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広告・マーケティングにおける「AIの民主化」をともに進める! 博報堂×DataRobot座談会
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広告・マーケティングにおける「AIの民主化」をともに進める! 博報堂×DataRobot座談会

人とAIの共同作業

木下
僕たちは現在、DataRobotのコンサルティングパートナーという立場で、クライアントから寄せられるいろいろな課題をDataRobotの皆さんとともに解決していくことに取り組んでいます。課題解決に当たってよく直面するのは、クライアントが保有しているデータを活用するだけでは満足できる分析結果が得られないというケースです。
笹田
クライアントがもっているデータは、既存顧客のデモグラフィックデータなど、限られたものですからね。
木下
そのようなデータだけだと、これまで接点のない潜在顧客へのアプローチの方法がなかなか見えてきません。そこで、博報堂DYグループがもっている生活者DMPのデータを組み合わせて、生活者の幅広い行動データをDataRobotにインプットしてマーケティング戦略を立てていく。そんなモデルをクライアントに提供していくことが必要であると僕たちは考えています。
百瀬
例えば、広告展開の最適化を目指す場合、クライアントが持っている顧客のコンバージョンデータと生活者DMPのデータを組み合わせてDataRobotに入れると、どのような生活者に対し、どのようなタイミングで、どのような広告を発信すれば顧客獲得の確率が高まるかが見えてくるはずです。
中野
機械学習では、データの量と質が非常に重要です。生活者DMPのようなサードパーティデータを使えば、分析の精度が上がる可能性が高いです。しかし、まだ実際にそのようなデータを使って成功している事例はまだ多くはありません。博報堂DYグループの皆さんとぜひ成功例をつくり出したいですね。
笹田
僕は現在、DataRobotと生活者DMPのデータを組み合わせて、ある食品の購買動向を見極める作業に取り組んでいます。DataRobotを使うと、購買者の年齢、子どもの数、家族構成、年収など数千単位の細かな説明変数のうち、どれがとくに重要な要素かを可視化することができます。
木下
以前であれば、セグメントに分けて一つ一つの要素をクロス集計しながらやらなければならなかった作業が、DataRobotを使うと短時間でできてしまいます。

DataRobot サンプル画面

笹田
その分析結果を見て、その先の打ち手を考えるのがマーケターの役割になります。例えば、30代から購買率が上がるという傾向がDataRobotの分析から見えてきたとします。その裏には結婚や出産といったライフイベントの影響があるのではないか。そんな仮説を立て、「最近結婚をした人」という要素にあらためてフラグを立てて、より精度の高い分析をしていく──。そのような作業は、マーケティングのナレッジがなければできません。
木下
まさに、人とAIの共同作業ですよね。AIは、「より精緻な結果を導き出すためにどのような要素を入れるべきか」ということは教えてくれません。そこを見極めるのは人間の仕事です。
例えば、商品開発を行う場合、以前は生活者にアンケートをして潜在ニーズを探っていました。しかし、アンケートは調査票の設計によって結果が大きく左右されますし、生活者の本音がすべて反映されるとは限りません。そこで、店頭における顧客の商品との接し方を撮影し、そこから得られた人の行動やちょっとした仕草も含めてデータ化し、説明変数として分析に投入するといった作業を行えば、より生活者の本音に近い要素をもとにした分析が可能になるかもしれない。そのようなアイデアを出すことが、僕たちが今後やるべきことだと思っております。
中野
膨大な分析の作業をAIに委ねることによって、人間は新しいアイデアを生み出したり、アクションを検討したりすることに注力できるようになります。そこがまさにAIの効用と言えると思います。

