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AaaSによる広告メディアビジネス革新の現場  AaaSの基盤を支える若手データサイエンティストの仕事
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AaaSによる広告メディアビジネス革新の現場  AaaSの基盤を支える若手データサイエンティストの仕事

博報堂DYグループが推進する広告メディアビジネスのDX化「AaaS」について分かりやすく紹介する本連載。今までAaaSの各サービスの特徴について紹介してきましたが、5回目からはAaaSを支えている独自データ基盤やソリューション開発の裏側について紹介していきます。初回に登場するのは、ディープラーニングなど高度な機械学習技術のモデリング/コーディングを行い、データ分析コンペでも一定以上の成績を修めるなどデータサイエンティストとして同じチームで活躍する若手、メディアビジネス基盤開発局の小山田圭佑(新卒入社3年目)、青山格(新卒入社1年目)、三上拓真(新卒入社1年目)の3名です。彼らが普段携わっている広告会社におけるデータサイエンティストとしての業務内容や、バックグラウンド、課題意識、やりがい、今後の目標などについて対談してもらいました。

■データサイエンス×クリエイティブに感じた大きな可能性

小山田
今回はAaaSの基盤とソリューション開発に対して僕らがどういう考えで取り組んでいるか、これから目指したいことなどについて、若手同士で語れたらと思います。僕自身は入社3年目で、機械学習や数理最適化などを活用したソリューション開発(TV番組の視聴率予測、バナー広告の画像データ解析など)や、の社会における創造性の研究/開発機関である博報堂のUniversity of CREATIVITYのAIラッパープロジェクトなどに関わっています。お2人は現在入社1年目ですが、どういった業務に関わっているか教えてくれますか。
青山
僕はあるデジタル広告がどの程度広告効果を獲得できるかを予測するモデルの構築や、その予測モデルを活用し、今後の広告予算配分を最適化するようなシステムを開発しています。また、広告出稿時のリーチをモニタリングするツールの開発や、録音された会話の音声データの解析にも関わっています。
三上
僕は、テレビやデジタル媒体の出稿に対する広告効果(リーチや認知など)を推計するシステムの開発に関わっています。具体的には、データからより精度高く推計するための数理モデル作成に携わっています。その他には、サッカーの試合データのコンテンツ化にチャレンジしており、現状は個人的な趣味の範囲ですがゆくゆく仕事につなげていければと思っています。
小山田
ありがとうございます。2人とも新卒1年目ながら、すでに活躍しているイメージなのですが、学生時代から現在に至るまでどんなことを学んできたのでしょうか。
青山
大学では経営システム工学科に所属していてデータサイエンスについて学びました。その時にデータサイエンスという分野に将来性を感じましたし、自分の得意なことと世の中のニーズを掛け合わせるとそれが仕事にできるとわかり、その後も独自に学んできました。大学院ではリコメンドアルゴリズムを研究する一方、いくつか機械学習コンペにも参加しており、修士2年のときに広告会社主催の企画系コンペで受賞したこともあり、自分は機械学習の精度向上を突き詰めるというよりは企画経営に活かす方が向いているのではないか、と思ったりしていました。今はまだコンテンツ開発系の仕事には関われていないですが、自分のバックグラウンドを活かして企画部分まで関われたらと思っています。また最近では、ある写真を別の画風にスタイル変換するといった生成モデル系の技術を使って遊んだりしています。
三上
僕は学生時代に計量経済学のゼミに所属し、因果推論を重視して職業性ストレスに影響を与える要因の分析を行いました。データサイエンスは学部時代に周囲で流行っていたことから勉強を始め、機械学習コンペの参加やベンチャー企業のアルバイトで実際にビッグデータ解析に携わることで実戦経験を重ねました。また、趣味のボードゲームで、期待値の高い打ち手を算出するコードを自分で書いて作戦に活かすこともしていました。
小山田
ありがとうございます。2人とも大学院生の時に、DATA SCIENCE CAMP(データサイエンス人材向けのインターン)に参加し、その後入社しましたよね。なぜうちの会社だったんですか?
青山
