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メタバース生活者たちと共にデジタル世界のこれからを考える  vol.3 「メタバース生活者×経済」~コミュニティ独自の価値観が生む新しい経済観~
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メタバース生活者たちと共にデジタル世界のこれからを考える vol.3 「メタバース生活者×経済」~コミュニティ独自の価値観が生む新しい経済観~

博報堂は、2024年11月に、メタバース空間における新しい生活者価値の創出と、イノベーションを生み出すことを目指し、研究員全員がメタバース生活者当事者によって構成されたコミュニティ型プロジェクト「メタバース生活者ラボ™」を設立しました。

本連載では、メタバース生活者ラボの理念に共感いただいている、メタバース生活者当事者でもあるゲストとの対話を通じて、メタバース生活者の未来を探求していきます。

第3回は、物理AI(フィジカルAI)を活用して産業分野における自律型ロボットの社会実装を目指す株式会社Zrek (ゼレック) 代表取締役CEOの今村 優希さんと取締役COOの江口遼馬さんをお招きし、「メタバース生活者×経済」をテーマに、バーチャル世界での経済活動やメタバース生活者の消費に対する考え方についての座談会を実施しました。

※本ラボにおける「メタバース生活者」は、「バーチャル空間上で、自身のアバターやキャラクターを通してコミュニケーション等の行動を実施する」すべての生活者を対象としています。

今村 優希
株式会社Zrek 代表取締役CEO

江口 遼馬
株式会社Zrek 取締役COO

瀧﨑 絵里香
メタバース生活者ラボ リーダー
博報堂 研究デザインセンター 生活者発想技術研究所 上席研究員

和田 周
メタバース生活者ラボ 研究員
博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター

平沼 英翔
メタバース生活者ラボ 研究員
博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジーセンター

バーチャルとリアルの「二重性」を感じるようになった

瀧﨑
私たちは、デジタル空間上でキャラクターやアバターなどの姿を通して活動する人々(=「メタバース生活者」)を研究しています。今回は、そうした「メタバース生活者」と呼ばれる人々の経済について語り合えればと思っています。まず最初に、お二人の普段のお仕事について教えてください。
今村
子どもの頃、ドラマ『BLOODY MONDAY』や映画『マトリックス』を観たことで ハッカーに憧れ、中学時代にはソフトウェアエンジニアになりたいと考えていました。高校時代には、より独学で学ぶのが難しそうな ハードウェアや宇宙の分野 に進もうと決め、大学では機械系の学科 を選びました。現在は自律制御やロボティクス関連の仕事をしており、AIを活用して物理世界にどう実装していくかを探求するスタートアップを経営しています。

最終的には、AIによってさまざまな自律制御が進化し、モノが自ら思考し、独自の判断で動く世界の実現を目指し、事業を展開しています。

瀧﨑
今村さんはブロックチェーンやNFT関連の仕事もされてきたそうですね。
今村
大学時代にスタートアップに興味を持ち始め、友人と起業を考える中で、ブロックチェーンを活用した新しい仕組みが生まれる可能性を感じ、2020年頃からブロックチェーン技術に本格的に注目するようになったのです。

2017年からビットコインに触れていましたが、「ビットコインはなぜ動くのか?」という仕組みに強く興味を持ち、2021年頃からNFTの発行やブロックチェーン技術を活用した管理システムの開発に携わるようになりました。

瀧﨑
江口さんが大手企業からスタートアップのZrekに入社したのはどのような経緯があったんですか?
江口
私はもともとソフトウェア開発に興味があり、金融機関向けに基幹システムの構築などに従事していました。しかし現場での経験を重ねる中で、ハードウェアとソフトウェアの連携が今後の価値創出に重要だと感じるようになり、2024年の秋にZrekへ参画しました。

瀧﨑
最初にお二人の仕事の一面を伺いましたが、プライベートでのデジタル上の人格や個人的な活動などについてもぜひお聞きしたいです。
江口
私は小学校の頃から家にパソコンがあり、コミュニティサイトのような誰でもチャットができる場所で、知らない人とチャットで話していた記憶があります。最初は文字を打つのもおぼつかなくて、「おはよう」と入力すると返事が返ってきたことに驚いたりしていましたね。

高校ではマインクラフトをやっていましたが、電源を切ってゲームを閉じると、どこか寂しさを感じることもありました。でもそういう体験はすごく楽しかったし、現実の世界に価値を感じなくてもいいんだということに気づくことができました。そのおかげで、私もソフトウェアの道に進むことができたと感じています。

