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戦略ブティックという新しいエージェンシーの形「Paasons Advisory」特集#3 ビジネス実践編
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戦略ブティックという新しいエージェンシーの形「Paasons Advisory」特集#3 ビジネス実践編

広告会社の新しいサービス提供のかたちの模索

広告会社は歴史的にメディアの仲介から始まり、メディアに掲載する広告制作、そして制作物をつくるうえでのマーケティングコミュニケーション戦略サポートへと事業領域を拡大させ、近年はデータ連携やマーケティングシステム領域にも及んでいます。さらに現在、クライアントの抱える課題はますます多様化しており、広告領域に留まらない企業活動全般にかかわる領域でのナレッジやアイデアの提供が求められるようになってきています。特に顕著であるのが、スタートアップ系、テック系、そして外資系企業とのビジネスです。
Passons Advisoryは、生活者発想をフィロソフィーとする博報堂ならではの「生活者のエキスパート」という専門性と、Cloud Platformを土台としたPlanning Platform Modelを掛け合わせ、クライアントからのあらゆる要望に一緒に向き合っていく、新しい形の「パートナー」を目指して活動しています。本記事では、これらのクライアントが抱える課題と、それに対するPaasonsの取り組みをご紹介します。

様々な「プランニング領域」に対応する柔軟なビジネスモデルの構築

様々なスタートアップ企業やテック系企業は、過去の蓄積がない中で事業を成長させるうえで有益なインプットを提供してくれるパートナーとなる存在を求めています。多様なカテゴリー、市場、ユーザーを取り扱ってきた知見のある広告会社は、このようなパートナーになれる素養があるはずです。広告会社においてこれまで、戦略部分は広告出稿に伴う「付帯サービス」としての側面が強かったですが、私たちはクライアントの方針策定のちょっとした話し相手から、中長期的な事業戦略まで幅広く担えるようなビジネスモデルを構築しました。

提案型から共創型へのビジネスプロセス転換

スタートアップ系、テック系企業は組織がコンパクトで意思決定が柔軟で速いという特質があり、生産ラインや在庫をもたないケースもあります。商品やサービスアップデートも逐次行われることも多くあり、決められたタイムラインでビジネスが進むとは限りません。新しいことを始める場合、それはスピードの勝負でもあります。フィードバックをもらって修正し、また提案するという”PDCA型”とも言えるプロセスでは、このスピード感についていくことができません。私たちはテクノロジーの力を借り、事業パートナーとして常にクライアントと並走しながら都度都度の判断を一緒に行っていく共創型プロセスへと、ビジネスプロセスを転換しました。

ビジュアルコミュニケーションを通じた創造的な議論

アイデアを提案したり調査レポートを提供する場合、伝える中身の正確性やクオリティもさることながら、それをどのように伝えるかという点もとても重要です。スタートアップ、テック系のクライアントは、直感的に短時間で理解することができるアウトプットを好む傾向があり、外資系クライアントではさらに文化や言語の壁も出てきます。そのため、より一層視覚的に構造を把握したり、感覚的に内容を理解することを促す工夫が期待されます。ビジュアルコミュニケーションはこうしたクライアントに対して有効で、まさに「百聞は一見にしかず」です。このような可視化アプローチを私たちは”Visibility”と呼び、資料の表現方法やデザインも含めて、インスパイアリングな資料をつかって創造的な議論ができるよう心掛けています。

Paasons Advisoryが設立された意義や、Planning Platform Modelを通じたサービスの有効性は、これまで広告会社が培ってきた専門性やクリエイティビティを強みとしながら、クライアントからの新しい要請に対応できるところにあります。ここからは、Paasons Advisoryが前述のような企業とどのように向き合い、Planning Platform Modelを通じてどのようなバリューを提供しているのかの実例をご紹介します。

スタートアップ系企業とのビジネス事例
~柔軟な報酬設計によりどの事業フェーズでも全方位的にサポート~

これまで広告会社の戦略プランナーが登場する場面は主に、大規模なプロダクト広告予算が確保された上で、そのコミュニケーション戦略を考えるフェーズからというケースが一般的でした。近年では、プロジェクトフィーによる商品・事業開発への参画というケースも増えてきてはいますが、やはり主流は広告ビジネス領域です。そのため、商品化できていないアイデア開発フェーズ・事業計画フェーズにいて、外部委託のための潤沢な予算がないことの多いスタートアップ系企業のサポートは、なかなか難しい実情がありました。

