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動画でクライアントの課題を解決する ──博報堂プロダクツの映像クリエイター集団「コンテンツクリエイション」
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動画でクライアントの課題を解決する ──博報堂プロダクツの映像クリエイター集団「コンテンツクリエイション」

デジタル技術の普及によって、動画の制作や配信のハードルは大きく下がりました。現在では、コミュニケーション活動に動画を一切使用していない企業は少数派となっています。動画がカジュアル化する中で、映像制作のプロに求められるのはどのような役割なのでしょうか。博報堂プロダクツの映像クリエイター集団「コンテンツクリエイション」のメンバーに、デジタル映像制作の現在と、コンテンツクリエイションが目指すものについて語ってもらいました。

 動画の「量」と「質」を両立する

──デジタル動画制作を取り巻く環境は、この数年でどのように変わりましたか。

右田
5年ほど前は、コミュニケーションに動画を使う場面が一気に広がったために、一つ一つの動画にあまりお金をかけず、とにかくたくさんの動画をつくりたいというニーズのあるクライアントが多かったと思います。「量」が求められていた時代でしたね。それが最近になって、「量」を求める傾向と「質」を求める傾向に二分化してきたように感じます。
藤岡
僕たちが得意としているのは、その中間の、量と質をバランスよく達成していく領域です。デジタル動画制作において、特にWEB映像では、早く・安く・たくさんの映像をつくるということが重要な案件が増えています。しかし量と同時にクオリティを常に追求するという姿勢がないと、多くの競合プレーヤーの中に埋もれてしまいます。予算、納期などの条件が限られている中で、最大限の質を求めていくことが大切だと考えています。
右田
それから、動画の種類や用途が多様化しているのも最近の傾向ですね。それに伴って映像を制作する際に、同時進行で電車内のモニターやSNS、あるいは営業ツールなど、時にはテレビCMまで制作するケースも増えています。
藤岡
広告・PR目的の映像だけでなく、イベントで上映する映像や講演会の説明用動画などの制作依頼も多いですよね。制作する側は、あらゆるオーダーに柔軟に対応することが求められています。

常識にとらわれないチームづくり

──今年に入って「コンテンツクリエイション部」を立ち上げた経緯を教えてください。

岩本
二人が話したように、数年前は早く、安く、たくさんの動画をつくることが求められていたのですが、量を追求する領域だけで勝負しようとすると、どうしても過当競争になってしまいます。すると「動画によってクライアントの課題を解決する」という根本的なことがおろそかになる。なので、0から1を生み出すこと、つまり映像コンテンツを「クリエイト」するという姿勢を明確に打ち出して、コンセプトとして掲げることしました。そうしてできたのが、コンテンツクリエイション部です。
藤岡
組織が変わって、仕事のやり方も変わりました。一般的な映像制作では、プロデューサーがいて、ディレクターがいて、プロダクションマネージャーがいるのが普通です。それに対してコンテンツクリエイション部は、一人ひとりのスタッフがいろいろな役割を担うマルチタスク体制になっています。例えば、僕の役職は「プロデューシングディレクター」ですが、これは従来のようなプロデュースワークもするし、コンテンツのディレクションもするという立場です。
右田
特徴的なのは、プロデューサーという役割がないことですね。職種は、プロデューシングディレクターとディレクターの2種類だけで、全員が自分の手を動かして編集まで行うことができます。
チームは「コンテンツファクトリー」と「コンテンツクラフト」の2つに分かれていて、前者は主にプロデューシングディレクターによって構成されるチーム、後者が僕のようなディレクターによって構成されるチームです。
岩本
一応、機能でチームを分けていますが、実際にはケースバイケースで人材が混じり合うケースが多いですね。クライアントから与えられたミッションとそれに対する最適解を考える中からチーム構成やそれぞれの役割が決まってきます。一人ひとりに異なる得意領域があるので、その組み合わせによっていろいろなチームの組み方がありえるわけです。右田も藤岡も、それぞれ独自の得意領域をもっています。
右田
僕は以前、ケーブルテレビ番組の制作会社にいて、企画、演出、撮影、編集と何でもやりました。そのマルチスキルが今の仕事に生かされていますね。
藤岡
僕は大学でテレビ番組のつくり方を学んでいて、とくに照明について専門的に勉強しました。あと、映像編集は趣味のように休日にも没頭してやるぐらい好きで、プロデュースやディレクションだけでなく、編集まで担当することが多いです。
岩本
常識にとらわれずにそれぞれの持ち味を生かすというのが、コンテンツクリエイション部のモットーです。プロデューサーの仕事はこれ、ディレクターの仕事はこれ、という型にはまった思考にとらわれると、どうしても無駄が多くなってしまいます。メンバーのスキルを自在に組み合わせて、それぞれが最大限に能力を発揮すれば、チーム全体が効率化します。そこで余った時間をクオリティの追求に充てる。そんな考え方が基本です。

