「AI時代だからこそ声の力!『ポッドキャスト』最前線」
AIが驚くべきスピードで文章や画像を生み出す時代だからこそ、改めていま、アナログの声の力が再評価されています。今日はそんな音声メディアの一つ、「ポッドキャスト」に注目。音声広告配信会社・オトナル社の八木太亮代表、人気番組「OVER THE SUN」プロデューサーのTBSラジオ吉田周平さんをゲストに迎え、その高まりつつある存在感について、さまざまな観点からご紹介します。
モデレーター
博報堂
テレビラジオビジネス局
中原 裕人
スピーカー
ポッドキャスト番組 ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」
TBSラジオ プロデューサー
吉田 周平氏
株式会社オトナル 代表
八木 太亮氏
博報堂
メディア環境研究所 上席研究員
野田 絵美
調査で探る音声メディアの魅力“音声メディアパワー調査2025”

- 野田
- まずはメディア環境研究所が実施した「音声メディアパワー調査 2025」の速報からご紹介させてください。対象者は全国15歳から69歳の方々で、1.音声メディアの力、映像にはない音声ならではの魅力は何か、2.喋りを中心としたスポークンメディアと音楽ストリーミングそれぞれの魅力は何か、そして3.ラジオやポッドキャストなど個別サービスの魅力は何か、という視点で2万人にスクリーニング調査を行いました。

まず、音声メディアは誰が利用しているのでしょうか。
ラジオやポッドキャスト、音声SNS、オーディオブック、音楽ストリーミングなどを月一回以上利用している人は、10代から60代で約半数に上ります。
特にスポークンメディアを聞く人が4割弱、そのうちラジオは27%、ポッドキャストは18.4%でした。音楽ストリーミングは約3割弱です。年代では、10代、20代の音声メディア利用率が高く、音声メディア合計では10代の7割、20代は6割が利用しています。スポークンメディアは10代の半数が聴いていて、ポッドキャストは4割を超え、若年層によく聴かれていることがわかります。

次に、音声メディアはいつ、どのくらい利用されているのでしょうか。
無料動画は休憩中、就寝前、食事中の利用が多い一方、音声メディアは、自家用車や交通機関での通勤・移動中、家事中、歩行中、身支度中など、生活のあらゆるシーンで何らかの行動をしながら“ながら聞き”されていることが見て取れました。さらに利用時間帯を見てみると、音声メディアは無料動画よりも朝に優位に使われる朝型メディアと言えそうです。

1日あたり利用者は何分使っているでしょうか。
無料動画は1日あたり平均102分聞かれています。一方音声メディアを聞いている時間は85.4分で、特にポッドキャストは、31.1分という結果になっています。動画の時間と音声の時間で15分ほどしか違いがないというのは意外な発見でした。
では音声メディアの持つ力とは何なのでしょうか。
音声メディアと無料動画を比較したところ、繰り返し楽しめて、目的や気分に応じて選べるという点や、何かをしながら効率的に情報や知識を得られたり、ここでしか聞けない人や内容のコンテンツがあるという点は共通の魅力です。無料動画が音声メディアに比べて高かった項目は、暇をつぶせるし、短時間でサクッと楽しめるという点。ダラダラでもサクッとでもどんなモードでも自由に楽しめるのがポイントです。さらに、知りたいことが詳しく、かつ直感的に分かりやすいのも魅力とされました。一方、音声メディアが無料動画より高かった項目は、まず気分転換やリラックス、長時間でも疲れず楽しめるといった点です。また、時間を有効活用できて集中できるという、日々の行動をはかどらせてくれるところもポイントです。また、距離が近く感じられたり、リアルタイムの臨場感、本音や心情がきちんと伝わって、誰かと一緒にいるような、近くで深くつながるというイメージも強いようです。

