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「生活者DATA WORKS™️」の舞台裏 Vol.3 ──マーケティングシステムの開発を担う「プロダクト開発エンジニア」
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「生活者DATA WORKS™️」の舞台裏 Vol.3 ──マーケティングシステムの開発を担う「プロダクト開発エンジニア」

博報堂DYグループにおけるエンジニアの専門組織が「マーケティング・テクノロジー・センター(以下、MTC)」です。博報堂独自の統合マーケティングソリューション群「生活者DATA WORKS™️」の開発や運用を担うエンジニアたちの仕事を紹介する連載の第三回。今回は、サービスやソリューションを裏側で支える「プロダクト開発エンジニア」に登場してもらいました。広告会社におけるエンジニアの役割を掘り下げていきます。

データやテクノロジーで新しい体験価値を生み出したい

──お二人とも、昨年(2019年)博報堂に中途で入社されたそうですね。博報堂に来た理由をお聞かせください。

佐藤
前職はITベンチャーのシステムエンジニアで、主にクライアントの業務システムやネットワークシステムの構築・運用を行っていました。もともとマーケティングに関連するシステム開発に興味があったのですが、前職ではクライアントが保有する自社データ以外に、データに触れられる機会はほとんどありませんでした。博報堂に入社したのは、多業種多様なクライアントのデータ、調査会社のデータ、博報堂DYグループが保有するデータなどを幅広く触れながら、それらを活かすためのシステム開発に携われることができると考えたからです。
小川
私は大手SIerでシステム開発に携わっていました。担当していたのは、コンビニやスーパーの流通関連システムなどです。社会やビジネスのインフラとなるミッションクリティカルなシステムでは安定性が重要視されるため、新しい開発技術よりも実績があって評価の定まった開発技術が採用されることが多いです。一方でシステムの技術は日々進化していて、エンジニアとしてもっと新しい技術を試してみたいという気持ちもあり、新しいテクノロジーで社会に価値提供をできる環境が博報堂にあると考えました。

──現在はどんな仕事をしているのですか。

佐藤
クライアントや生活者にとって新しい体験価値を生み出し提供していくことがMTCのミッションです。その中での私たちの役割は、新しい体験価値のアイデアを、実際に「カタチ」にしていくことです。
小川
具体的なミッションとしては、マーケティングシステムの開発や、それらを支えるシステム基盤の構築です。「カタチ」にするだけではなく、クライアントや生活者の課題の変化やテクノロジーの進歩に合わせて、システムを継続的に進化させるという仕事も担っています。
佐藤
現在取り組んでいる業務の一つに、博報堂オリジナルの解析システム「m-Quad Modeler」のリニューアルがあります。既存のシステムを単純に再構築するだけでなく、より多くのクライアントに付加価値を提供できるように開発を進めています。
小川
新しいサービスやソリューションのベースとなるテクノロジーを生み出すことや、開発手法の検証を行うことも私たちの仕事です。日々新しいテクノロジーが生み出されていますが、それらをどのように活用すれば生活者に新しい体験価値を提供できるのか、調査と検証を行っています。

「守り」ではなく「攻め」の開発を

──お二人は、MTCの中でも「システムエンジニア」という立場と言ってよさそうですね。前職までの仕事と大きく異なるのはどのような点ですか。

小川
先ほども少し触れましたが、SIerの仕事ではしっかり安定的に動くシステムをつくることが重視されるケースが多く、安定性確保のためにいわゆる「枯れた技術」と呼ばれる、新しくはないが実績がある技術が採用されることが多いです。それに対して、MTCが手掛けているマーケティング関連のシステムは、新しい価値提供のため継続的にシステムを進化させることが求められるので、新しい技術に取り組み続ける必要があります。いわば、安定重視の「守り」ではなく新しい価値を生み出すための「攻め」の開発ができる。それが以前の仕事との一番の違いです。

──m-Quad Modelerのように、すでに多くのクライアントで活用されているシステムを安定的に運用していくには、「守り」の姿勢も必要ではないでしょうか。

小川
安定性はもちろん大切です。一方で、ソリューションやシステムの価値を最大化していくためには、「攻め」の姿勢での刷新も必要だと考えています。m-Quad Modelerの優位性は、解析処理自体のオリジナリティーや処理の実行速度です。実行速度に関しては、昨今ではコンテナなどのスケーラブルなシステムを実現する開発技術を活用することでより従来よりもスピーディーな解析環境を実現できるので、それらの開発技術を積極的に取り組むことが、ユーザーに提供する価値を増大させることにつながると思っています。いろいろ試してみて、よりよい価値を提供するためまた別のテクノロジーにチャレンジしてみる。そんなスタンスを大事にしたいと思っています。

ビジネスをトータルに捉える感覚を磨く

──一般的な業務システムとマーケティングシステムの違いについてもお聞かせください。

小川
開発のサイクルの速さではないでしょうか。マーケティングシステムは、クライアントのビジネスの変化に合わせてどんどん新しく開発したり更新したりすることが求められます。プロトタイプをまずはつくって、それを動かしながら検証していくというケースも少なくありません。サイクルが速いので、いろいろなアイデアや技術を試すことができるわけです。
佐藤
マーケティングシステムの開発に当たっては、ITの専門家ではないメンバーと話し合うことも必要になります。そこで周囲の意見を取りまとめて、さまざまな方法の中から最適と思われるものを考えて、提案していく。そのワークフローも業務システム開発とは異なる点と言えますね。
小川
もう一点、業務システムの場合は、開発して納品すれば、以降は定型的なシステム運用が中心のフェーズになりますが、マーケティングシステムは営業やクライアントがそれを活用するためのサポートを行い、新たな価値提供に向けた次のシステムのデザインを考えることもエンジニアの役割です。それによって、自分たちがつくったものがビジネスに対してどのように役に立ち、価値を生み出すかを見ることができるのがMTCにおけるシステム開発の面白さだと思います。

