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The Future is Expandable: なぜエージェンシーのクリエイティビティが、  ビジネスの成長とイノベーションを加速させるのか
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The Future is Expandable: なぜエージェンシーのクリエイティビティが、 ビジネスの成長とイノベーションを加速させるのか

毎年この季節の恒例となったアドバタイジングウィーク・アジア。今年も5月27日~30日に六本木の東京ミッドタウンで開催され、刺激的で多彩なセッションが繰り広げられました。本稿では、博報堂統合プラニング局の茂呂譲治と同じく統合プラニング局の三浦竜郎が登壇したセッションの模様を紹介します。

茂呂 譲治 博報堂 統合プラニング局 クリエイティブディレクター/局長
三浦 竜郎 博報堂 統合プラニング局 クリエイティブディレクター/チームリーダー

茂呂

近年、アドバタイジングエージェンシーが手掛ける仕事は、広告領域以外のものも増えています。今日はそういった領域について皆さんにも一緒に考えていただき、少しでもこれからの未来についてワクワクした気持ちになってもらえたらと思います。では三浦君お願いします。
三浦

はい。みなさんはゴールデンウィークはどうお過ごしになられましたでしょうか。僕はオーストラリアのタスマニア島に遊びに行ってきたんですが、実はそこで事件が起こりました。途中で…四十肩になったんです(笑)。おかげで写真はこの有様。

あまりに痛いので、薬局に行って湿布のようなものを買おうかと思ったんですが、いざ行ってみると四十肩も、湿布も英語で何と言うのかわからないんです。ウェブ翻訳で見ればいいと思いますよね?ダメなんですよ。やってみると「Forty shoulders」なんて出てくる…聞くまでもなくこれでは伝わらんだろうと(笑)。そのとき「外国で体の症状を伝えるのは難しい」という問題があるんだ、と知りました。いちクリエイティブとしては、これはそもそも困っている人に起こるさらに困ったことなので、解決してあげたいと思うんですが、これ、そんなに難しいことじゃなくても、例えば症状をヴィジュアルランゲージを交えて伝えられるチャットボットがあるだけで、楽になるんじゃないかなと思ったんです。そこで帰国後、パパッと形にしてみました。

チャットをすると医療英語を理解して、「どのあたりが痛みますか?」「どういう状況でしたか」「どんな痛みですか」なんて会話内容のテキスト情報を翻訳して整理してくれるんですが、それだけじゃ直感的に掴みづらい。だからズキンズキンするのか、ビリビリするのか、動かすと痛いのか、地味にずっと痛いのか…痛覚まで共有しやすいデザインをともなって伝えられるカルテみたいな画像をわかりやすく、美しく書き出してくれる。あとは薬局でそれを見せればかなりコミュニケーションがスムーズになるというものです。シンプルなものですが、こんなデザインソリューションだけでも、四十肩のことをずっと正確に相手に伝えられるようになるし、海外旅行の心理的な障壁は低くなり、旅行体験の満足度は大きく変わるのではないかと思います。

僕たちは、こういうインサイトに基づいてユーザー体験を変えるアイデアを次々と実装し続けていくことが、これから重要になっていくと考えています。なぜなら、すべてがデジタルでつながっていく世界においては、ユーザーの体験を拡張することでビジネスの機会も自然な形で拡張すると考えているからです。たとえばさっきのチャットボットも、お薬手帳のようなものとデータを連携させれば、国ごとに違う薬を結び付けるという、新たなグローバル機会領域が生まれてくるだろうし、航空券アプリと組み合わせれば、ホテルを予約したその先のコミュニケーションに機会領域が広がっていく。保険会社だったら、このチャット内容は海外で人がどんなトラブルに遭うかという非常にユニークなデータであると考えることもできるでしょう。そう考えるとそのデータの周りに機会領域が拡張されていく。僕らのチームでは、こうしたユーザー体験を拡張して、ビジネス機会を拡張するアイデアを「エクスパンダブル・アイデア」と呼んでいて、普段から、どうすればこれはもっとエクスパンダブルになるかな?なんて話しながら仕事をしています。

茂呂

エクスパンダブル・アイデアのプロセスは、まずは企業やブランドの今の姿をしっかりと見つめ直す。次にあるべき未来を描き、今(now)と未来(future)のギャップを高い解像度で描き出す。そしてその未来を達成しうる爆発的拡張性のあるアイデアを生み出すという流れです。そして、アイデアを世の中に送り出すための生活者との接触面(インターフェイス)を導き出し、グッとくるアート&コピーで定着させる。未来から発想する考え方は一見新しくも見えますが、ブランドをただ宣伝するだけではなく、新しいマーケットを生み出すことを常に志向する博報堂がカルチャーとして培ってきた不変的なプロセスをアップデートしたものです。企業やブランドが、世の中にどうインストールできるかを、生活者ファーストに考えるプロセスです。これは、スマホをはじめとする様々なインターフェイスが進化しているからこそ可能になっているとも言えます。未来は空から突然新しい何かが降ってくるわけではなく、皆さまの企業やブランドの中に眠っているアセットやパーパスを拡張させたところに存在します。明日全く違うことをはじめなくても、今のブランドを拡張するアイデアに挑戦することで、まったく違う未来に行く事ができると考えていただくといいかと思います。
三浦

具体例として僕からまずご紹介したいのは「やさいバス」です。静岡県の物流サービスとスタートアップが一緒に始めたプロジェクトで、ローカルの物流を担う方々が、自分たちが地域経済のプラットフォームになれるのではないかと考えた。その未来のために必要なことを考える中で、農家とお店が「こういう野菜ができたよ」「これをいくつください」といった対話ができるバスというアイデアが生まれ、それをECとSNSの側面を持つインターフェイスに落とし込んだ仕事です。ユーザーが使いやすく、デザインもコピーもよくできていて、だからこそエクスパンダブルになっているケースです。
茂呂