AIの可能性を広げるための協業を

百瀬
機械学習はデータありきのテクノロジーなので、アウトプットはインプットされたデータによって決まります。ということは、機械学習において他社と差別化するには、データ自体の差別化が必要であるということです。他社がもっていないようなデータをいかに整備していくか。そこが今後の大きなポイントになると思います。
木下
生活者DMPのデータはインターネット上で獲得された行動ログが基本ですが、それ以外のデータの獲得も目指していく必要がありますね。
百瀬
そう思います。購買データ、行動データ、メディアデータ、位置情報データなど生活者DMPには多様なデータがありますが、アクチュアルデータに偏っているという問題もあります。例えば、表にはあらわれにくい生活者の潜在意識や情動に関わるデータを取得することができれば、AIのアウトプットの精度は格段に向上するのではないでしょうか。
笹田
「生活者DMPの拡張」という課題ですよね。
百瀬
もちろん、データのクレンジングは必要ですし、DataRobotとそれを連携させる場合には、新しい基盤を構築しなければなりません。しかしそれができれば、確実に新しい発見があるはずです。
木下
そうやって得られた新しい知見をクリエイティブや新たな顧客接点の設計に生かしていくというのが、今後の方向性の一つだと僕は考えています。データ活用はどうしても顧客獲得の効率化や業務効率化という方向で現在使われることが多いですが、それだけでなく、新しいアイデアやビジョンを生み出すためにデータを使うという姿勢も今後は明確に打ち出していければいいと思います。
笹田
そのためにも、博報堂DYグループとDataRobotの協業をさらに加速させていく必要があります。技術革新やビジネス環境の変化のスピードを考えたら、自前主義でやっていくことに限界があるのは明らかです。異なる企業同士が手を結び合って新しい価値を生み出していくことが、これからの時代はますます必要になると思います。
中野
おっしゃるとおりですね。「AIの民主化」を僕たちだけで進めていくことはできません。例えば、博報堂DYグループには広告・マーケティングのナレッジの長年の蓄積があります。そこから学ばせていただくことで、マーケティング領域におけるDataRobotの活用を確実に活性化させることができるはずです。また、AIの分析結果をプランニングやアクションにつなげていく実行力においても、博報堂DYグループ以上のパートナーはいないと思います。今後も力を合わせて、ともにAIの可能性を広げていきましょう。
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  • 中野 高文
    中野 高文
    DataRobot
    データサイエンティスト
    DataRobot社データサイエンティスト。イギリス、カナダの修士・博士課程で量子情報論を専攻。機械学習を活用したで高いパフォーマンスのリターゲティングを行うCriteoのデータサイエンスチームリードとしてビッグデータを用いた分析を行う。2017年5月より日本2人目のデータサイエンティストとしてDataRobotに参画。より多くの人がビジネスで機械学習を活用できるようDataRobotを使った機械学習の民主化を推し進めている。小売の需要予測からマーケティングでのターゲティングまで幅広い課題を解決し、企業のAI変革を推進する。
  • 博報堂 研究開発局 木下グループ グループマネージャー
    博報堂DYホールディングス
    マーケティング・テクノロジー・センター 開発1グループ グループマネージャー
    2002年博報堂入社。以来、マーケティング職・コンサルタント職として、自動車、金融、医薬、スポーツ、ゲームなど業種のコミュニケーション戦略、ブランド戦略、保険、通信でのダイレクトビジネス戦略の立案や新規事業開発に携わる。2010年より現職で、現在データ・デジタルマーケティングに関わるサービスソリューション開発に携わり、Vision-Graphicsシリーズ, m-Quad, Tealiumを活用したサービス開発、得意先導入PDCA業務を担当。またAI領域、XR領域の技術を活用したサービスプロダクト開発、ユースケースプロトタイププロジェクトを複数推進、テクノロジーベンチャープレイヤーとのアライアンスも行っている。また、コンテンツ起点のビジネス設計支援チーム「コンテンツビジネスラボ」のリーダーとして、特にスポーツ、音楽を中心としたコンテンツビジネスの専門家として活動中。
  • 博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター
    2004年某SIer企業入社、2013年2月より現職。
    生活者DMPにおける分析基盤、生活者データ管理基盤の構築を主に担当。
    その他、次世代顧客接点開発として生活者とコンピュータ/ロボットとの関係性に関する研究開発にも従事。
  • 博報堂
    デジタルビジネス推進局
    インターネットサービス企業を経て2016年に株式会社博報堂入社。
    博報堂全社を横断する形で、各クライアントのデジタル・データビジネス領域全般の業務プロデュースに従事。