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「ビジネスの成功」までの全体像を見通した、実装まで一気通貫のシステム開発 ──マーケティングシステムの実装領域を担うソリューション〈Marsys Archetyping〉
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「ビジネスの成功」までの全体像を見通した、実装まで一気通貫のシステム開発 ──マーケティングシステムの実装領域を担うソリューション〈Marsys Archetyping〉

博報堂マーケティングシステムコンサルティング局が開発したソリューション群〈HAKUHODO Marsysソリューション〉の中で、マーケティングシステムの実装領域を担うソリューションが〈Marsys Archetyping〉です。「アーキタイピング」という日本ではまだあまり知られていない概念をベースにしたこのソリューションが生み出す価値について、開発に携わった3人のメンバーが語りました。

石毛 正義
博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局
マーケティングプラットフォーム部

鳥居 宏行
博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局
マーケティングプラットフォーム部

園田 悠貴
博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局
マーケティングプラットフォーム部

「全体像を描く」ことの重要性

──今回は、〈HAKUHODO Marsysソリューション〉の6つのソリューションの1つ〈Marsys Archetyping〉について解説していただきます。その前に、まず「アーキタイピング」という言葉と考え方を説明していただけますか。

鳥居
「アーキタイプ」は「原型」という意味で、私たちはこの言葉を「プロトタイプ(試作)」と対比する形で使っています。企業が新しいサービスや製品を開発する際に、試作をつくってUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)を確認するプロトタイピングを行うケースが増えています。しかし、プロトタイピング自体が目的化してしまい、その後に何をやっていいかわからなくなってしまうことも往々にしてあります。本来であれば、事業構想やサービス展開の戦略がまずあって、それに基づいて開発、実装、運用を見据えた全体像を描き、その中にプロタイピングを位置づけなければなりません。私たちは、そのような「全体像を描く」取り組みの重要性を表現するために「アーキタイピング」という言葉を用いています。「試作品」ではなく、サービスやプロダクトの全体像に基づいた「原型」をつくるということです。

園田
新しいサービスや製品のイメージを具体化して共有する作業としてのプロトタイピングはもちろんとても大切です。しかし、「とにかく、まずはやってみよう」というニュアンスが先行する場合が多いと感じています。何のためのプロトタイピングなのか。それを行ったあとに何をやるのか──。そういった意識がないために、プロトタイプとしてつくったサービスや製品が破棄されてしてしまうケースも少なくありません。それに対し、実装を前提とした「原型」をつくれば、検証と改良を重ねながら段階的に完成形に近づけていくことができます。
石毛
プロトタイピングの前段階で行う「PoC(概念実証)」という言葉を耳にすることがあるかと思います。最近は「PoC疲れ」という表現もあって、これは「PoCは何度もやっているのだけれど、コンセプトや方向性が固まらずその後のビジネス展開になかなか結びつかない」状態を意味しています。そうならないためにも、あらかじめビジネス戦略やマネタイズのイメージをしっかり捉えたうえでPoCに取り組む必要があります。そのような課題意識を示し、「アーキタイピング」という思想を理解いただくために、私たちはあえて普段⽿にしない⾔葉を使っているわけです。

──その機能を担うソリューションが〈Marsys Archetyping〉ということですね。

園田
そうです。新規事業や新しいサービス展開に必要とされるマーケティングシステムを実装するのがこのソリューションの役割です。たんにシステムをつくるだけでなく、システム運用の支援と、その後の事業の成功までをスコープに入れている点が従来のシステム開発との大きな違いです。
鳥居
システムを納品して終わりではなく、システムを活用することによって達成すべきKPIやKGIを定め、その達成までクライアントに伴走していくモデルになっています。KPIやKGIを設定する際には、マーケティングの視点や博報堂DYグループの生活者発想に基づいたご提案をしていきます。

──このような新しい発想のソリューションが必要とされるようになった背景を教えていただけますか。

石毛
クライアントの要望をお聞きしプロトタイプやシステムをつくったあとで、ビジネスの観点でシミュレーションをしてみると、実はそのサービスには事業性がなかった──。そういう経験が過去に何度もありました。そういった事態を避けるためには、最初の段階からビジネス視点を踏まえた「原型」を作る必要があると私たちは考えました。その課題意識から生まれたのが、ビジネスとそれを支えるテクノロジーの両方の要素を包摂したソリューションである〈Marsys Archetyping〉です。

