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SmartNews分析から見えてくる記事閲読データの魅力とは?【デジノグラフィ・トーク vol.17】
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SmartNews分析から見えてくる記事閲読データの魅力とは?【デジノグラフィ・トーク vol.17】

博報堂生活総合研究所(以下、生活総研)が提唱する、デジタル上のビッグデータをエスノグラフィ(行動観察)の視点で分析する手法「デジノグラフィ」。
今回は、書籍『デジノグラフィ インサイト発見のためのビッグデータ分析』の中でも複数の共同研究事例が紹介されているスマートニュース社 インダストリーアナリストの磯貝陽一氏と、生活総研 酒井崇匡の対談です。
膨大な記事閲読データの分析からは、生活者の隠れた情報摂取行動とその裏側の心理までもが浮かびあがります。様々な分析結果を入り口に、その魅力について考察しました。

スマートニュース株式会社 インダストリーアナリスト
磯貝 陽一氏

博報堂生活総合研究所 上席研究員
酒井 崇匡

無意識な関心が現れるビッグデータ

酒井
一口に「ビッグデータ」といっても様々なものがありますが、SmartNewsに蓄積されているビッグデータの特徴とはなんでしょうか?
磯貝
一般的に、人は情報のインプットがあって、そこから関心が高まったのちに「検索」や「購買」などの行動を起こします。つまり、「購買データ」や「検索データ」は人々の関心が顕在化した“意識的な行動データ”と言えます。
 一方で、SmartNewsでは3000媒体以上から提供される情報を独自のアルゴリズムとデザインで摂取しやすいように配信しています。多くのユーザーは、特定の情報を取りにいくというより、生活習慣として「何か新しい情報はないかな」とSmartNews上でザッピングしているんです。つまり、“無意識状態での関心の動き”を把握できる点が大きな特徴ではないでしょうか。これは「インサイト」にも近いものだと考えています。
酒井
「無意識下の関心が表れるビッグデータ」というのが面白いですよね。
磯貝
無意識下の関心は、そのまま高まっていけば行動を起こすかもしれません。そういう意味では行動の「予兆」であると捉えることができますし、また別の解釈をすれば、生活者自身もまだ気づいていない潜在的な欲求という側面もあります。こうした「インサイトの点と点」を線で繋ぐことで、生活者への解像度を上げたいと考えています。
酒井:では、無意識下の関心の探り方を、具体的な事例をもとに深掘りしていきましょう。「ターゲット」「キーワード」「タイミング」の3つの視点で順に見ていきたいと思います。

ニュース接触に現れるターゲットの年齢の壁

酒井
「ターゲット」の視点でいうと、特定のニュースに関心を示した人の属性を調べることで色々な発見ができますよね。我々生活総研とスマートニュースさんとで実施した共同研究にも、お肌の曲がり角ならぬ“髪質の曲がり角”が明らかになった「ショートヘア47歳の壁」というデータがあります。ビッグデータだからこそ、明確な興味の「境目」が見えてきた事例です。
磯貝
SmartNewsの記事のうち美容領域にカテゴリーを絞り、年代別にPVの上位20記事にどのような記事がランクインするかを分析したところ、年齢が上がるほど「ショート(ヘア)」というワードをタイトルに含む記事が上位にランクイン。そして40代後半、特に47歳ぐらいから一気にショートヘアへの関心が高まっていくのが分かります。

酒井
実際に美容師の方々にヒアリングしてみても、確かに47歳前後で髪質が細くなるため、ショートヘアにシフトする方が多いようですね。
磯貝
「40代で曲がり角がくる」というのは、定説というか、これまで多くの人がなんとなく認識していた部分だと思うんです。1歳ずつの差を検証すると、顕著に46と47の間に明確な差が見えるのが面白さというか。ユニークなところですね。
酒井
マーケターとしても、このデータからは新しい提案に結びつけることができます。たとえば、47歳以降のロングヘアを維持するためにはどうすればいいかという提案もできるし、実際にロングヘアを維持している人たちがどんなケアをしているのか、といったリサーチも可能です。いろいろと次の提案につながる発想ができる研究結果だと思います。
磯貝
こうした調査結果は他にもあります。あるファストフードチェーンに関する記事では、30代をピークにして40代からPVが下落し、50代でガクッと一気に下がる。やはりファストフードには明確な「年齢の壁」があるのかと思いきや、コンビニチェーンにおけるリングドーナツの新商品に関する記事のデータを見ると、意外なことに50代でピークを迎えるんです。

酒井
一般的にどちらも「若者に人気」とされる食べ物にもかかわらず、この2つで比較するとキレイに入れ替わるんですね。
磯貝
こういったデータは、開発側がおそらく知らない「発見」だと思うんです。50代をターゲットにしたリングドーナツはきっとまだ作られていませんよね。このような、ヒアリングベースではなかなか出てこない意外なセグメントの発見や、仮説を裏切るようなマーケティングに役立つデータが見えてくるところも、SmartNewsの記事閲読データから読みとれる大きな特徴だと思います。

