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あらゆる人が参加できる「町おこしDX」を目指して ──地域共創の新しいプラットフォーム「ポHUNT」(前編)
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あらゆる人が参加できる「町おこしDX」を目指して ──地域共創の新しいプラットフォーム「ポHUNT」(前編)

2020年からスタートした富山県朝日町と博報堂の連携が新たな段階に進んでいます。LINEを活用し、住民、事業者、自治体それぞれが参加して地域を活性化させるプラットフォーム「ポHUNT(ポハント)」の実証実験が2022年1月から3月にかけて行われ、大きな成功を収めました。「交通」や「移動」からスタートした連携が次に目指すものとは──。「ポHUNT」から見えてきた可能性を、プロジェクトのメンバーたちが語りました。
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住民の移動、商業、健康を活性化させる

堀内
僕たちは2020年8月から、富山県朝日町で公共交通サービス「ノッカルあさひまち」の実証実験に取り組んできました。「ノッカルあさひまち」は、町の職員や自家用車を保有している地域住民がドライバーとなって、ほかの住民の移動を手助けするという「住民同士が支え合うMaaS(Mobility as a Service)」です。

昨年10月には、このサービスの本格運用がスタートしました。デジタル庁は「誰一人取り残されないデジタル社会の実現」というビジョンを掲げていますが、ユーザーの平均年齢が80歳を超える「ノッカルあさひまち」は、まさに「誰一人取り残さない地域MaaS」と言っていいと思います。

この「ノッカルあさひまち」の取り組みを一つの基盤としながら、LINEを活用してさらに地域の課題を解決しようとしたのが「ポHUNT(ポハント)」のプラットフォームです。その一連の流れについて、はじめに辻野から説明してもらいます。

辻野
「ノッカルあさひまち」は、自家用車を持っている方々と移動を必要とする方々をつなげる「交通マッチング」の仕組みです。その仕組みづくりの過程で、朝日町役場の職員、住民、地域の事業者の皆さんとのつながりができました。

そのつながりをいかして、移動をさらに促進する仕組みがつくれないかと僕たちは考えました。移動の機会が増えれば健康の増進につながるし、お金が動くので地域経済のメリットにもなります。つまり、移動を通じて、地域の皆さんの生活や経済を活性化させようとしたわけです。そこで僕たちは「交通×商業」をコンセプトにしたMaaSアプリ「おでかけナビアプリ」を2021年2月につくって、実証実験を行いました。

このアプリは、バスの時刻表確認、ノッカルやタクシーの予約、スーパーのクーポン利用などができるもので、1カ月間の実証実験でおよそ300人にダウンロードしてもらうことができました。しかし「交通」や「移動」というテーマに目新しさがなかったのか、思ったほどの関心は得られませんでした。そこで、交通や移動だけではなく、住民の皆さんの「生活」全般をより豊かに、より充実したものにする取り組みを目指して、新たに「ポHUNT」というプラットフォームをつくりました。

堀内
「ポHUNT」というネーミングは、「ポイントをハントする」という意味です。日常生活の中で楽しくポイントを集める仕組みを取り入れて、住民の皆さんの移動、商業、健康を活性化させるのが「ポHUNT」の狙いでした。

朝日町の住民数は、およそ1万1000人です。僕たちは「ポHUNT」をすべての住民の皆さんが利用できるだけでなく、役場のさまざまな部署が関わることができるプラットフォームにしたいと考えました。「つながりの真ん中」の機能を担うことができるツールは何か──。検討した結果出てきたのが、LINEを使うアイデアでした。

誰もが参加できるプラットフォームを

磯部
「おでかけナビアプリ」はネイティブアプリ(ダウンロードが必要なアプリ)だったので、ダウンロードするというアクションが一つのハードルになっていました。それに対し、多くの人が日常的に使っているLINEであれば、ダウンロードなしでそのまま使うことができます。そこで、LINEミニアプリを使うという最も手軽な方法を提案させていただきました。

古矢
高齢者にデジタルツールを使っていただくのは難しいとよく言われますが、操作難易度だけでなく、心理的なハードルも一因だと思います。日頃、家族やお孫さんなどとのやり取りで使っているLINEを用いたキャンペーンならば、お年寄りでも「やってみようかな」という感じになると考えました。LINEなら心理的なハードルを下げられるだろうと。

