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若者に支持されるコンテンツを解明する【アドテック東京2019レポート】
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若者に支持されるコンテンツを解明する【アドテック東京2019レポート】

マーケティングとテクノロジーに関するカンファレンス「ad:tech東京2019」において、『若者に支持されるコンテンツを解明する』というタイトルでセッションが行われました。スピーカーとしてUUUM株式会社 執行役員 石橋尚也氏、株式会社QuizKnock代表取締役社長 伊沢拓司氏、C Channel 株式会社 広告営業推進部 部長 武藤崇雄氏、CHOCOLATE Inc.代表取締役 渡辺裕介氏が登壇、モデレーターをTBWA\HAKUHODO コンテンツプラナーの池田昂平が務めました。

■「バズるコンテンツ」はもう目指さない!?
時代の流れで変わるもの、変わらないものとは

池田
このセッションの目標は、流行っては廃れる若者トレンドにはどんな不変の本質があるのか?を考えることです。今日はスペシャリストの4人にいろんな角度からの考えをうかがっていきたいと思います。まずは自己紹介からお願いします。
石橋
UUUMは、HIKAKINやはじめしゃちょーなどのクリエイターのマネジメントなどを手がける会社で、私が担当するのはインスタグラマーと企業をマッチングさせるプラットフォームの運営です。
伊沢
QuizKnockは「楽しいから始まる学び」を標榜し、教育に関わるコンテンツをつくっている会社です。クイズを使ったウェブサイト、YouTubeのチャンネル、アプリ開発から、全国の中学・高校を回る無償の講演会活動を行っています。お陰様で先日、YouTubeチャンネルは100万人登録を記録しました。
武藤
我々、C Channelは若年層に向けた動画コンテンツを配信するメディアなので、今日はメディア視点からコンテンツの話ができればと思います。
渡辺
CHOCOLATE Inc.という会社は、「世界一たのしみな会社になる」というビジョンのもとコンテンツづくりをしています。広告自体もコンテンツにして、みんなに楽しく届けていけたらと考えています。
池田
僕はTBWA\HAKUHODOでコンテンツプラナーとして働いています。去年まではとにかくバズらせることに集中していて、今年、今まで制作した動画の累計再生数が10億回を突破することができました。ただ今年に入って、そこからは卒業したいと思っています。
まずみなさんに聞いてみたいのは、コンテンツとは何か。伊沢さんどうですか?
伊沢
コンテンツとは消費財的なことでしょうか。人が自分にプラスなことをもたらそうとして、時間をかけて消費するもの。動画も体験も、有形無形の、人が関心を向けて消費しようとするものはすべてコンテンツと捉えられる。別の定義もあると思いますが。
渡辺
僕らとしては、映像からテキスト、イベントまで何でも「心を動かす何か」と定義しています。
池田
では「若者に支持されるコンテンツは、時代に左右されないのか」について、石橋さんはどうでしょうか。
石橋
左右されると思いますね。メディアのフォーマット、体系の変化に則してコンテンツの出方も変わってきている。一昔前ならネットメディアはブログなどのテキストメディア中心でしたが、時代が進んで動画や写真メディアが増えることでコンテンツも変わってきている。たとえばTikTokなどのコンテンツは、ブログでは絶対に表現できないものですよね。
武藤
ゆるキャラもコンテンツと捉えれば、流行のきっかけは相次いだ自然災害にあったと思っていて。地域活性化とか絆づくりといったことが全国に広がり、合理性、利便性じゃない、あったかいキャラクターを求める全体的な空気の中であのコンテンツが生まれた。そういった市場とか、社会的な出来事などにも左右されるんじゃないかと思いますね。
伊沢
また、それこそ3Gから4Gになったことで、みんながYouTubeで動画を見られるようになりましたし、昨日アドテックで聞いた5Gのセッションでは、5Gによってこれまでの状況が一変するという話だった。メディアも時代を変えるし、時代もメディアを変える。相互的なものだと思います。
渡辺
僕は、フォーマットや形が変われども、そこで伝えられる中身の部分はそこまで変わらないんじゃないかと思います。結局美味しそうなものやかわいいペットはみんな見るじゃないですか。そういうものは今、SNS、YouTubeでも人気ですが、かつてのテレビでもそうだった。人の心を動かす何かという部分では、そこまで時代に左右されないのかなとも感じます。
伊沢
そのあたりはハイブリッドだなと思います。いまはASMR動画が流行っていますが、10年前なら流行っていなかったと思う。我々にとって「いい音」「気持ちがいい音」というのは時代によらず感覚としてあって、これまでは単純にそういうコンテンツの出てくる場所がなかった。CDだったら高くて売れなかっただろうけど、無償のメディアとレベルの高いオーディオがあったから「あ、ちょっとやってみようかな」みたいな、共通感覚を現代に翻訳するツールがあって初めて流行り出した感じがします。
池田
なるほど。渡辺さんのコメントで思い出したのが、2年程前、YouTubeの“やってみた”系創成期に、人気ユーチューバーに「よくそんなにアイデアを思いつきますね」と聞いてみたら、「10年前にテレビで流行った企画をそのままやっているだけだから簡単です」と言われて驚いたことがあって。10年前に深夜番組でやっていたことが、今のYouTubeで目新しい企画になる。かつテレビでは規制があってできなかったこともYouTubeではできた。それがはまったんですね。
石橋
YouTubeの場合、この時代特有のものとしてUGC(User Generated Content)もありますよね。つまり自分一人でMCも演者も編集も何役も兼ねるという構成で、テレビのように司会者がいて雛段の芸人さんとトークをまわしていく、といった構成とは違うスタイルが生まれている。
伊沢
僕はテレビで雛段に座る仕事もしていますが、何人も出演者がいるなかで、テレビという大きな枠であれば大御所だけでなく若手まで大写しになっても構図として自然なんですが
、YouTubeとかスマホ画面くらいの小箱だと、しっかり視認されるには最大4人くらいが限度だと思います。だから少人数の方が、スマホのこのサイズ感には合っているのかもしれません。
渡辺
やっぱり僕の中ではメディアによってつくり方が左右されるのは自然なことだと思います。何をやるかという点は変わらないのかなと。
池田
テレビと違って、パイを意識しなくてもよくなったことは大きいですよね。それぞれのコンテンツに、一定数の熱烈なファンがつく時代。でもコンテンツをつくる立場としては、お茶の間を意識した、万人が楽しめるようなコンテンツを目指すべきなんですかね。
渡辺
少しずれるかもしれませんが、伊沢さんはどのくらいマーケットイン発想でコンテンツをつくるんですか?
伊沢
QuizKnockの場合、ほぼ「自分たちがやりたいこと」だけではなりたたない、という発想でつくっています。これはYouTubeに限定した話ですが、サムネイルとタイトルが8割だと思っているので、いかに引きのあるタイトルをつけ、いかに需要に応えるかを中心に考えてつくっている部分はあります。やりたいことをいかに需要に合わせて翻訳するかというか、そういう意味ではかなりマーケットインですね。
たとえば今伸びている動画に、『【炎上しないで】東大生が日本一バカな大学の入試に本気で挑戦したらどうなる?【想像以上の実力】』というのがあるんですが、まず、日本一バカな大学の入試って何?とか、品行方正なイメージでやってるQuizKnockが炎上するってどういうこと?となりますよね。「東大生が入試問題を解いてしまう」という予想通りの展開と、「バカな大学」「なぜ炎上?」という予想外を掛け合わせる。

