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ヒット習慣予報 vol.135 『下書き供養』
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ヒット習慣予報 vol.135 『下書き供養』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの植月です。
あっという間に9月になりましたね。今年は梅雨が長かったせいか夏が遅れてきたような印象がありますが、なかなか外出もできず、まだ夏にやり残したことがあるのに……と考えている方も多いかもしれません。実は、私もそんな夏に未練タラタラな一人です。

今回はそんな“やり残し”ならぬ“言い残し”を改めてSNSで発信する「下書き供養」を取り上げます。「下書き供養」は、SNSで文言や画像の投稿を作成したものの、その時は発信せずに下書きに保存してあった投稿を時間が経ってから“下書きにあったもの”として投稿することを指します。

実際にSNSにおける「下書き」というワードの共起語を見てみると、「下書き供養」というワードが既に挙がってきます。これは、実際に下書きを公開する際に、あえて「#下書き供養」というハッシュタグをつけることから、共起語にランクインしたものとみられます。

出典:Insight Intelligence Q

昔からごく一部の方は実践されていたようですが、最近こうした投稿が少しずつ増えてきたように感じます。自粛傾向が続く中で、SNSに投稿する新ネタが不足するようになったためか、これまでのストックを活用するようになってきたのかもしれません。

その下書きの内容で投稿されやすいのは、「自分が制作したイラスト」です。
SNSは自己表現の場としてもよく活用されており、イラストや写真を投稿する人もたくさんいます。その際に、投稿してみんなに見てもらうほどのものではないのではないか……と踏みとどまる場合もあります。そんな作品を後日見返したときに、せっかく書いたものだからやはり投稿しようと思いなおし、下書きであることを明記した上で公開するというパターンです。

同様に、「日常思ったことや実体験エピソード等の文章」も投稿されています。
文章のみなので、あえて複数まとめて投稿する場合もあります。その方法は、下書き一覧の画面をスクリーンショットにとり、下書きにしたためていた投稿一覧としてその画像を添付し、「#下書き供養」というハッシュタグとともに公開するというものです。一度の投稿でいくつもの下書きを供養することができる、効率的な下書き供養ともいえるかもしれません。

では、なぜ「下書き供養」が行われているのでしょうか?
理由は大きく2つあると考えられます。
1つ目は、節目での断捨離志向です。下書き供養は特に年末などに投稿される傾向があります。それは、“2020年も終わるから、2020年の自分の作品/考え方もここですべてさらけ出しておこう”というように、区切りの意味合いを持たせた投稿になっているとも考えられます。
2つ目は、周囲の反応に対するリスクヘッジです。SNSの投稿にためらう理由の一つとして、フォロワーからの反応がもらえるか不安だからというものがあります。その際に、あえて“下書きである”という主張をすることで、“一度は投稿を見送ったもの=ボツにしたもの”であることを暗示しているのかもしれません。そうすることで、他と比べて自信のないものだから反応がもらえなくてもいいという自分へのマインドセットを兼ねている可能性もあります。

最後に、「下書き供養」のビジネスチャンスとしては下記のようなことが考えられるのではないでしょうか?

「下書き供養」のビジネスチャンスの例
■ 年末に投稿された「#下書き供養」のつく投稿の中から、やり残し願望のあるものを見つけ、それを叶えるテレビ番組を制作する。
■ 匿名で投稿し、“面白い”“微妙”という評価のみをしあって、周囲からどのくらいの「いいね」がもらえるかの指標を得られるような掲示板を制作する。
■ 下書き=言い残した本音と捉え、「ボツ案買取サイト」を制作する。
など。

私もSNSの下書き機能はよく活用するのですが、どちらかというとビジネスチャンス3つ目の言い残した本音文脈が強いので、たまに見返してこんなこと思っていたなと懐古することもあります。これを機にみなさんもご自身の下書き欄を見返してみてはいかがでしょうか?

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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  • 博報堂 統合プラニング局 ヒット習慣メーカーズ メンバー
    2017年 博報堂に入社。
    マーケターとして、社会の荒波に揉まれながら、社会に新たな潮流をつくることを夢見て奮闘中。