「Marsys Enterprise Architecture Model(マーシスエンタープライズアーキテクチャーモデル)」とは 

──このソリューションのベースとなっているのが「Marsys Enterprise Architecture Model」という考え方だそうですね。これについてもご説明いただけますか。

鳥居
「エンタープライズアーキテクチャーモデル」は、アメリカなどでは一般的に使われているフレームワークです。システムづくりのアーキテクチャーを、ビジネス層、アプリケーション層、データ層、プラットフォーム層などに分けて、要件に抜け漏れがないかを確認していくのがこのモデルの考え方です。「Marsys Enterprise Architecture Model」は、そこに「マーケティング層」という博報堂DYグループならではの視点を加えています。

園田
たとえば、ECサイトやアプリをつくる場合でも、構築の要件だけでなく、生活者とのインターフェースやマーケティングといった広い視点でECサイトやアプリを捉えて、必要とされる要件を定義していく。そんな取り組みの基盤となるのが、Marsys Enterprise Architecture Modelです。

──このモデルを担う「Marsys Enterprise Architect(マーシス・エンタープライズアーキテクト、以下 Marsys EA)」という職種もあるようですね。

鳥居
「エンタープライズアーキテクト」という職種もやはりアメリカなどでは一般的で、エンタープライズアーキテクチャーモデルを理解し、トータルな視点でシステム開発を進めることができるエンジニアを意味します。博報堂マーケティングシステムコンサルティング局において、そのようなスキルを備えているのが「Marsys EA」です。

──プロジェクトマネージャーのような職種と考えればよいですか。

石毛
プロジェクトマネージャーのような職種ですが、プロジェクトマネージャーが個別のプロジェクトを完結させることをミッションにしているのに対し、Marsys EAは事業の成功に貢献することをミッションとしています。どちらかというとプロダクトマネージャーに近いと言えるかもしれません。エンジニアリング、マーケティング、セールス、CRM、広告領域といった幅広い知見を備えて、プロダクトを継続的に成長させることを目指す職種がプロダクトマネージャーだからです。「Marsys EA」はこの度新たに創設された登用制の職種なので、マーケティングシステムコンサルティング局に現在は2人いて、今後増えていく予定です。

──〈Marsys Archetyping〉とほかの〈HAKUHODO Marsysソリューション〉との連携の形を教えてください。

園田
クライアントがすでに導入しているシステムを調査して課題などを明らかにするソリューションが〈Marsys Assessment〉で、実装したシステムの運用を支援するソリューションが〈Marsys Onboarding〉です。一方、〈Marsys Archetyping〉はその間の実装領域を担うソリューションです(図参照)。ですから必然的に、〈Marsys Assessment〉と〈Marsys Onboarding〉と連携するケースが多くなりますね。

鳥居
重要なのは、オンボーディング、つまり運用支援のフェーズになっても、Marsys EAがクライアントに伴走し続けるという点です。先ほど申し上げたように、クライアントの事業の成功までコミットするのが〈Marsys Archetyping〉のスコープです。クライアントのビジネス戦略を理解し、最適なシステム運用を支援して、事業の成果を確実に生み出していくことを私たちは目指しています。提供するソリューションが切り替わっても、同じメンバーが一気通貫で支援を続ける。そこに、パートナー主義という博報堂DYグループのフィロソフィが体現されていると私たちは考えています。

〈Marsys Archetyping〉の4つの価値

──システムの構築や運用を支援する機能を博報堂DYグループがもっているという認知は、広まりきっていないように思います。

鳥居
おっしゃるとおりですね。〈HAKUHODO Marsysソリューション〉を提供しているクライアントから「博報堂はこんなこともできるんだ」と驚かれることも少なくありません。
園田
さらに認知を広めていくには、現在ソリューションを提供しているクライアントに100%満足していただきながら、実績を積み重ねていく必要があると思います。

