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定性×定量であるべき未来を提案する。 エモーショナルデータ分析から企業のマーケティング戦略をサポートする新組織「65dB TOKYO」
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定性×定量であるべき未来を提案する。 エモーショナルデータ分析から企業のマーケティング戦略をサポートする新組織「65dB TOKYO」

TBWA\HAKUHODOは2019年10月、企業のマーケティング支援を行う新組織「65dB(デシベル)TOKYO」を設立しました(ニュースリリース)。 65dB TOKYOの特徴は、グローバルで連携し、定性と定量を掛け合わせたエモーショナルデータを分析し、ビジネスチャンスを提供することです。TBWAグループが推進する65dBの拠点としてはパリ、南アフリカに次いで東京が3拠点目になります。今回新拠点を東京で立ち上げた理由や、サービスの内容、将来の展望などについて65dB TOKYOの金清雄太、石田陽公、亀山宇莉に聞きました。

ニーズの源泉を見つける。

──ソーシャルリスニングはDisruption Live®をはじめ、TBWAとしても従来から重視されていたと思いますが、今回改めて「65dB TOKYO」を立ち上げた経緯を教えて下さい。

金清
広告プランニングにソーシャルリスニングを活用するサービスは、既に多くのエージェンシーが提供しています。また、近年はエージェンシーだけでなく、ツールベンダーやコンサルティング会社などがソーシャルリスニングに関するサービスの一環として、分析~戦略立案を行うケースも増えていると感じています。そういった状況なので、エージェンシーには広告プランニング以外のことに関しても高い価値を提供することが求められており、そのため、ソーシャルリスニングに関しても、より効果的な内容にして他との明確な違いを出す必要があると以前から感じていました。
65dBは、パリの拠点からスタートしました。元々の業務内容はインターネット上のコンバセーションを分析してコンサルティングする、というもので、広告のみを対象とするものではありませんでした。そして、TBWAが資本参加したことで、生活者の声を起点とした市場分析~戦略立案から広告を含めたコミュニケーションという、上流から下流まで価値を提供できるようになりました。
65dB独自のサービス、と言えるのはソーシャルリスニングの際にSNSだけではなくレビューサイトやブログなどを対象にしたり、場合によってはビッグデータと掛け合わせて分析をすることです。「ニーズの源泉を見つけよう」という姿勢自体が今までのソーシャルリスニングと大きく違う部分だと思いますし、だからこそ東京でも新たに拠点を立ち上げる意味があると思っています。

──広告以外がアウトプットになることがあるのでしょうか。

金清
もちろんあり得ます。極端に言えば、我々が戦略を立案し、その先のコミュニケーションを別のエージェンシーにやっていただくことがあっても構わないと思っています。

──「ソーシャルリスニングとビッグデータを掛け合わせる」場合、どのようなビッグデータを想定されていますでしょうか。

金清
クライアントが持っているデモグラフィックデータや購買データ、博報堂が持っている生活者データなどです。65dB TOKYOは、「SNSのデータだけを扱う訳ではない」ということはいつも強調してお伝えしています。
石田
Twitter、Instagram、ブログといったソーシャルリスニング、各社が持っているデータソース、メディアのニュース記事などに加え、価格比較サイトの口コミや、その商品サービスやカテゴリを取り巻く文化的な要素なども集めます。TBWAは“カルチャー”を大事にしており、世間的な価値観としてどういうものが共感を得ているのかという定性的な部分と、集めた様々なデータを掛け合わせているんです。
 我々は「人々がまだ気づいていないところにビジネスチャンスがあるのではないか」という考えで取り組んでおり、「ここにこういうニーズがあるから、これを打てば人が動くのではないか」というロジックのもと、定性的なものから定量的なものまで掛け合わせてビジネスプランニングを提案しています。

──65dB TOKYOはパリ、南アフリカに次いで3拠点目ということですが、グローバル共通のミッションやメソッドはあるのでしょうか。また、各拠点が連携することもあるのでしょうか。

金清
グローバルでのミッションは「企業やブランドを真のカスタマーセントリックにしていく」というものです。今の時代は、商品やブランドをどう活用するか、どう楽しく使っていくかといったことの主導権が生活者側に移ってきています。そのため、企業は生活者の声を聞いて「どんなものが求められているのか」「なぜ買われているのか」を知らなくてはいけません。我々はそこに貢献したいと思っていますし、それを実現するために必要なメソッドも持っています。
亀山
グローバルで共通のメソドロジーという点で言うと、三つあげられます。一つ目はトピックビルディングで、話題を作ってその中身の大きな傾向を見ていきます。例えば、ヘアプロダクトに関する話題を探す場合、商品名がそのままつぶやかれることはあまりないので、関係するキーワードを網羅的に考えて、全部クエリーにしてツールにインプットします。データを作るのにはとても時間がかかりますが、ここが非常に重要です。
金清
トピックビルディングのフェーズは、本当に徹底的に行うので、膨大なデータ量になります。一般的なやり方では、拾いやすいキーワードのみを拾っているのでバイアスがかかりやすいのですが、我々は細かに網羅することで「クラスタの中の一部分がこうしている」といったことまで分かります。例えばシャンプーであれば、髪の悩みから派生して肌の悩みにまで対象が及ぶ、といったことがあります。
亀山
二つ目はデータマイニングです。この商品だったらどういうセグメンテーションが考えられるのか、といったことをタッチポイントなど様々な切り口で掛け合わせて見ていきます。三つ目がインサイトマイニングで、「生活者がこういうことを言っているからこういうインサイトがあるよね」ということを具体的に読み込んでいきます。定性的な部分ですね。
各拠点の連携もあります。先日も、パリから「クライアントの中国リージョンでの状況をリサーチして欲しい」といった依頼を受けています。今後、例えば、日本企業がヨーロッパ市場への進出などをする際には、こちらからリサーチの依頼をすることなども考えられます。

