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~都市生活者のNEXT WORKSTYLE! Vol.1~働き方改革元年!日本のテレワークに対する、都市生活者の意識は?
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~都市生活者のNEXT WORKSTYLE! Vol.1~働き方改革元年!日本のテレワークに対する、都市生活者の意識は?

いよいよ、働き方改革も本番

読売広告社 都市生活研究所の城です。私たちは博報堂DYグループとしてはもちろん、広告会社としてはユニークな“都市・街と住まい”にフォーカスした生活者研究とマーケティングを専門としています。「時代の実験室」である都市とそこに暮らす生活者を、様々な視点で日々見つめ続けている組織です。

さてこの4月より、いよいよ「働き方改革」に関する法律が施行されました。改元だけではなく、日本でも本格的に働き方改革が推進される元年といえる年になるでしょう。
働き方改革といってもいろんな視点や方策があり、昨年に国会で討議されたテーマは主に9つ。その中のひとつに「テレワークの推進」があります。

テレワークとは「情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方※」のこと。※一般社団法人 日本テレワーク協会による定義より
ICTの進化もあり、急速に浸透しそうな気配もあるのですが、今後どの程度、どんなスピードで拡大してゆくのでしょうか?!

東京エリアにおいて、テレワークに対する生活者の意識はどうなっているのか?

読売広告社の都市生活研究所では、テレワークに対するワーカーの意識調査を実施しました。今回は、そこからみえてきた生活者のテレワークに対する意識を、データを紐解きながら見てゆきたいと思います。

テレワークを「自分ごと化」しているワーカーは、20%

読売広告社では、東京50㎞圏に住む20~60代のフルタイムワーカー(会社員)1998人に対してアンケートを行いました。テレワークを活用した働き方について「すぐにしたい」と答えた人は全体の20.7%となりました。次いで「2~3年後にはしたい」が3.3%、「4~5年後にはしたい」が0.6%となり、ここまでの合計で24.6%、約4人に1人が現実的かつ前向きな回答となりました。一方、「いつかはしたい」が29.7%、さらに「したくない」と答えた人も45.7%と大きなスコアとなり、テレワークに対する認識は人によって様々であることがわかりました。

出典:CANVASS-ACR Connect/ex 2017 調査

テレワークに対して前向きな人の特徴としては、性別や年齢、家族形態での目立った差はほとんどなく、むしろ「生活価値観」においていくつかの差が見られました。
具体的には、たとえば「積極的に情報発信をしたい」「情報収集に熱心なほう」という情報に対する関与度の高い人や「資産運用に関心がある」といったお金に対する意識の高い人のほうが、テレワークに前向きな人が多いようです。

出典:CANVASS-ACR Connect/ex 2017 調査

調査を実施したのは2017年の12月なので、今現在ではもう少しスコアも変わっているかもしれませんが、先進諸外国のテレワーク導入の状況はどうなのでしょうか。

海外でのテレワークの議論と過去の論点

欧米などの先進国では、どのような状況にあるのか?総務省のホームページに統計データがまとめられています。
欧米諸国では、日本にさきがけて導入推進の動きがあったようです。
主要各国の企業におけるテレワーク導入率は、
アメリカ=85%、イギリス=38%、カナダ=23%、ドイツ=22%、フランス=14%、シンガポール=5%、韓国=1%未満、、、日本は約12%と言われています。ちなみに調査方法や時期がそれぞれ異なるので、厳密には比較できません。

「働き方に対する価値観」は、それぞれの国の環境や国民性などの文化に深く根ざしており、国によって大きな違いがあるのが面白い点です。

フランスではもともと「短時間での労働」が広く国民・企業に浸透しており、テレワーク導入へむけた法整備が検討されているものの、普及へ向けた動きすら生まれていない状況だそうです。なんだか、ラテン気質のフランスらしいですね。

一方アメリカでは、労働における時間管理は「自己責任」で「成果主義」という考え方が非常に強く、部分的な導入も含めればテレワークを導入している企業はなんと85%にも達するそうです。

日本の総務省による海外分析の視点も含め、これまでのテレワーク導入に対する議論は「長時間労働への対応策」として、「労働時間の効率化・短縮化のためのテレワーク」という視点がメインでした。しかし近年では、また異なる価値観のもとに「テレワーク」的な柔軟な働き方に対して再び注目されてきています。

『ABW』という考え方

グローバルに社会と産業の成熟化が進むことで、企業は「課題解決型ビジネス」から「課題創造型ビジネス」が求められる時代となっています。工場などで決まった作業をする、あるいはデスクにかじりついて与えられた事務仕事をこなす…といった仕事が徐々に減りつつあり、いかに「新しい課題」を見つけ出し、そこに対する新しいビジネスを生み出すか?が、企業にとって今後も発展し続けるための重要なビジネステーマとなっています。それに伴い、働き方や労働環境の変革も求められはじめているのです。

