データドリブンマーケティングを成功に導く、プロジェクト初動に実践したい3つの自己分析
博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局は、企業のマーケティング・イノベーションを支援する組織として2017年に発足。広告領域と連携しながら、顧客体験(CX)の観点から持続的な事業成長に資するマーケティング支援を行っています。事業戦略からサービス成長支援、マーケティングシステム導入、営業支援システムの開発など、業務内容は多岐に渡っています。データドリブンマーケティング推進において早期に成果を出すために必要なことや、博報堂の強みについて、同部門に所属するビジネスディベロップメントディレクターの南奈津子が解説します。
博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局(以下HMSC)エグゼキューションデザイン部の南です。HMSCでは事業戦略からサービスの開発・成長をご支援しています。私が所属するエグゼキューションデザイン部は、例えばアプリやEC、店舗デジタル体験などの顧客体験(CX)の設計・開発を担当するチームです。横断的な視点でCXを改善しながら、時には適切なマーケティングシステム導入をご支援し、中長期に渡って顧客のLTVを向上していく役割を担っています。
プロジェクトオーナーにこそ実践してほしい “WILL-MUST-CAN” の整理
データドリブンマーケティング推進において、「組織がサイロ化されていて部署間の連携が難しい」とか「ボトムアップでの全社的改革は難しい」とよく言われますが、これまで様々な企業のプロジェクトに携わらせていただいた結果、組織的な課題を持つ企業においても、プロジェクトオーナーの初動のプロジェクト計画検討次第では短期間で一定の成果を創出できることが分かりました。
これまでの経験をもとに、プロジェクトデザインにおいてプロジェクトオーナーが初動のプロジェクト計画を立てる際に最初に整理すべき3つのポイントを、“WILL-MUST-CAN”という自己分析で使われるフレームで説明したいと思います。
自己分析において成果を上げるための優先順位を整理するとき、“WILL”を「将来のありたい姿」、“MUST”を「組織に求められていること」、“CAN”を「自分は現在何ができるか」として分析しますが、これをプロジェクトに置き換えると、プロジェクトオーナーが初動に整理すべき3つのポイントがわかりやすくなります。
【プロジェクト初動の自己分析3つのポイント】
“WILL=「ビジョン」” …このビジネスをどんな成功に導きたいか
“MUST=「目標」” …このビジネスで何を達成しなくてはいけないか
“CAN=「リソース分析」” …このビジネスを実現するためにどんなリソースが必要か
この“WILL-MUST-CAN”が初動に整理されているプロジェクトは、実効性の高いプロジェクト計画を立てることができ、クイックに一定の成果を出すことが可能です。
“WILL=ビジョン”はプロジェクトの道標。3つのポイントで伝わりやすく定義する
“WILL”は、プロジェクトにかけるプロジェクトオーナーの「意志」です。このビジネスをどんな成功に導きたいかという意志が、プロジェクトの最初の推進力になります。我々はそれを「ビジョン」として整理します。
「自社のサービスがどうあるべきか」、「生活者にどう価値あるものとなるか」を言語化し、ビジョンとして明確にすることで、決裁者から現場スタッフまでの関係者すべてにイメージとして定着させることが可能です。
このビジョン策定で気をつけたいポイントが3つあります。
1つめは、手段を目的化させない、“MUST”を”WILL”と混同しないということです。
「デジトラ推進」といったような、手段がそのまま目的化したプロジェクトや、「売上◯◯億を達成する」といった、目標がまるでビジョンのようにプロジェクトの最上位に掲げられていることがあります。生活者に対して「ありたい姿」を描けていない事業は、往々にして社会との持続的な接続性を欠いてしまう可能性があります。
2つめは、「組織の中でどういう成功を導きたいか」を描くだけでは、やはり社会との持続的な接続性を欠いてしまうということです。
我々は、事業ビジョンは、企業側の意志だけではなく、「顧客の成功」がきちんと組み込まれている必要があると考えています。生活者がマーケティングの中心にある時代においては、事業ビジョンを描く際にも「顧客」を中心に据え、「顧客」にとっての「成功」に寄与するビジョンが描けてなくてはいけない。そこに、常に生活者に向きあってきた弊社のDNAが大きく活かされると考えています。
3つめに、ビジョンは経営層から現場レイヤーまでいかに伝わりやすく定着させるか、その表現にこだわりを持つべきということです。
伝わりをきちんとデザインしてビジョンを整理するのは、ある種の「クリエイティビティ」が必要です。我々エージェンシーが持つクリエイティブ力は、その点に貢献できると考えています。
“MUST=目標”は、「短い期間で管理可能な目標」を設定する
次に、“MUST”は、ビジネス上達成しなくてはいけない「目標」です。「このビジネスで何を達成すべきか」という目標とその管理を、我々はクライアントとともに「OKR(Objectives and Key Results)」として整理します。