今村
小学校の頃に両親から英才教育を勧められ、その一環でパソコンを与えられたのが始まりでした。当時はパソコンのチャットルームが盛り上がっていた時代で、私も実名ではなく仮の名前を使ってチャットをしていました。名前を変えるだけで、知らない人と自由に会話できることに感動したのを覚えていますね。

これが、初めてバーチャルの「仮面」を持つ体験だったと思います。また、ゲームのタイトル画面を編集し、プレイヤー同士と“謎のコミュニケーション”を楽しんでいました。今思えば、ある種のネットミーム的な感じだったと思います。

平沼
その感覚、よくわかります。マジカルバナナみたいな感じでテーマを決めてお互いにチャットを繰り返すというのが一時期すごく流行ってましたよね。BBSとはちょっと違う流れで広がったと思いますが、自分の周りでは意外と大人より子供たちの方がそういうのをやっていた印象があります。
今村
中学生の時には『ソードアート・オンライン』が流行りだして、MMORPGの面白さを感じていました。また、そのタイミングで『ファンタシースターオンライン2』が始まって、βテストの参加募集がすごく行われていた時期でした。自分もβテストに参加して色々試してみると、今までは2Dの画面でプレイしていたものが、いきなり3Dになって友達とチャットできるようになったのが本当に衝撃的でした。

そこから、みんなと仮想空間を一緒に過ごす感覚が楽しくなりすぎて、気づいたら年間3000時間くらい遊んでいました。当時はアイテムを買うためのお金が足りなかったので、アフィリエイトで10万円くらい稼げるようになったんですよ。そのお金を全てゲームに注ぎ込むこともしていましたね。

瀧﨑
まさに「デジタルネイティブ」の先端を走っていた感じですね。今では小学生が当たり前のようにタブレットを持つ時代になっていますけど、そういう未来を実際に先取りして体験していたんだなと思いました。
今村
当時は本当に周りでオンラインゲームをやっている人が全然いなくて。ゲームの中で待ち合わせしているという話をしても、周りからは「オタクじゃん」と言われてあしらわれていましたね。Twitter(現 X)も小学校の頃から使っていたんですけど、周囲のリア友は誰も使っていませんでした。

今もXがすごく好きで、同世代がNFTで起業したのをX経由で知ったことでNFTに関わるようになりました。ただ、仕事をするためには実際にNFTを買わないと肌感がつかめないと思い、色々と購入してみたのですが、MMORPGでアイテムを買った時の感覚とNFTを買う感覚は少し違っており、不思議に思ったのを覚えています。

NFTはデジタル作品として存在するけど、なぜかそれを印刷してみたり、買った人たちとリアルで会ったり。アバターやSNSのアイコンとして使われるなど、今までの流れとは違うと感じていました。その経験から、新たな経済圏がインターネット上に生まれつつあると思うようになり、ブロックチェーンという思想や技術、その文化にのめりこみました。
最終的には今まで携わってきたAIやXR、ブロックチェーンの技術が すべてメタバースの空間に統合されるというイメージが湧いていて、すごくワクワクしています。自分の中では「メタバースの中で生きている感覚」はあるんですけど、今はそれが全部一緒になったような気がして「二重性」が出てきているなと思っていますね。

“魔術的な力”が働くバーチャル経済から生まれる、「非合理的」にも見える新しい価値観

瀧﨑
これまでの座談会でも、皆さんがバーチャルの自分とリアルの自分がどれだけ連動しているかを強調していたので「二重性」はすごく大事なポイントだと思いました。
今村
ただ、昔からXで実名を使うことに違和感があって、今でも偽名で使い続けています。ブロックチェーンの界隈では、偽名で仕事をするのが普通の文化で、契約書を見たときにその人の住まいや名前が初めてわかる感じでしたね。
瀧﨑
和田さんはクリエイターさんとよく繋がっていると思うんですが、今のように偽名でお仕事をもらうスタイルについてはどう考えていますか?
和田
私は主にVRChatで活動していますが、全体的にリアルな情報を出さずに仕事の受発注ができる仕組みを作ろうとしている人たちが存在している状況です。本名を使う場合もありますが、声をボイスチェンジャーで加工している人も多く、情報が匿名化された状態でやり取りすることが一般的ですね。

