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生活者の変化する状況を捉え、新たな”発見”や”気づき”を与えるプラニング手法 「生活者モードベースドプラニング」
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生活者の変化する状況を捉え、新たな”発見”や”気づき”を与えるプラニング手法 「生活者モードベースドプラニング」

博報堂DYグループは2019年1月に、新たなプラニング手法「生活者モードベースドプラニング」を発表しました。生活者モードベースドプラニングは、変化する生活者の状況を捉えるマーケティング「デジタルロケーションマーケティング」を実現するためのプラニング手法です。新手法の狙いや事例について、デジタルロケーションメディア・ビジネスセンターに所属する大倉幸祐と長谷川恭平に話を聞きました。

 -そもそもデジタルロケーションマーケティングはどのような時代背景から生まれたのでしょうか。

大倉
博報堂DYメディアパートナーズでは定点的に生活者のメディアへの接触実態を調査する「メディア定点調査」を実施しています。直近の調査では、デジタルデバイスへの接触の構成比が東京地区で初めて半分を超え、モバイル端末経由でのメディア接触も3割を超えました。日常的にインターネットのメディアに接して情報を得る人や機会が、現在でも増え続けているという結果が出ています。
インターネットメディアは欲しかった情報が得やすい一方で、テレビや屋外メディアに比べて思いがけない情報に出会う機会が少ない。私たちはここに問題意識を感じています。
博報堂買物研究所では生活者の買物行動の変化を提言する「買物フォーキャスト」を発表していますが、近年は買物に関する情報の量が爆発的に増えている中で、モノを買うことに対するハードルがどんどん上がり、かえってモノが買えなくなっている、という調査結果がでています。欲求が高まっているけれども、それが流れてしまっているという状態のことを同研究所は“欲求流去”というキーワードで呼んでいます。
このような機会損失を解決するための新しい”発見”や“気づき”を与えられるのが、デジタルロケーションマーケティングだと考えています。
 
長谷川
買物行動の変化について少し補足すると、近年はamazonなどECサービスにおける買物の比率が伸びてきていることに加え、新たにInstagramなどSNS上でも買物ができるようになってきています。以前は店舗への来店を前提に、来店前~店内~購買後までの比較的長い時間をマーケティングのスコープとしていましたが、ECやSNSでは来店前に既に購買が完結するためにこれがとても短くなるし、アプローチの仕方も大きく変わります。デジタル化の進展により“Always On”と言われるようにインターネットに常時接続する生活者に新たな”発見”や”気づき”を与え、Path to Purchase(オンライン・オフラインを横断した購買行動)を作り出すことが重要になっています。 

-生活者に新たな”発見”や”気づき”を与えるには、具体的にはどうしたらよいのでしょうか。

大倉
そのための手法を、我々は「生活者モードベースドプラニング」という形で体系化しました。
生活者は、日常の中で「会社員」「父親」「自動車の購入を検討している消費者」といった具合に様々な「顔」を持ちながら生活しています。マーケティングにおいて、この点に注目して生活者とコミュニケーションを取ることが重要である、ということはよく言われますし、ここに注目したソリューションも過去にありました。ですが、これまではそういった「顔」を生活者の静的な属性としてとらえてプラニングを行う、という形が多かったと思います。
しかし、生活者の「顔」はその人が置かれている「状況」によって動的に変化します。会社にいるときは「会社員」、家に帰れば「父親」といった形で同じ人でも状況によって複数の「顔」を持つといったことがほとんどです。我々はこの点に着目し、状況自体に含まれている、生活者の情報受容に影響するようなインサイトを“生活者モード”と名付け、それをマーケティングに生かしていく手法を生活者モードベースドプラニングとしました。
長谷川
あるSF映画の中で、街を歩いていると設置されたカメラによって個人が特定されて、AR空間を介して周り中の看板から話しかけられる未来都市を描いたシーンがあります。街中でいきなり名前を呼ばれて一方的に商品の宣伝をされ続ける、という形になってしまうとちょっと怖いですが、その一方で歩いている場所など変わりゆく状況に応じて発見があるのは生活者にとっても嬉しいことだと思います。
ブランドの広告についても、生活者が「物を押し売られている」と感じるより、「この商品が生活をより良くしてくれる」と感じた方が大きな効果があると思います。これを実現するには、生活者を“30代男性で、アウトドア活動好き”といった形で静的に捉えるだけでなく、状況の変化に応じてどういう情報が欲しいのかを動的に捉えていくことが必要です。

-具体的にモードはどのように抽出しているんですか。

大倉
生活者のどういう状況を捉えなければいけないか、ということを広告主の課題の視点に立って明確化することから始め、そこから生活者モードを抽出していきます。“仕事帰り、といった状況を明確化しただけでは潜在ニーズは掴めないんです。これをいかにデータで捕捉するかが大事になります。調査データやアクチュアルデータを活用して分析し、状況に含まれる「生活者モード」を抽出したうえで、施策設計/実施に持っていきます。
 

データで状況の特徴を捕捉する場合、仮説を持ってデータを見ていくのが重要になります。その状況はどのような場所・曜日時間帯で起こるのか、場所にある施設のカテゴリはどのようなものか、その状況でどのような行動をしているのか等、様々な視点でデータをみることによって、状況に含まれる潜在的なニーズについての示唆が得られます。