コロナが喚起した「老け」インサイト

酒井
昨年は男女とも、これまでで最も自分の顔を見つめる機会が増えた1年でしたからね。記事接触だと、実際に老け対策の行動に移る手前の状況が見えてくるんですね。
磯貝
そうですね。「本音になる前の本音」と呼べるかもしれません。実際に「ヤバい、私、老けたかも。どうしよう……」となったときは、おそらくWeb検索データなどでも表れてくると思いますので。
酒井
『老け 解消 メイク』で検索、みたいな。
磯貝
おっしゃる通り。でも、このPV結果はその手前の段階で、「老け」の記事に触れたときについついその記事を読んでいる状態だったと推察できるわけです。
酒井
「本音になる前の本音」が可視化できると考えると、インサイトの深掘りという意味でも大変興味深いですね。

スイーツ情報は深夜が食べ頃

酒井
もうひとつ、共同研究のなかから「タイミング」にまつわる興味深いデータがありました。
磯貝
新商品を紹介する記事のランキングのなかで、スイーツ関連記事が最も多く読まれるのはいつか、という話ですね。イメージ的に、購入者の多いお昼くらいに記事PVも増加するのかなと思ったら、実際には深夜帯だったという結果が見て取れました。
酒井
具体的には、20~23時台にピークを迎えていました。スイーツの情報はお昼ではなくて深夜帯に摂取される、ということがここから見えてきます。

酒井
このデータを踏まえた上で、実際に女性にヒアリングもしたのですが、彼女たちは夜にLINEで「このスイーツ美味しそう」といったやりとりを通してプランニングをし、次の日に買いに行くんじゃないかと。つまり、プランニングが夜で、アクションは翌日のお昼以降である、といったデータの前後から見える生活者の解像度も仮説として深まっていくのは興味深いですよね。

記事閲読データを活用した新しいマーケティングの可能性

酒井
「ターゲット」「インサイト」「タイミング」の3つの視点でSmartNewsの記事閲読データを見てきました。そもそも、こういった分析が可能なのは、ユーザーが記事をしっかりと読もう、つまり「情報を摂取しよう」というモードで利用しているからですよね。
磯貝
まさにおっしゃる通りです。SmartNewsの広告には「訴求内容の詳細まで理解されやすい」という特長があることが、第三者調査機関のデータから見えています。その要因は、ユーザーが「情報摂取モード」のときに、広告も情報の1つとして似たフォーマットで配信しているからだと考えています。
酒井
詳細まで理解されやすいからこそ、様々なマーケティングへの応用が考えられますよね。「ターゲット」や「インサイト」の深堀りによる新たな訴求開発はもちろん、「タイミング」においても、「あ、この記事を読んでいるということは、少しずつ関心を持つ人が増えているんだな」と、モーメントの予兆を捉えることも考えられそうです。桜前線のように「関心前線」のようなものが見えてくるかもしれませんね。
磯貝
関心前線、面白いですね!どんなターゲットに、どんなインサイトを、どんなタイミングで深く理解してもらうかというのを今後も突き詰めていきたいですね。
磯貝
記事閲読データからは、単なるPVだけなく、その記事に含まれるキーワードをもとに消費者の抱えるストーリーを構築・考察することも可能です。
 たとえば、コロナ禍で迎えた初めての夏、2020年4月~8月の美容関連でよく読まれた記事を細かく分析したことがあります。当然、「コロナ」というワードが中心になりつつ、「マスク」や夏前なので「くびれ」といったキーワードもあったなかで、「老け」というワードを含んだ記事PVが増加していることがわかりました。
 検証していくと、外出の機会が減って運動不足になったことからの「老け」。あるいは、人と会わなくなったことで身だしなみもさぼりがちという自覚症状による「老け」という実態が見えました。ただ、さらに読み解いていくと、「リモート会議の増加で自分の顔を見る機会が増加したことで『老け』への意識が増した」という仮説も見えてきました。こんな風に仮説を肉付けするというか、点と点を繋いでストーリー化ができると、より生活者への解像度が増していきます。
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  • 磯貝 陽一
    磯貝 陽一
    スマートニュース株式会社 インダストリーアナリスト
    広告代理店を経て、2005年より株式会社ベネッセコーポレーションにてマーケティング戦略、ブランド戦略に従事。ヤフー株式会社を経て、2019年6月より現職。クリエイティブディレクター/デザイナーとしても活動し、朝日広告賞など受賞歴多数。
  • 博報堂生活総合研究所 上席研究員
    2005年博報堂入社。マーケティングプラナーとして諸分野のブランディング、商品開発、コミュニケーションプラニングに従事。12年より博報堂生活総合研究所に所属。デジタル空間上のビッグデータを活用した生活者研究の新領域「デジノグラフィ」を様々なデータホルダーとの共同研究で推進中。行動や生声あるいは生体情報など、可視化されつつある生活者のデータを元にした発見と洞察を行っている。
    著書に『デジノグラフィ インサイト発見のためのビッグデータ分析』(共著・宣伝会議)、『自分のデータは自分で使う マイビッグデータの衝撃』(星海社新書)がある。

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