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データをひきだすファシリテーション術第7回
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データをひきだすファシリテーション術第7回

仮説をもってデータにROCKET DIVE!

筋肉は裏切らない!日々“データ筋”を鍛えている“生活者データ・ドリブン”マーケティング通信をご覧のみなさま、はじめまして。VoiceVision米満良平です。

データ、それは「人の想いの化石」です。行動の背景にある「想いの痕跡」をデータと考えると、データから遡って想いを読み解く行為は、「化石発掘」に近いのかもしれません。出土した化石から、恐竜の体のどの部分か考えたり、どれだけ体が大きかったのか、どんな機能が備わっていたのか、どんな環境で、どういう生活をして、なぜ死んだのか…などなど。ひとつの化石から、仮説を重ねることで解釈はどんどん広がっていきます。

とある尊敬する先輩は、この行為を「検死解剖」にも例えていました。どちらもいきなり手あたり次第に土を掘り返したり、メスを刺し始めたり、データ解析したりせず、「ここに化石があるのでは?」「死因は絞殺なのでは?」「データの裏にはこんな行動や想いがあるのでは?」という、常に仮説ありきでスタートするところも共通しているのではないでしょうか。もしかしたら、考古学好き、推理小説好きな方は、データ・ドリブン体質な方なのかもしれませんね(笑)

さて、そもそもなぜデータから人の想いを読み解くのでしょうか?それは何かしらかの戦略的判断をするためです。判断につながらない情報は、ただの石=「ゴミ」と同じです。判断につなげるために、仮説を立て、データを読み解き、解釈し、編集する、という作業をおこないます。すなわち、情報を「価値」に昇華し「判断」を行う=“ヴィジョン”をうみだす行為です。ここではそれを「ファシリテーション&クリエイティブ」と称し、ご紹介しています。(これまでの連載はこちら

今回は「まとめる」です。

ブレブレでも居直って、軸を立ててみる!

今回の「まとめる」とは、全体を俯瞰しながら大きな方向性をうみだすために分類を構造化して整理すること、と本連載の最初に書きました。

化石発掘で言えば、「全体の骨格を組み立て、意味を持つ発見だったのか判断する」作業で、そのためには、フレームワークを用いるのが一般的です。

よく使うのが、皆さんもご存知、「2軸4象限ポートフォリオ」です。
①「+-ポートフォリオ」②「俯瞰マトリクス」をここでは取り上げます。

「+-ポートフォリオ」は、⾼低・⼤⼩・時系列といった優劣のある軸を縦横で構成してまとめる⼿法で、⽅向性のプライオリティをつけるのに効果的です。

例えば、こんな感じです。

「時間」と「効果」のように、異なる次元の判断軸を2軸作ります。その上で、各象限に入る項目がどのような意味を持つのか、読み解いていきます。(両方高いってことは、最優先にやんなきゃいけないなぁ…貢献度が低くて、緊急度が高いってことは、さっさと終わらせないといけないってことだなぁ…)

この場合は、軸の両方の評価が高いもの(++)が重要で、ヴィジョンを検討する上でも非常にわかりやすいのが特徴です。この(++)の項目をどう活用するか、もしくはどちらかの軸が低いもの(+-、-+)をどうしたら両方の評価が高い領域に持ってくれるか、という議論になることが多いです。よくビジネス書やマーケティングの本にも出てくるので見たことがある方も多いのではないでしょうか。

次に、②「俯瞰マトリクス」は、X軸・Y軸それぞれ対となる要素で構成し、全体の構造が⼀⽬でわかるようにまとめる⼿法で、この場合、どこが優位になるかどうかは状況によって異なります。

例えば、こんな感じになります。

先程の「+-ポートフォリオ」と同じ「効果」と「時間」という概念の軸を使っていますが、大きく意味合いが変わってきていると思います。大事なのは優劣ではなく、各象限がフラットなので軸によってどのような意味が付加できるか、です。(美容効果があって継続性が高いってことは、アンチエイジングのニーズって言えるかなぁ…健康効果があって即効性があるってことは…)。「+­-ポートフォリオ」と比べると作成がやや難しいですが、よりダイナミックなアイデアを生み出しやすいのが特徴です。一方で、恣意的な軸で意味付けをする分、一見すると全体を網羅していそうですが、本当にそうなのか?効果は、本当に健康と美容だけでいいんだっけ?というような自問自答も必要です。

前回くくったデータも、このように俯瞰したり、優先順位をつけたりすると、こうしていこう!という判断をしやすくなったのではないでしょうか?どちらであっても、結局は「自分が納得できる」「人に説明しやすい」=自分らしい軸をつくる試行錯誤が大事になってきます。うーん・・・とあんまり悩みこまず、エイヤー!と自分らしい軸をつくりましょう!ただし、構造化はあくまでも自分の意見や想いをまとめ人に伝える、いわば議論のためのツールです。なので、正解はありません。

データドリブン×ファシリテーション=共感拡張!?

