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『音楽の未来』レポート 博報堂「コンテンツビジネスラボ」~サブスクリプション時代における消費行動の変化とヒット予測とは?(4/5)
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『音楽の未来』レポート 博報堂「コンテンツビジネスラボ」~サブスクリプション時代における消費行動の変化とヒット予測とは?(4/5)

来年もOfficial髭男dismの時代になる?

そしてもう1つ、Official髭男dismの話もしたいと思っています。Official髭男dismは2019年下半期にブレイクしている新人ですね。
谷口
ヒゲダンは最近ストリーミングが急激に伸びているのですが、その前に月9の主題歌や、そのドラマを映画化したときの主題歌、そしてテレビ朝日系列の『熱闘甲子園』の主題歌というように、1年半という短い間で3つの大きな主題歌が決まっています。それが急速にリスナーを獲得した要因なのかなと思います。
Official髭男dismもメジャーデビュー前の2018年3月に『関ジャム 完全燃SHOW』に初出演していて、それ以前に音楽プロデューサーの蔦谷好位置さんが紹介しています。やはり最初の布石として効いているタイプの番組ですね。で、ヒゲダンがなぜブレイクしたのかということについて僕が音楽ジャーナリストとして考えているのは、ひょっとしたら時代の反動がそこにあるかもしれないということです。あいみょん・King Gnu・ヒゲダンに共通するポイントは“歌”なんですね。5~8年くらいさかのぼって考えると、AKB48や三代目 J SOUL BROTHERSなど多人数グループがヒットの中心だったのが2010年代の前半の傾向でした。しかし、去年から今年にブレイクしたアーティストを見てみると、ヒゲダンはバンドではありますがボーカルの藤原さんの歌がとても上手く、東京藝大の声楽科を卒業しているKing Gnuの井口さんも卓越した声の表現力を持っている。あいみょんもシンガーソングライターとして基本的に歌と言葉の魅力が強い。ある種、シンプルな歌の力みたいなものがここ1、2年はずいぶん注目を集めるきっかけになっているぞと思います。
谷口
そうですね。特にストリーミングは耳で聴くだけのものですので、YouTubeやライブと比べるとよりそういう要素が重要になってくるのかもしれないですね。
AKB48や乃木坂46といったグループアイドルの時代は、いわばYouTubeの時代で、ダンス動画を見てみんなが踊ることでヒットが生まれるという時代だったのですが、今は“聴く”ことでヒットが生まれ始めていますね。

▲Official髭男dism「Pretender」

木下
僕の仮説で、King Gnuはちょっと違うかもしれませんが、「カラオケで歌える」と思わせているのも影響があるなと思っていまして。さらにいうと、僕は42歳なのですが、40代以上でも受け入れられるようなアーティストですよね。なおかつカラオケでも歌えるという点が、若者じゃない人たちも取りにいける大きな要因かなと感じますね。
言ってしまえばミリオンヒットを連発していた90年代のヒットの方程式に近いかもしれないですね。音楽に詳しい人がきっちりとオススメする、ラジオでヘビーローテーションになる、そこからテレビの音楽番組に出る、ドラマの主題歌になるといったオーソドックスなヒットの道のりがもう1度生まれているように感じます。
谷口
ストリーミングだけの時系列グラフを見てみますと、ここでもあいみょんのときと同じように「Pretender」の配信が開始されたタイミングで別の楽曲が再浮上し、次に「宿命」が配信されるとさらにそれらがランクアップし、そして上位に居続けるといった現象がここでも起きています。
ヒゲダンに関しては、あさって(10月9日)に「Pretender」や「宿命」も収録されているメジャー1stアルバム『Traveler』が発売されるので、予言しておくとビルボードの総合アルバム・チャートで首位を獲るでしょう(※10月21日付総合アルバム・チャートで首位を獲得)。そして、「Pretender」と「宿命」は、さらにストリーミングの再生数を伸ばしていくでしょう。なので、下半期はヒゲダンがヒットチャートを席巻すると予測しています。
谷口
そろそろあいみょんのストリーミング・ソング・チャート連続首位記録(20週)も越されるのではと思います(※10月21日付ストリーミング・ソング・チャートで「Pretender」が21週連続首位を記録)。
さらに注目すべきは、ヒゲダンはまだ『紅白歌合戦』に出ていないところです。まだ発表されていないですが、これも予言しておくと、おそらく出場は決定的でしょう。そして、そこが「なんとなく曲を聴いたことはあるけれど歌っている姿は見たことがない」というレイトマジョリティ層への認知のきっかけになる。なので、去年の米津玄師やあいみょんが初めて『紅白歌合戦』に出たときに父親・母親が「これいい曲だね」って言うような現象がおそらく今年の年末に起こると思います。なので、おそらく「Pretender」は来年の上半期もロングヒットを続けると思っています。
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  • 柴 那典
    柴 那典
    音楽ジャーナリスト

  • 博報堂 研究開発局 木下グループ グループマネージャー
    博報堂DYホールディングス
    マーケティング・テクノロジー・センター 開発1グループ グループマネージャー
    2002年博報堂入社。以来、マーケティング職・コンサルタント職として、自動車、金融、医薬、スポーツ、ゲームなど業種のコミュニケーション戦略、ブランド戦略、保険、通信でのダイレクトビジネス戦略の立案や新規事業開発に携わる。2010年より現職で、現在データ・デジタルマーケティングに関わるサービスソリューション開発に携わり、Vision-Graphicsシリーズ, m-Quad, Tealiumを活用したサービス開発、得意先導入PDCA業務を担当。またAI領域、XR領域の技術を活用したサービスプロダクト開発、ユースケースプロトタイププロジェクトを複数推進、テクノロジーベンチャープレイヤーとのアライアンスも行っている。また、コンテンツ起点のビジネス設計支援チーム「コンテンツビジネスラボ」のリーダーとして、特にスポーツ、音楽を中心としたコンテンツビジネスの専門家として活動中。
  • 博報堂
    研究開発局
    研究員
    2017年博報堂入社。研究開発局で研究員として、データを活用したマーケティングサービス開発、生活者DMPを活用した生活者研究を行っている。注力研究領域は若者研究やAI技術を用いたマーケティング研究。また、コンテンツビジネスラボのメンバーとして、コンテンツ消費行動研究を行なっており、音楽分野担当として音楽ヒット予測等にも従事。

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