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AI×デジタルクリエイティブ最前線 ~成果を最大化するオリジナルAIプロダクトおよびAdobe Firefly活用事例~【セミナーレポート(前編)】
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AI×デジタルクリエイティブ最前線 ~成果を最大化するオリジナルAIプロダクトおよびAdobe Firefly活用事例~【セミナーレポート(前編)】

ChatGPTとAdobe Fireflyの登場は、ネットやスマホの出現と同等のインパクトをもたらす変革期に突入することを意味しています。過去を振り返っても、イノベーションが起こった際の先行者優位は変わらず、「いかに数年先を見据えて、アーリーアダプターたりえるか」が今後の分岐になってくるのではないでしょうか。そんな変革初期にどう我々は向き合っていくのか―博報堂DYグループが主催する“生活者データ・ドリブン”マーケティングセミナーでは、「AI×デジタルクリエイティブ」を軸に、クリエイティブ領域におけるAI活用の可能性と、Adobeの生成AIサービス「Adobe Firefly」の活用事例を紹介するセミナーを実施。本稿では、セミナーの内容を編集してお届けします。

<前編>
【第一部】デジタル広告の変遷とAI活用の未来
【第二部】博報堂DYグループオリジナルAIソリューション&事例紹介
<後編>
【第三部】画像生成AI「Adobe Firefly」の活用方法と事例紹介

<登壇者>
※社名・肩書はセミナー開催時のものです。

石井 智之
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社 ※
プロセス&クリエイティブデザイン本部
副本部長兼クリエイティブ推進局局長

尾崎 咲美
株式会社アイレップ ※
第1クリエイティブUnit/テクノロジービジネスUnit
Division Manager

【第一部】デジタル広告の変遷とAI活用の未来

AIの進化で高まる、クリエイティビティの重要性

石井
デジタル広告の現在地に触れるにあたって、まずはその変遷を振り返ってみたいと思います。
デジタル広告が増え始めたのは2008年頃。PC全盛期で、メディアのトップ画面が主な出稿先でした。そのため、それまでの純広告時代と同様に、枠を獲得する「バイイング力」や「コストでの差別化」が重要視されていました。そこから2010年代に入ると、スマートフォンが普及し、ソーシャルメディアが急速に浸透。デジタルテクノロジーの活用も進み、細かいターゲティングができるようになったことから運用型広告の時代に突入し、「設計力」や「運用力」が求められるようになりました。そんな流れを経た2020年代における大きな変化は、プラットフォーム側のアルゴリズムの自動化です。長らく人の手で運用されてきたアルゴリズムがAIで運用されるようになったことで、デジタル広告のあり方も変化を迫られています。

下図は、デジタル広告の運用にかかわる要素の変化を図式化したものです。
プラットフォーム側の「アルゴリズム」、広告会社などの「運用ノウハウ」、広告そのものの「クリエイティビティ」の3つの比重を示しています。

中央のグラフを見ると、アルゴリズムの割合が大きくなり、運用ノウハウの割合が縮小していることがわかるかと思います。そんな状況で高パフォーマンスを目指し競合他社と差別化していくには、クリエイティビティを強化していく必要があると考えています。

AI活用で変わる、デジタルクリエイティブの未来

石井
こうした現状の中、デジタル広告におけるクリエイティブ業務にどうAIを活用できるのか、そして、どんな未来を目指していくべきなのか、尾崎とともにお話させていただきます。
特にデジタル広告でパフォーマンスを高めていくためには、短納期や大量生産といったワークプロセスが欠かせませんが、当然、人の手だけで制作を進めていくのは厳しい状況です。そこにAIを活用することで、業務の自動化・効率化を実現できるようになります。
尾崎
ただ、クリエイティブ業務の効率化は、早期に限界に達してしまう可能性があると考えています。なぜなら、効率化が進み、誰がやっても再現性があるような状況になれば、高パフォーマンスを出すアウトプットは一つに収束され、競合他社との差分がなくなってしまうおそれがあるからです。だからこそ、「自分たちのクリエイティブや商品価値をいかに高めていくか」「生活者に対してどう価値を創造していくのか」などを突き詰めて考えることが、今後は一層重要になると考えています。単に自動化のためだけにAIを用いるのではなく、“人”を中心としたAI活用を考える。それこそが、未来への突破口となるはずです。

