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これからのインスタマーケティング Vol.2 KPIと立ち上げのコツ
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これからのインスタマーケティング Vol.2 KPIと立ち上げのコツ

 AIQ(アイキュー)株式会社の渡辺COOを交え、現場視点でこれからのインスタグラムマーケティングを考える対談。前回は「コロナ影響と現場できる対策」について、今回は「インスタグラムのKPIと立ち上げのコツ」についての議論です。(対談は4/23にオンラインで実施しました)

モデレーター:
博報堂プロダクツ データマーケティングディレクター 横井忠泰
スピーカー:
AIQ株式会社 取締役COO 渡辺求
博報堂プロダクツ SNSディレクター 小川宗紘
博報堂プロダクツ プランナー 杉山芽衣

インスタグラムのKPIとは?

横井
では、本題その1「インスタKPI」について、議論したいと思います。

まず私は、以下のようなカスタマージャーニーを想定しながら、指標を見ています。

その中でもポイントと感じているのが、フォロワー数を単純に追うのでなく、「“ターゲットが”ファンになっているか?」をチェックすることです。なぜなら、たとえば30代男性がターゲットな商材にも関わらず、実はフォロワーの7割が女性だった、という本末転倒なケースもあるからです。

つまり、「ターゲットフォロワー数」を可視化したいのです。現状では、インサイト画面で性年代構成を把握する等はできますが、理想はたとえば「自社フォロワー数に占める競合ブランドフォロワー数」等を可視化できると良いなと思っています。

渡辺
確かに、ターゲットフォロワー数こそ、本質ですね。横井さんの言われる理想数字はまだ出せないのですが、『AISIGHT』を使ったフォロワー分析で近いことができます。たとえば「フォロワーがよく使うハッシュタグ」を可視化できます。

左のA社のフォロワーがよく使うハッシュダグには「懸賞」が出てくるため、懸賞応募を目的にアカウントをフォローしている方が多いことがわかります。一方で、右のB社のフォロワーの場合、「#飛行機」「#羽田空港」などが多いため、よく旅行する層にフォローされていることが分かります。

このように、『AISIGHT』のAIによる公開投稿の分析で、フォロワーのプロファイリングができます。

横井
先ほどの「懸賞狙いが多い」フォロワー構成は、仮に安価な商材で「多くの人に想起されやすくする」という目的であれば成功と言えそうですが、もしハイブランドでこのフォロワー構成だと、ターゲットとズレた運用になっていると言えそうですね。

小川さんは普段、どの指標を重視されていますか?

小川
僕の場合、まずフォロワー数は「より多くの人に情報が届けられるという資産価値」として考えています。
その上で、KPIを設定する際には、大きく二段階で考えています。

①いいね率・エンゲージメント率を見る。
これをまずは3~5%へ、次に10%まで上げる。

②コメントする人数、タグ付け投稿する人数を見る。

つまり、まずは①でターゲットにフィットする投稿にチューニングする。次に②でより能動的なアクションを見ることで、ブランドの浸透を推し量っています。

杉山
小川さんに補足すると、インスタで「ECへの導線」を作りやすくなってはいますが、クライアントの多くは、「売上に直結させよう」とは考えていないように感じます。

つまり、インスタの一番の役割は「生活者の意識の中に留まりつづけること」と考えて運用しているケースが多いと思います。
たとえばAという企業には一定のファンがいて、フォロワーの45%がすでにファンの人だとします。残りの55%に対して、普段はBという企業を選ぶかもしれないけど、どうしてもAかCを選ばなくてはならなくなったときにAを選んでもらえるよう、少しだけファンでいてもらうということだと思います。その下地づくりになれるのが、インスタグラムのいいところだと思うんです。

小川
僕も同じ考え方ですね。インスタは「中長期でエンゲージメントを高める装置」と考えています。数値で計るのは難しいですが、長期戦でエンゲージメントを高めていき、店頭へ行った際に想起してもらうとか、他社と比較したときに優位に働くとか、そういったところを重視したほうがいいのではないか、と提案させていただいています。

 エンゲージメントでなく「認知拡大」に使いたいというご相談も頂きますが、認知拡大であれば、情報が拡散しやすいシェア拡散機能のついたSNSをオススメしています。

渡辺
このエンゲージメントの部分の解像度を上げると、「新規のエンゲージメント」と「既存ファンのエンゲージメント」に分けられると考えています。

ここを分けて考えることで、「裾野を広げる目的の投稿」と「ファンのHOT度を上げる目的の投稿」の評価をしやすくなります。

「裾野を広げる」場合は、リーチ数はもちろんのこと「非フォロワーからのエンゲージメントがあったか?」がポイント。
一方で「ファンのHOT度を上げる」場合は、「フォロワーからのエンゲージメントがあったか?」がポイントになります。

