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AI×デジタルクリエイティブ最前線 ~成果を最大化するオリジナルAIプロダクトおよびAdobe Firefly活用事例~【セミナーレポート(後編)】
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AI×デジタルクリエイティブ最前線 ~成果を最大化するオリジナルAIプロダクトおよびAdobe Firefly活用事例~【セミナーレポート(後編)】

ChatGPTとAdobe Fireflyの登場は、ネットやスマホの出現と同等のインパクトをもたらす変革期に突入することを意味しています。過去を振り返っても、イノベーションが起こった際の先行者優位は変わらず、「いかに数年先を見据えて、アーリーアダプター足りえるか」が今後の分岐になってくるのではないでしょうか。そんな変革初期にどう我々は向き合っていくのか―博報堂DYグループが主催する“生活者データ・ドリブン”マーケティングセミナーでは、「AI×デジタルクリエイティブ」を軸に、クリエイティブ領域におけるAI活用の可能性と、Adobeの生成AIサービス「Adobe Firefly」の活用事例を紹介するセミナーを実施。本稿では、セミナーの内容を編集してお届けします。
前編はこちら

<前編>
【第一部】デジタル広告の変遷とAI活用の未来
【第二部】博報堂DYグループオリジナルAIソリューション&事例紹介
<後編>
【第三部】画像生成AI「Adobe Firefly」の活用方法と事例紹介

<登壇者>
※社名・肩書はセミナー開催時のものです。

石井 智之
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社 ※
プロセス&クリエイティブデザイン本部
副本部長兼クリエイティブ推進局局長

尾崎 咲美
株式会社アイレップ ※
第1クリエイティブUnit/テクノロジービジネスUnit
Division Manager

【第三部】画像生成AI「Adobe Firefly」の活用方法と事例紹介

「Adobe Firefly」の特長と留意すべきこと

石井
ここからは、Adobeが開発した画像生成AI「Adobe Firefly」について、概要のご紹介と制作の実演をさせていただきます。

「Adobe Firefly」のポイントは大きく3つあります。

POINT1 テキスト入力のみで画像生成が可能
POINT2 商用利用が可能
POINT3 Adobe製品との連携性

特に、AIを用いた画像生成においてネックになるのが「商用利用できるのか」という部分かと思いますが、「Adobe Firefly」はAdobeが提供しているレンタルフォトサービス「Adobe Stock」のデータをベースにAIを構築しているため、商用利用も可能です。ただ、その際の留意点は、「商用利用OK=著作権クリアではない」ということです。先ほどお伝えした通り、「Adobe Firefly」の元となっているデータは著作権クリアなものなのですが、意図せず何らかの著作物に似てしまう可能性はゼロではありません。もちろん、このケースは通常のデザイン制作においても言えることですが、AIの活用でクリエイティブの量産ができるようになれば、そのリスクも高まるということを理解した上で、細心の注意を払う必要があるのです。

そこで博報堂DYグループでは、画像生成AIの使用については基本方針とルールを設けています。大きな方針としては、多数の生成AIサービスがある中でも、基本的に著作権リスクが低い「Adobe Firefly」を利用することと、デジタル広告領域のみで活用するということです。また、広告主様に事前承認を得ること、また、特定の著作物に似せないようにしていることの証明として、生成AIを活用した際のプロンプト(AIに入力したテキスト)も合わせて納品するように定めています。その他、さまざまなリスクをあらかじめ回避するために、固有名詞を入れない、プロンプトのログを残す、生成画像の最終チェックなども現場行う、といったルールにしています。

活用方法① 実写におけるレンポジや撮影の代替

石井
「Adobe Firefly」の活用方法は、大きく3つの方向性が考えられると思っています。
今回はそれぞれの使い方について、具体的にご紹介します。
① 実写におけるレンポジや撮影の代替
② イラストの生成
③ 存在しないものの生成