そういうテクニックは重視しています。ターゲットは、高校生大学生、若者ですね。最近のコンテンツ文化の一つとして早押しなどのスーパープレイを見たいというのが多いんですが、スーパープレイばかりではないのがうちの強みだと思います。実は90年くらいにテレビでもスーパープレイを見せるクイズ番組が流行った。でもそのせいでレベルが上がりすぎて95年ごろに一旦、全部なくなるんです。その頃から“お茶の間”的な場所もなくなり、クイズコンテンツも分散化していったという背景があります。

渡辺
ヒーローコンテンツは人気ですよね。とはいえそればかりでは期待値がどんどん上がっていき、応え続けるのが難しくなりませんか?
伊沢
逆にヒーローの挑戦が失敗に終わるというのも、面白いと思うんです。たとえば僕たちが中国語だけで書かれたクイズに挑戦するという動画をつくったところ、中国語専攻の大学生ならすぐ解けるレベルのものなので、「勝った」というコメントがすごく多くつきました。ヒーローが強くなりすぎたら、無理なことをやらせてちょっと負けさせる。それによってヒーローを再生させるのも一つの手段だと思います。
池田
今のお話に関連して、コンテンツの本質についてうかがえれば。チョコレイトはいろんなコンテンツをつくられていますが、その中で本質の部分をどう見出していますか?
渡辺
チョコレイトは以前「バズらせてくれる会社」と思われていた部分があったかもしれませんが、バズは消費こそされても心には残らない。だから、「いかに届け方に依存せず、人の心にストックしていくようなコンテンツをつくれるか」をすごく考えるようになりました。
池田さんはなぜバズらせることを卒業したいと思ったんですか?
池田
いくら盛大にバズっても「ちょっと面白いな」くらいの心の揺れ動きは起きますが、生き方に影響するほどの作用はないんですよね。今の僕なら、たとえば僕がバンドマンだとして、どのライブでも必ず1列目に来てくれるファン、つまりコアなメッセージをガツンと受け取ってくれる人たちをつくってから、2列目3列目を考える。熱量の高いところに着火し、一瞬燃えて鎮火した後にいかに1列目だった人たちで会場を埋めるか。そういうつくり方をしたいですね。

