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店頭デジタルサイネージの可能性 ~サイネージ広告の価値測定の精緻化~
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店頭デジタルサイネージの可能性 ~サイネージ広告の価値測定の精緻化~

はじめに

広告メディアは多様化する中、店頭サイネージはメディアシステムとして効果的な活用はまだ進化の途中にあるといえます。しかしながら、昨今の5GやAIの進歩によりサイネージ機能が進歩し、店頭サイネージは新たな普及、活用のステージに入ってきています。

デジタルサイネージ全体の市場は2024年には4180億円に上ると予想されています(矢野経済研究所調査より)。その後も2025年の大阪万博などがあり5Gの浸透6Gの実証実験開始など順調な発展が見込めていましたが昨今のコロナ禍の影響でアウトドアにかかわる分野は減少傾向にあるようです。しかし、コロナ禍においても、街への流入、商業施設への来館者が減少する一方で、食料品・日常品を扱うスーパーGMSは変わらぬ来店者数となっています。店頭・店内での生活者との接点として店頭サイネージの更なる活用が期待されます。

このような背景の中、読売広告社は店舗、施設内サイネージに可能性を感じ、様々な取り組みを行っています。今回は我々の取り組みの一端と店頭サイネージの進化、可能性についてレポートします。

出典:(株)矢野経済研究所「デジタルサイネージ市場に関する調査(2020年)」2020年4月13日発表

5G技術でデジタルサイネージが進化する

5G技術で、『超高速かつ大容量の通信』が可能になります。身の回りのあらゆる情報がネットワークに繋がり、「リアルタイムな情報」をもとにデジタルサイネージで表示させることが可能になります。

例えば、来店時に雨が降ってきた場合、即時に来店者の行動を予測し、気象予報に合わせた情報提供や広告、販促策を打ち出すことができます。また、サイネージの前を通り過ぎる生活者属性を計測し、それに合わせて生活者のスマートフォンにクーポンを配信することも可能なります。

このように、生活者のリアルタイムの環境変化・属性に応じて広告を打ち出すことができます。

今までの画一的な広告表現やメッセージの発信から、リアルな接点における規模の小さなプロモーション、あるいはパーソナライズされた広告表現が可能になるのです。また、このことはその場に居合わせた人が同じブランド体験をすることで新たなブランドへの意識変化をもたらすと考えています。

AIカメラにより来店者の広告への精緻な広告接触調査を可能に

読売広告社は、より正確に来場者数・接触状況を図るべく、合同会社西友と共同で2020年8月1日(土)~15日(土)において西友店頭においてAIカメラによる24時間の来店者数測定と来店者ヒアリングによる広告接触の調査を行いました。

従来、店頭サイネージ広告の生活者接触は来店者数もしくはPOSデータに基づくレジ通過者数を接触者数として提示していましたが、その場合、店頭サイネージが設置されていない動線を顧客が通過した場合や、複数人のグループで来店してその一部だけが購入する場合に実際の接触者数と乖離する可能性がありました。

そこで今回、AIカメラにより店頭サイネージの前を実際に通過する来店者をカウントし、時間あたりの広告への接触人数、接触時間を調査しました。また来店者のアンケート調査することでレジ前サイネージ広告の認知度・視聴回数・視聴タイミング・CM接触後の購入意向の上昇度を調査しました。

また、AIカメラによる情報収集は、個人情報となる映像を保存することなくカウントが可能ですが、コロナ禍でマスク装着者の属性データがAIカメラでは測定できないため、アンケート調査により性別、年齢データを収集しました。このことにより店舗内サイネージの広告効果をより正確に把握することができ、他媒体と広告効果を比較する際にも接触者数の把握は重要なことです。メディア横断のプロモーション、オンラインとオフラインの垣根をなくすために、指標を共通化することは重要なポイントです。

※株式会社読売広告社の系列会社株式会社ショッパーインサイトが提供する「real store Viewer(以下rsViewer)」サービスの一部機能を利用。
※【 rsViewer とは】AIによるリアルタイム動画解析機能と動画コンテンツをネットワーク経由で配信・再生するサイネージシステムを組み合わせた、店頭販促支援・効果測定システムです。本サービスによって、①効果検証型の店頭動画の放映・管理 ②購買前の売場実態・購買前行動実態の測定を、行うことが可能で、工事不要でも設置できるため、一時的にAI機能を伴った、サイネージソリューションを展開する場合にも利用できます。

店頭サイネージ活用の今後の展開と可能性

今までは目元と口元で属性・年齢を推計してきましたがコロナ禍に口元ではなく髪型、生え際などのデータを取り入れることにより、マスク装着時でも性別、年代も調査することが可能になるなど、さらに精緻な情報を得ることが可能になります。また、店頭サイネージのネットワーク化・デジタル化は、現状の予約型の広告配信ではなく、インターネット型のRTB配信を可能にする新たな流れで、近い将来、動画配信も加わり、サイネージメディアがインターネット、スマホと同じプラットフォームで配信されるようになります。サイネージメディアがTV、ラジオ(音声メディア)、インターネットと同じプラットフォームで配信され管理されるわけですから、その広告効果も一元管理できるわけです。さらにRTB配信を取り入れることで時間と場所を特定した配信が可能になり他メディアと同様にメディアとしての価値はさらに高まります。

広告主にとっても来店者に適した情報の出し分けができ、ターゲットに対しより正確に配信することで、さらに効率的なコミュニケーションが可能になります。これはデジタルサイネージメディアがすべてRTB化されるというわけではなく当面予約型広告の補完として伸長していくと考えています。予約型とRTB配信のハイブリッドが業界をさらに伸ばしていくのではないでしょうか。

私たちは実装実験を通じ、今後レジ前だけでなくフロア全体の来場者データを集め、より適切な商品陳列、販促利用の効率化、広告商品の開発ができる環境を目指しています。
これは広告目的だけでなく、店舗自身の売り上げの増加にもつながります。今までの売れ筋の動線と考えられていた場所をデジタル計測することで数字を見える化し、販売促進に大きな効果を生み出します。
将来的には、広告メディアとして、来店から退店までシームレスにコミュニケーションができる環境が構築できれば、来店者データをもとに、新たな生活者の兆しをいち早くとらえて売り場のプロモーション、メディアの開発などで、さらに店頭までの統合的なコミュニケーションの拡大につなげていきます。

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  • 株式会社読売広告社 ビジネスデザイン局 データビジネスルーム ルーム長
    1988年読売広告社入社。営業局、ストラテジックプランニング局、人事局、モノづくり研究所、R&D局を経て、現在データビジネスを主務とする。様々な職種における長年の経験を活かし、経営にかかわる課題に幅広く対応しています。
    技術経営修士(専門職)、統計検定2級。