以前あった例として、あるスタートアップ企業からアプリの開発前段階での出資計画、いわゆる「シーズ」段階での事業計画書作成サポートの相談をされたことがありました。まだ広告コミュニケーションを考えるフェーズではないため、広告会社としては事業の入口段階でどのようにサポートするのかが難しい場面でもあります。その一方で、アプリの事業計画書の肝となる「いくら広告費を投下すれば、どのくらいのアプリダウンロードが見込めるか」という事業の出口に関わる獲得シミュレーションは、近年拡大している広告会社の豊富なアプリのMarketing ROIナレッジ、膨大なアクチュアルデータとその分析経験のある広告会社ならではの得意分野でもあります。

こうした要請に対応するべく、Paasons Advisoryはパートナーフィー型による柔軟なサービス提供の形を整備し、事業立ち上げからのサポートを可能にすることで、入り口から出口までをカバーできる体制を整えました。前述のスタートアップ企業の場合は、結果として精緻な事業計画をもとに自社のアプリサービスへの資金調達に成功し、現在はそのアプリの開発を進めています。これにとどまらず、生活者視点での製品コンセプト策定や、コミュニケーションプラン設計など、次のフェーズに向けての取り組みにも参画させてもらっており、次世代のプロダクトを形にする事業パートナーとして評価をいただいています。

テック系企業とのビジネス事例
~クライアントとのワンチーム・プランニングによりアイデアの質を向上~

これまで、広告会社とクライアントとの間でのプロジェクト進行の多くは、クライアントからのオリエンテーションがあり、それを受けて広告会社がプランニングとプレゼンテーションを行い、クライアントによる提案へのフィードバック、そしてそれを踏まえた再プランニング・再プレゼン、というサイクルによる進行が主流でした。双方のキャッチボール形式で進行するこのプロセスは、クライアントの意思決定と広告会社の企画時間がある程度確保できる場合には、これまで通り機能するプロセスですが、前述のような意思決定が柔軟で速いクライアントの場合には、商品やサービスの最新アップデート内容を提案に反映できなかったり、そもそもクライアント内で方針が変わって意図と異なる提案をしてしまうリスクを孕んでいます。

こうした状況に対しPaasons Advisoryでは、各プロジェクトをクライアントとの共創型プロセスで進行できるように心掛けています。下図は、実際に我々が担当している某テック系企業とのプロジェクト進行のイメージです。従来型のプロセスと大きく異なる点として、広告会社側だけで進めていたプランニング段階に、複数回のクライアントとのディスカッションが加わっています。このディスカッションで私たちは、調査データ等から策定した我々の仮説と、クライアントが保有するプロダクトのアクチュアルデータを照らし合わせ、コミュニケーションの方向性をリアリティをもって段階的に固めています。また、これらのディスカッションは、クラウド基盤を活用することで、時間や場所に縛られることなく実施することができています。

こういった取り組みにより、プロダクトのアップデートを反映しつつ、クライアントの高い納得感と実効性のある提案ができ、さらに広告会社単体ではなくクライアントの視点が加わることで、より広い視野と、より高い視座でプランニングを進めることができました。その結果、アイデア・提案の質を向上させることができ、最終的なアウトプットもクライアントの満足度が高いものとなりました。

外資企業とのビジネス事例
~市況・課題・アイデア、全て鮮やかに可視化するVisibilityメソッド~

緻密な市場分析、的確な課題設定、斬新なアイデア、いずれも提案側の広告会社と受け手であるクライアントが異なる認識を持ってしまうと、当然ながら意味をもちません。特に異なる言語や文化の人々が意思決定に関わる外資企業の場合にはこのリスクは致命的です。いかに直感的に、素早く、明快な共通認識を作ることができるかを我々Paasons Advisoryメンバーは日々悩み続けてきました。
 
以前、とある外資系企業の大きな意思決定を伴う提案の際にこの問題が浮き彫りになりました。提案は日本支社への提案でしたが、その後には本国への上申があるため資料は英語で、説明は日本語で。さらに様々な国から集まったメンバーが同席するため日本語の習熟度もまちまち。このようなメンバーに対して提案をしつつも、ファシリテーションを行って一つにまとめ、最終的に会議での意思決定をしなくてはならないという場面です。結果としては、マーケットを俯瞰したユーザーインサイトを的確に捉えられた素晴らしいコミュニケーション戦略であると評価をもらうことができましたが、何よりも評価されたのは、「同席した皆が、直感的に明確な共通認識が作れた」ということでした。言語化にとどまらず、市況・ビジネス課題・アイデアを可視化するメソッドである”Visibility”は、素早く感覚的に意味が理解できるだけでなく、実は視覚化することで隠れていた要素間の繋がりや関係性を見つけることができるなど、様々なメリットがあります。複雑化・高速化するこれからのマーケットで戦略を語るうえで、非常に有用な「武器」だと考えています。


 

 

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