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10億人規模のWeChatを活かすには? テンセント経済圏の活用と可能性
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10億人規模のWeChatを活かすには? テンセント経済圏の活用と可能性

中国市場において、国内モバイルユーザーはその利用時間のほとんどを“BAT”のサービスに費やしているといわれます。中でも、全利用時間の55%以上を獲得しているのが、SNS「WeChat」をはじめ多数のサービスを提供する“T”=テンセントです。
中国で15年以上にわたりビジネスを展開するデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(以下、DAC)は2018年、テンセントと日本初となる戦略的パートナーシップを締結し、日本企業によるテンセントプラットフォーム活用の支援を強化しています。
本記事では、ともに中国出身であり日本でのビジネス経験も豊富なテンセントの叶(よう)志松氏、DACの叢(そう)赫林氏に、テンセントプラットフォームの特長や、戦略的パートナーシップで広がる可能性について話を聞きました。

訪日外国人観光客の3分の1が中国から

――インバウンドと越境ECを柱に、日本企業の中国市場への関心はますます高まっています。まず、中国の生活者の最近の状況や、日本への興味関心についてお聞かせください

テンセント・叶
私は大学卒業後、日本で勤務したのち、2012年から18年まで中国で勤めていました。転職に伴って昨年、日本に戻ってきましたが、この数年で中国人の消費意欲はますます伸びていると感じています。実際、それは数字にも表れていまして、2018年の年間の訪日外国人旅行者3000万人のうち、約3分の1となる830万人が中国からの観光客です。また、その観光客が旅行に際して使うお金の半分以上が買い物に使われており、テンセントでは1兆円規模になると推測しています。日本企業にとって、中国市場はインバウンドの中でも一層魅力的になっているといえますね。(*)

(*)出典:日本政府観光局(JNTO)
https://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/pdf/181219.pdf
https://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/pdf/190116_monthly.pdf

DAC・叢
私も同感で、日本製品はいまだに、中国でとても人気があります。いまだに、とお話ししたのは、数年前は中国で手に入れられる海外製品は日本や韓国など一部の近隣国に限られていましたが、ここ数年は欧米からも入手しやすくなり、選択肢は増えているんです。それでも、日本製品を選ぶ人が多いですね。品質の高さだけでなく、商品に込められた“匠の精神”といったストーリー性も魅力のひとつです。また、近年、日中関係がさらなる良好な状態が続いており、日本への関心や親しみが増している要因です。

――そういった中国の生活者の関心の高まりを受けて、日本企業の広告出稿も増えていますか?

DAC・叢
もちろん、広告への投資はこの2~3年でどんどん増えています。2020年の東京五輪を目前に、今年と来年を特に重視している企業が多いですね。さらに2025年には大阪万博も控えているので、DACへの問い合わせ件数や内容などからも、先々を見据えて中国市場での存在感を高めようとの意向を感じています。

中国国内プラットフォーマー最大手のテンセント

――DACでは、早くから中国市場に進出し、ビジネスを展開されていますよね。これまでの経緯と、テンセント社との関係をお聞かせください。

DAC・叢
DAC設立以降、早期より海外デジタルプロモーション支援をしてきたDACですが、中国進出をした2005年以降、約15年現地でのノウハウを蓄積しながら事業拡大しております。皆さん耳にしたことがあるかと思いますが、中国市場のマーケティングでは“BAT(バイドゥ・アリババ・テンセント)”は欠かせないプレーヤーなので、DACと北京DACでは3社とも早い段階からビジネスをしてきました。インバウンドの取り組みは3年ほど前から強化しており、その中でも中国国内プラットフォーマー最大手のテンセントはとても重要なパートナーです。

この数年、テンセントの各サービスへの広告出稿案件の増加に伴って、コミュニケーションをより密にとるようになりました。その動きをさらに加速させる目的で、戦略的パートナーシップを締結しました。現在、DACとテンセントジャパン、そしてテンセントの中国本社のメンバーで連携し、常に最新の媒体情報を把握しながら、日本のクライアントの要望に迅速に応えられる環境を整えています。3社のWeChatグループもあって、日々さまざまな質問が飛び交っています。

――そうなんですね。ではテンセント社から、最近の動きとDACとの連携について教えていただけますか?