数字と感情、両面から見えてくるインサイト

──具体的に、データマイニングやソーシャルリスニングの方法について教えてください。

金清
ソーシャルリスニングツール自体は、海外ベンダーが提供している一般的なツールを使っていますので、そこに特異性はありませんが、重要なのは、データを網羅して入れる部分です。
石田
レビューサイトやブログの内容もツールを使って網羅的に見ることができます。それでも足りない部分は、例えばコスメ専用の口コミサイトなどは自身で口コミを確認する、などを丁寧に行います。どのような場所を見てどのデータを拾うかが、センスが問われる部分だと思っています。
亀山
最近は、中国市場のリサーチも多くなってきていますが、中国版のTwitterと呼ばれる「Weibo」は、内容を自動で取得できるツールが無いのが現状です。Weiboは自分で確認をし、Weiboとは別に匿名掲示板とナレッジコミュニティの中間のようなプラットフォームにはツールを活用して分析しています。

──データだけではなく、文化やトレンドの理解度の高さやセンスも重要なんですね。

石田
それが我々の強みでもあると思っています。定量的なデータから出した結論を、「実際の声でも世間の価値観はこうなっています」といって補強できる。数字と感情の両方を大切にするところが他にない強みだと思います。
金清
まず定量的にデータを出し、その先の傾向も掴んでいるからこそ、定性的な価値観を訴えた場合でもクライアントからは可能性を感じていただけるのだと思います。こういったプロセスは凄く価値があると自負しています。「ソーシャルリスニング」では、定量的な分析にとどまってしまったり、反対に定性のみで止まってしまったり、といったケースも多くあります。
「エモーショナルデータ」という言葉が、海外メディアで2019年の初頭から使い始められ、マーケティングトレンドとなっています。これまでお話ししたことと共通しますが、ビッグデータのみで顧客分析するとロイヤリティを測り切れない、という課題感から生まれたワードです。「エモーショナルデータは第四のデータだ」と言われたりして注目されています。

──数字と感情の両面からの分析を大事にされるとのことですが、n=1でも強く時代感を表しているような投稿についてはどのように捉えられていますか?

金清
そういった声ももちろん重要視しています。ユーザー自身に商品の主導権が移ってきている中で、その商品を愛して使っている1人のコアファンの意見も重要だと思いますし、その人たちからファンベースを作ったり、アンバサダーのようになってもらったりといったことが現在のマーケティングでは大切になっています。特にクライアントがそういったコミュニケーションを重視する場合は大事になりますね。
亀山
1人しか言っていないように思える意見でも、その投稿の背景を解釈すれば、複数の意見に共通したニーズがあることが理解できる場合もあります。
石田
それこそが“時代の価値観”ですよね。言葉は違っても、共通のものを導き出して行く作業は本組織において重要です。

投稿の背景にある文化や感情まで解釈できる
マルチカルチュラルな組織

──65dB TOKYOはどのようなメンバー構成されているのでしょうか。

金清
端的に言うと、若さと語学力があるメンバーが集まっています。若さはソーシャルやカルチャー、デジタルへの理解のためです。例えば、石田はTBWA\HAKUHODOの中でも特に日本のカルチャー・トレンド収集に長けており、情報をグローバルに共有もしています。語学力についてもハイクオリティを求めています。我々は、先ほどまでお話したように、単なる文字情報としての言葉だけでは表せない、その文章から、投稿者の気分や社会的なムードなどコンテクストまで解釈できるレベルの人材を厳選しています。
石田
バイリンガルというより、「マルチカルチュラル」な人材という方が良いかもしれませんね。文化的な背景を理解して、「こういう書き方をしているということは、こういうものも好きなんだろうな」とか、口コミ一つとっても深い分析ができるようなカルチャーへの理解が必要です。

──チームの構成はどのようになっているのでしょうか。

金清
大きく三つに分かれています。分析を行う石田や亀山のチーム、インサイトやファインディングスをクライアント企業がどう使うかを考えていくブランドストラテジストのチーム、クライアントとコミュニケーションする営業チームです。代表の私を含め、現在8人がチームに所属しています。
嬉しいことに非常に多くの問い合わせをいただいているので、可能であればチームを拡大したいと考えています。

──今後の展望について教えて下さい。

金清
現在のクライアントとしては、やはりソーシャル上で話題を作りやすい商材でもあるため、コスメやファッション、エンタメは問い合わせいただくことが多いですし、ニーズもありますね。我々のサービスと相性が特に良いと思います。ここをしっかり拡大したいと思っています。
また、広げて行きたいものとしては大きく二つです。一つ目は、生活者の声から生まれた新しいサービスに対して、どういうことを提供できるか分析し、マーケティングを支援することです。もう一つは海外に関連したビジネスですね。
石田
昨今は訪日外国人が増えており、一層ボーダーレスになって来ています。そういう状況を受けて、海外企業から日本進出、日本企業のグローバル進出も増えると思います。マルチカルチュラルな人材がいる強みを活かし、そういったニーズに対応できたら、と思っています。
金清
そこでは、我々のグローバルネットワークも強みになると思っています。いろいろなリージョンで世界中の声を聞き、それを起点にして世の中を変えていけたらと思います。生活者が何かを発することで世論を作っていくということ自体が面白いと思っているので、我々はそれを様々なことで起こせるような組織になれればと考えています。