クリエイター×AIで、効率化と発想力強化を実現

石井
そうしたクリエイティブへのAI活用を実現する鍵となるのが、クリエイターです。
博報堂DYグループはクリエイターの発想支援パートナーとして、クリエイターの育成・支援や、クリエイティブ業務に関する環境整備に取り組んでいます。その取り組みの一つが、クリエイティブプラットフォーム「PING-PONG」の構築です。博報堂DYグループのオリジナルAIソリューション「H-AIシリーズ」やChatGPT、Adobe、チャットツール、クラウドなどの各種サービスを統合し、クリエイターがシームレスに活用できる環境を目指しています。「PING-PONG」を通して、クリエイターがAIを自分の手足のように使える環境づくりができれば、クリエイターの発想力・選定力のスキルアップはもちろん、クリエイティブ制作工程の効率化・量産力の拡大にもつながるはずです。クリエイターの意見を第一に、継続的にプラットフォームを改善し、利便性も追求していきたいと考えています。

【第二部】博報堂DYグループオリジナルAIソリューション&事例紹介

制作フローを支援するソリューション群

石井
まずは「PING-PONG」の全体像についてご紹介します。
下図は、与件発生から出稿までの制作フローに、プロダクトを落とし込んだ体系図です。
紺色が広告主様側へアウトプットを提供するためのプロダクト群、紫色が広告会社などの制作サイドの業務効率を高めるツール群となっています。

今回は、現場での活用が進んでいる5つのプロダクトを事例とともに紹介します。

①ペルソナ分析を瞬時に完結する「訴求生成AI powered by GPT-4」

石井
一つ目が、ChatGPTをベースに開発した「訴求生成AI powered by GPT-4」です。
SWOT分析やペルソナ生成、カスタマージャーニー生成、訴求軸生成、コピー生成などを瞬時に行えるプロダクトとなっています。

今や多くの方がChatGPTを使い始めているかと思いますが、指示出しの内容や精度で回答が大きく左右されてしまうという側面もあり、的確な回答を得るのは簡単ではありません。
そこで私たちは、広告プロモーションにおける戦略立案を支援するプロダクトとして「訴求生成AI」を独自開発。このプロダクトを使うことで、時間がかかっていた調査や情報の整理を瞬時に完結し、必要な情報を引き出せるようになります。

今回は、男性用メイク化粧品を例に、具体的な活用事例を紹介します。
ツールの使い方は非常にシンプルで、生成したいものをプルダウンの中から選び、関連URLを入力するだけ。例えば「ペルソナ生成」を実行すると、SWOT分析のみならず、市場分析や顧客分析も一瞬で行うことが可能です。

まずは、SWOT分析で強みとして吐き出された文章をそのままご紹介します。

「使い方の解説をわかりやすい動画とテキストで提供することで、メイク初心者でも容易にアプローチできるユーザーフレンドリーな設計がされています。また、無料のトライアルキットを提供することで、顧客がリスクなしで製品を試すことができる点も、顧客満足度を高める上で有効です。敏感肌向けの無添加処方製品は、健康志向の高い顧客層にアピールできる点も強みの一つです。」

関連メンバーであれば把握している基本的な内容ではありますが、改めて、強み・弱み・機会・脅威などが文章化されることで再認識できるだけでなく、チーム間での共有にも役立つはずです。なお、制作現場での活用方法としても、このように吐き出された情報を中心に戦略を立てるというよりは、あくまで戦略を立てる際の判断材料として活用しているような状況です。


