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「賞を獲りたければ、何かを変えること」とポリーナは言った。ONE SHOWインタラクティブ審査員日記(前編)
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「賞を獲りたければ、何かを変えること」とポリーナは言った。ONE SHOWインタラクティブ審査員日記(前編)

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カンヌ・クリオと並ぶ世界3大広告賞、ONE SHOWインタラクティブ部門の審査員をつとめた林智彦によるレポート。前編の今回は審査員体験エッセイ、GW明けの後編では受賞作品の紹介・解説をお送りします。
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羽田空港からニューヨークまで15時間、そこからトランジットで4時間南下。まる1日かけて、ドミニカ共和国にたどり着く。カンヌライオンズ、クリオと並ぶ世界3大広告小の1つONE SHOWの審査がこの地で行われる。審査する作品が欧米からのものが多いこともあり、アジアからの審査員は例年少ない。

空気と海の色がやわらかい。こういうのがカリブらしさなんだろうか。ホテルでチェックインすると、日本では聞き慣れない、強いスパニッシュ・アクセントの英語。これは...遠いところまできたな~。

審査会場 HOTEL:PARADISUS

審査がはじまると、朝から夕方まで、ダークな会議室にこもりきり。

2019 インタラクティブ部門の審査員たち。
https://www.oneshow.org/jury/#interactive-online

広告とテクノロジーの最先端がミックスされた場所 

インタラクティブの審査は面白い。
まず断っておきたいのは、それは、手段として誰もが使うようになった、「デジタルを使った広告の賞」じゃない。Creative Use of Data / Digital Craft / Interactive全般 の3つのカテゴリがあり、広告、サービス、事業に関する、クリエイティブと掛け算した最新のアウトプットが入り混じっている。

ファッションビジネスのイノベーションと、長尺のブランディング・ビデオと、フィンテック事業アプリと、視聴覚障害者も美しい体験ができるWEBサイトと。
広告、サービス、事業などにまたいで広がる、インタラクティブ・コミュニケーションの領域。その具体的な優秀作は?境界はどこまで広がった?到達地点を評価する場所だ。

広告業界とITコンサル、プラットフォームのクロスオーバー・競合が起きている現場の最優秀作が集まっている、、と言えば、ちょっとわくわくしてもらえるだろうか。

ちなみに、審査メンバーのニールがCCOをつとめるDroga 5は、審査のすぐ後にアクセンチュアに買収された。彼の頭の中には、審査のとき既に、ITとクリエイティブが融合していくレールが敷かれていたのだろうか。

そこは僕の得意分野でもあるので、そんな視点で、ITとクリエイティブの融合で作られる、新しい世界やブランドの仕組みを審査コンテクストとして、なるべく提示した。

「ブレイク!」の事務局の声で廊下に出るけど、結局審査の話。

「サービス/事業融合系の作品は、もっと評価されてもいいのに...」とぐちると、
「それが、審査員が12人いる理由ね。そう思う人も、思わない人もいるよ」と返される。くやしい。

そんな一日を終え、ビーチでビュッフェ式の晩ごはんが始まる。

審査員たちのパンチライン 

デジタルエージェンシー出身、ユーモアと最新技術の混じった作品で受賞を続ける、AMV DDBOの若手女性CDのポリーナが何気なく言った。

「賞をとりたければ、何かを変えること」
(If you want to win an award, change something)

ポリーナ...かっこいい。シンプル。太い。
こんなパンチラインに出会えるのも、海外の魅力だ。

「問いを立てる」とか流行ってるけど、「結局あなたはAからBに何か変えましたか?」それって明快な原理だ。(後から聞いたら本人は言ったこと覚えていなかったけど。笑)

ポリーナの言葉に真実味があるのは、きっと、彼女自身、ロシアの学校を出て、まずはイタリアのデジタルエージェンシーでバナーをたくさん作り、ロンドンに移り、新種のCDとして成立する経歴があるから。自分自身の人生で、「何かを変えること」を実現してきたからに違いない。

あれ?よく考えると...
ここにいる審査員たちは、テクノロジーやクリエイティブの知見だけでない共通点がある。自ら国を移り、組織を作り、キャリアを含めた、「新しいものを進んで受け入れて、答えを出していく」プロばっかりなんじゃないか?

インタラクティブエージェンシーのCDと、オランダ広告協会の会長をつとめるマーヴィン。審査中いつも、クライアントの大小にとらわれず、新しいものを評価する姿勢を恐れずリードする。

アメリカ発のグローバル・デジタルエージェンシーAnalogfolkをたちあげ、パートナーを務める審査員、カレンの腕には一文字
「Look up」
のタトゥー。目線をあげる決意がかっこいい。むしろこっちが勇気をもらえる。

ペルーのエージェンシー、MayoのCCOを務める若手CDのジョルジェリーナ。審査の激論の場で、
「インタラクティブとは、民主的という意味だ」
と言った。最終日、知らない人同士でも別れはハグする南米のあたたかさを届けたいと言った。タイムラインに、ロシア語や日本語をみるのが嬉しいとポストしていた。

インタラクティブエージェンシーACHTUNG!のFounder / CDと、オランダ広告協会の会長をつとめるマーヴィン。審査中いつも、クライアントの大小にとらわれず、ビジョナリーなものを恐れず評価する。
ディナーの途中、オランダのマーヴィンの隣に座り、どうやって夢を実現するのか?本気でいろいろ相談した。彼は、
「Same dream, different people」
と言った。
クリエイティブが得意なマーヴィンと、ビジネスが得意な共同経営者。重複しない組み合わせで会社を運営しているそうだ。参考になる。

世界の最新をミックスすること。同じ夢、違う職能の仲間を集めること。
このあたりに、グローバルの部署に異動した自分のヒントにもなりそうだ。

最初の海外審査員経験がONE SHOWのインタラクティブで、本当に良かった。
NPO運営で審査員長もいない、非中央集権的な団体。
インタラクティブの思想を実践する人たちと、出会うことかできた。

この浜辺で会った唯一の日本人、デザイン部門の審査で来ていた電通ADの上西祐理さんは、毎年一ヶ月休みをまとめてとって、海外を放浪するそうだ。聞けば、中国のデザインクオリティがあがっているという。すぐそこに、彼らがテクノロジーだけでなく、デザインもリードする世界が見える。

内向きになっていく日本を変えることも大事だが、まずは、自分の問題なんだろう。
 
この遠い浜辺で受け取った、たくさんのヒント。もしくは、約束。
日本と、世界の人たちが混じり、幸せになるアウトプットを、自分は、これからどれだけ出していけるだろうか?

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後編ではインタラクティブ受賞作品の紹介と、個々の作品の評価に対する議論についてお届けします。

  • 博報堂 グローバル統合ソリューション局 インタラクティブ・ディレクター
    広告、スタートアップ、コンテンツなど、枠を超えた活動を行う。
    デジタルクリエイティブエージェンシー“nuuo”、ロボットスタートアップ“nubot”ファウンダーを経て博報堂に復帰。
    米creativity誌「creatives you should know」8組中1組選出、SXSW interactive award finalist、文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門大賞など。2019年 ONE SHOWInteractive審査員。