この例では、県外や世界へもビジネス機会が拡張しうるし、ユーザー体験としても野菜の購入体験がまったく違う形に拡張している。さらにエージェンシービジネスとしても、クリエイティビティがBtoCからBtoBに拡張していけそうですよね。
三浦

そうですね。中央に集約する方法よりも物流コストを下げるだけでなく、農家のみなさんが、よりレストランが望む野菜をつくりやすい環境がつくれている。それは地域経済の発展につながると思うので、どんどん拡大してほしいと思っています。

続いての事例はNHKの、弊社も共同事業として参画しているコンテンツ「オトッペ」です。このケースでは最初に、これからの教育テレビはテレビの前に座って見るものだけでなく、子どもと親がスマホと一緒にどんどん外にお出かけして、体で学んでいく体験に広がっていくのではないかという大きな仮説がありました。だったらその未来に向けてどういうコンテンツがあればいいだろうかと色々考えた結果、「聴察」というユニークなキーワードが生まれたんです。目で見て考える「観察」の教育コンテンツはあるのに、生活の中でよくある、耳で聴いて「なんでこういう音がするんだろう」と考える「聴察」についてはあまり語られてこなかった。これはおもしろいということで、「音は、ふしぎの入り口だ」をコンセプトとしたキャラクター「オトッペ」が誕生しました。そこからインターフェースとして、テレビとアプリの連動で外に出かけたくなるような体験を設計したり、3DCGのアニメーションの番組を製作したり、大きな機会拡張の流れをつくることができました。

茂呂

ビジネスの点では、コンテンツをIP事業として拡張した。ユーザー視点では、自宅で学ぶ体験を拡張した。エージェンシーとしては長年行ってきた広告のストーリーテリングの手法をエンターテイメントに拡張していったと。
三浦

はい。チームでも「聴察」に目をつけられたのはよかったねと話しています(笑)。
音に特化したコンテンツがあまりないので、アマゾンのスキルに拡張したり、新しいペッパー君のアプリに拡張したり、ゲーム「太鼓の達人」に拡張したりと、いままでにない広がりがあって刺激的ですね。

事業を拡張していく上では、僕らが広告の中で培ってきたことが役立っていると感じます。共同事業なので様々なステークホルダーがいるわけですが、アイデアでいわゆるたたき台を具体的に提示しながら進められるので、みんなで共有しながら体験を作っていける。藤田純平というアートディレクターが、3DCGのモデリングや背景も細かくディレクションしてくれていて、クオリティと世界観がとてもしっかりしているんです。おかげで、いざグッズ作りましょうとかイベントやりましょうと、思ってもみなかった領域に拡張したときでも、イメージがぶれずにみんなが協力しやすくなる。

茂呂

こうなったらいいなという夢を描くところから始まり、アイデアができたら、やっぱり着地の部分がすごく大事ですよね。その設計に求められるクリエイティビティは僕らならではかもしれません。
三浦

最後の事例は、サントリーと、ファーストエイドというスタートアップと一緒にやっている事例です。飲料の周辺で新たな機会領域がないかと話し合っていく中で、空のペットボトルの弾力が、日本であまり普及していないCPR(心肺蘇生法)の訓練に必要な力と近いという話をききつけ、だったら飲み終わったペットボトルを利用したトレーニング法が確立できるのではないかという話になりました。それがCPR TRAINING BOTTLEというアイデアとして定着し、それをモバイルサイトとスマホでみれるトレーニング動画、機能的なデザインのシートとして実装されていきました。BtoBで社会問題も解決しながら伸びていく事業になってもおかしくないのでは。と、プロジェクトが動きだしたところです。
茂呂

ビジネスとしては防災領域で活用してもらえるかもしれないし、ユーザー視点では訓練機会そのものが拡張されている。エージェンシーとしてはデザインをプロダクトや、うまくいけばビジネスにも拡張できるということですね。
三浦

いろんなオフィスビルに水が備蓄されていると思いますが、将来的にそのパッケージがすべてこれに変わっていたらいいですよね。備蓄用の水は定期的にリプレイスがあるので、そのたびに繰り返し手にしてもらうことができますから。

こんな風に、アイデアを考え、ちゃんとワークする強くてわかりやすい効果的なデザインに落とし込むことで未来の拡張につなげるというのは、クリエイティブとしてはすごくワクワクすることです。もっと挑戦していきたいですね。

茂呂

いずれの事例にも共通しているのは、まず現状を見て、その先の未来を描き、今と未来のギャップを洗い出す。そして実現するための爆発的拡張性のあるエクスパンダブル・アイデアを考え、それを世の中に送り出すインターフェイスと共に、最後はやっぱりグッとくるアート&コピーができているということじゃないでしょうか。

僕ら統合プラニング局は、生活のデジタル化によって変革を求められる多くの企業・ブランドのビジネス成長に向けて、多様な専門性をもったタレントが100名以上集まるクリエイティブチームです。社内、社外問わず様々な領域の方々とつながりながら、従来の広告領域にとらわれることなく、新しい取り組みにチャレンジし、その実績もいくつか生まれてきているので、是非皆さんと一緒に、新しい未来をつくっていけたら嬉しいです。

三浦

最近、新しい技術やトレンドが次々と生まれてくるのを見ていると、実は何もしないことで機会領域を見過ごしてしまうことこそが、大きなリスクなんじゃないか――そんな風に思うこともあります。みなさんと一緒に、どんどん実現していけたらいいなと思います。
  • 博報堂 統合プラニング局
    クリエイティブディレクター/局長

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