■鍵は「脱一人」!?雑談がアイデアを生む

池田
続いて、コンテンツ発想のフローについてみなさんにお聞きしたいと思います。枯渇することなくアイデアを出す方法を、個人的に是非みなさんに伺いたかったんです。
渡辺
チョコレイトの場合、一番企画が出てくるのは雑談からですね。僕らはオリジナルコンテンツづくりにもトライしているので、広告以外にも、さまざまな業種のプランナーがいます。彼らのバックグラウンドは全く違うので、1つのお題に対しても全く異なる視点からのアイデアが出て、その掛け合いからまた新たなアイデアが出る。それが起こるのが何のプレッシャーもなく雑談しているとき。そこで出た案はスプレッドシートにアイデアストックでまとめています。
石橋
UUUMも日常的に雑談は多いですね。私は集中したいのでやめてほしいと思うこともありますが(笑)、その雰囲気自体がUUUMらしさなのかなと思っています。
池田
1人で考えているとわーっとなりますよね。生みの苦しみがあるんですよ。
伊沢
ユーチューバーのコンサルをする人も出てきているから、「脱一人」が鍵かもしれませんよ。
武藤
我々もデータを見ながら「再生回数の多い動画」「勝てるコンテンツ」といった傾向を見極め、雑談しながらそこに感覚を乗せて、新しいものを生むというケースが結構多いですね。雑談が重要なのは同じですが、メディアの場合は発想のもとにしっかりしたデータベースがある感じです。
池田
雑談する相手がいない僕はどうしたらいいですかね(苦笑)。
渡辺
とりあえずツイッターで呟けばいいと思いますよ(笑)。チョコレイトではオリジナルコンテンツをつくる場合は、みんなでああだこうだ言う時間がもったいないので、とりあえずアイデアをツイッターに上げます。反響が良ければそれをプロジェクト化する。ユーザーの声も聞けますし、リトマス試験紙のような使い方をしていますね。
伊沢
チョコレイトとQuizKnockで「VENN'S CODE」というボードゲームを開発した際も、「4つ考えたんで4つのボードゲームで動画撮りましょう」と言われて、ツイッターに上げて投票してもらって、一番反応がよかったものを商品化したんですよね。出すというのは大事かもしれない。ちなみに発想力のすごい人って、全部ひとりでやっているわけではないような気がして。中心にその人はいても、やはり傍にはいろんな人がいて、発想のバディ的存在になっている。神のような発想者を目指すのではなく、仲間とチームとしてやらないと、一人に過度な負荷がかかってしまうことになります。

