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テクノロジー発展による中国の生活者変化のトレンドVOL.3 テクノロジー生活者に現れた新しい消費行動の特徴
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テクノロジー発展による中国の生活者変化のトレンドVOL.3 テクノロジー生活者に現れた新しい消費行動の特徴

博報堂生活綜研(上海)の首席研究員の山本です。このコラムのシリーズでは、博報堂生活綜研(上海)が、近年注目を集めている「中国のテクノロジー生活」に光を当てて研究を行い、2018年12月に発表した「『数自力(すうじりょく)』~中国テクノロジー生活に生まれた新たな生活の力」の内容を中心としながら、これからのテクノロジー生活者を捉えるデータドリブンマーケティングにとって参考となるポイントをお届けしています。今回は、シリーズの3回目となります。これまでに、中国では、普通の人々の生活の中にテクノロジーが浸透しており、テクノロジーの生活浸透の結果、中国の生活者が新しい生活の力「数自力(すうじりょく)」を身に付け、機械的に送られてくるテクノロジー情報に対して受動的に頼るのではなく、人間の力を駆使してテクノロジーを主体的に操ることができるようになっている、ということをお伝えしてきました。今回のコラムでは、この「数自力」を持つ中国生活者に現れた消費行動の変化という点について、詳しくお伝えしたいと思います。

「数自力」を持つ生活者に現れた3つの消費行動の変化❶:「質問行動(Ask)」

中国の生活者は、デジタルテクノロジーを主体的にコントロールし、暮らしの中の課題解決を行う「数自力」という新しい生活の力を身に付け始めていますが、このような生活者に向けてマーケティングを行う時に、どのようなことが重要なポイントとなるのでしょうか。中国テクノロジー生活者を捉えるこれからのマーケティングのポイントについて、これからお伝えしていきたいと思います。
私たちは中国のテクノロジーを先端的に利用している生活者にインタビューを行い、その中からある3つの消費行動変化が起きている、ということをつかむことができました。
最初に、コネクテッド機能の付いた中国のPHEV(プラグインハイブリッドカー)を購入した李さん(34歳男性・仮名)の例をご紹介します。この人は、それまでにPHEVというものを買ったことがないので、情報収集に困っていました。なぜなら、中国では、メーカー公式サイトや自動車情報サイトの情報を見るだけでは、性能や品質について本当のことがわかりづらく、信じることができないと感じていたからです。そこでこの人は、自動車を購入する前から購入したい自動車のSNSユーザーグループに入って、自分の知りたいことをその自動車のユーザーに直接質問することで、購入の際の疑問を解消していました。そしてこの人は、自動車を購入した後も、自分が加入したSNSユーザーグループに関わり、今度は、次にその自動車の購入検討者の質問に積極的に応えてあげようとしていました。

この李さんの消費行動から、今の中国生活者の購買プロセスに「質問行動(Ask)」というプロセスが生じていることが浮かび上がってきていると言えます。中国では、テクノロジーの進展によって、ECサイトでのチャットサービスや、有料Q&Aサイト、SNSユーザーコミュニティなど、生活者が気軽に質問することができるようになったことが、質問行動が生じた背景にあると考えられます。従来の購買プロセスにおいては、「情報収集行動(Search)」がとても重要な役割を果たしていましたが、今は「既存の情報から探す」だけでは、生活者が自分のニーズに満足できなくなっています。人々は「質問行動(Ask)」を通して、能動的に、自分が欲しがっている情報を得ようとしているのです。

「数自力」を持つ生活者に現れた3つの消費行動の変化❷:「お試し行動(Try)」

続いて、同じくテクノロジー先端ユーザーで、「返品達人」と言われる若い女性の徐さん(27歳女性・仮名)の例をご紹介します。この人は、コスメ商品などの買い物をするのが大好きで、いつも生活の刺激を求めて新しいものを探している人です。彼女は、「RED」という買い物情報アプリを1日中見ていて、見れば見るほど、買い物が増えていき、「毎月ネットショッピングに使う金額が以前の倍になってしまいました」と言っています。しかし、ネット上の情報を信じて、実際にあまり使わないものも買ってしまい、失敗したことも多かったそうです。彼女は、これでまでの買い物の失敗を反省して、最近では、買い物をする時に、お試しのために似ている商品を複数購入することにしました。彼女は、「このテクニックを覚えて、今ではあまり買い物で失敗しなくなりました。」と喜んでいました。