このように無料動画の魅力とは、どんなモードでも楽しめわかりやすいこと。そして音声メディアの魅力は、楽ではかどり、深くつながることができるということになります。
ではポッドキャストの「力」について見てみます。
ポッドキャストユーザーの3人に1人がポッドキャスト番組コンテンツを誰かにおすすめしたことがあります。好意度では、とても好きという人が無料動画と同レベルとなっています。さらに特徴的なのは、AI時代を反映してか、無料動画と比べても、音声メディア、特にポッドキャストは「とても信頼できる」という回答が非常に高くなっています。声で深くつながる信頼のメディアといえそうです。

AI時代のはじまりにおけるポッドキャストの現在地

- 八木
- 弊社オトナルは広告販売と広告枠の開発を行っている会社で、媒体社様と一緒にポッドキャストのアドネットワークの開発や実装支援を行っています。国内外、2億以上の広告在庫があり、ポッドキャストの広告価値を信じてこれまでやってきています。
ではまず、ポッドキャスト関連動向を見てみます。GWIという調査会社が2014年から行っていた世界中のSNS の利用状況調査によると、2022年をピークに減少しており特に若年層が低下しています。AIコンテンツに人々が疲れてしまい、じっくり視聴するスローメディアやリアルなつながりを求め始めているのではないかと解釈できます。

出典:Have we passed peak social media
https://www.ft.com/content/a0724dd9-0346-4df3-80f5-d6572c93a863
その流れの中で、国内では最近では一部のインフルエンサーの間でポッドキャストへの関心が高まっています。
著名な芸能事務所がポッドキャストプラットフォームを開設するという動きもあります。米国市場ではポッドキャスト広告が伸び続けていて、今後まだまだ成長は続くだろうと予想されています。米国のラジオ広告とデジタルオーディオ市場を見てみると、残念ながら地上波市場は減りますが、それを補うのがポッドキャストがけん引するデジタルオーディオだと言われています。
私たちの行った調査からユーザーの職業比較を見てみると、経営者やマネージャーなどのビジネス層と学生という、両極端な層にユーザーが多いことがわかっています。 市場全体の成長の背景には、ハードウェアとしてのワイヤレスイヤホンの普及があります。2025年6月の調査では、ワイヤレスイヤホンの利用率は10代が73.7%、20代は65.3%で、若者ほどガッツリ使っていることがわかりました。
今の10代は2023年時点で58%しかテレビを所有していないという調査結果もあり、10代に関しては音声によるリーチも十分に期待できそうです。


続いてビデオポッドキャスト、いわゆる動画コンテンツ付きのポッドキャストの潮流についても触れさせてください。
ポッドキャストの聴取プラットフォームを調べると、不思議なことにYouTubeが1位になるんです。YouTubeは実は2023年からポッドキャストに対応できるようになっていて、連携機能も備わっているので、利用者が増えています。静止画に音声がついてビデオで流れるタイプや、スタジオ収録をしている絵だけを撮っておき、動画コンテンツとしてトークを配信するタイプ、またオンラインインタビュー型などの作り方があります。特に米国においては、絵を見ながら音も聞くという人が増え始め、動画とポッドキャスト音声ユーザーが混ざってきている現状があります。たとえば2年前の米国大統領選挙で、トランプ氏が人気ポッドキャスト番組の「ジョー・ローガン・エクスペリエンス」にゲストで出た回は、5000万回以上再生されました。面白いのは、この番組が3時間もあったことです。映画以上に長い、3時間も接触できるのが音声メディアということです。
日本の場合、2月に公開した最新のレポートではポッドキャストリスナーの76%が月に1回以上ビデオポッドキャストを目にしているという調査結果も出ています。

AI 時代に入り、これからは虚構コンテンツがあふれる状態になります。そんな時代においては、スローメディアやリアルな人とのつながりが求められるようになり、ポッドキャストの価値が増していくだろうと考えられます。それに気づいているのが若年層です。ワイヤレスイヤホンも普及しており、若年層には特にリーチが有効です。ビデポッドキャストも台頭してきており、動画との融合傾向があるので、良くも悪くも使いやすくなるだろうと考えています。
「OVER THE SUN」はなぜ人を惹きつけるのか