続いて、下図はAIで生成されたペルソナです。年齢や職業、年収といった具体的な属性だけでなく、商品を使った時に得られるメリットや、商品に期待していること、さらにはペルソナへの訴求方針までもが提示されるような仕組みになっています。従来のペルソナ策定では、調査会社に依頼して数百に及ぶアンケートを収集し、対象商品に興味関心がある対象を絞り込んでペルソナに落とし込んでいくという作業が必要になるため、時間もコストもかかっていました。しかし、「訴求生成AI」を使うことで、簡易的なものではありますが、ある程度具体的なペルソナを瞬時に抽出できるようになるのです。


尾崎
また、カスタマージャーニーのサンプル生成も可能です。
こちらも従来であれば、多くの調査を重ね、膨大なデータを分析する必要がありましたが、「訴求生成AI」を使えば、すぐに認知・興味・検索・比較・購買それぞれのフェーズにおける生活者の行動やインサイトを知ることができます。さらに、「どういう検索をされているか」「どんなコンテンツを見て判断しているか」「購入に至るまでの離脱要因」などもわかるため、さまざまな角度からユーザー分析ができるようになっています。

最後に、訴求軸・コピーの生成についてご紹介します。訴求軸の洗い出しは、時間がかかるだけでなく、抜け漏れが発生しやすかったり、クリエイターの感覚による部分が大きかったりする領域でした。しかし、「訴求生成AI」を活用することで、「機能的価値」「情緒的価値」「LPサイトから感じる特有の価値」といった3つの軸で簡単に生成できるようになります。コピーについても、ペルソナと訴求軸を掛け合わせるだけで複数のサンプルを生成が可能です。言い回しに関しても、「五感を刺激する」「口コミを模した一言」など、商品特性に合わせて複数提案されるようになっています。特にコピーに関しては、実際にあるような表現やリアルさが大事になるため、クリエイターやライター、エンジニアと一緒にディスカッションしながら作り上げていった自信のある機能となっています。

②広告文の自動生成と効果予測を可能にする「H-AI SEARCH」

石井
二つ目のAIプロダクトは、広告文の自動生成と配信効果の予測を支援する「H-AI SEARCH」です。キーワードを入力すると、あらかじめ設定していた文字数やレギュレーションに沿って広告文が自動生成されるだけでなく、広告効果が点数化されて表示されるようになっています。
事前に広告効果を予測できるようになることで、広告運用効果の最大化につながります。

今回は、モビリティ業界での事例をご紹介します。「H-AI SEARCH」を導入することで、CTA・CPC・CPAの各指標で、従来の運用よりも大きく成果が出る結果になりました。広告予算も大きく、これまでも検索広告に注力されてきた企業であっても、これだけの成果につながったという事例となっています。その他、情報通信業界やレンタカー業界、不動産業界など、幅広い業種で活用が進んでいます。もちろん全ての数字が向上するとは限らないのですが、CPAとCVの両方で効果が出る場合やCPAを維持した状態でCVが増加する場合など、効果改善に貢献しています。


③勝ちクリエイティブを導き出す「H-AI IMAGES」

尾崎
三つ目にご紹介するのが、画像の広告効果を予測するAIプロダクト「H-AI IMAGES」です。
こちらは、広告の配信前にバナーをアップロードするだけで、ランキングとスコアが予測できるプロダクトになっています。例えば、新たな広告を配信する前に、既存バナーと新規バナーをアップロードし、その効果を判定。スコアが低い場合は、随時判定しながらデザイナーがデザインをブラッシュアップすることで、出稿前に配信効果を最大限に高めることが可能になるのです。

そんな「H-AI IMAGES」の特長は、CTRとインプレッションの二つの指標でスコアを判定していること。安易にCTRだけを指標にして、「良いクリエイティブ=高CTR」とAIが一概に判断するのは危険だと考えているからです。
※良いクリエイティブは媒体AIによってプレイスメントが拡張され、インプレッションが増加・CTRは低下するが、悪いクリエイティブは媒体AIによりプレイスメントが縮小され、インプレッションが減少・CTRは上昇する傾向にあるため。