例えば「ワールドや小物を作ってほしい」とクリエイターさんに相談する際も、そのまま匿名でコミュニケーションを取ります。お支払い時の書面で初めて相手の名前がわかることもありますが、実際には匿名のままやり取りを続けられる法人を作っている人もいますね。

瀧﨑
ある意味、職業として受発注が行われていて、きちんとしたお金が動いていると思うんですけど、偽名であってもなぜ相手のことを信頼できるのでしょうか?
和田
相手がクリエイターという立場なので、これまでのポートフォリオや作品を見て、どんな制作をしてきたのかを確認することで品質を判断します。それに加えて、実際にクライアントを持って制作経験があるかどうかも重要なポイントで、そういった部分を考慮しながら信頼性の判断をしている感じですね。

一方でアカデミア系の方々は、ハンドルネームを使いつつも「どの大学の教授なのか」というような現実世界の肩書きをオープンにしている場合もあります。現実と結びつけることで信用を得る人もいれば、完全に匿名の活動で作った実績で信頼を勝ち取る人もいる状況になっています。

瀧﨑
デジタル上での実績や活動が信頼を得る基準になっていることが今村さんや和田さんの話から感じられて、すごく面白いなと思いました。
平沼
信頼を得る人たちのコミュニケーションでいうと、僕のまわりではバーチャルで仲良くなった人たちの間で、バーチャル上で贈り物(アバターのスキンや有料アイテムなど)を送るのが最近流行っています。「どれだけ贈り物をもらったか」というのが、ある種の「ユーザーの人気投票」のようになっていて、最近は特にそれがマウント合戦のようになってきている気がして、ユーザーが自己承認欲求のために周囲のユーザーの信頼を得ようとする動きが活発になっていると感じます。
また、最近ではそうした贈り物も服を送ったり、食品を送ったりなどリアルで贈り物を送る行動がバーチャル空間でも広がってきています。

今村
私は現金のやり取りが多いですが、海外の友達には暗号資産で送ることもあり、相手の住んでいる場所を知らなくても、デジタル上では人格を知っているので、平沼さんの話す「贈り合いの文化」が浸透してきていると感じています。
瀧﨑
確かにPayPayのようなデジタル決済も、数年前だったら「現金で振り込んでほしい」と思う人もいたかもしれませんが、今では少額の集金や支払いに普通に使えるようになってきましたよね。デジタルやバーチャルの世界がどんどん広がっていくなかで、「メタバース生活者×経済」はどのように発展していくのか、皆さんの意見をお聞きしたいです。
今村
自分はバーチャル経済を見ていると“魔術的な力”が働いているように感じます。外部の人から見ると、「なぜこの金額感になっているのか?」「どうしてそのアイテムを買うのか?」といったように理解しづらいかもしれませんが、私たちにとってはバーチャル経済の背後にあるコミュニティの価値や原理が理解できるから納得できるんです。

でも社会全体から見れば、それは非常に謎めいた経済だととらえられているのではと感じています。特にブロックチェーンや暗号資産は、コミュニティの中で「欲しい」と思う人が増えるほど、そのアイテムの価値はどんどん上がりますが、外部からすれば非常にわかりづらいものになっているわけです。

瀧﨑
例えば、バーチャル空間で自分のアバターに5000円くらいの価値を感じることは、私たちの間では自然に思えることですが、それはあくまで私たちのコミュニティ内での妥当な価値観に過ぎず、外部から見ると全く理解できないことなんですよね。
今村
経済学者マックス・ウェーバーの「脱魔術化」という概念を借りて表現するなら、 バーチャル空間がリアルにどんどん近づいていく進化の中で面白いのは、合理的だったものが再び「魔術的」な方向へ進んでいく現象が見られる点です。

現実世界でも非合理的だったものが合理的に変化してきていますが、それが逆に“再魔術化”することで、予測できない新しい価値観や方向性が生まれていく。これこそバーチャル空間ならではの面白さであり、その中で新たな情報やメディアが発展していく兆しを感じています。

瀧﨑
とても示唆に富むお話ですね。つまり「現実世界の経済感覚で考えてはいけないということ」が大切だと思いました。ちなみに和田さんはクリエイターさんとのやり取りの中で、値付けやお金を支払う際の難しさや注意していることはありますか?
和田
値付けは自分一人で決めるのではなく、一緒に企画や運営に関わっているメンバーと相談して金額を決めています。また、相手から見積もりが提示されることもあるので、個人的にはあまり大きな悩みはないですね。