──〈Marsys Archetyping〉の価値をクライアントにどのように伝えていきたいと考えていますか。

園田
〈Marsys Archetyping〉には、大きく4つの特徴的な価値があると考えています。1つ目は、「クライアントファーストの開発体制」です。マーティングシステムに活用できるツールはたくさんあります。その中で、クライアントが目指しているものに最も合うツールを選んでシステム開発に活用していくのが私たちのスタンスです。常に国内外の最新のツールをウォッチして、クライアントにとってベストなものを選ぶことを重視しています。

2つ目は「クリエイティブ力」です。グループ内のクリエイティブスタッフと連携しながらUI/UXを開発し、クリエイティブとシステム開発を両輪で回していくことができるのがこのソリューションの大きな強みです。

3つ目として、「開発・運用の透明性」が挙げられます。システム開発やその後の運用の工程をクライアントと共有し、「閉じた開発」「閉じた運用」とならない体制づくりを心がけています。

そして4つ目が、「伴走型パートナーシップ」です。システムが完成したあとのマーケティングやインナーコミュニケーションをしっかり支援し、システム活用によるビジネスインパクトを最大化することを目指しています。

鳥居
つけ加えるならば、「クライアントの内製化を目指す」というのも大きな特徴と言えると思います。システムの運用支援ソリューションである〈Marsys Onboarding〉は、クライアントが運用を内製化することをゴールしています。同じように、〈Marsys Archetyping〉でも、博報堂側の開発スキルを移転させていただいて、クライアントの社内で開発を内製できるところまでご支援させていただくことを目指しています。

──〈Marsys Archetyping〉を提供することで、クライアントの事業にどう寄与していきたいか。それぞれの思いをお聞かせください。

園田
私は博報堂に入社する前に働いていた現場で、サービス開発やシステム開発が失敗に終わるケースをたくさん目にしてきました。多くの場合、問題は「個別領域の解像度」を重視する点にあったと考えています。〈Marsys Archetyping〉は、クライアントのビジネス戦略全体を視野に入れて、「トータルな解像度」を上げていくことを目指すソリューションです。このソリューションによって、新規サービスやシステム開発の成功の確率を上げていくこと。それがこれからの目標です。
鳥居
生成AIを使ってみたいというご相談をいただく機会が増えています。新しいテクノロジーを導入する際にも〈Marsys Archetyping〉は力を発揮すると私は考えています。たんに「生成AIを使ってみる」のではなく、「生成AIを使って何を生み出すか」までを考えながら導入支援をさせていただく。そんな取り組みによって、ビジネスに役立つシステムをつくるご支援をしていきたいですね。
石毛
〈Marsys Archetyping〉は、マーケティングシステムコンサルティング局が開発したソリューションの中では後発ですが、これによってシステム実装の体制が確立し、マーケティングシステムに関するすべての領域をご支援できるようになりました。アーキタイピングという考え方は日本ではまだ一般的ではなく、私たち自身も試行錯誤を続けている段階です。今後、クライアントの皆さんとの緊密なパートナーシップのもとで、ともにこのソリューションを成長させていきたい。そしてそれを確実にクライアントのビジネスの成長に結びつけていきたい。そう考えています。

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  • 博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局
    マーケティングプラットフォーム部
    2016年博報堂中途入社。データ基盤とデジタルUX/UI設計、リアル体験とデジタル体験を行き来する統合コンサル&プロジェクトマネジメント、クリエイティブ開発、運用高度化を通じたビジネス成長支援を通じ、新たな価値創造に注力。
  • 博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局
    マーケティングプラットフォーム部
    SIerでPMの経験を経て、2022年博報堂入社。大規模のウォーターフォール開発から、短期のアジャイル開発まで幅広くマネジメント。近年はクライアント側の立場でシステム企画、開発を推進し、博報堂社内のPM研修の企画、講師活動も実施。
  • 博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局
    マーケティングプラットフォーム部
    デジタルエージェンシーにて開発PM、情報システム管理者などの経験を経て、2023年博報堂入社。 デジタルマーケティング領域のシステム開発や新規サービス開発から、社内情報システム、オペレーション領域まで、実務・マネジメントを幅広く経験。

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