クライアントとともに「答え」を考えていく

──クライアントとの関係も従来とは異なるのでしょうか。

岩本
最大の違いは、ディレクターが案件に参加するタイミングですね。通常、ディレクターは企画が決まった段階で動き始めるのですが、コンテンツクリエイション部では、企画を考える段階から、場合によっては動画の制作が確定していない段階からでもディレクターがクライアントとのミーティングに参加させていただくようにしています。そうすると動画の役割や意味をしっかりと捉えることができ、結果的に芯を食った動画ができあがります。
藤岡
制作チームがクライアントと直接対話をすることができるので、動画に何が求められているかがよくわかります。クライアント側のご担当者がオウンドメディア専門担当の場合、動画配信の経験があまりないというケースも少なくありません。そういう場合でも、課題に応じたご提案をしたり、選択肢を提示したりといったことをダイレクトに行うことができます。
右田
ディレクターチームにはWEBディレクターもいるので、動画視聴までの導線を設計したり、ランディングページやバナーの制作をしたりすることも可能です。クライアントの課題をお聞きしながら幅広い提案ができるのも、早い段階でディレクターがミーティングに参加するメリットだと思います。
藤岡
もう一つ、最初の段階で目的やゴールを明確にできるのも大きいですね。「何のための動画なのか」をはじめにしっかり定義しておかないと、あとから制作の方向性がずれたり、本当は必要のない要素を映像に入れてしまったりするリスクがあります。制作のプロとしての意見を言わせていただきながら、その定義をクライアントと一緒に行うことがとても重要だと考えています。
右田
デジタル動画の場合、クライアントの方も展開する媒体も決まっていないケースがわりとよくあります。そのようなケースでは、クライアント側にも「答え」はないので、本当に必要なことは何かを一緒に考えていかなければなりません。担当者と打ち合わせを重ねて課題を見つけ出し、コンテンツ+メディアの最適解を一緒に見出していく。それが私たちの特徴でもあるとも言えます。
岩本
以前は、動画によってどれだけバズを起こせるかが勝負という時期もありました。しかし、たとえ大きくバズっても、必ずしもクライアントが求めている成果が達成されるとは限りません。無闇にバズらせようとすることで、本来の動画の役割を見失ってしまうのは本末転倒です。ブランディング、コンバージョン、生活者との関係づくりなど、本質的な目標を達成できるような動画制作をすることが一番大事なことだと思います。

独自のコンテンツ開発も視野に

──マス広告とデジタル動画との連動はどのように行っていますか。

右田
テレビCMに対してどのような反応があったかという情報をいただいて、それをデジタル上での映像展開に生かすというケースはよくあります。逆に、デジタル上で数種類の動画を配信して、その中で最も評価がよかったものをテレビCMにするという流れもあります。
テレビCMの映像をそのままデジタル上で配信してもそれほど視聴されないというケースも少なくありません。テレビCMは強制視聴が基本ですが、デジタルでは多くの場合、ユーザーは選択的に映像を見るからです。そういったメディア特性を踏まえて、動画の内容をつくり替えていくことが必要です。
藤岡
僕たちはデジタルでのノウハウの蓄積があるので、小回りがきくし、生活者の反応に対して素早く対応できるという強みがあります。その強みを生かして、マス広告との連動のあり方をいろいろ模索していけたらいいですよね。

──最後に今後の展望を聞かせてください。

藤岡
チームメンバーは、映像制作に関してそれぞれに好きなこと、得意なことがあります。それをこれまで以上に柔軟に組み合わせていくことができれば、チーム全体のパフォーマンスはいっそう向上するはずです。個を生かしながら、チームを成長させていく。そんな目標をもって働きたいですね。
右田
メンバー一人ひとりが、できること、得意なことを増やしていくことが大事だと思います。そしてその組み合わせによって、少人数のチームハイクオリティな映像作品を生み出せる環境が揃っています。少人数だからこそ、クライアント担当者の方ともより密接なコミュニケーションが取れる。もっと僕たちを使いまわして欲しいです(笑)
個人的には例えば、映画やアニメなど、より視聴者を意識したコンテンツに取り組むことで、スキルの幅が広がって、仕事の質も上がっていくと僕は考えています。よりクオリティの高い映像制作を実現して、クライアントのコミュニケーション活動に寄与したいと思います。
岩本
クライアントからの幅広い依頼に対応して、質の高い動画を提供していくことはこれまでどおりですが、それに加えて、こちらからのコンテンツ発信にも力を入れていきたいと考えています。これまで広告は受注生産が基本でしたが、これからはそれだけでは弱いと思います。我々制作者サイドから広告の「タネ」を発信していく必要がある。キャラクターを開発するでも、実験的な動画コンテンツを配信するでもいい。コソコソと、コツコツとやる(笑)小さい取り組みからはじめて、クライアントに提供できる価値を広げていけたら嬉しいです。
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