ただ周りを見ると、クリエイターと依頼者の間で金額の折り合いがつかずにトラブルが発生することがあります。

やはり、どうしても制作過程における必要な工数や工程が見えづらいため、「モデル作成でこんなに金額がかかるの?」と感じる依頼者も多いようです。一方、クリエイター側からすると、実際にはその金額は工数や日数を考慮すると妥当だと考えているので、認識のずれから揉めごとが起きてしまうんですね。

瀧﨑
江口さんは前職時代、それこそ「現実でお金をもらう」ような世界線にいらしたと思うんですけど、現在のデジタル中心の世界に飛び込んでみて、現実との経済の違いや面白さを感じている部分は何かありますか?
江口
前職では需要と供給という2軸で物事を考えるのが当たり前でした。しかし現在ではロボット、ブロックチェーン、AIなど多様な要素が絡み、単純な2軸ではとらえきれないと感じています。特にソフトウェアの分野では、デジタル世界で求められるものが現実世界で必要ない場合もあり、新しい視点に気づくことで自分の世界が広がったと感じています。

新しい経済圏を作るために、新たな参加者に手を差し伸べながら、既存の「再生産」の文化を許容する

瀧﨑
今のお話にもつながりますが、デジタルとリアルが融合する新しい経済圏の中に参加していく際に気をつけるべきことや、皆さんが実際に意識してきたことがあれば教えてください。
今村
当初、Xは偽名で楽しむ遊び場でしたが、次第にビジネス用途で実名を使う人が増えたことで、個人的には「自分のスタイルとは違う」と感じることもありました。
他方でリアルとデジタルが明確に分かれると、それぞれ独自の文化が形成され、交わらないコミュニティが確立します。メタバースでも、社会的ルールや文化が整備されてくれば企業が参入し、独自の価値と創造的な場が広がると考えています。
瀧﨑
平たく言うと、飛び込む世界のことがわからなければ、値付けもできないし、需要もわかるわけがないということですよね。
今村
まさにその通りです。他方で、周りに仲間がいれば新しい世界に入り込みやすいですが、そうじゃないとハードルを高く感じてしまうことも多いです。なので、「扱いにくさ」や「分かりにくさ」をしっかり発信していくことが大切ですし、分からないことがあれば気軽に聞けるような受け入れ体制を整えることが肝心です。
平沼
自分がやっているオンラインゲームでは、一定期間プレイしたユーザーのローディング画面で、「あなたが初めてプレイしたときを覚えていますか?初心を思い出し、初心者に親切にしましょう」というニュアンスのメッセージが表示される仕組みがあります。マナーをまだ知らない新規プレイヤーをサポートする文化を運営側が作ろうとしているのが興味深いなと思いました。
江口
受け入れる側が手を差し伸べる重要性は私も感じています。初めてNFTを購入した時、「本当にこの価格で買うのか」と正直驚きましたが、調べてみるとそれが一般的な価格帯で、むしろ安いことに気付きました。

新しいものに触れるときは心理的な抵抗があり、やはり初心者をサポートする仕組みがあると助かるのと同時に、私たち自身も「知らない世界に飛び込む」姿勢が大切だと思います。

瀧﨑
まずはやってみること。それだけではなく、実際に当事者と関わり、コミュニティにしっかり入ってみることが重要だと言えそうですね。今村さんは経済をより活性化させ、動かしていくための鍵として「再生産」という言葉を使っていましたが、その点についてどうお考えですか?

今村
ブロックチェーンの世界には「CC0」というライセンスがあり、「誰でも自由に使っていい」という考え方が広まっています。これはリチャード・ドーキンスが唱える「ミーム」の概念、つまり、アイデアや文化的要素がコピーされながら変化・成長していく現象を加速させ、 文化が自然に形成される仕組みの一つだと思います。

先ほど文化形成の重要性をお話ししましたが、CC0はその中で大きな役割を果たしています。クリエイターと消費者の関係は一方向的ではなく、クリエイターが消費者になり、消費者が新たなクリエイターになる「再生産」の流れが生まれます。

例えば、ある作品を購入した人がそのインスピレーションを基に新しい作品を作るようなことが起こるように、インターネットやメタバースの世界で「再生産」の概念が定着すれば、新しいサブカルチャーが育つ可能性を感じます。