テンセント・叶
テンセント側も、日本企業への広告やサービス提供を年々強化しています。テンセントジャパンは2011年から活動を開始していますが、日本企業からの要望の高まりを受けて、16年に日本市場向けの広告販売専任チームを設けました。そこから広告会社の開拓を進める上で、DACといち早くタッグを組んでいた経緯があります。昨年のパートナーシップ締結は、その延長です。
我々にとって、メディアレップとしてのDACはとても心強いですね。直接クライアントに接している広告会社ではないので、クライアントの利益と同時に我々の事業成長も考慮してくれる、中立的な存在だからです。かつ、メディア事業に20年以上携わっているため、メディア関連のノウハウが厚いです。その点は、テンセントとしてDACにとても期待しています。

DACの中国市場チームには、たくさんのネイティブのスタッフがいることも頼りになりますね。テンセントのサービスは、種類が多いこともあり、まだ日本企業には十分な認知がありません。その認知獲得の部分でも、DACの力を借りて急ピッチで促進していく考えです。

1日平均90分接触しているSNS「WeChat」

――テンセントには「WeChat」以外にも、ECやニュースアプリなど、生活に密着したサービスが多いですよね。

テンセント・叶
はい。「WeChat」は中国の半分以上のモバイルユーザーが1日平均90分以上接触するサービスに成長しています。メッセンジャーアプリから始まり、公式アカウントや、決済サービスの「WeChat Pay」や、アプリ内ミニプログラムなどのサービスも追加され、ますますOS化しています。
WeChat以外にも、最近若者がよく使うもう一つのSNSアプリ「QQ」、クローズドSNS「Qzone」、Webブラウザやニュースアプリ、ECプラットフォームの「JD」など、現存するおよそのオンラインサービスを、テンセントおよび出資企業でカバーしています。

「WeChat」を中心に広告事業を強化していますが、中国の約10億人のデータを集約した独自のDMPも運用しており、各種サービスの利用状況は統合したIDで管理しています。一連のサービスにおける行動や購買履歴の分析から、広告配信につなげられるのが大きな強みですね。
また、日本市場において、我々が展開しているBtoB事業は広告だけではありません。広告のほか、クラウド、ペイメントなどのBtoBのサービスも整備しています。

DAC・叢
DACとして全世界の広告を扱う中で、問い合わせ件数などを見てみると、多くの企業から注目されているのは、やはり「WeChat」です。日本で関心を集めている要因は、WeChatモーメンツ広告のプレミアム性にもあると思います。WeChatのモーメンツ広告はコンテンツのひとつとしてユーザーに寄り添うことを目指していて、基本1日あたり1人1件、最大2件までしか広告が配信されません。
これはブランディング強化に最適ですし、実際にその要望がいちばん多いですね。特に、日本での行動喚起を狙い、日本へ旅行に来る前に自社ブランドの印象を高めてもらい、来日時には店頭などで商品をしっかり体験してもらい購入につなげる、というマーケティング手法が最近の定石になっています。
ブランディングに次いで要望が大きいのは、前述の公式アカウントのフォロワー獲得です。一度つながれば、継続的に情報を発信できるので、現在は未購買の潜在顧客でも、初回購買やファン化を促進しやすくなります。

精度高いターゲティングで予算を有効活用

――WeChat独自のメニューや仕組みなどはありますか?

テンセント・叶
いわゆる公式アカウント広告、モーメンツ広告などもありますが、最近テンセントで力を入れているのは「ミニプログラム」(※)という仕組みです。端的に言うと、普通は広告を介して企業サイト内のランディングページに飛んだり、アプリダウンロードにつなげたりするところ、WeChatアプリ内でほぼすべてのウェブサービスを可能にするものです。この仕組みですと、ユーザーはアプリをインストールする必要がなくなり、余計な通信量と携帯容量の負荷をかけることもないので、よく使われています。決済はWeChat Payとも連動しているので、ユーザーの操作もスムーズですね。

※ミニプログラム(小程序)
2017年に誕生したWeChatアプリ内のアプリ。WeChatのインターフェースに統合されており、ユーザーが軽快に利用可能。サービス内容はゲーム、インフォメーション、EC、チケット予約、歯医者、デリバリー、飲食店での注文など多岐にわたり、オンライン・オフラインのサービス統合にも最適と言われている。