インターン自体は機械学習の精度向上を競うようなものでしたが、篠田裕之さん(株式会社博報堂DYメディアパートナーズメディアビジネス基盤開発局所属のデータサイエンティスト)の業務紹介で、ゲームのリザルトをディープラーニングで分析し、どうすれば勝てるのかを考察するというお話をされていて、持ち前のスキルを分析するだけではない形で業務に活かせることに面白みを感じました。もともと僕自身がコンテンツ開発やクリエイターといった仕事にも興味があったので、広告会社ならそうした“データクリエイター”的な業務ができるだろうと思ったのが理由です。
小山田
たしかに、冒頭でも話したAaaS的な業務(視聴率予測や広告効果予測モデル構築など)のようなKaggle(世界的なデータサイエンスコンペティションプラットフォーム)などでの経験が直接活かせる仕事もある一方、クリエイティブ系の領域に近いコンテンツ開発に関われるチャンスがあるのも今のチームの大きな魅力だなと思います。
三上
僕も篠田さんの話をすごく覚えています。AI技術(機械学習や数理最適化など)を使って新しいカレーのレシピをつくるというプロジェクトで、AIを使って自由な発想で新しいものづくりができる、そういうクリエイティブな話に魅力を感じました。また、多様なパートナーとの仕事を通じ、データサイエンティストとしての引き出しを増やせる点も魅力でした。
小山田
ありがとうございます。そうした自分のバックグラウンドが特に活かせていると思うところ、あるいはこれから活かしていきたいと思うことは何ですか。
青山
AaaSのソリューション開発では、データの分析や予測モデルの構築という点で大学時代に培ってきた知識、スキルをそのまま活かせていると感じます。逆にまだ課題感を感じるのは、画像や音、言語といったこれまで自分は扱ってこなかったようなデータの活用です。なので、今はそうしたデータの分析にチャレンジしています。特に音楽が好きなので、こうしたデータの解析技術を使って何か面白いコンテンツを企画したいと思っています。
小山田
なるほど。確かに博報堂が作成したクリエイティブ関連のデータがどんどん蓄積されているので動画像データの活用も見えてきていますし、メディアパートナーズとしてもラジオやスマートスピーカーなどのメディアに関連した音声データ活用を模索すると面白い展開がありそうですよね。
三上
僕はデータサイエンスをビジネスで活用する上で、全体最適が取れるモデル構築を目指したいと考えています。ビジネス要件は複雑であることも多く、精度を優先すべき場面や解釈性を優先すべき場面など要件によって柔軟な対応が求められると思います。データサイエンティストとしての目とビジネスプラナーの目の双方から俯瞰し、全体最適を取ることを意識したいです。
小山田
確かに、いま作ったクリエイティブ素材をより良くするための示唆(どこをどう変えると広告のクリック率が上がるのかなど)が得られるツールがあると業務効率が上がるといった話を耳にすることもあります。なので、データ/モデルの解釈性に対するニーズは高いと言えますよね。我々の携わっている業務は比較的新しくて、まだ手探りな部分も多い。それゆえに一人ひとりのデータサイエンティストが目先の精度向上だけに悪い意味で捉われることなく、マクロなビジネス的視点を持って開発業務に臨む姿勢が大事だと思っています。3年目の僕が言うのもおこがましいですが(苦笑)。
青山
逆に質問させてください。小山田さんは学生時代からKaggleにもチャレンジされていて、個人的にも様々な分析、開発などをされていますが、データサイエンスのどういうところに魅力を感じますか?業務以外でも開発をするのには相当気力が必要な気がしますが、何がモチベーションとなっているのでしょうか。
小山田
他の様々な分野/職種で言えることかもしれませんが、データサイエンティストとして、自分はどの程度のスキルを有しているかを適切に理解/認知してもらうことは簡単ではないと思っています。会社の仕事として行った内容を好き勝手話すことはできませんし。一方、Kaggle内での結果はオープンなものなので、対外的に自分のスキルを理解してもらいたい場合に、すごく話しやすいなと思ったんですよね。なので、Kaggleのような実践的な場で結果を残すことは大きなモチベーションでした。単純にできることを増やしたいという気持ちもありますが。
データサイエンス全般に対するモチベーションでいうと、まだまだできる人が多くないのでバリューを発揮しやすい。また、効率化/最適化という話を超えてコンテンツ開発などクリエイティブな分野に自分が関われる可能性が生まれている点も、大きな魅力だと思っています。

