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「メディアイノベーション調査2019」からみる、日本と各国の比較②前編 ~プロダクトハンターあかねさんと考える、日本とアメリカの比較~
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「メディアイノベーション調査2019」からみる、日本と各国の比較②前編 ~プロダクトハンターあかねさんと考える、日本とアメリカの比較~

生活者目線で新しいプロダクトやサービスを語ってみたい。昨年から続けているこのコラムでは、メディア環境研究所が日米中タイの4カ国で調査を行った「メディアイノベーション調査2019」(ご参考:プレスリリース)の結果について、各国に詳しい方に調査結果について語っていただきます。第2回はシリコンバレー在住の「プロダクトハンターあかね」さんに、メディア環境研究所の小林がアメリカの結果について日米比較も交えてお聞きします。

◆映画系小型スティックは当たり前に

メディア環境研究所 小林(以下、小林)
あかねさん、こんにちは。今回もどうぞよろしくお願いいたします。今日は、「メディアイノベーション調査2019」で行った「生活を変えるサービス」について、各国の興味度ランキングをベースにお話しをうかがいたいと思います。昨年も2018年調査の結果についてお聞きしましたが、昨年55のサービスについて聞いたものを、今年は新たに出現してきているサービスがあるので、81のサービスについて聞いています。

■図1:生活を変える81の新しいサービスに対する各国の興味度ランキング トップ10

※「生活を変える81のサービス」各国ランキングはこちら

こちらは今年と昨年のアメリカでのTOP10を並べたもの(図1)ですが、昨年と比べて大きく項目が変わりました。4か国共通なのですが、今年の結果ではスマホで生活を便利にする項目がTOP10に集中しています。アメリカで昨年TOP10にランクインしていたもので今年もランクインしているのは、小型プロジェクターのみです。それ以外については昨年と比較して順位を大きくあげてTOP10 入りしているものや、今年新たに追加した項目ばかりです。

プロダクトハンターあかねさん(以下、あかね)
1位の「映画系小型スティック」は、アメリカでは当たり前で便利な存在になっています。小型スティックがあれば、映画もNetflixも、ローカルニュースなども見られ、これですべて事足りるので、みなさん便利に使っているんじゃないかなと思います。

ちなみに我が家の場合は、スティックを挿さなくてもテレビ自体に機能(Amazon Fire TV)が内蔵されているものを使っています。リモコンにはNetflixやHBO、Amazon Prime、Playstation Vueなどのボタンがついています。このテレビに替えてからは、電源も連動しているのでリモコン上のNetflixなどのボタンを直接押して見る、という動線になっています。ケーブルテレビの場合は、チューナーの電源を入れて、テレビの電源も入れて、チャンネルも選んで…と操作が多くて使い勝手が悪いんですよね。日本くらいのチャンネル数であれば、「これをやっているので見よう」となると思うのですが、こちらはチャンネル数が多いので、番組の把握ができないので、本当に見ていません。ケーブルテレビはインターネットを使うために、仕方なく一緒に契約しているという感じです。

小林
スマホでテレビを操作することはあまりしないですか?
あかね
あまりないです。我が家のテレビはAmazon Alexa内蔵で、テレビのリモコンがマイクになっています。なのでリモコンに話しかけて検索しています。リモコンで文字を入力するのって大変じゃないですか、なので音声になってしまいますね。

スマホでYoutube動画を見ていて、テレビに映したいという時もありますが、ミラーリングしなくても、テレビをつけてテレビ側のYoutubeアプリから音声検索すれば出て来るので、以前に比べるとミラーリングする機会は減りました。音声検索が簡単なのでYouTubeなどの動画を見る時もテレビで見ることが増えました。

また私の場合ですが、こちらのリモコンからは日本語では検索できないこともあり、画面付きのGoogle Homeで、日本語で音声検索してYouTubeを見ることも多々あります。Google Homeはバイリンガルの設定にしておけば日本語と英語の両方で音声検索ができるので、便利に活用しています。

◆食料品配達の普及が加速。アメリカでも翌日配達が可能に!