■今改めて、「タピオカブーム」を考える

池田
最後になりますが「タピオカブーム」についてどう考察するか、武藤さんからお願いします。
武藤
僕らC Channelには若い子の生の声が定期的に集まってくるんですが、その中でSNSをやめるきっかけについて聞いたことがあるんです。答えを見ると「おじさんが入ってきたから」というのが多かった。タピオカブームが割と長く続いているのは、おじさんが参入しにくい文化だからかなと思ったりします。
伊沢
以前、若者の広告との関わり方について、ある調査データで、若者は他の世代と比べ企業広告に非常に肯定的だったんですが、再生前とか、閲覧を邪魔する形で入ってくるものに関してはすごく否定的だった。だから「おじさん的存在」という邪魔が入るかどうかは大きいのかもしれない。自分たちのものだという感覚がずっと続いているのがポイントなのかなと。
池田
若者だけで盛り上がっている中に大人が入ってくると急に冷めるみたいな感じですね。
石橋
コンテンツがフィットしていたということだと思う。ちょうど流行っていた「自撮り」とコラボレーションしやすかったんじゃないでしょうか。
伊沢
僕は「突っ込みどころのなさ」がポイントのような気がしています。日本のZ世代は周りの言うことがとても気になるし、SNSで等で「批評的なもの」に触れ続けている世代なのでなおさら周囲を気にしちゃう。そんなかタピオカってあんまり論点とかがなくて、批判しどころが少ない文化なんですよね。そこに同調圧力もあってみんなSNSにアップし、結果としてブームになっている気がします。
池田
ちなみにインスタでもっとも「#タピオカ」が投稿されたのは、2019年7月、4000万投稿でした。そこから少し落ちてきてはいますが、すごい数字ですよね。今は「投稿のしやすさ」を意識したコンテンツづくりも求められているのかなとも思いますし、昨日アドテックではTikTokの鈴木さんから、企業広告ということに気づくと、8割はよく思わないという話があった。広告を仕掛ける側としては、いかに広告の空気を消し、口コミに寄せていけるかも大事ですよね。そういうコンテンツをどうつくるかを日々考えているところです。
では最後に、会場のみなさんからご質問はありますか?
(会場から)
伊沢さんに質問です。口コミが大事になってくる中、動画が閲覧された後どうシェアされていくかまで考えて設計されているのですか?
伊沢
僕らはバズらないYouTubeチャンネルだなと自認しています。100万登録いったYouTubeチャンネルはだいたいひとつかふたつは1000万回再生されている動画があるんですが、僕らは500が限度です。そんななか、僕らの動画がどうシェアされたのかを分析したら、口コミが大きかった。“教室でシェアされる”コンテンツになったのが大きいと思います。なので教室でシェアされるためのお題目として、まず笑えてしかも勉強になるという、彼らの生活に添って邪魔しないコンテンツづくりを心掛けています。
池田
ありがとうございます。時間なので以上となります。みなさんありがとうございました!
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  • TBWA\HAKUHODO
    コンテンツプラナー
    1991年生まれ。人が自分であることを誇りに思えるための映像、コンテンツ制作を行う。SNSに特化したコミュニケーションをカルチャー目線で開発し、PR方法を前提にした事業、サービスを展開。10代に絶大な人気を誇るコンテンツで、2018年上半期、国内でバズったトレンド動画1位に輝く。過去6年間に3000本以上のYouTube動画を制作し、累計再生数は10億超。また、芸能プロダクションでは、タレントの商品価値を高めるためのブランディング、教育を行い、海外11カ国での興行を成功。日本有数のコンテンツクリエイターとして、国内外の多数のメディアに作品が取り上げられている。
  • 石橋 尚也
    石橋 尚也
    UUUM株式会社
    執行役員
    2006年、メンバーズに入社。インターネット広告事業、ソーシャルメディアマーケティング事業に従事。2010年にDACへ、2011年にTorchlightへ出向。2015年、Lemonadeを創業、代表に就任。Instagram特化型のインフルエンサーマーケティングプラットフォームを提供。2018年、M&Aを通じて「ヒトの創造性を最大化する」を実現するためにUUUMにジョイン。
  • 伊沢 拓司
    伊沢 拓司
    株式会社QuizKnock
    代表取締役社長
    東京大学経済学部在学中の2016年、WEBメディア「QuizKnock」を立ち上げ。同大農学部大学院在学中の2017年にはYouTubeチャンネル「QuizKnock」を開設。東京大学の学生を中心に運営する知的メディア群として成長させ、2019年には各サービスを運営する(株)QuizKnockを立ち上げCEOに就任する。現在WEBは700万PV/月超、YouTubeは登録者110万人超。
    開成高校時代からクイズプレイヤーとしてテレビ番組等で活躍し、NTV『全国高等学校クイズ選手権』で個人初の2連覇を達成。現在はTBS『東大王』出演、TBSラジオ『たまむすび』出演など、ワタナベエンターテインメント所属の文化人としても活動している。著書に『勉強大全』『東大王・伊沢拓司の最強クイズ100』(KADOKAWA)等。
  • 武藤 崇雄
    武藤 崇雄
    C Channel 株式会社
    広告営業推進部 部長
    大学卒業後、出版系メディアを経て 2008年NHN Japan入社(現LINE)、メディア事業立ち上げに従事。その後、istyleでのメディアセールス、 外資通信キャリアの日本市場進出に伴う 「Business Development & Marketing」を担当し、2016年 C Channel入社。
  • 渡辺 裕介
    渡辺 裕介
    CHOCOLATE Inc.代表取締役
    1984年生まれ。2008年一橋大学商学部卒業後、博報堂に入社。テレビ・ラジオ・雑誌を中心に、様々なメディアでコンテンツの企画プロデュース、コンテンツを活用したプロモーションの企画プロデュースに携わる。これからの時代にふさわしい新たなコンテンツカンパニーをつくるべく、CHOCOLATE Inc.を創業。