「ポHUNT」の基本的な仕組みは、町内のお店の店頭や健康施設内に掲示されているQRコードをLINEミニアプリで読み取るとポイントがゲットできるというものです。ほかにも、健康に関するクイズに答えたり、ウォーキングの距離を記録したり、健康促進に関する動画を見たりすることでポイントが貯まるようにしました。ポイントが貯まると、旅行券や食品券、家電などが抽選で当たるという流れです。

辻野
「お店でポHUNT」「動いてポHUNT」「食べてポHUNT」「乗ってポHUNT」「解いてポHUNT」「答えてポHUNT」「動画でポHUNT」など、いろいろなポイントメニューをつくって、誰でも参加しやすいきっかけをつくっています。

磯部
お出かけしたときは、LINEミニアプリでQRコードを読み取ればポイントが貯まる。家にいるときはクイズに答えたり動画を見たりすれポイントが貯まる。さらに、LINEミニアプリにいろいろな情報が届く──。そんなふうに、どこでも使えて、いつでもつながれるというのが「ポHUNT」の大きな特徴です。
古矢
それぞれのポイントゲットのメニューは役場の担当部署と対応させて、役場の皆さんにも能動的にサービス開発協力していただくことを目指しました。また、町の施設はQRコードを施設内に掲示するだけでいいので、多くの事業者にもキャンペーンに積極的に参加していただけると考えました。
堀内
まさに、地域のみんなで創りあげる「共創型の町おこしプラットフォーム」ということです。
福田
このコンセプトを伺ったときは、LINEというプラットフォームをとても上手に活用してくださっていると感じました。LINEの月間アクティブユーザーは9,200万人以上(※2022年3月末時点)で、その約35%は50代以上(マクロミル・インターネット調査 2022年2⽉実施/全国15~69歳のLINEユーザーを対象/サンプル数2,060)です。そう考えると、シニアの方が多い地域の活性化ツールとしてLINEは非常に有効と言えます。しかし、自治体や事業者の皆さんの中には、LINEをどう活用していいかわからないという方も少なくありません。「ポHUNT」の取り組みは、そういった方々に向けたヒントになると思いました。

高齢者でもストレスなく使える「優しいUI/UX」

辻野
これまでも、LINEを活用したスタンプラリーや健康促進、情報発信などはいろいろ行われていますが、それらを統合する試みはほとんどなかったように思います。僕たちが以前に企画した「おでかけナビアプリ」も、切り口が交通や移動に限られていた点では、すべての人に開かれたプラットフォームでは必ずしもありませんでした。

それに対して「ポHUNT」は、LINE上でいろいろなコンテンツを統合しただけでなく、スマホをもっていない人は紙でのスタンプラリーもできるという立て付けにしました。実際、お年寄りやお子さんがまず紙で参加して、それを見た家族がスマホでキャンペーンに参加するというケースも少なくありませんでした。

磯部
ポイントゲットのメニューを増やしたのは、あらゆる人に楽しく参加していただきたいと考えたからですが、そのぶんLINEミニアプリとしてはコンテンツの量が非常に多くなってしまいました。そこは議論になったのですが、UI、UXを工夫すればストレスなく使っていただけるだろうという結論に至りました。
堀内
僕たちが心がけたのは、ご年配の方々でも気軽に使える「優しいUI」「優しいUX」を実現することです。ボタンを押すだけでどんどん進んでいくことができる構成にすることで、「開かれたアプリ」にしたいと考えました。UI、UXの開発には、博報堂のクリエイティブチームのスタッフにも尽力してもらっています。
辻野
「自分には関係のないデジタルキャンペーン」と考える人が増えると、「全員参加」という僕たちの目標が達成できません。とにかくいかに参加性を高めるかということを考えましたね。
古矢
キャンペーンへの参加は、基本的には個人単位なのですが、愛着がある「マイ地区」を選んでいただいて、ポイント獲得を地区ごとに競ってもらうという仕掛けもつくりました。これも参加性を高める工夫の一つでした。

