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メタバース広告のフロンティアarrova荒井浩介 「枠売りだけでない、ユーザーと共創できるコミュニティづくりを」
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メタバース広告のフロンティアarrova荒井浩介 「枠売りだけでない、ユーザーと共創できるコミュニティづくりを」

アメリカのスーパー・リーグ・ゲーミング社と提携し、1日約5000万人が訪れるオンラインゲーム「ROBLOX(ロブロックス)」内での広告枠を国内向けに販売することを発表したデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(以下DAC)。メタバース領域での広告販売は国内初の試みとなります。このプロジェクトの中心を担うのが、2019年新卒入社の荒井浩介。博報堂DYグループの社内公募型起業プログラム「AD+VENTURE(アドベンチャー)」制度を活用し、バーチャル空間広告サービス「arrova(アローバ)」を立ち上げた荒井に、メタバースにおける広告のポテンシャルや、今後の展望についてききました。

バーチャル空間における広告展開で国内トップの実績

―はじめにarrovaのサービスについて教えてください

荒井
arrovaは、XR・メタバース領域におけるメディアビジネスデザイン事業で、バーチャル空間を用いた新しいフォーマットの広告展開やXR技術を活用した新たなメディア体験の構築を提供するサービスです。すでに大手ゲーム会社やIPホルダーとパートナーシップを結んでいて、ゲーム内の広告掲出や、「バーチャル渋谷」「バーチャル六本木」といったメタバース内の広告展開を実施しています。

インゲーム広告自体は以前からあるものですが、やはり没入感の中でプレーをするので視認効果も高いですし、まずはゲーム内のサイネージ広告からスタートして、スポンサーごとに最適なメニューを開発していくことも可能です。モビリティであれば、ゲーム内に3Dの車を登場させて試乗体験ができるようにしたり。今後はそういったサービス展開を考えています。

―同じような取り組みをしている競合はあるのでしょうか

荒井
もちろん他にも広告会社やメディア事業会社で取り組みをされていますが、販売実績としては国内で僕たちが先行していると思います。海外でソリューションをもっている企業ともすでに連携していて、直近では世界で2億人以上のユーザーをもつゲームプラットフォームROBLOX内での広告枠を販売することが決まっています。

関連リリース:DAC、米国Super League Gaming社と提携しメタバース領域で国内初の広告販売を開始~バーチャル空間広告サービス「arrova」を立ち上げ、全世界MAU2億人以上のゲーミングプラットフォーム「ROBLOX」内で広告配信が可能に~

仕事に“実感”を持てなかったコロナ期と、トラヴィス・スコットの衝撃

―国内でも先駆け的な存在ということですが、そもそもarrovaを立ち上げようと思ったきっかけは?

荒井
僕は2019年に新卒で入社したのですが、はじめの研修が終わって半年後にコロナパンデミックがはじまってしまって。出社はほとんどしないという状況でした。ずっと家でひとりパソコンに向かって仕事をしているので“チームでつくる”という感覚もなかなか味わえなかったし、アウトプットしたものを現場で見るという経験もできなかったので、仕事に対する“実感”がわかなかったんですよね。
そんなとき、フォートナイト*でトラヴィス・スコットがバーチャルライブを開いたんです。2020年の4月のことなので、パンデミックがはじまってほんの数ヶ月後のことですよね。世界で1230万人以上が同時接続したというのを知って、このコロナ禍ですごいエンターテインメントを生み出したなと衝撃を受けて。
*フォートナイト・・・3億5000万以上のユーザー数を誇る世界最大級のオンラインゲーム。

もともとテレビCMが好きで博報堂DYグループに入ったこともあって、ユーザーの潜在的な欲求を掘り起こしてくれるようなエンタメ性のある広告とか、広告を通して“おもしろかった”という体験ができるフォーマットをつくりたいという気持ちがありました。
このトラヴィス・スコット、たった9分間のライブで約21億円、通常のツアーの20公演分の売上を上げているんですよ。フィジカルに動けない状況で誕生した新しいエンターテインメントが、こんなに高いエンゲージメントを生み出すのかと驚きましたし、広告のこれからを考えるうえでも非常に可能性を感じました。その夏のお盆休みに相棒と一気に企画書を仕上げて、AD+VENTUREに応募、2021年の年明けに事業化が決定しました。

―入社3年目で事業化するというのはすごいスピード感ですよね?