──新しい技術の情報はどのようにして取り入れているのですか。

小川
まずはセミナーやカンファレンスに参加して情報を得ることが多いです。海外のカンファレンスに参加する機会もあります。そこから技術検証やシステム開発での実践を通して業務に定着させていきます。
佐藤
そういった場で得た情報を社内にフィードバックして、ほかの人の意見を聞きながら、新しいアイデアを生み出していく。その過程がとても楽しいです。
小川
学んだ技術を自分たちのビジネスにどう生かせるかを考えることによって、エンジニアとしての見識が広げられていると思います。

──エンジニア以外の人たちと議論する場合は、共通言語をつくる必要がありますよね。

佐藤
エンジニアの用語は特殊なため、できるだけ一般的な言葉に置き換えるように努力しています。一方で、メディアやマーケティングの用語にはエンジニアとして馴染みがないものもあるので、そのような言葉を吸収しながら、よりスムーズなコミュニケーションができるように心がけています。会話の「風通し」をよくすることが大事だと思います。
小川
MTCで開発したサービスの商品価値を検討する場があるのですが、そのような場ではコミュニケーションの大切さをより感じます。例えば解析ツールの場合、「データ解析ができる」という機能だけでなく、それをどう提供して、生活者やクライアントの課題を解決するのかといった視点が求められます。そこではテクノロジーが作り出す価値を正しく理解した上で、的確な意見が言えるようにならなければなりません。
佐藤
クライアントの要望を受け止めながら、しっかりとした意見を伝えるコミュニケーション力が重要です。
小川
博報堂に来てよかったと思うのは、自分たちが開発するシステムをビジネスの一部として捉える視点が得られたことです。一般的なシステム会社は、クライアントから要件が決まった案件を受託して開発するケースが大半なので、どうしても物事を考える中心が開発フェーズにフォーカスされがちです。それに対して、今の私たちのミッションは、システム開発だけでなく、開発したものを博報堂DYグループのビジネスやクライアントのビジネスに生かし、新しい価値を提供していくことです。MTCで働き始めてから、システム開発に関わるビジネスプロセスを広く理解できたと実感しています。
佐藤
エンジニアとしてだけでなく、ビジネスパーソンとして物事を見られるようになりましたね。そのような視点があると、ビジネスで必要とされるテクノロジーを見極めるスキルも磨かれていくように思います。

多様な要素から新しいものが生まれる

──これからどのようなことにチャレンジしていきたいと考えていますか。

小川
今後はより価値創出のためのシステム開発のサイクルは加速していくので、それに追随できるようなマイクロサービスアーキテクチャなどの開発手法を実践していきたいです。一方で自分の専門領域に閉じることなくスキルを広げることにもチャレンジしていきたいと考えています。MTCではAI技術やARなど、さまざまな方向に取り組みを広げています。それに伴って、一人ひとりのエンジニアの仕事の幅も広がっています。経験を積みながら、できることを増やして、世の中に影響を与えられるようなサービスをつくっていきたいと思います。
佐藤
新しいサービスやソリューションは、テクノロジーに限らずさまざまな要素を混ぜたりつなげたりする中から生まれると思っています。MTCにはいろいろな専門性をもっている人がいて、使えるツールやデータがたくさんあります。MTCの仲間からいろいろなことを吸収し、テクノロジーを活用する腕を磨きながら、新しいサービスやソリューションを生み出していきたいです。

──これからの時代はどのようなエンジニア人材が求められるのでしょうか。

小川
新しいテクノロジーに興味があって、それをまず使ってみたい、という想いが強い人だと思います。さらにそれをどうビジネスにつなげていくかを深く考えることができれば、活躍できる場は一層広がるのではないでしょうか。博報堂DYグループには新しいテクノロジーやアイデアを試せる場があります。ぜひ新しい仲間といっしょに、これまでになかったサービスやソリューションをつくっていきたいです。
佐藤
今後、ビジネスにおいてデータを活用する場面はますます増えていくはずです。それに伴って、データの利活用に長けたエンジニアの価値はさらに高まっていくと思います。一般のシステム会社で扱えるデータには限りがありますが、博報堂には多様なデータに触れられる環境があります。データを活用して新たな価値を生み出していきたいと考えているエンジニアの方は是非一緒に働いてみたいです。
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  • 博報堂DYホールディングス
    マーケティング・テクノロジー・センター 開発2グループ
    独立系ソフトウェア企業、ITスタートアップを経て、2019年に博報堂に入社。システム開発技術とデータ解析技術スキルをベースに、現職ではマーケティングシステム開発、データ利活用支援等を行う。
  • 博報堂DYホールディングス
    マーケティング・テクノロジー・センター 開発2グループ
    2019年3月中途入社。前職ではシステム開発会社のSEとして流通系のシステム開発と先端技術検証を担当。現職では、生活者DMPシステム基盤の開発を担当。セキュリティ等の横断的な技術支援も行なっている。