■互いに切磋琢磨しながら知見共有し成長できる環境

小山田
いまの開発体制、チームの強みは何だと思いますか?
青山
リーダーボード形式と呼んでいる、同じ課題をそれぞれが解き、予測精度を競争するといった方法で、多くのプロジェクトを進めていますよね。一方的に指示された分析を行うだけではないので、各自が課題に対して自分事化して考えられるのは良い部分だと思っています。個人の裁量が大きく、思いついたアイデアをそのまま形にしやすいし、そうした個人の取り組みをミーティングなどで議論することで、同じ課題に対して、他の人はどう考えていたのかを知れるという点で面白さを感じます。
三上
データサイエンティスト同士の距離感が近くフランクに話せるので、互いの知見を共有し、強みを活かしあえる環境かなとも思っています。自分が強い分野や最新技術などを披露する勉強会も行っていて、つねに新しい知識にアップデートできるのも強みだと思います。
小山田
そうですよね。一人で頑張ってモデリングしていると精度的な限界が生まれやすかったり、本質的な視点が欠落したりすることもある。複数人で競い、適宜ナレッジを共有する進め方は、最終的なアウトプットの質を高める意味でもとても効いていると僕も思います。あと、属人的になりにくいのもいいですよね。システムがブラックボックス化してしまい、他のメンバーが関与しにくい状態となると後々大変なことになるので…。風通しがいいと感じてもらえているのはほっとしました。怖いチームだとやりにくいですからね(笑)。

では次に、2人にも来期からは後輩ができるわけですが、どういう素養、スキル、キャラクターの人がデータサイエンティストに向いていると思いますか?

青山
そうですね。個人的には、プロジェクトの課題をどこまで自分事化して取り組めるかが大事だと思います。結局、仕事の作業として割り切ってしまうと分析も本気で取り組めない気がしています。なので、興味関心があることに対しては全力で走り切れるような人が来てくれると嬉しいなという感じはしますね。あとは企画系に活かしたいということであれば、トレンドなどに対する情報感度が高く、何をしたら生活者に”ウケる”かを考えられる人は、面白い分析もできると思います。
三上
今の自分に言いたいことでもありますが、今の環境を当たり前と思わないことです。たとえば、新しくツールが開発されたとしても5年後の技術ではよりパフォーマンスの優れたツールが出来ることもありうると思います。そういった意味で、与えられた環境を当たり前と思ってそこに自分をフィットさせるのではなく、どうしたらより環境が良くなるか考え続ける必要があると思います。新人ならではのフランクな目線で、今あるものを塗り替えていく気持ちで仕事に取り組むことが大事かなと思います。
小山田
青山くんはチームでスコアを競うときも、僕のスコアを塗り返してきて(笑)、いま言ったような熱意、本気度を感じます。僕もどこかしら爪痕を残したいと思って仕事をしているので、青山くんの言うようなモチベーションはすごく大事だと思う。三上くんの話も納得します。メディアとのやり取り一つとってみても広告業界には古くから特有のルールがあったりして、それに僕らが無理に合わせることで、運用、メンテナンス、開発すべてに非効率だったり無駄なことが発生するケースもあると思う。僕らのパワーだけでは変えようがないこともあるかもしれないけど、いまのDXの流れに乗りながら変えられるところを変えていかないといけないんですよね。そして、こうしたことも、何年も仕事をしていると疑問に感じなくなってしまう可能性がある。やっぱりそういう視点を持ち続けるというのは新人か否かに限らず非常に大事だなと、2人の話を聞いていて思いました。
青山
小山田さんはデータサイエンス系インターンの講師もされていますが、どんな人が弊社のデータサイエンティストとして向いていると考えますか?
小山田
難しい質問ですね。精度の高いものを出すことはもちろん大事だけど、そこだけじゃないですよね。たとえばインターン内のスコア競争で1位を取れるかどうかも重要なんですが、僕が最も気になるのは、与えられた2~3週間という比較的短い時間のなかで、その人が120%努力できるかどうかです。その時点での、その人の120%が優秀なデータサイエンティストの50%程度であったとしても、とりあえず目先のチャンスに本気になれないと、1年後 5年後 10年後に優秀なデータサイエンティストを超える可能性を見出せないのではと思っています。仕事の場面で考えても、その人がやりたいという仕事を任せたときに、本気じゃなかったら悲しくなるだろうなと思いますし(苦笑)。これは自分に定期的に言い聞かせている話でもあって、精神論的な話にもなってしまいましたが…。