小林
スマートスピーカーが普及しているアメリカならではですね。日本だとどうしてもスマートスピーカーよりもスマホに慣れている人が多いので、声での検索よりもスマホを連動させて入力を簡単に行う方法をとっている人も多いような気がします。
それでは、2位の「スマホで買物・宅配・荷物運搬」の状況はいかがでしょうか?
あかね
食料品配達が普及していますね。ウォルマートがすごく伸びているというニュースもありますし、インスタカートが提携を大きく広げているために拡大しているというのもあります。インスタカートはウォルマート以外のお店と提携を進めているので、2番手にあがってきています(図2)。アマゾンも含めてオンラインの利用者数は右肩上がりです。みなさん食料品配達は使っているし、一回使うと便利なので継続して使っているのだろうなと思います。また、アメリカの特徴として日本と環境が違うのは、食料品など各商品のサイズが大きく、牛乳も2リットルやガロン単位の販売なので、デリバリーしてもらうと楽ですね。自分で買物に行くのも、日本のように気軽に近所で済ませるというのができない環境にいる人が多く、移動も含めて手間なんですよね。その中で持ってきてもらえるというのは大きな価値なのだと思います。

■図2:オンライン食料品(アメリカ、月間顧客数)

小林
アメリカでは日本のように毎日買物をするというよりは週末に一週間分まとめ買いをする人が多いと思うのですが、配達してもらうことによって買物の頻度は変わってきているのでしょうか?
あかね
私はAmazon Prime Nowのホールフーズで買物していますが、一定料金以上買わないと配送料がかかってしまうので、一度にそれなりの量は買いますね。お届けはドアの前に置いておいてもらえるのですが、食料品だと生ものもあるので配達時にはなるべく在宅するようにしています。アマゾンもウォルマートも家の中や冷蔵庫まで届けるというコンセプトを発表しているので、ゆくゆくはそうなっていくのかなという気はします。
小林
家に届けてもらうサービスと同時に、事前に注文して駐車場で受け取ることができるサービスもあると聞きました。それもすごくよさそうだと思ったのですが…
あかね
あります。食料品だけでなく、家具や日用品でも駐車場受け取りのサービスは普及しています。特に子連れの買物は、子供をチャイルドシートから降ろして…など時間がかかるので、車の中で受け取れるのは本当にありがたいです。いわゆるドライブスルーですが、これまでのドライブスルーと異なるのは、店舗側の設備投資が少なくて済む点だと思います。注文はスマホのアプリから、そして駐車場の一角がピックアップの人用になっています。利用者が駐車場についたらGPSで店側に通知され、店員が駐車場のピックアップエリアに持って来るような仕組みになっています。注文を受ける窓口や受取窓口を新たに作らなくてよいので店舗側も導入しやすいんだと思います。
小林
土地があるアメリカならではとも思いますが、日本の、都心部の駐車場が狭くいつも駐車場待ちの列ができているような店舗でもこういったサービスは有効かもしれないですね。

◆ネットの買物の方が「前もって選べた感」がある

あかね
あと、最近のアマゾンでの買物は、アマゾンプライムロゴのついたバンが運んできてくれます。アマゾン独自のサービスで配達しているので翌日や休日にも荷物が届きます。これって日本だと当たり前なことだと思うのですが、アメリカでは本当にすごいことなんです。アメリカの配送サービスは、基本的に日曜日はお休みです。またアマゾン以外の通販で購入すると、お届けに1週間から10日はかかります。そんな中、翌日に届くというのは、お買物革命なんです。翌日配送の実現はアマゾンに1兆円規模の売り上げ増をもたらすと予測されています。
小林
そうすると、スマホが身近で便利になったというよりは、その周りの環境が整備されてきてそれを使うためにスマホを使っているという状況なのかもしれないですね。
あかね
はい、そう思います。配送網や店舗側のサービスが整ってきた感じですね。あと、最近アマゾンプライムワードローブという試着サービスを使って服を買ったのですが、「実際に家で手にとって見られて試着できるっていいよね」とSNSで投稿したら、「だったら店で見て試着して買えばよくないですか?」みたいなことをコメントで書かれてハッとしました。店で買うということを忘れていたなと…。でも家だと子どもが寝てから試着できるし、ネットで買う方が選択肢も多いので、いろいろ選べた感があるんですよね。お店に行って特定のものしか見られずに「もっといい物があるかもしれない」と思いながら買うより納得度も高いし、やっぱりネットで買うのでいいな、と思ったんですよね。改めて。
小林
日本だと通勤の帰りに街があるので、気軽に寄ることもできますが、アメリカだとわざわざお店に行くという感じがありますよね。
あかね
そうなんです。こちらの場合はどこに行くにも車で、気軽に徒歩で買物というのは本当に都心でしかありえません。コンビニもありません。ただコンビニのような存在として、アマゾンGoに注目しています。現在はまだ13店舗しかないのですが、2022年までに3000店舖に拡大したいと発表されています。私も利用していますが、安いし、置いてある物も他のコンビニなどよりもちゃんとしているんです。例えば他店だと$15するサラダがアマゾンGoだと$8程度で買えたり…。アマゾンGoが普及したら、意外と徒歩でいける日本のコンビニのような存在になるんじゃないかと思っています。これまで車で行かなければならなかったようなところをアマゾンがそうでなくする。じわじわと生活を変えていっている感じがすごいです。
小林
アマゾンの勢いはすごいですね。日本ではまだオンラインショッピングの1店舗という感じですが、実店舗もあるアメリカだと余計にアマゾンが生活を変えている感じがあるのでしょうね。それでは、支払いについてはどうでしょうか?7位に「スマホアプリ経由で送金」が入っていますが、今もPayPalが普及しているのでしょうか?それともQRコードも使われるようになってきているのでしょうか?
あかね
最近はApple Payがさまざまなところで使える印象です。実店舗でもオンラインでもよく見かけます。オンラインの場合はApple Payだと住所の入力も会員登録も必要ないので、Apple Payに対応していたら使ってしまいますね。