OKRの“O”は“Objective(目標)”です。目標は比較的短いタームで実現できることを設定するのが良いとされています。これも早期に成果を出すコツで、スコープを切って、その都度変更可能な目標を短期間のタームで設定することで、短いサイクルでの成功を積み重ねる体質を半ば強制的に創り出します。この「短い成果のサイクル」がプロジェクト関係者全員に浸透することで、推進力が加速します。
また、目標設定においてぜひ実践していただきたいポイントは、ビジョンで策定した「顧客の成功」を目標化することです。「トップラインを130%伸ばす」や「300万人会員を獲得する」といった企業側の目標は明確に設定されることが多いですが、「顧客の成功」については “Key Result(目標達成度)”が計測可能な数値として測られていないケースが多くあります。しかし、言語化が難しい「顧客の成功」も、データとして可視化することが可能な時代です。この点こそ、長年に渡って「生活者がどう動いたか」を常に補足し続けてきた、また近年においては「生活者データ」を実装したマーケティングを提供する博報堂の知見を生かしてご支援できる領域だと考えています。
素早い成果の創出に最も重要なのは、“CAN=リソース”のクイックな見極め
最後の“CAN”は、目標が明確になった後に必要なリソースをどうまかなうかを検討する段階です。プロジェクトを社内/社外のどのようなリソースで実現することができるかを、我々はクライアントとともに「リソース分析」として整理します。ここで申し上げたリソースは、主に人的リソース(開発・運用)、既存のシステム・ツール、バジェットを指しています。
これまでの経験上、必要な“CAN”の見極めが弱い、またはクイックに棚卸しができない点が最もプロジェクトの迅速な成果の創出を阻害する要因となります。企業によって社内のコンディションを明確に教えていただけないこともありますが、まず企業の内部リソースを棚卸ししないとプロジェクトがスムーズに推進できません。我々はできるかぎり内部状況を共有してもらうことで、社内リソース/アセットをなるべく正確に把握し、その上で適宜必要な社外リソースを選定・デリバリーことからプロジェクトを始めます。初動にこのプロセスを欠いてしまうと、途中でプロジェクト計画の見直しが生じ、スピードが減衰することになります。
プロジェクトオーナーは、計画~開発からローンチ後のプロモーション・運用・PDCAとマクロ的に俯瞰しながら、初動に定めたプロジェクト・スコープに必要なリソースを社内外でどう供給するかを見極める必要がありますが、それは容易なことではありません。“WILL”と“MUST”を自力でしっかりと設定できる企業であっても、“CAN”の棚卸し=リソース分析については、多くのプロジェクトオーナーが苦労されています。
少人数かつクイックにリソースの整理を行えること、またベンダーフリーなので足りないリソースを目的にあわせて都度選定し、最適なご提案ができる点が我々の強みです。とくに私のチームは「エグゼキューションデザイン」の点から、このリソース評価・分析の領域からご支援させていただくことが多くあります。
プロジェクトオーナーこそ、外部に“バディ(相棒)”を見つけてほしい
これまでご支援したプロジェクトを振り返ると、プロジェクトの初動に“WILL-MUST-CAN”をきちんと整理されたプロジェクト、なかでも“CAN”=必要なリソースの分析・デリバリーがきちんと整理されたプロジェクトは、やはり成果創出のスピードが早いです。成果創出のスピードが早いプロジェクトは、結果として事業変革のスピードが上がってくるのです。
この初動のときにこそ、ぜひプロジェクトオーナーは、とくに専門的かつ広汎な知見が必要な“CAN”の見極め=リソースの分析とデリバリーをサポートできる“バディ(相棒)”を横に置いていただき、初動のスピードを早めていただくことをおすすめします。
HMSCには、コミュニケーション領域はもとより、コンサルティングファーム、事業会社、SIer、開発ベンダー、またはそういった企業を横断してキャリアを積んだ多様な領域出身のスペシャリストが多数在籍しています。プロジェクトの初動にスピード感を以て対応できていないとご苦心されているプロジェクトオーナーには、構想時から開発・運用、市場に伝えるところまで、少人数でスピード感を持って対応できる我々を、ぜひ“バディ”としてお選びいただき、プロジェクト初動からご支援させていただければと思います。
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博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局
エグゼキューションデザイン部2002年よりデジタル領域へ。プロデューサー兼タッチポイント別の顧客戦略を設計・開発するコミュニケーション・ディレクターとして活動。2016年より現職。顧客育成マーケティング基盤であるプラットフォームビジネスを軸としたUX/CX発想での事業戦略支援/サービス開発/グロース支援を専門領域とする。