは塊根植物に似たものがあるのかもしれません。

これらの「趣味のアート化」によって市場拡大したケースを、マーケットから戦略検証して紐解いてみるとまた新たなマーケティングにも活用できる事例になっているのでは、と感じています。
コロナ禍のような社会変化(社会からの需要性)を追い風に、なんとなくは知っていたけどニッチなものとして存在した熱狂(文化)が存在するマーケットが「ストリートファッション」などの別のカルチャーと出会ったり、SNSで映えるといったシェアできる価値とであったり、エコだしオシャレという時流を掴むことで「アート化」し高付加価値化され、たとえば少し高額であっても売れる別のマーケットに変貌する潮流があるのではと感じました。

最後に、「趣味のアート化」のビジネスチャンスについて、少し考えてみたいと思います。

「趣味のアート化」のビジネスチャンス例
■刺繍を楽しむために宿泊する「刺繍ホテル」。
■デザインされた文房具がついたファッション「描ける服」。
■塊根植物の治療をしてくれる「塊根植物病院」。

日常生活の中にあるニッチだけど熱狂が存在するマーケットを探してみると、そこに新しい文化が掛け合わされることで新しい市場になる可能性があります。自分でも注意深く今の世の中を見渡してみたいと思いました。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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  • 博報堂 PR局
    ヒット習慣メーカーズ メンバー
    車からお菓子に至るまで様々なクライアントの情報戦略、企画立案に携わる。運動不足でたるみきった体と気持ちを鍛え直したいと思い、筋トレを始めました。