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「対話型AI」を活用してクライアントの課題を解決する!
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「対話型AI」を活用してクライアントの課題を解決する!

生活者からの問い合わせなどにAIが答える「対話型AIソリューション」に積極的に取り組んでいるのが、博報堂DYグループの読売広告社です。これまでさまざまな業界のクライアントのAI活用を支援してきたプランナーの糠塚まりやに、対話型AIの具体的な活用法やメリット、これからの可能性などについて聞きました。

物件への問い合わせにAIが対応する

──これまでの対話型AI活用支援の事例をお聞かせください。

糠塚
最も早い取り組みは、3年ほど前の不動産業界のクライアントの案件でした。不動産物件を販売する際は専用の問い合わせ窓口を設けるわけですが、電話での問い合わせの場合、例えば時間は9時から18時まで、定休日には対応できないといった制限があります。しかし問い合わせ対応をAIに任せれば、コミュニケーションに時間的な制限がなくなります。

──365日24時間いつでも対応できますよね。

糠塚
そうなんです。そこでメッセージアプリを使って、お客様にはテキストで問い合わせをしてもらい、AIがテキストで答えるという仕組みをつくりました。しかし、不動産業界でこのようなAI活用をするのは初めてだったので、一から教師データをAIに覚えさせなければなりませんでした。どのような問い合わせが想定されるかをクライアントの営業担当の方にお聞きしながら、最初の段階で3000件くらいの回答をAIに学習させました。

──AIに覚えさせる教師データは業界ごとに異なるのでしょうか。

糠塚
そうですね。それぞれ異なりますし、そのデータをどこから集めてくるかもまちまちです。ある大手エアラインのケースでは、特定の国の観光に関する情報を答える対話型AIの仕組みをつくったのですが、人気のレストランなどの教師データを集めるために、その国のことをよく知っている1000人以上の生活者にアンケートを取るなどをしました。

──対話型AIは、生活者とのコミュニケーションの中でどんどん賢くなっていくものなのですか。

糠塚
そこが実は難しいところです。AIの特徴のひとつにディープラーニングによる学習がありますが、自由にディープラーニングができる仕組みにすると、AIはいいことも悪いことも同じく学習してしまいます。例えば、生活者からの問い合わせの中に不適切な表現などが含まれていたとしても、それが「不適切である」と判断することはAIにはできません。結果、それをそのまま覚えてしまい、回答の中でその不適切な表現を使ってしまう可能性があるわけです。

──なるほど。価値判断は人間が教えていかなければならないのですね。

糠塚
そうです。ですから、これまで私たちが支援してきた事例では、お客様からの問い合わせ内容に応じて手動で回答例を増やしていくという方法を取っています。手間のかかる方法ではありますが、問い合わせ内容を把握する作業は生活者が何を求めているのか、何を知りたがっているのかがわかるので、それをマーケティングの視点から、さまざまな施策に生かしていくことも可能になります。

AI活用の方法を考えるのはプランナーの仕事

──不動産やエアライン以外には、どのような事例がありますか。

糠塚
飲料メーカーのPR施策の一環で、飲食店のテーブルで会話に沈黙が生じると、場を盛り上げるコメントを話すAIロボットをつくったりしました。

──コミュニケーションやマーケティングにおける対話型AI活用の難しさとは、どのような点にあるのでしょうか。

糠塚
一番時間がかかるのは、教師データを集めて覚えさせる作業です。クライアントの業界事情や事業内容を踏まえた上で適切なデータを覚えさせないと、質の高いコミュニケーションは実現しません。
もう一つ難しいのは、クライアントの課題をしっかり理解し、整理して、どのようなAI活用の方法があるかを考えていく作業です。課題の把握と、それを解決する方法の提案、ゴールの設定──。そこは広告会社がやらなければならないことです。課題をもとにどれだけ面白い発想や、これまでになかったアイデアを生み出せるかは広告会社のプランナーのスキルにかかっていると言っていいと思います。

──技術パートナーはどのようにして選ぶのですか。

糠塚
それもクライアントの課題や業界に応じてですね。AIの専門事業者の中にはいろいろな強みをもった会社があるので、その中から最適なパートナーを選んで、その会社とクライアントの間の橋渡しをしなければなりません。クライアントのビジネス用語と専門事業者の技術用語をすり合わせて、お互いの認識を一致させていくことが必要です。

技術の力で人間的なコミュニケーションを実現する

──これまで対話型AIに取り組む中で見えてきた課題はありますか。

糠塚
クライアントの多くは、人間のオペレーターと同等の役割をAIに期待されています。確かに、一つの問いに対して機械的に一つの答えを返すのではなく、より柔軟で雑談的な対話ができる点にAIの特徴はあるので、今後、人間のオペレーターに近いコミュニケーションが実現する可能性はあると思います。
しかし今のところ、そこまでの水準でAI技術を活用するのは難しいのが現状です。クライアントの業界によっては、コミュニケーションに使うべきではないNGワードもあるし、対話が複雑になってくるとAIが意味不明の答えを返してしまうケースもありえます。いかに人間的でチャーミングな対話を実現させて、クライアントが求める成果を上げていくか。それがこれからの課題ですね。

──AI活用には今後どのような可能性があるのでしょうか。

糠塚
人間の感覚に寄り添うようなAIの使い方がもっとできるのではないかと思っています。例えば、対話の中の曖昧で漠然とした言葉からその人の嗜好性や個性を読み取って、最適な提案をしていくといった使い方です。
これは、広告コミュニケーションなどにも活用できると思います。検索ワードなどに応じて単純で機械的なリコメンドをするのではなく、生活者のより深い気持ちに沿ったニーズを汲み取って、その人に本当に喜んでもらえる情報を届けるといった使い方です。テクノロジーの力によって、より人間的なコミュニケーションを実現する。そこにAIの可能性があるように思います。

──今後は博報堂DYグループの中での連携も進んでいきそうですね。

糠塚
今後は例えば、生活者DMP(データマネジメントプラットフォーム)と私たちのAI活用の知見を組み合わせることができれば、クライアントへの提案の幅も格段に広がるはずです。

──最後に、これからの意気込みを聞かせてください。

糠塚
私たちは対話型AIソリューションをパッケージ化して、さまざまな業種・業態のクライアントにお使いいただけるようにしています。しかし、そのソリューションにどのようなアイデアを盛り込んでいくかは、個々のプランナーの力量によります。お客さまの課題を理解し、アイデアを生み出し、最も効果的なAI技術の活用法をご提案できるようスキルを磨いていきたいです。
  • 読売広告社
    統合プロモーション局 第2プロモーションルーム
    東京藝術大学大学院映画学科脚本コース修了。2012年読売広告社入社。入社4年間はストラテジックプランニングの部署で鍛えられ、その後現在のプロモーション局に異動。もともとはテレビも家にないほどのアナログ人間だったが、縁遠かったWEBコミュニケーション立案も鍛えられ、現在に至る。得意先の課題解決に向けて、戦略立案からアウトプットまで一貫して併走します。