さて、ここまで「価値」と「判断」をうみだすスキルについて触れてきました。「それ、データあんまり関係ないじゃん!」「定性的なスキルでしょ!」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。(ごもっとも!)
しかし、「データドリブン」と「ファシリテーション」。定量的アプローチと定性的アプローチと捉えると一見相性が悪そう、関係なさそうな両者も、実は組み合わせることで相乗効果を生み出すこともできます。

ここで、とある自治体観光プロモーションの事例をご紹介します。(具体的にはお話できないので、ここではA市として概略でお話します。)さまざまな観光の魅力があるA市の中で、コアとなる価値を規定してファンを増やしたい!というのがお題でした。わたしたちが行ったのは以下のようなプログラムになります。

① A市の観光価値規定のため、市内外から声が集まるオンラインプラットフォームをつくり、自発的なファンを集める。(生声の収集)
② ファンの生声から魅力を紐解き、大きなヴィジョンをつくり、ファンとも共有する。(共創活動を通じて、コアファンをつくる)
③ その中でも、特にコアファンの共感性が高かった生声をピックアップ。(ファン化につながる生声を特定する)
④ プラットフォームに集まってきたコアファンを分析。DMPを活用しコアファン類似層へ共感性の高い生声をバナーで拡張配信し、A市のファンを増やす。(広告クリエイティブの勝ちパターンをつくり、ファンを拡張する)

このようなアプローチで広告配信を行った結果、通常の何倍もCTRのよい広告配信を行うことができ、効率的なファン層の獲得・拡大に貢献しました。

わたしたちは、この仕組みを単なるオーディエンス拡張、拡張配信ではなく、「共感拡張」と呼んでいて、価値創造からファンをうみだす「ファシリテーション」共感からファンを広げる「データ・ドリブン」を組み合わせることで、新たなマーケティングの基盤づくりを目指しました。

効率化のためのデジタルツールと聞くと、無機質でドライな感じがしますが、人の想いや共感を拡大するための仕組みだと捉えると、なんだかステキに思えてきませんか?

データも、データ以外も、リソース視して新しいチャレンジを!

いかがでしたでしょうか?

わたしたちVoiceVisionは「共創」を掲げ、生活者、企業、行政、地方自治体、研究機関、協力機関、さまざまな外部のステークホルダーをプロジェクトごとに“資産化”し、クライアントの皆様のイノベーションを牽引してきました。「データ」も資産のひとつです。今までにない新しい動きやアイデアをつくるには、新たな視点や仲間が不可欠で、そのために新たなリソースを活用します。一方で、いろいろな目的を持ったステークホルダーの意見は必ずしも一致するとは限りません。そこで、共通のヴィジョンをうみだし、みんなで同じ方向を向いてゆくために活用しているのが、この「ファシリテーション&クリエイティブ」です。データを引き出すことはもちろん、データに限らずさまざまな立場の人にとっての「共有価値」と「判断」をうみだすスキルだと考えています。

今回のコラムで、そんな想いの一端だけでもお届けできていれば、幸いです。

わたしたちは、商品開発をはじめ、地域・地方活性化、イノベーション、人材育成、女性活躍などなど、さまざまなテーマのプロジェクトに携わってきました。データドリブンのお悩みだけでなく、上記お悩みがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

次回は、「ファシリテーション&クリエイティブ」のラスト「もうそうする」です。更に面白くなっていきますよ!お楽しみに。

▼ VoiceVisionのFacebookやInstagramでは、「ファシリテーション&クリエイティブ」に関連したワークショップのTIPSなども公開中です!

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  • (株)VoiceVision エクゼクティブコミュニティプロデューサー (株)博報堂 ストラテジックプラニングディレクター
    ストプラ職として博報堂関西支社勤務を歴て、2018年5月よりVoiceVision本属、博報堂プラニング局複属。主に共創アプローチによる商品開発や新規事業創出、地域・地方創生、産官学連携オープンイノベーションなどを担当。最近は「地域、地方」「死・death」「健康」「医学」をテーマにしています。落語とヘビーメタルと陶芸が癒やし。