- 中原
- ここからはTBSラジオの吉田さんにお話をうかがっていきます。早速ですが「OVER THE SUN」の紹介からお願いできますか。
- 吉田
- 「OVER THE SUN」という番組は、コラムニストのジェーン・スーさんとフリーアナウンサーの堀井美香さんが出演するポッドキャスト番組で、2020年10月から配信がスタートしました。毎週金曜日の夕方5時に配信しており、リスナーはお2人と同世代の4~50代の女性がメインで、“互助会員”と呼ばれています。
基本的に番組では無駄話をお届けすることを方針としています。何も考えずに聴ける1時間って、実は非常に贅沢な時間なのではないかなと思っています。スポンサーとのタイアップ枠はおかげさまで来年の上期までほぼ埋まっている状況です。
これまで有料無料、オンラインオフライン問わず、さまざまなイベントをやってきましたが、初めて行ったイベントは2022年、有楽町にあるヒューリックホール東京でキャパは700人ぐらいでした。
2024年1月にはLINE CUBE SHIBUYA(旧渋公)で2デイズのイベントを、7月には横浜BUNTAIという体育館でリスナーと一緒に運動会イベントを開催し、11月には千葉の勝浦にある三日月シーパークホテル勝浦で300人のリスナーと一泊する旅行企画を実施しました。2025年3月には日本武道館、そして9月には2回目となる大運動会を実施しています。その他、全国のPARCO5カ所を巡回する展覧会を開催し、延べ1万人以上の方にご来場いただきました。
もともと地上波でやっていた番組が編成理由でなくなってしまい、ポッドキャストで再スタートした結果、日本武道館まで到達した。そのストーリーを互助会員(リスナー)も大事にしてくださっています。
リスナー有志が運営しているオープンチャットもあり、そこで知り合った方同士が意気投合し、登山部や野球観戦部などが派生していたり、イベントに一緒に行って絆が深まるなど、非常に活発なコミュニティになっているみたいです。
また、配信の中でスーさん、堀井さんが「スポンサーがいないと番組が成立しない」というのをたびたび伝えているからか、イベントで協賛スポンサーを紹介する際には会場から自主的に拍手や歓声が起きるなど、番組とスポンサーのいい関係性が続いています。
- 野田
- 私も互助会員の一人として、これまでいくつかのイベントに参加してきました。
この番組がなぜこれだけ大勢のリスナーを駆り立て、行動を喚起させてしまうのか。ポッドキャストならではの力など、現場で感知されていることがあれば教えてください。