また、実際の運用では、“良いクリエイティブはプレイスメントが広がる”という基本的なアルゴリズムはあるものの、どの媒体で運用するのかといったプレイスメントやターゲティングなどの影響も受けるため、広告効果を判断するのは容易ではありません。だからこそ「H-AI IMAGES」では、媒体によって変動する要素をあえて排除しています。「クリエイティブ単体が持つ力」を純粋に測ることが、クリエイティブの品質アップ、ひいては、パフォーマンスの向上につながるのではと考えています。

④狙った視線誘導を実現する「H-AI EYE TRACKER」

石井
四つ目のAIプロダクトは、広告における注視箇所を予測・可視化する「H-AI EYE TRACKER」です。人の注視傾向を学習した独自のアイトラックAIをベースに開発したプロダクトで、一般的に数週間かかる注視点調査を、短時間・低コストで完了。編集段階で随時チェックしながらブラッシュアップしていくことで、狙った視線誘導を出稿前に実現できます。動画や静止画、LPなど、幅広い活用が可能です。

こちらが「H-AI EYE TRACKER」の活用による改善実績です。情報が溢れている時代だからこそ、一番伝えたい部分が正しく見られているかを測定し、チューニングしていくことが、さらなる効果改善の第一歩になると思っています。

⑤クリエイティブ業務を効率化しパフォーマンスを高める「PINGPONG」

石井
最後にご紹介するのが、制作現場の効率化のためのプロダクト「PINGPONG」です。
特にクリエイティブ制作においては、Adobe PhotoshopやAfter Effects、Slackなど、さまざまなシステムを用いながら進めることが多いと思いますが、それらをシステムでつなげることで、クリエイティブ業務の効率化を実現します。

尾崎
こちらが実際の管理画面です。
与件発生から案件管理、デザイナー・ディレクターのアサイン、進捗管理などを一元管理できることだけでなく、Slackとの連動でシームレスなコミュニケーションが可能になるため、コミュニケーションエラーの削減にも寄与します。

また、「PINGPONG」にクリエイティブそのものと広告配信の実績データを紐付けることで、クリエイターが手軽に配信効果を確認できるようになりました。デザイン作業時に過去の実績を参照できるのは、クリエイターにとっても利便性が高く、自身の成長にもつながると考えています。さらに、Adobe Creative Cloudには「PINGPONG」のプラグインを導入。例えばPhotoshopで広告クリエイティブを制作する場合、このプラグインを使うことで、制作要件やデザインイメージなどの詳細もPhotoshopの画面上で確認できるようになるため、レギュレーションの誤りや伝え漏れ、見落としなどを防ぎ、さらなる効率化を目指します。

石井
この「PINGPONG」を活用することで、広告主様と広告会社それぞれで、スピードアップや工数圧縮、クリエイティブ供給量の増加といった成果が出ており、顧客満足度と広告パフォーマンスの向上に直結していると言えるでしょう。
今後さらに利用率を上げていくことで、今以上の成果が期待できると確信しています。

後編へ続く

 

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  • デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社
    プロセス&クリエイティブデザイン本部
    副本部長兼クリエイティブ推進局局長
    雑誌編集、WEBディレクター職を経た後、広告会社デジタル担当営業に従事。
    2013年博報堂グループ入社。プランニング組織と運用コンサルのマネジメントを経て2022年より現職。
    AI×クリエイティブ×プラットフォーマーを推進。
  • 株式会社アイレップ
    第1クリエイティブUnit/ Division Manager
    兼 テクノロジービジネスUnit/プロダクトプランナー
    2015年アイレップ入社し、ストラテジストとして運用コンサルティングに従事。現在はデジタルのクリエイティブプランニングとマネジメントを中心に、プロダクトマネージャーとして、クリエイティブのワークフローシステム企画・AI企画を推進。