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ヒット習慣予報 vol.276『夏の涼温活』
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ヒット習慣予報 vol.276『夏の涼温活』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの平石です。
本格的に夏が来ましたね、最近の晴れた日は少しの移動で汗だくになってしまっています。
光熱費も気になりますが、背に腹は代えられないので長時間クーラーをつけて過ごされる方も多いでしょう。

ただクーラーをつけて過ごしていると逆に「冷え」が気になってきませんか。
私もオフィスの冷房が効きすぎていて夏風邪をひいてしまった経験があり、同じような悩みを抱えている人がどのくらいいるか、Googleトレンドで「クーラー冷え」と調べてみると2010年代から検索数が上昇傾向にあることが分かりました。

「クーラー冷え」の検索数推移

出典:Googleトレンド

こうした夏の「クーラー冷え」対策として、夏でもできる“体を温めながらも涼しくて暑さ対策になるものや行動”が習慣化しつつあるようです。
その習慣を「夏の涼温活」と名付けて紹介していきたいと思います。

最初に紹介するのは「ドリンク涼温活」です。
これは、体を内側から温めてくれる薬膳・スパイスなどが入っている、冷たかったり清涼感を感じるドリンクを飲む涼温活です。
具体的には、関西では昔から夏の定番である「ひやしあめ」が挙げられます。ひやしあめとは飴玉を冷やしたものではありません。麦芽水飴をお湯で溶いて、生姜の絞り汁を加えて冷やした、冷たい飲み物です。ショウガが入っているため冷たくても体を内側から温めるドリンクだといえます。昨今のレトロブームも相まって関西以外のエリアでもジワジワ人気が高まっているようで、家で作れるレシピも多く公開されるようになってきています。

またここ最近ブームになってきているクラフト飲料もドリンク涼温活のひとつと言えそうです。
その一つとしてクラフトコーラがあげられます。薬膳・スパイスを使って作られたコーラで、クラフトコーラメーカーで働く知人に話を聞いたところ、味の美味しさや見た目のおしゃれさに加えて、冷たくて炭酸の清涼感があるのに体が冷えすぎないことも特に女性人気の理由になっているそうです。

続いて紹介するのは「足元涼温活」です。
クーラー冷えを感じやすい足元を温める方法として、リネン素材などのひざ掛けや夏用の薄手のレッグウォーマーを活用することは定番かと思いますが、最近は夏に「シースルーソックス」を着用する女性が増えているようです。写真のように、靴下のかかと~指先といった底部分は普通の靴下の素材を、人に見える足首の部分は透け感のある素材を使用しています。
それにより冷えやすい指先はきちんと温めつつも、ファッションとしての夏らしさを損なわず清涼感のある見え方になるそうです。

最後に紹介するのは「お風呂涼温活」です。
みなさんの中にも、お風呂に浸かるのが好きだが、夏は暑いのでシャワーで済ませるという方は多いのではないでしょうか。
今日はお風呂に浸かりたいと思っても、暑いと中々入る気にならないですよね。
しかし、最近は夏に湯船に浸かって体を温めつつ、同時に涼しさを感じられるような入浴の仕方・商品が浸透してきています。
昔からあるハッカを湯舟に垂らすことで体の芯は暖かいのに、表面が涼しくなる入浴法がSNSで話題になっていたり、大手の入浴剤メーカーがミント成分を含むクール系入浴剤を続々と発売していることで、徐々に浸透してきているようです。
また、かつては男性向けのイメージを持たれがちであった、冷感ボディーソープを女性に人気のブランドが多く展開するようになってきています。冷感ボディーソープを利用することも夏のお風呂涼温活のひとつといえるでしょう。

ではなぜ今このような「夏の涼温活」が広まってきているのでしょうか。
大きく2つの環境変化によって今の生活者が夏に冷えを感じやすくなっていることが影響していると考えています。
1つは、気温の上昇に伴う室内外での寒暖差の激化です。
長いスパンで見ると日本の平均気温は右肩上がりで上昇傾向にあるそうです。近年は猛暑といわれる年も続いています。それにより、室内はクーラーをつけていないと危険な温度になることもあり、今や夏には商業施設や学校、オフィスなどクーラーが効いている室内環境がほとんどです。ますます暑くなっていく室外と、あらゆるところにクーラーが完備されている室内の寒暖差が一昔前よりもさらに激しくなっています。寒暖差は冷え症の大敵です。冷房の使用によって、室内と室外の温度差がある場所を一日に何度も行き来していると、自律神経への負担が大きくなるといわれています 。自律神経は体温調節や発汗などのコントロールをしているので、バランスが崩れると、冷えに対しての抵抗力が弱くなってしまい、夏に冷えを感じやすい状態になってしまっているといえます。

2つ目は、リモートワークの広がりによる運動不足での血流悪化です。
コロナを機に急激にリモートでの働き方が広がったことにより、暑い夏には室内でほとんど体を動かすことがなく、クーラーの冷気を1日中浴びているという人も少なくないでしょう。
冷房の効いた室内に長時間いるとカラダは体温を維持しようとし、血管は収縮します。
そのため、血液の巡りが悪くなり、カラダの末端である手足から冷えていきます。
さらに運動もできていないとなると、血流が悪くなってしまい、冷えを感じやすくなってしまうでしょう。
こうした環境変化によって、生活者が夏に冷えを実感しやすくなっており、結果として体を温めたいけど涼しくいたいという「夏の涼温活」需要が高まり、習慣化してきているのではないでしょうか。


最後に「夏の涼温活」習慣を活かしたビジネスチャンスを考えてみました。

「夏の涼温活」のビジネスチャンスの例
■薬膳を使用した冷やして美味しい缶チューハイ
■体の内側を冷やしすぎないショウガや薬膳を使用したかき氷シロップ
■ペットの夏冷えを防ぐシースルーペット服
など

今年は例年よりも暑い夏になるとのこと。
みなさま、くれぐれも夏の冷えにはお気をつけてお過ごしください。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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  • 関西支社第二ビジネスデザイン局第二プラニングチーム
    ヒット習慣メーカーズ メンバー
    2020年博報堂中途入社。前職から継続してストラテジックプラナーとして働く自称「関西支社の元気印」。4つ下の弟・9つ下の妹がおり、家族揃ってカープファン。コロナ禍で始めたゴルフのベストスコアは100でアイアンがダフりがち。