 
大倉
時間と場所の視点からの分析では、例えば「平日の日中の大手町」という時間空間はビジネス目的の来訪が多く緊張した雰囲気であり、一方で「平日夜・土日の丸の内」は商業施設への訪問が多くワクワクした雰囲気である、といった結果も知ることができます。
長谷川
場所自体は同じだったり近かったりするのに、表出する人の気分の特徴が全然違うというのが面白いところですよね。
大倉
この延長で「東京の気分マップ」というものを作っています。

公開はしていないのですが、関西版もあります。東京は一極集中ですが、関西だと京都、大阪、神戸といった具合に都市圏が分散していますから、データの傾向が大きく違うんですよ。

-生活者モードベースドプラニングで用いられている、6つのモードについて教えてください。

長谷川
最初に生活者の移動実態を調査したとき、1日における生活シーンと人の気分の変化から6つのモードを見出しました。例えば出勤時と退勤時では同じ電車に乗っていても気分が全然違います。行きは「緊張」や「不安」があって、ニュースや天気などのリアルタイムな情報を積極的に受容します。帰路や家に着いてからはリラックスして新しい情報への欲求が高く、テレビやWeb動画などの長尺なコンテンツを見ます。このように、状況や気分によって情報摂取が大きく異なるという発見を、モードという形で捉え直しました。
 

こうしたモードをどのように使うかなのですが、最近では企業がマーケティングプランを設計する上で、自社の商品の価値やブランドが発信するメッセージをより効果的に伝えるために適切なタイミングで届けること、つまり「生活者のモーメントをどう捉えるか」への関心が高まっています。例えば飲料などコモディティ化が進んでいるカテゴリーでは、「調べて買うような商品ではなく、店頭での気分で買うものなので、情報に対して受け身の状態にあるターゲットに対して広告を出稿したい」というニーズがクライアントにあります。そこで、欲しい情報が決まっている朝の時間帯ではなく、情報に対してオープンになっている帰宅後の時間に集中して、動画などある程度の時間をとって観てもらえる情報量が多いコンテンツを制作し配信する、などのプラニングに活かしていくことができます。

大倉
近年、クライアントと話しをする際によく話題となるのは、「生活者のペルソナや意識だけでなく、その人がその時置かれている状況を含めて考えるべきだ」ということです。「仕事帰りはオープンマインド性が高くて、話を聞いてもらいやすい状況だ」ということを捉えようとすると、位置情報や、閲覧メディア、といった情報を組み合わせて見ていく必要が出てくるんです。

-生活者モードベースドプラニングは、商品の検討から購入までの期間が短い商品の方が活かしやすいのでしょうか。

大倉
検討期間が長い商材でも活用できると思っています。例えば、自動車のように、「3年検討して、実際に購入に動くのは1週間」といった商材であっても、その期間ごとに生活者がどのような状況にあるかを分析していけば活用が可能です。
長谷川
自動車メーカーはディーラーへの送客がマーケティング上重要になっています。先ほどお話した形で、エリアや時間で区切ってメディアプランニングをしていけば、送客に大きな効果を発揮すると思います。

-モバイルに加えてアウトドアメディアも活用していくと、今後どのようなことが可能になっていくのでしょうか。

大倉
まず、生活者モードベースドプラニングで状況に応じたコミュニケーションが可能になっていく背景として、メディアがデジタル化、ネットワーク化することによって情報配信の制御がしやすくなってきているということがあります。
スマートフォンでは従来から自由度の高い配信ができましたが、最近は屋外ビルボードや、タクシー内の広告もデジタルサイネージに変わってきています。交通各社の駅貼りも、サイネージに切り替わってきました。我々はこのような、デジタル化やネットワーク化によって場所時間等の配信制御ができるようになるメディアを「デジタルロケーションメディア」と呼んでいます。アウトドアメディアは現在「デジタルロケーションメディア」化の進展が進んでいるメディアです。生活者モードベースドプラニングを実現するメディアとして積極的に活用していきたいと考えています。
長谷川
モバイルメディアとアウトドアメディアは、補完関係にあるとみています。そうした「クロススクリーン」での配信をどのように実現するか、どのようなサービスとして提供するかを検討するなど、取り組みを進めています。将来的なことでいうと、スマートシティ化があります。例えば顔認証技術が発達し、街の中で動的に変わっていく生活者の気分が表情から捕捉できるようになります。行動データを生成するインフラも整ってくるでしょう。ただ、テクノロジーの進化のみを突き詰めていくと、先程述べたように、そこら中の広告が話しかけていくようなことになりかねません。ここでやはり、生活者が期待することをきちんと理解し、具現化するクリエティビティが大事になると考えています。
 
大倉
単にクリエイティブを出し分けすればいいということではないですからね。
今は主にアウトドアメディアやモバイルメディアの領域で生活者モードベースドプラニングを実現していきたいと思っていますが、他のメディアも大きな変化があるだろうと考えています。例えば音声メディアについて考えてみると、店内放送等や音声放送の広告をどうするのかといったことが思い付きますね。MaaS領域でも今後生活者の状況を捉えるようなタッチポイントがたくさん生まれていくだろうと思います。可能性のあるトピックはたくさんあると思います。テクノロジーの発展によってメディアができることがどんどん増えていっていますので、それに応えて我々も新しい視点で「人の心を動かす手法」を研究し、世の中に提示していきたいですね。
  • 博報堂DYホールディングス
    デジタルロケーションメディア・ビジネスセンター

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