またPayPalは引き続きシェアは高いと思いますが、個人的にはPayPalはあまり使ってないです。個人間送金の際は、最近はFacebookメッセンジャーやVenmoで送金する機会の方が多いです。同僚とはVenmo、友人とはFacebookメッセンジャーになっています。アメリカではQRコードはそんなに普及していないです。私もある小売店のアプリで使う程度です。

小林
元々クレジットカードもよく使われているのでわざわざQRコードにしなくてもキャッシュレスになっているのかもしれないですね。それでは、スマホでの来訪者確認や家電操作についてはいかがでしょうか?

◆スマートドアベルが捉えた不審者情報はみんなで共有

あかね
スマホでの来訪者確認はよく利用されているのではないかと思います。アマゾンがスマートドアベルのRingと監視カメラのBlinkという会社を買収していて、アマゾン傘下になったこともあり、非常に安価で買えて、設置も簡単なので、誰もが導入しやすいものになっています。我が家もBlinkを$100以下で購入し設置しています。RingもBlinkも来訪者の有無に拘らず、カメラの前で何らかの動きがあると短い動画を撮影するような仕組みになっています。

ちなみになぜアマゾンがドアベルと監視カメラの会社を?という気がしますが、今後の家の中へのデリバリーを視野に入れたものだと思います。

小林
逆に、これだけ小さくて簡易なものだと簡単に外されてしまうのではないかなとも思ってしまうのですが…
あかね
カメラがかなり広角なので、外す時に映っちゃうと思いますよ。しかも撮影データはローカルではなくクラウドに送られているので顔が特定されてしまいます。スマートドアベルのRingは、Neighborsというサービスを展開していて、Ringで得られた不審者情報(動画)を共有できるようになっています。これはRingを持っていない人でも利用できるサービスで、アプリからその情報を見ることができます(図3)。うちにはRingはないですが、近隣の人が公開しているRingの映像を私も見ることができるんです。家のドアベルがセンサーを使って人の動きを察知して、車や配達物を盗もうとしている人の様子を撮っているんですよね。

■図3:Neighborsで共有される不審者情報と位置情報

小林
それは便利なサービスですね。近所全体で安全を守ろうということですね。不審者情報は利用者が意図的に共有サイトにあげているんですか?
あかね
Ringからユーザーに通知された不審者情報をユーザー自身がアップロードしています。Neighborsを見ると、「配達物よく盗まれているなー」と思います。来訪者確認だけではなく、こういった機能もスマートドアベルが人気の理由ではないかと思います。

★後編へつづく

  • プロダクトハンターあかね
    プロダクトハンターあかね
    スクラムベンチャーズ マーケティングVP
    シリコンバレー在住。スクラムベンチャーズ マーケティングVP。アメリカのスタートアップ情報、新サービスやプロダクトについてブログ&寄稿記事で発信する”プロダクトハンター”として活動中。年間1000件超のスタートアップ情報にふれ、100件超のサービスやプロダクトを実体験している。
  • 博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 上席研究員
    2004年博報堂入社。トイレタリー、飲料、電子マネー、新聞社、嗜好品などの担当営業を経て2010年より博報堂生活総合研究所に3年半所属。 2013年、再び営業としてIR/MICE推進を担当し、2014年より1年間内閣府政策調査員として消費者庁に出向。2018年10月より現職。