荒井
1次審査を通過したときは本当にびっくりして(笑)。その後は先輩にアドバイスいただきながら事業を組み立てていきました。博報堂DYグループにはhakuhodo-XRというXR領域内のグループ横断組織があり、その中でメディア開発を担当しています。それぞれの知見を活かしながら連携することができますし、博報堂DYグループのレジェンド的な先輩方にアドバイスをもらいながら切磋琢磨しています。

▲XRを活用したマーケティングプロセスの上流から実装まで、トータルなサポート可能にする博報堂DYグループ9社連合の横断組織(https://hakuhodo-xr.jp/

日本が誇るIP×XRの分野にポテンシャルを感じる

―バズワード化している「メタバース」ですが、今後どのくらい伸び代があると思いますか?

荒井
アメリカでは900兆円市場になるとも言われていて、それには少し懐疑的ですが、通信技術が5G・6Gと上がっていって、僕たちのようなデジタルネイティブ世代のパイが大きくなっていく中で、特にエンタメ領域では普及が進むと思います。いまはまだ一部のアーリーアダプターのものという印象ですが、空間ごとにコミュニティが生まれているのもたしか。ニッチな世界ながら滞在する人のエンゲージメントはかなり深いという結果が出ています。

―とくにポテンシャルを感じるのはどういった分野ですか?

荒井
やはり日本のIPカルチャーは海外向けにも非常に強いコンテンツなので、IP×XRのビジネスに期待しています。出版社のようなIPホルダーとXRの技術をもっている企業をつないで、ユーザー視点でどうコミュニケーションしていくかを設計するのが僕たちの仕事。メタバースはどうしても技術が先行してしまう傾向があって、テクノロジーはすごいんだけどユーザーが付いてこられないとか、映像はきれいなんだけど1回訪れたら終わり、みたいなことが起こりがちなんです。博報堂DYグループは「生活者発想」と言っていますが、ユーザーがどういう体験を望んでいるか、それによってどんな効果が生まれるかを本質的に捉えて設計することが大切。僕たちはただ、メタバース上に新しい広告枠をつくって売る、というビジネスをしているわけではないので、それぞれの世界観に合わせた体験を設計する、クリエイティブな部分をとても重視しています。

成功の鍵は、ユーザーと共創できる空間づくり

―成功するメタバースにはどういった体験が必要だと思いますか?

荒井
重要なのは、どれだけコミュニティとして定着するか。そのカルチャーやコンテンツに思い入れのある人が集まって、自然とコミュニティが生まれるような空間がつくれるか否かだと思います。
少し前まで、ユーザーにとって、映画やテレビ番組のような完成されたコンテンツを受け取ることがエンターテインメントでしたが、最近の潮流はユーザーもいっしょにクリエイトできる共創ですよね。「あつまれどうぶつの森」も、メインストーリー以外に自分で服をデザインしたり家を建てたり、TikTokのミーム*も最たるもの。
*ミーム・・・同じ曲を同じ振り付けで踊るなど、誰かの投稿動画を模倣して広がっていく現象。

一度訪れるだけではなく、何度も来たくなる空間にするためには、常に“やること”がある状態をつくっておくことが重要だと思います。ひとつの概念を投下して、ミームのようにユーザーたちがどんどん広げてくれるようなメディアづくりが理想的ではないでしょうか。わざわざ訪れる意義をどれだけつくれるかが勝負だと思います。

―さいごに、arrovaの今後の展望をきかせてください

XR広告の市場規模を広げたいというのももちろんですが、新しいコミュニケーションのフォーマットをつくっていきたいと思っています。クライアントと並走しながら、それぞれの事業に最適なXR体験を設計するのが僕らのミッション。ゲームやバーチャル空間に出稿したい、メタバースでなにか取り組みたいとお考えの企業様は、ぜひお声がけいただければと思います。

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  • デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社
    新規テクノロジー事業開発本部
    研究開発局 オープンイノベーション推進室
    「arrova」プロジェクトリーダー
    2019年株式会社博報堂DYメディアパートナーズ入社。2020年TBWA HAKUHODO出向中に「AD+VENTURE(アドベンチャー)」に応募。選考を勝ち抜き、2021年DACにてバーチャル空間内でのメディア開発・広告販売を展開するサービス「arrova(アローバ)」 を立ち上げる。