一つ目が、「実写におけるレンポジや撮影の代替」についてです。
※レンポジとは「レンタルポジ」の略で、ストックフォトの意。

まずは、クリエイターが「Adobe Firefly」で生成した画像をご覧ください。

クリエイティブの現場では、「イメージ通りの素材がない」や「コスト的に撮影ができない」「そもそも現実ではあり得ない状況の素材がほしい」などのさまざまなケースがありますが、「Adobe Firefly」を活用すれば、一瞬にして思い描くイメージを生成することが可能です。
また、スーツの色や髪色の変更、顔の向きなどの調整は従来だととても手間がかかるものでしたが、それらも簡単に実現できます。これにより、実制作においても、ラフ案の作成や修正にかかる日数を短縮できるだけでなく、より多くのデザイン制作が可能になったり、随時具体的なイメージを擦り合わせられるようになったりと、大きな業務効率化につながるはずです。

ここで少し実演をしてみたいと思います。
「Adobe Firefly」のトップページに「男性 20代 日本人」とテキストを入力すると、10~20秒で画像が生成されます。当然、画素数も十分ですので、すぐに成果物として使用いただけます。また、より細かな特徴や設定を追加で入力していくことで、思い通りのイメージを簡単に再現することができるのです。

活用方法② イラストの生成

石井
二つ目、「イラストの生成」についても活用方法をご紹介します。
こちらが実際に生成したイラストなのですが、ご覧いただくと、タッチの多様さを実感いただけるのではないかなと思います。

そして実は、この中に200回ほどプロンプトの入力を繰り返し、こだわり抜いた作品があります。それは、左側の縦の女性のイラストです。デザイナーによると、何度も調整しながら、繊細なグラデーションの表現に辿り着いたそうです。一方で、下段左から二つ目、絵の具で描かれた風景画は、たった1回の入力で生成されたもの。「Adobe Firefly」上ではタッチや色合いなども選べるため、できるだけ早く欲しいイメージに辿り着けるようにもなっているのです。こうしたイラスト生成は現場レベルでも活用が進んでいます。例えば、動画制作時に欠かせない絵コンテも「Adobe Firefly」を使って作成できるため、広告主様への確認や、制作進行時の認識合わせにも有効だと考えています。

活用方法③ 存在しないものの生成

石井
最後が「存在しないものの生成」についてです。
こちらをどう広告領域に活用していくかは未知数なのですが、想像力次第で世の中にないものをアウトプットできるというのは、非常に面白いと思っています。例えば、左上の宇宙服姿のイメージは、動画のサブスクリプションサービスを担当しているクリエイターが制作したものなのですが、「こんな危機的状況でも、見たいコンテンツがある」といったコピーと合わせることで、これまで以上にインパクトのある訴求ができるはずです。

推奨サイズへのリサイズも、自動生成で可能に

石井
このようにさまざまな素材を生成できる「Adobe Firefly」ですが、広告運用に活用していくには、各プラットフォームで推奨されているサイズへのリサイズも欠かせません。昨年には、さまざまなプラットフォームのサイズに合わせて自動生成する機能が追加されました。元素材では大きさが足りない場合も、自然な形でリサイズできるようになっているため、運用パフォーマンスの向上にもつながります。

デジタルクリエイティブ領域は生成AIの登場によって大きな変革期を迎えています。
この変革期においては、リスクヘッジをしながらもPoCを経て広告文脈においていかに有用性を出せるかがその先の分岐を大きく変えると考えています。
近い未来に待ち受けるこの分岐が良い方向に向くよう、好奇心を持って取り組んでいきたいと考えています。

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  • デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社
    プロセス&クリエイティブデザイン本部
    副本部長兼クリエイティブ推進局局長
    雑誌編集、WEBディレクター職を経た後、広告会社デジタル担当営業に従事。
    2013年博報堂グループ入社。プランニング組織と運用コンサルのマネジメントを経て2022年より現職。
    AI×クリエイティブ×プラットフォーマーを推進。
  • 株式会社アイレップ
    第1クリエイティブUnit/ Division Manager
    兼 テクノロジービジネスUnit/プロダクトプランナー
    2015年アイレップ入社し、ストラテジストとして運用コンサルティングに従事。現在はデジタルのクリエイティブプランニングとマネジメントを中心に、プロダクトマネージャーとして、クリエイティブのワークフローシステム企画・AI企画を推進。