決まった席で、いつもと同じ同僚と毎日仕事をしていると、新しいアイデアが生まれづらいこともあるでしょう。それよりも違う環境に身をおいて、多様な刺激やインプットを自身に課す、あるいは多様な人的ネットワークの中で仕事をすることで、アイデアやビジネスに広がりが生まれる。企業としてもそのような新しいビジネスチャンスを作り出せるようなオフィス環境整備に急激に舵を切りつつあるようです。

たとえば、世界的に注目され市場を拡大させている「WeWork」は、そのような企業とワーカーの両者のニーズを満たす受け皿として成功を収めています。

魅力的なデザインの空間の中に、スタートアップ企業から大企業までが程よい距離感/一体感の中で仕事をしています。毎日にように夕方になると勉強会などのイベントがラウンジで開催され、17時を過ぎるとビールも無料でふるまわれます。コンシェルジュに相談すれば、世界中のWeWork入居企業から新しいビジネス・パートナーを紹介してくれるマッチングサービスもあります。

そのようなWeWorkに入居する企業の中でも特に大企業は、WeWorkをサテライトオフィスとして活用する場合も多いようです。多拠点/多様な空間を使い分ける働き方の環境について、最近では「ABW=Activity Based Working」という言葉で語られることが増えてきました。
オフィスの中でも「静かで集中できる場所を選ぶ」「打ち合わせしやすい場所を選ぶ」などのオフィス空間内の使い分けもあれば、サテライトオフィスやシェアオフィスなどの違う場所を時と場合によって選ぶ、ということも含まれると思います。

ヒトや情報との「つながりのデザイン」

このようなテレワークの大きな流れがある一方で、アメリカでは「行き過ぎたテレワークへの反動」も出ています。会社のオフィスで仕事をしない、個人主義でのワークスタイルばかりが先行すると同僚とのコラボレーションや対話が減り、その結果イノベーションを阻害するというマイナス面が出現し、在宅勤務を再び限定的にする企業がでているのも事実です。

このように、会社で同僚とリアルに顔を合わせながら仕事することの重要性も再び見直されており、テレワークというテーマ・議論をきっかけにしてワークスタイルが様々な側面や視点で見直されているのは、非常に意味の大きいことだと考えています。

これからは、経営側の効率性の観点からひとつの場所に押し込められた働き方ではなく、シーンやニーズに合わせて様々な場を主体的・能動的にワーカーが選ぶことで、いかにヒトとの関わり方やネットワークを自らデザインしながら働くか?情報とのつながりをどうデザインするか?が、ワークスタイルの重要なポイントのひとつになりそうです。

次回は、日本のワーカーが求める「テレワークスタイル」の違いが明らかに!

このように人々の働き方が変われば、暮らし方が変わり、暮らし方が変われば消費も変わってゆくことが予想されます。たとえば、これまでは会社の近くでいつもと同じお店で同僚と食べていたランチの需要が、自宅近くの飲食店やコンビニなどでのお弁当にとって代わるかもしれません。また同僚などの人目を気にしなくてもよくなるので、好きなデザートやおやつを仕事の合間に思う存分食べる!といった需要が新たに創出されるなど、新しいマーケティング機会も生まれてくるでしょう。
次回は、前出の読売広告社で実施した調査の結果から、テレワークに対する生活者のニーズや認識の違いと、それに伴う新しい時代のマーケティング視点について、より詳細に解説してゆきます。ご期待ください。

 

■CANVASS-ACR Connect/ex 2017 調査について
ビデオリサーチ社が実施する、全国主要7地区に住む12~69歳を対象とした生活者調査「ACR ex」。生活者の行動意識・メディア接触、商品の使用・購入を中心とした消費行動実態等を把握できます。
なお、「Connect/ex」とは、ACR exのパネルに対して任意の項目を調査できるオプションサービスであり、本調査「CANVASS-ACR Connect/ex」は、読売広告社が2001年より実施しているオリジナル生活者調査CANVASSでの知見・項目を引用、設定した調査となります。

  • 読売広告社 都市生活研究所 所長代理
    1999年 読売広告社に入社。マーケティング・プランニング系の部門にて、航空会社・自動車関連企業・玩具/ゲームソフトメーカーなどのクライアントに対するマーケティングおよびブランド戦略に関するソリューション業務に従事。2011年より都市生活研究所に所属。主に地域の再開発に関するコンセプト開発/商品企画や商業施設の戦略プランニング、また都市空間と生活者インサイトに関する研究開発案件などに従事している。