この李さんの消費行動から、今の中国生活者の購買プロセスに「お試し行動(Try)」というプロセスが生じていることが浮かび上がってきていると言えます。
中国では、テクノロジーの進展によって、7日以内の無条件返品や返品の郵送費用まで負担する「返品保険」などのサービスが身近に提供されるようなり、購入前に気軽にお試しできるようになったことが、お試し行動が生じた背景にあると考えられます。従来の購買プロセスにおいては、「情報収集行動(Search)」が購買検討の中心的な役割を果たしていましたが、「情報収集行動」だけではわからない自分だけのこだわりについて、「お試し行動(Try)」で確実に確かめようとする生活者の変化がうかがえます。

 

「数自力」を持つ生活者に現れた3つの消費行動の変化❸:「わがまま行動(My Way)」

続いて、同じくテクノロジー先端ユーザーで、「ドアツードアサービス達人」と言われる若い女性の張さん(外資系企業勤務・仮名)の例をご紹介します。この人は、1歳のお子さんの子育てをしながら働いているので、毎日仕事や育児でとても忙しく、自分の時間がほとんどないと言っています。そのため、買い物やサービスの利用などは、できる限り家まで来てもらう訪問型サービスで済ませようとしていて、毎日、出前やネイルなどのドアツードアサービスを利用しています。彼女は、「ドアツードアのサービスは、自分の都合に合わせてくれるので、昔に比べて自分の時間をコントロールできるようになりました。」と言って大変満足しています。彼女に、今、どのようなサービスを求めているのかを聞いてみますと、自分が満足できるサービスは、人と機械(システム)が融合して自分のわがままな都合に合うようにサービスを利用できることが、自分にとってのいいサービスだと語っています。

この張さんの消費行動から、今の中国生活者の消費選択に「わがまま行動(My Way)」という選択基準が生じていることが浮かび上がってきていると言えます。ここ数年、O2Oフードデリバリーサービスや24時間対応サービス、30分内到着の配達サービスなど、生活者のわがままな都合に合わせたサービスがたくさん出てきました。このようなアプリを使った便利なサービスの登場も、生活者の「わがまま行動」を促進した理由となります。従来の消費選択行動においては、「情提供側の都合に合わせた「企業主導」の選択行動が取られていましたが、今は、企業都合の標準化された選択肢から選ぶのではなく、生活者の都合に合わせられる「生活者主導」型の「わがまま」な消費選択になっている生活者の変化がうかがえます。

「数自力」を持つ生活者の消費行動「ATM行動」と「ATMマーケティング」

これまでの内容を整理しますと、数自力を持つ生活者の消費行動において、「質問行動(Ask)」、「お試し行動(Try)」、「わがまま行動(My way)」という新しい消費行動変化が起きていることが見えてきました。そこで、私たちは、生活者の中に起きている新しい消費行動を、それぞれの行動の頭文字をとって「ATM行動」、そして生活者が行う「ATM行動」を捉えるマーケティングを「ATMマーケティング」と、それぞれ名付けたいと思います。

では、「ATMマーケティング」とはどのようなマーケティングなのか。次回最終回のコラムでは、その活用事例を具体的に交えながらご紹介したいと思います。

 
  • 博報堂生活綜研(上海)首席研究員
    1995年に博報堂入社して以来、マーケティングに携わってきており、コミュニケーション領域から事業領域まで、幅広い実務経験を持つ。博報堂生活綜研(上海)のメンバーとして、2018年6月より新たに活動を始める。