その思想から、『AISIGHT』では「エンゲージメントのフォロワー比率」を見られるようにしています。

横井
解像度高く指標を見ていると、運用が洗練されますね。特にアカウントを開設したばかりのフェーズでは「非フォロワーのエンゲージメント数」を見て運用すると、フォロワー獲得効率を高められますね。

ここまでの「インスタグラムの役割」の議論を、購買ファネル上で整理してみると、こうなりますかね。

「立ち上げフェーズでのコツ」とは?

横井
最近、コロナ影響もありインスタグラムの開設を検討される方の増加を感じるのですが、「立ち上げフェーズ」での運用のコツは、何だと思われますか?
杉山
私がアカウントを立ち上げる際は、まずは最初の9マスをしっかりつくりこみます。なぜなら、最初の9マスで、ユーザーは「私向きの世界観」であるか否かを判断し、フォローするかどうかが決まるからです。そこで、世界観が一目で伝わるような9枚の投稿を、しっかり作り込むことがコツと思ってます。
小川
大事ですね。杉山の言うように、ベースは次の3つをやり切ることです。

①ブランドの魅力とアカウントの運用方針が一目でわかるビジュアル

②ターゲットが関心がありそうなハッシュタグを選定

③反応を見ながら、投稿内容とハッシュタグをチューニングする

その上で、フォロワー獲得のブースト施策を打ちます。
たとえば、
・フォロー&プレゼントキャンペーン
・インスタグラム内広告出稿

渡辺
小川さんの言う「ベース」と「ブースト」のどちらに注力するかで、フォロワー数の伸び方は、以下のように変わります。
横井
ポイントは、どちらに注力するかは、インスタグラムの役割定義によって変わる点ですね。

たとえば「兎に角より多くのターゲットの想起率アップする」ならば、ブースト注力が良手ですし、「ブランドのファンと中長期的に繋がり、気になる存在であり続ける」ならば、ベース注力が良手です。

ここまでを総括すると、
①インスタグラムの役割をしっかり決める 
②役割・フェーズに応じたKPI・打ち手を選ぶ
の2点がポイントですね。

次回は「インスタグラムのハッシュタグ選定」に関してです。
(つづく)

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  • 渡辺 求
    渡辺 求
    AIQ株式会社
    取締役 COO
    カシオ計算機(株)、バンダイネットワークス(株)(現:(株)バンダイナムコエンターテイメント)にて事業責任者として、また、ネオス(株)(東証一部) 常務取締役、合同会社インミミック(ソニーミュージックエンターテインメントとネオスの合同会社)代表を兼務、一貫して新規技術を活用した新規事業を創出。AIQではAIを活用したソーシャルデータ分析による「新しい企業と個人の繋がりを創出」する事をミッションに活動。
  • 博報堂プロダクツ デジタルプロモーション事業本部
    PR部 ソーシャルネットワークプランニングチーム
    SNSディレクター / プロデューサー
    2013年博報堂プロダクツ入社
    WEBからAR/VRなどのデジタル制作を経て、2018年のSNS専門部署
    立ち上げ時からジョイン。
    企業アカウントを中心に企画、運用、コンテンツ制作、調査・分析業務までを幅広く手がける。最近では全国各地セミナーに登壇することも。
  • 博報堂プロダクツ デジタルプロモーション事業本部
    プランナー/SNSディレクター
    2014年博報堂プロダクツ入社
    デジタル&リアル展開の案件やPRを意識した拡散やニュース化SNS施策などを幅広く担当。
    プロモーション~CMまで統合的なプランニングを得意とし、施策の細部まで設計する広告を作る。
    販促会議コンペティション2016 協賛企業賞/審査員特別賞 受賞
    JPMプランニング・ソリューション・アワード
    ACCブランデッドコミュニケーション部門
    アクティベーション ブロンズ/PRファイナリスト/デザインファイナリスト
  • 博報堂プロダクツ データビジネスデザイン事業本部 CRMデザイン部 データマーケティングディレクター / データシェフ
    学芸大附属高校・慶應義塾大学卒業。2014年博報堂PRODUCT'S入社。ダイレクトマーケティング流のデータ活用が武器。toC・toBにおけるプロモーション・営業支援からCRM・カスタマーサクセスまでの統合プランニングに従事。主な担当業種:化粧品/IT/飲料/保険/官公庁