あとは、単純に精度を伸ばすことに興味がある人は広告会社以外の道に進んだ方が幸せになれるのではと思っています。広告会社でデータサイエンティストになるならやっぱり企画についても興味がある人の方が向いていそうな気がします。それから、ソリューション開発においても、一つのソリューション、機械学習的なモデルの使い道をどれだけ想像できるか、そこにどれだけ面白みを見いだせるかなど、開発と同じくらい使う人のことや使い方に興味を持つことも大事でしょうね。

■データサイエンスとビジネス視点を掛け合わせAaaSに還元させていく

三上
小山田さんがデータサイエンティストとして働くうえでもっとも大事にしている考え方は何ですか。
小山田
そうですね。肝心なのはビジネス課題をどれだけうまくデータサイエンスの問題として落とせるか。そこの力が結局、最後のアウトプットの良し悪しにも影響してくると思います。誰かがつくってくれた問題の上で精度向上にだけ注力できるようなシーンって少ないんですよね。テレビのスポット取引をやる人とか、デジタルの運用をしている人とか、社内にいろんなプレーヤーがいて、現実的にどんなデータを使えて、どういうふうにモデリングして、どう検証すると、そういう人が抱えるビジネス課題を解決できるのか。計算時間や汎化性など含めデータサイエンス的な課題設計を的確にできる力が、おそらくもっとも大事なんじゃないでしょうか。僕がKaggleで結果を出せるケースも、精度を上げる上で、与えられたデータをうまく捉えられた場合かなと思っています。この視点は会社でビジネス的にデータサイエンスを考えるうえでも大事だと思います。

では最後に、それぞれの今後の目標を教えてくれますか。

青山
目標は3つあって、まずはいま着手している開発案件を、少なくとも一つはビジネス運用できるくらいまでに着地させることですかね。もう1つは会社の志望理由でもあったデータ×クリエイティブの業務領域にもチャレンジすることです。また個人的な話ではありますが、Kaggle Expert(Kaggleにおける称号)に1年以内にはなりたいと思い、Kaggleにも挑戦しています。
三上
僕はデータサイエンティストとしての引き出しを増やすことを特に意識したいと思っています。そのために、業務効率化に関するデータ活用案件の他にも、コンテンツ開発系や、クライアントに特化した案件など、さまざまなジャンルのデータ活用案件に積極的に加わっていきたいです。そして増やした引き出しを最終的に、このAaaSプロジェクトにも還元していきたいと思っています。
小山田
僕はもっと、ビジネス課題をデータサイエンスの問題として落とし込む部分が効率的にできたらなと思っています。今後は、コーディングだけでなくディレクション的な業務も増えてくるはずですし。あとは開発しているコンテンツを生活者に面白がってもらいたいと思っていて、企画力やその魅せ方などコーディング以外のスキルも伸ばしたいです。

最後になりますが、僕らがメインでやっているのは確かにソリューション開発ですが、最適化、効率化といった文脈がAaaSのすべてではないと思っています。たとえばデータサイエンス的にコンテンツを企画し地方の放送局と協力させていただくといったことも、AaaSの考え方の延長線上にあるはず。2人がやりたいことで一見AaaSらしくないことも、実は接点を持っているかもしれない。なので、悪い意味で思考を固めることなく、引き続き頑張ってほしいと思いました。

今日はお2人ともありがとうございました!

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