――なるほど。公式アカウントからの情報提供やクーポンなどのオファーとは、また違う動線ができているのですね。

テンセント・叶
そうですね。公式アカウントはあくまで、その企業からの情報提供を当面受け入れますよというファンの表明であり、ファンマーケティングに有効ですが、そうでないユーザーにウェブサービスを提供するにはミニプログラムは効果的です。
DAC・叢
テンセントプラットフォームの広告配信においては、ターゲティングの精度もとても評価が高いですね。大まかに、位置情報や普段どのように使っているかの分析から、1.中国国内の利用者、2.短期の訪日中国人(旅行者)、3.在日の中国人、を分類できます。3は例えば私や叶さんも含まれます。この3分類をベースに、属性や趣味嗜好でかなり細かくターゲティングが可能です。なにせ母数が10億人と膨大なので、我々としても限られたクライアント企業の広告予算を効果的に活用するために、できるだけ狙いを定めた方々への配信をしたい。その際、高精度のターゲティングのメリットは大きいです。
現状、中国向けプロモーションのご相談を頂く際に多いのが、日本での行動喚起ですが、そもそも中国市場である程度ブランド認知を獲得できていなければ、中国人の行動を喚起することは難しいです。そのため、日本でのマーケティング同様、訪日外国人向けプロモーションにおいても、やはりブランドの認知を獲得していくために、誰に、何を、どのフェーズでアプローチしていくかという設計がとても重要になってきています。

両社のタッグで最適なプランニングを実現

――日本企業からの広告配信においては、中国の文化を踏まえたクリエイティブも効果を大きく左右するのでしょうか?

DAC・叢
まさにそうですね。その点はDACでも、広告の運用と同じくらい重視しています。歴史的や政治的な観点から、クリエイティブで注意する点はありますし、若年層の最新の文化も加味しなければ的外れな表現になってしまい、運用以前に響かない結果にもなりかねません。そうした事態を防ぐために、ネイティブのスタッフが十分配慮しながら、また現地の最新の情報も踏まえながら取り組んでいます。支援するクライアント企業の業種業態が幅広いので、それらの事例からのナレッジも活かしています。
テンセント・叶
ユーザーにとって的外れだったり、不快な広告を配信してしまうと、炎上の可能性も十分にあります。その点は我々も十分気を付けていますが、我々の手前でDACが広告主や広告会社に対してアドバイスをしてくれていることは、とてもありがたいですね。

――文化的な背景のほかに、留意すべき点はありますか?

DAC・叢
直近だと、中国では大きな法整備が2つありました。ひとつは2015年に新しい広告法が施行され、日本では許容されている「最大1万円もらえます」といったあいまいな表現や誇大表現が中国ではNGになったことです。

もうひとつは、2019年1月1日から新しいEC法が敷かれ、個人の越境EC仲介者の管理が厳しくなりました。その結果、一時的に越境ECの購買額が減少しています。法制度は変えようがないですが、では転売目的ではなく直接自分が使うために購入する人へのアプローチをどう強化するか? という点が、今課題になっていますね。そもそもどのようなメディアプランが適切か、WeChatを使うならばどんな表現が最適か‥‥…といった形で上流から考えることを心掛けています。

――手法やメディアありきではなく、目的に応じて使用可能な手を組み合わせて提案できるのがDACの強みですね。では最後に、今後の展望をうかがえますか?

テンセント・叶
テンセントとしては、メディアレップや広告会社などのパートナー企業と一緒に成長していきたいと考えています。当社側からの情報提供やトレーニングだけでなく、例えば2月にはDACとともに関西のインバウンドイベントに出展したりしました。今後もDACやパートナーとの連携をさらに深め、日本企業に我々のソリューションを理解いただいて、課題解決につながればと思っています。
DAC・叢
前述のように、この1~2年は特に中国市場への投資が増える見込みなので、多くの企業や広告会社の助けになれるよう引き続き尽力します。特にテンセントはWeChatを中心に、BtoCのコミュニケーションにとても有効なプラットフォームを確立しているので、我々も積極的に提案していきます。中国では広告配信をする上でのレギュレーションや必要な書類も細かいですが、当社はそのあたりのサポートも万全なので、より多くの事例を重ねてナレッジを蓄積していきたいですね。
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  • 叶(よう)志松
    叶(よう)志松
    Tencent Japan
    International Business Group
    Senior Manager of Business Development
    中国北京出身。
    2008年大学卒業後、システムエンジニアとして、DACに入社。
    2012年5月に北京DACに駐在し、RTB・リスティング関連の業務を担当。
    2016年、百度に転職し、マーケティングコンサルティング部ディレクター。
    2018年12月に再度日本に戻り、Tencentのインターナショナル・ビジネスグループにジョインし、日本市場のビジネス開拓を担当。
  • デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社
    グローバルビジネス本部 グローバルメディア部
    ディレクター
    中国吉林省出身。
    2008年大学卒業後、広告会社に入社。WEBデザインとアフィリエイト広告運用を経験ののち、2014年から中国の百度やテンセント、DSP、ASPなどの広告運用からクライアント対応までを行う。
    2018年、DACに入社。中国メディアの担当として、テンセントを中心とした中華圏プロモーションに従事。

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