LINEを活用して共創の「型」をつくる

堀内
今回LINEを活用したことの意義は2つに集約されると思います。1つは、ポイントを貯めるのも、コンテンツを見るのも、情報を得るのも、すべてLINEだけでできるということ、もう1つは、LINEが誰もが相乗りできるプラットフォームであることです。住民も、役場の各部署も、地元の事業者も、さらには観光客も、あらゆる人が共創に参加できる。その仕組みを実現できるのは、LINEだけだと思います。
福田
LINE社としても、独自のモビリティ関連サービスにチャレンジした経緯もあります。しかし、解決が求められる課題は地域ごとに異なるので、画一的なサービスでは地域課題に対応することはなかなかできません。むしろ、いろいろなプレーヤーが地域で共創していくときに、基盤として選ばれるオープンプラットフォームになることがこの領域におけるLINEの価値なのだと思います。「ポHUNT」は、LINE公式アカウント、LINE API、LINEミニアプリを統合しながら地域の事業者と一緒に新しいユーザー体験をつくりあげるという、共創の仕組みをつくった先駆的な取り組みと言っていいと思います。
古矢
共創の仕組みをつくる僕たちからしても、すべてをゼロからつくるのは非常にハードルが高い作業になります。しかし、LINEのようにすでに多く人に活用されているプラットフォームがあれば、スピーディーに共創の「型」をつくることができます。僕たちの役割は、その「型」をつくって、LINEという優れたプラットフォームを上手に機能させることだと思っています。
堀内
その「型」はもちろん、朝日町以外の地域にも応用可能です。朝日町の現在の高齢化率は44%です。これは20年後の日本全国の姿にほかなりません。朝日町で課題解決の「型」をつくることができれば、それは間違いなく10年、20年後の日本の社会課題を解決するソリューションになるはずです。自助、公助だけでなく、共助の仕組みをデジタルでつくり、それを汎用的なソリューションにしていくことが「ポHUNT」の大きな意義です。

さて、「ポHUNT」キャンペーンは2022年の1月から1カ月間実施して、確かな手応えを得ることができました。続いて、キャンペーンの具体的な成果を見ていきたいと思います。

後編に続く)

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  • 博報堂 DXソリューションデザイン局ソリューション開発推進二グループ グループマネージャー
    京都生まれ京都育ち。2006年博報堂入社。入社以来、一貫してマーケティング領域を担当。
    事業戦略、ブランド戦略、CRM、商品開発など、マーケティング領域全般の戦略立案から企画プロデュースまで、様々な手口で市場成果を上げ続ける。
    近年は、新規事業の成長戦略策定やデータドリブンマーケティングの経験を活かし、自社事業立上げやマーケティングソリューション開発など、広告会社の枠を拡張する業務がメインに。
  • 博報堂 ビジネスデザイン局(兼)社会課題解決プロジェクトメンバー
    2014年博報堂入社。製薬会社・自動車会社・ITベンチャーのブランディング・マーケティング・EC事業・サービス開発支援などに携わる。2019年度より社会課題解決と得意先課題解決の両立を目指した、新規事業開発プロジェクトのプロデュース・プロジェクトマネジメントを行っている。
  • 博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局カスタマーサクセス部
    大手SIベンダーにて様々なシステム開発を担当。その後、出版社に転職。Webサービスの開発や社内起業を通し、事業成長に向けて幅広い領域に取り組む。前職では、アプリ企業でソリューションコンサルティング業務などに従事。博報堂入社以降は、マーケティングシステムのコンサルティングやソリューション開発業務に携わる。
  • 博報堂 DXソリューションデザイン局 ビジネスデベロップメントプラナー
    2016年博報堂DYメディアパートナーズ入社。DMPを用いたソリューション開発・分析業務に従事した後、2020年から現職。
    データを用いたビジネス開発経験を活かし、MaaS開発やLINEを使ったソリューション開発に取り組む。
  • 福田 真
    福田 真
    LINE株式会社 プランニング統括本部 アカウント事業企画室 Business Designチーム
    2012年に自動車メーカー系金融会社へ入社。キャッシュレスの推進やモビリティスーパーアプリの企画に従事した後、2020年から現職。LINE公式アカウントやLINE APIを活用した新規事業開発を担当し、日本マイクロソフトおよびMicrosoft AzureパートナーとのMaaS・小売DXプロジェクトや、さとふるとの協業による「LINEでふるさと納税」を立ち上げ。

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