和田
VRChat内では、改変元のオリジナルのアバターをベースにした「アバター集会」というものがあり、オリジナルのものに少しアクセサリーを加えた改変版のアバターが集まり、みんなで「これいいね!」という光景がよく見られますね。

瀧﨑
その話を、以前和田さんから聞いた時に私が感じたのは、「クリエイターという言葉の定義をもう少し柔軟にとらえるべき」ということでした。デジタルの世界では、誰もがその改変や創作に関わることができるので、クリエイターになる可能性があると感じています。逆に言えば、生産者側も、ある種の覚悟を持って、みんなが自由に触れることを許容することが肝になってくるでしょう。
平沼
実際のところ、デジタル空間では真似をすることで結果的に元のクリエイターが作ったワールドやアイテムのユーザーが増え、サービス自体も盛り上がっていくんですよね。現実世界では「パクる(真似する)」という行為に悪いイメージがつきがちですが、メタバースの世界ではそれがむしろユーザー同士を盛り上げる要素になるので、悪いことではないと思います。

メタバース経済発展の鍵は、コミュニティ独自の価値観に合わせた「入念なルール設計」と「オープンソースの浸透」

瀧﨑
今回のテーマである「メタバース生活者×経済」という観点において、メタバースで「経済」を発展させたい…と思うときに注意すべき点があれば教えてください。
今村
NFTやブロックチェーンといった資産系の仕組みでは、「人間の欲望」を上手く取り入れることが重要で、ビットコインの場合は人々の欲望をエネルギーに変換する力を持っています。しかし、メタバースに経済を持ち込む際の設計が不十分だと、そこから問題や破壊が起こる可能性が高いので、システムやルールメイキングをしっかり行い、バランスよく「人間の欲望」を活用することが大切です。

酒寄
確かに、デジタルの世界には本当に色々なコミュニティがたくさん存在しているので、コミュニティの価値観を理解し、そこにどんなルールやシステムが必要かを慎重に検討していくことが必要ですね。
江口
今のソフトウェアの多くはオープンソースで動いていますが、最初にそれを考えた人たちは、ある意味でそのシステムを崩壊させているわけですよね。でも、そのおかげで現実の進化が促進されているとも言えます。

デジタルが登場したことで複製が容易になり、最初は著作権で制限がかかる時代もありましたが、今はその考え方が少し時代遅れになってきています。つまり、自分が作ったものをオープンソースで自由に使ってもらうというマインドが広がることで、メタバースの経済がもっと広がるのではないでしょうか。

瀧﨑
ありがとうございます。それでは最後に本日のお話も踏まえて、今後お二人がどんなことに取り組みたいかについて、ぜひお聞かせください。
今村
私たちが取り組んでいるのは、AIや自律制御技術を活用して、物理世界の可能性を広げることです。ブロックチェーンなどのデジタル技術は、大きな可能性があるとはいえ、依然としてバーチャルとリアルの間に隔たり があり、その真価を現実社会で十分に発揮しきれていない。リアルにボトルネックがある。だからこそ、まだデジタルとリアルが分断されてしまうことがあるので、私たちはその架け橋となる役割を果たしたいと考えています。

例えば、デジタルでうまくいったシステムをリアルに持ち込んだり、逆に物理的な成功をデジタル空間に反映させたりするなど、相互にフィードバックサイクルを循環させることが重要になります。最終的には、リアルとデジタルが融合した、境界が曖昧な世界の実現を目指していきたいですね。

江口
やはり人間の本質的な接点は変わらないので、歩み寄りが大切になると思います。ハードウェアだけでなく、ソフトとリアルの繋がりが大事ですし、分断を避けることも意識しなければなりません。これから新しい世界に集まる人たちがどんなものを作っていくかは想像できませんが、その過程を見守り、無理に決めつけないように心がけていきたいなと感じています。

■株式会社Zrek
「技術の鮮度」と「現場の進化」を追求する、早稲田大学発のロボティクスベンチャー。デジタルの枠を越え、現場に自然に溶け込む技術を届け、現場とデジタルが通信する、価値の創出を目指している。
 

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  • 今村 優希
    今村 優希
    株式会社Zrek 代表取締役CEO

  • 江口 遼馬
    江口 遼馬
    株式会社Zrek 取締役COO

  • メタバース生活者ラボ リーダー
    博報堂 研究デザインセンター 生活者発想技術研究所 上席研究員

  • メタバース生活者ラボ 研究員
    博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター

  • メタバース生活者ラボ 研究員
    博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジーセンター 

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