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ヒット習慣予報 vol.304『お試しするだけ来店』
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ヒット習慣予報 vol.304『お試しするだけ来店』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの山本です。

私事ですが、年始の休みに、ふと、眼鏡を新調しようと思い立ちました。しかしいざ買おうと決めたものの、実際にどの商品がいいのかを調べていくと、いろんな商品があったり、見るべきポイントが多かったりで、なかなか決まりません。商品の種類や情報が増える中で、自分にぴったりな商品を見つけることが難しくなっているのだなあと改めて実感しました。最終的には、いろんなブランドの眼鏡が試着できるセレクトショップであれやこれやと試しながら購入を決めましたが、やはり実際に自分で触ってみて試せることは、大海原から自分にぴったりの商品を見つけるための重要な手段なのではないかと思います。実際に、Googleトレンドで「お試し」と調べてみると、ここ10年ほどは緩やかな上昇トレンドになっていることがわかります。

▼「お試し」の検索数推移

(出典:Googleトレンド)

本日はそんな商品のお試し体験をテーマにした習慣の話で、「お試しするだけ来店」と名付けてみました。「お試しするだけ来店」とは、自分にピッタリな商品を見つけるために、様々な企業の商品を一堂に試せる、お試しを専門にした新たなタイプの店に足を運ぶ人が増えているという話です。これまでも、ファッションなど一部の業界のセレクトショップなどでは、様々な商品の試着が可能でしたが、基本的には購入前提の体験でした。そうではなく、今までは試すのが難しかった商品ジャンルも含めて、販売ではなくお試しを専門にする見本市のようなコンセプトストアが増えていることに着眼しました。具体的にひとつずつ、例を見ていきたいと思います。

ひとつめは、「試食」のお試し専門来店です。
試食を専門にしたお店が人気を集めています。お店のショーケースには、様々なメーカーから寄せられた食品のサンプルがずらっと並んでおり、気になる商品があれば、その場で試食できるというものです。もちろん、気に入った商品があればその場で購入することもできます。試食できる商品の種類に制限はなく、さながら無料のビュッフェを楽しめるような体験が好評のようです。

続いての例は、「発売前商品」のお試し専門来店です。
来店者は、商品を試した感想や店内での行動ログを提供する代わりに、スタートアップから有名企業まで、様々な企業の革新的な商品を好きなだけ体験することができます。ジャンルもガジェットから、ビューティ、アパレル、雑貨、食品と幅広く、一部商品は販売するものの、基本的には新たな商品との出会いを目的とした体験型の店舗です。そのため、購入プレッシャーがなく、自分の生活に合う新たな商品との出会いそのものを楽しめる場所になっています。

最後にご紹介するのが、「美容コスメ」のお試し専門来店です。
コスメのお試し専門店が話題を集めています。先の事例のように、コスメを買うための場所ではなく、トレンドを先取る様々なブランドのコスメ商品を、一堂に試せる体験を売りにした店舗です。来店者はいろんなコスメ商品を試せるだけでなく、同店の美容部員からメイク術を教えてもらったり、パーソナルカラー診断ができたりと、美容に関する様々なアドバイスまでもが無料で受けられるのだとか。利用者にとってはなりたい自分になるために、あれもこれも無料で試せる「美容のアミューズメントパーク」のような存在なのだと感じました。

ここまで、様々な企業の商品を一堂に試せる、お試しを専門にした新たなコンセプトストアに足を運ぶ生活者の例を見てきましたが、なぜ今、「お試しするだけ来店」なのでしょうか。
理由のひとつに、タイパを重視する生活者が増えていることが挙げられると思います。冒頭にも触れたように、様々な商品や情報が市場にあふれていることで、自分に合うお気に入りの商品を見つけにくくなりました。そんな中で、「あれもこれもまとめて体験することで効率的にお気に入りの商品に出会いたい」という生活者ニーズが大きくなっているのではないかと考えます。
また、デジタル化を加速したコロナ禍を経て、リアルな体験や実店舗を重視する流れが再び戻ってきたことも理由の一つにあると考えます。試しにGoogleトレンドで「実店舗」と検索すると、コロナ禍以降横ばいだった検索トレンドが、ここ一年ほどは上昇傾向にあることがわかります。

▼「実店舗」の検索数推移

(出典:Googleトレンド)

また、今回ご紹介したお試し専門店はどれも、商品に対するお客さんの感想やデータをお店側で取得しておき、出品先の企業にフィードバックすることで利益を得るという仕組みで成立しており、企業にとってお客さんの生の感想やデータが、ますます価値の高いものになっていることも、「お試しするだけ来店」を下支えしている背景のひとつにあると思います。

最後に、「お試しするだけ来店」のビジネスアイデアを考えてみました。

「お試しするだけ来店」のビジネスチャンスの例
■世界各国の珍しいお酒を取り扱う試飲専門店の開発
■銭湯で様々なメーカーのヘアケア商品を試せるスペースの設置
■地方名産のおつまみがあれもこれも試せるバーの開発

本コラムを書きながら、自分だったらなにをお試ししたいだろう?と考えてみると、「煙草」でした(笑)。喫煙者としては、いろいろな種類の煙草がお試しできる喫煙スペースがあったらいいのになあ、なんて思ったりして。今後どのようなジャンルの「お試しするだけ来店」が増えていきそうか、動向が楽しみです。みなさんもぜひ、機会があれば足を運んでみてください。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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  • 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
    ヒット習慣メーカーズ メンバー
    2017年に博報堂入社以来、ストラテジー×クリエイティブの統合発想を武器に、ブランドデザインを軸として、企業やブランドの戦略・企画立案に従事。ミレニアル世代/グローバル領域の業務経験多数。写真と音楽とすべてのユースカルチャーをこよなく愛する。