- 吉田
- 地上波であれば、ラーメン屋さんやタクシーの中でも聴かれていることが前提になりますから、誰がどこから聴き始めてもわかりやすい番組を作らなくてはなりませんし、「ここまで言うと嫌な気分になる方もいるかもしれない」など、考えなければならないことも多いんです。でもポッドキャストの場合は自主的にこの番組を聴こうと思って来た人しかいませんから、その前提条件をすっ飛ばせるんですよね。その結果、発信する側としても「ここまで言っても受け止めてくれる」という信頼感が持てるし、より深い話がしやすい部分はあるかなと思います。
2022年夏に初めて番組グッズを販売し、互助会員(リスナー)がSNSに投稿してくれたことで、「こんなに多くの人が聴いているんだ」と初めて実感できました。
同時期には、互助会員みんなでヒヤシンスを育てる企画も実施し、グッズとともにリスナーの存在がSNS上で可視化されました。リスナー皆が大事にできる場づくりを僕らも意識しているし、リスナーもこの安心安全の場を持続させたいという意識のもと、グッズ購入やスポンサーへの感謝、イベント参加など、協力的になってくれているように感じています。
- 野田
- 今日実は「OVER THE SUN」のTシャツを着ていますが、これを着てウォーキングしていると、すれ違った互助会員さんから「ナイスTシャツ」と声を掛けられたこともあります。そんなコミュニケーションが嬉しいんですよね。仲間が自然につながっていくのを実感しています。
イベントを実施する中で気をつけていることなどはありますか。
- 吉田
- 気をつけているのは、誰も置いていかないことです。
例えば大運動会では互助会員同士での声かけOKの合図としてバンダナを巻いてもらっています。ひとり参加同士がその場で仲良くなり、別のイベントでは一緒に来て頂くことも増えてきました。そして、ここ数年は、「大人の悪ふざけ」を大事にしています。大人になってからはしゃぐことなんてあまりないし、ましてや運動会で真剣に玉入れするなんてこともないですよね。「母」とか「妻」といった属性を外し全力で楽しんで頂ける空間づくりは、大事にしていきたいと考えています。
特に深夜ラジオなど顕著ですが、音声メディアは「共犯意識を作りやすい」とは昔からよく言われる話で。この場を一緒に作っていこうという意識になりやすいのかもしれません。ちなみにこれまで2度開催した横浜BUNTAIの大運動会イベントはでのイベントは、1回目は30分巻きで終わり、2回目はオンタイムで終わりました。互助会員の皆さんがとにかく協力的なので、僕ら運営も信頼していますし、本当に感謝しています。
- 八木
- 番組とリスナーと広告主の三方良しを実現するために大事にしていることはありますか。
- 吉田
- スポンサー、互助会員(リスナー)、そして番組の3者それぞれが、絶対得をするような形を意識しています。それに、ありがたいことに、担当者は95%(体感)ぐらい互助会員(リスナー)でもあるんです。なので、番組のトンマナから外れることを言われるケースもほぼありません。
- 八木
- ありがとうございます。番組作りでデータを参考にすることはありますか。
- 吉田
- データを参考に企画を考えたことはほぼありません。僕らが楽しいと思ったことを、リスナーも楽しんで、笑ってもらえていると思っているので。データを見たとしても、「それをどう自分たちは面白く活かすことかできるか?」という考えでいます。
- 八木
- リスナーに向き合いすぎるとマーケティングっぽくなってしまう。自分たちが面白いものを作り続けるというマインドが大事なのでしょうね。

- 中原
- ありがとうございます。
ポッドキャストはエンゲージメントの高さや、強い購買意欲など、「推し活」の構造が魅力です。2026年3月、日本のポッドキャスト文化のさらなる発展を目指して開催された「JAPAN PODCAST FESTIVAL 2026」は、配信者・リスナー・サポーター企業が一堂に会して、大盛況となりました。
ポッドキャストリスナーの熱量が可視化される機会も増えておりますので、今後もポッドキャストの動向にご注目いただければと思います。
以上となります。ありがとうございました。
※肩書は取材当時のものです
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吉田 周平株式会社 TBSラジオ2010年、TBSラジオに新卒入社。10年以上営業セクションを経験した後、2021年から番組制作に携わる。同年より「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」を担当。現在は「金曜ボイスログ」、「きしたかののブタピエロ」、「渋谷凪咲と雨やどりラジオ」などの地上波、「となりの雑談」、「カラタチの最果てのセンセイ!」 などのPodcast番組の制作に携わっている。
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八木 太亮株式会社オトナル
代表音声コンテンツと音声広告領域に特化し、アドテクノロジーを活用した広告出稿とクリエイティブ制作をトータルサポートできる”音声広告カンパニー”としてデジタル音声広告事業を展開。
ラジオ局や新聞社、テレビ局など大手パブリッシャー向けの音声コンテンツの配信支援事業とデータ運用支援を行っている。著書:『いちばんやさしい音声配信ビジネスの教本 人気講師が教える新しいメディアの基礎』(インプレス)
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株式会社 博報堂
メディア環境研究所 上席研究員03年入社 ストラテジックプラナーとして食品・トイレタリー・自動車などのマーケティングとコミュニケーション戦略プラニング業務を担い2017年から現職。生活者と先端メディアをテーマに各種発信。ACCラジオ・オーディオ部門審査員(22年~)、民放連CM部門審査員(25年)
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株式会社 博報堂
テレビラジオビジネス局 メディアプロデューサーオーディオ領域全般(ラジオ・ポッドキャスト等)のメディアプランニングに従事。


